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YMYさん
平均点: 5.87点 書評数: 302件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.22 6点 モリアーティ- アンソニー・ホロヴィッツ 2018/09/24 09:50
シャーロック・ホームズの異色のパスティーシュ(がん作)。
ホームズと宿敵モリアーティがライヘンバッハの滝に消えた。現場を訪れた英国の警部は、米国のピンカートン探偵社から来たという男と出会う。2人は手を組んで、モリアーティに接触を図っていた米国人犯罪者を追跡する。
ホームズは登場しないが、彼の手法を模倣する警部の存在が印象深い。意外な結末へと至る物語の仕掛けも鮮やか。
巻末には、ワトソンが語るホームズ短編「三つのヴィクトリア女王像」も収録。

No.21 6点 これ誘拐だよね?- カール・ハイアセン 2018/09/11 21:02
アイドル歌手のチェリーがドラッグ中毒だということをマスコミに隠すための影武者アンが誘拐され、欲の皮が突っ張った人々は右往左往する。その愚かしさをユーモアたっぷりに皮肉と風刺をまぶして描き出す作者の魅力が炸裂している。

No.20 6点 凍える街- アンネ・ホルト 2018/09/01 09:51
クリスマスも近いオスロの街で、会社社長の家で4人が殺された。女性刑事ハンネと同僚たちが真相を追う10日間の様子が描かれている。
捜査と並行して語られるのがハンネ自身の私生活。同性愛者であり、それゆえに家族との間に確執を抱えている。自身の生き方に悩みつつ犯人を追うハンネの姿が印象に残る。苦い味わいが魅力の作品。

No.19 6点 日曜の午後はミステリ作家とお茶を- ロバート・ロプレスティ 2018/08/24 20:07
小粒ながらも個性の光る短編集。
ミステリ作家の日々の暮らしと、彼が遭遇した事件を描く。「日常の謎」的な出来事から殺人事件まで多彩な謎を描きつつ、作家の日常に寄り添った物語のトーンは一貫して、安定した印象を残す。
何かの合間に気軽に読める、心地良さを感じさせる作品。

No.18 5点 バッドタイム・ブルース- オリバー・ハリス 2018/08/17 19:28
ギャンブル好きで飲んだくれという型破りな刑事ニックが主人公。
破産寸前で家もないニックは、大富豪デヴェールの行方不明事件に興味を持ち、捜査ついでに屋敷で寝泊まりし、置かれていた高級酒を勝手に飲み、服をくすね、どこかに高跳びして八方ふさがりの人生を抜け出そうと、財産の横領をももくろむ。だがデヴェールになりすますべく素性を調べるうちに、大掛かりな策謀を嗅ぎつけてしまう。
ニックの行動はとにかく大胆で規律・規則は完全無視。しかし頭が切れ、舌を巻くほど機転が利くうえ、人としての倫理や情はあるので、憎めないどころか非常に魅力的。結末も味がある痛快な作品。

No.17 7点 ゼロの迎撃- 安生正 2018/08/05 10:06
超大型台風が迫る東京を、さらに大きな脅威が襲う。サイバー攻撃の後、銀行の爆破事件、マンションと商業施設の占拠事件など正体不明のテロ組織が東京を破滅しようと大掛かりな攻撃を始める。
東京の街が謎のテロ集団から重機関銃や爆弾などによる攻撃にさらされたら日本国はどう対処するのか。作者はそんな大胆な「もしも」を見事に描き切っている。
このスケール、この迫力、この現実感、いずれも超弩級といえる凄味をたたえている。

No.16 5点 もう年はとれない- ダニエル・フリードマン 2018/07/27 20:53
ブラックな皮肉を飛ばすバックと現代っ子のテキーラの掛け合いが痛快。バックは「遠慮なく他人に面倒をかけられるのは、年をとる三つの楽しみの一つだ」と放言し、老人であることを逆手にとって、とことん楽しんでいるように思える。その一方では抗凝血剤を飲み、認知症におびえ備忘録を作ってもいる。
避けられない老いを淡々と受け入れながら、人生の終末期を謳歌するバックの生きざまは共感を覚える。

No.15 5点 葡萄園の骨- アーロン・エルキンズ 2018/07/21 09:24
イタリアのワイナリーが舞台。このシリーズの魅力はなんといっても、ギデオンのキャラクターと、骨についての深い造詣。ちっぽけな骨片から驚くようなことが判明する過程が知的な興奮を与えてくれる。また今回はおいしそうな料理が次々と登場し、ワインと美食とミステリは実に魅惑的な組み合わせだと再認識させられた。

No.14 5点 青空と逃げる- 辻村深月 2018/07/12 20:16
父親がスキャンダルに巻き込まれた影響で、全国を転々とすることを余儀なくされた小学生の本条力とその母・早苗の逃避行を描いている。
父親は本当に世間から非難されるようなことをしたのか、自分たちは一体何から逃げているのか、10歳の力には分からないことだらけ。高知・四万十や兵庫・家島など、訪れた地で信頼できる大人や友人を見つけたと思った途端に大人の都合で引き離される。そんな旅を続ける中で、親子の関係も変化し・・・。
湿っぽくなりがちな話題を爽やかな筆致で描き切り、清々しい読後感を残す。

No.13 6点 マリーンワン- ジェームス・W・ヒューストン 2018/07/05 19:45
政治的に入り組んだ状況に置かれた弁護士の活躍を描いたリーガル・サスペンス。
米大統領を乗せたヘリコプターが墜落。パイロットのミスか、ヘリの欠陥か?世論が沸く中、弁護士のマイクはヘリを製造した企業の弁護を引き受ける・・・。
事故の原因を調べるうちに巨大な陰謀が浮かび上がる。緻密な法廷シーンで読ませる、手堅いつくりで楽しめる作品。

No.12 5点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件- 倉知淳 2018/06/25 20:27
思わず脱力してしまうユーモア作品。
どう見ても豆腐の角に頭ぶつけて死んだとしか思えない殺人事件を描く表題作、死体の枕元にケーキが三つ、口には長ネギが1本突っ込まれた殺人を追求する「薬味と甘味の殺人現場」、連続殺人事件に便乗する男の誤算を捉える「変奏曲・ABCの殺人」など6編が収録されている。ひねりがもう一つ足りない憾みがあるものの、ばかげた設定と奇妙な論理が笑える本格推理。猫丸先輩シリーズが好きな方にはおすすめ。

No.11 5点 処刑までの十章- 連城三紀彦 2018/06/17 11:25
突然、夫の靖彦がどこかに消え去った。妻の純子は、靖彦の弟である直行とともに夫の行方を追う。
渡りをするアサギマダラという蝶の同好会。高知県の土佐清水の火災現場で見つかった焼死体。「午前五時七十一分」という奇妙な時刻が記された犯行予告のはがき。謎の女。そして香川県の寺で発見されたバラバラ死体。
いくつもの不可解なものごとが絡みつつ、章が移るごとに事件の様相も変わり、別の見方が示される。男女の三角関係や奇妙な数字の読み方など、作者ならではの世界が展開していく。

No.10 6点 ミレニアム2 火と戯れる女- スティーグ・ラーソン 2018/06/03 12:07
「ミレニアム1」で衝撃的なデビューを飾ったヒロインのリスベットが、この二作目でも活躍する。今回は、リスベットの過去が明らかにされ、彼女の心の奥にまで入り込むことができるでしょう。
前作で天才ハッカーとしての能力を駆使して多額の金を手にしたリスベットは、ミカエルへの辛い恋を封印してストックホルムを離れていたが、一年ぶりに帰国する。だがそこでは、彼女に徹底的に懲らしめられた卑劣な弁護士が恨みを晴らそうと計略を練っていた。かたや雑誌「ミレニアム」の編集部に復活したミカエルは、少女の人身売買を特集することに。しかし、告発を知った連中が口封じを企て、取材者側の身に危険が迫ってくる。
リスベットは、たびたび命を狙われるうえ、殺人容疑までかけられるが、小柄ながら素晴らしい反射神経を機知と天才ハッカーとしての才能を活かして、一人で毅然と戦おうとする。
誰にも頼らず甘えず、強力な敵に立ち向かうリスベットの凛とした強さは感動的。他人を寄せつけまいとする彼女の生き方の裏にある孤独が胸を刺した。

No.9 5点 スマート キーラン・ウッズの事件簿- キム・スレイター 2018/05/25 20:00
川にホームレスの老人が浮いていた。警察は事故と断定するが発見者キーラン少年は殺人事件と確信、独自の捜査を開始する。周囲から「バカ」と呼ばれるキーランだが観察眼が鋭く、天才的に絵がうまい。能力を最大限に生かして事件の解決を目指す。
キーランは母と「父さん」と呼ばれているが本当の父ではない男とその息子との4人暮らし。男は暴力を振るい、母は男の言いなりで家庭にキーランの居場所は無い。
差別や暴力、虐待など社会問題を絡ませながら物語は軽快でユーモラス。ラスト1行でタイトルの「スマート」の意味が明らかになる。
英国で発表されるカーネギー賞をはじめ23もの賞候補にあがり、そのうち10賞を得たデビュー作。

No.8 7点 或る家の秘密- スティーヴ・ロビンソン 2018/05/19 10:52
地味に思わせておいて読ませる一冊。
テイトは依頼人の家系図を作る家計調査士。ある富豪の依頼で、一族の記録の奇妙な空白を埋めようとイギリスに渡った彼は、不穏な妨害に遭遇する。今なお、何者かが過去を隠そうとしている。
調査を通じて判断する過去と、それが招いた現代の事件を通じて、一族の歴史を立体的に浮かび上がらせており、謎解きとしても冒険活劇としても楽しめる作品。

No.7 6点 レイチェル母さん- 本馬英治 2018/04/27 20:09
主人公は小6の根津。友達は心霊写真を撮るのが趣味の右田だけ。ふたりで「世界の終わり」について話しながら、丘の上の幽霊屋敷行ってみると、優等生の高松がスコップで黙々と穴を掘っていた。シェルターを作るという。
そんな3人が幽霊屋敷で、女の幽霊に出会うところから物語が始まる。女は「沈黙の春」を書いた生物学者レイチェル・カーソンの生まれ変わりだといい、やがて顔を真っ白に塗り、白い木綿のワンピース姿で街をさまようになる。
根津たちはその女と関わるうちに、町の悲鳴に気付く。そしてその悲鳴を打ち消すかのように、町をあげての大きな祭りの話が持ち上がる。
とらえどころのない恐怖の中で、3人の少年は仲間を見つめ、家族を考え、世界に目をやる。彼らを待ち構えているのは、終末なのか、それとも・・・。少年たちの目を借りて、現代の不安を鮮やかに描いている。

No.6 5点 無名騎手- 蓮見恭子 2018/04/18 21:40
女性騎手の紺野夏海が主人公。
夏海は自殺した先輩騎手の死に疑問を抱いた。そのころ、検量室で盗難事件が起きたり、救護室での騒ぎの映像がネットにアップされたり、ありえない誤植がスポーツ紙に掲載されたりするなど、奇妙な出来事が頻発していく。
競馬学校を出てプロになったとしても、やがて花形騎手になるのはほんの一握り。騎乗機会が与えられないまま消えていく騎手も少なくないという。
本作はそんな競馬界の現状を背景にした驚くべき犯罪を扱っている。また、競馬の検量室をはじめ、スポーツ紙競馬欄の制作現場などのディテールが鮮やかに描かれているばかりか、次々に不可解な事件が起こり、その先の展開を読まずにおれない巧みな話運びに仕上がっている。

No.5 6点 ペナンブラ氏の24時間書店- ロビン・スローン 2018/04/06 20:50
魔法と最新のテクノロジーが混然一体となった不思議な味わいの小説。
失業中の青年クレイがアルバイトを始めた書店は変わっていた。奥に暗号で書かれているらしい本の書棚があり、会員だけが借り出せるようになっている。
好奇心をくすぐられたクレイは、グーグルに勤めるガールフレンドの力も借りて謎を解き明かそうとする。
紙の本を好きな方はもちろん、インターネットにはまっている若者にこそ、ぜひお薦めしたい。

No.4 7点 ワニの町へ来たスパイ- ジャナ・デリオン 2018/03/31 09:45
主人公のレディングはCIA工作員。任務を超えて大暴れしてしまい、犯罪組織に命を狙われることに。CIA長官は、彼女にしばらくルイジアナの田舎町に身を隠すよう命じる。
自分とは正反対のおとなしい女性を装って静かに暮らすはずだったが、町で彼女を待っていたのは、奇妙な騒動と奇妙な住人たちだった・・・。
強烈なキャラクターと愉快な展開で読ませる、ユーモアに満ちた物語。

No.3 5点 誰の墓なの?- ジェイミー・メイスン 2018/03/26 22:43
ブラックユーモアたっぷりの作品。
窮地に立たされた人間の焦燥が手に取るように伝わり、随所でニヤリとさせられた。
ラストの追跡劇で活躍する犬には、犬好きならずとも胸がキュンとなるでしょう。

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