皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
YMYさん |
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平均点: 5.86点 | 書評数: 336件 |
No.96 | 6点 | 美しい嘘- リザ・ウンガー | 2020/03/25 19:34 |
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スピーディーな展開、謎の存在、ジェイクとのロマンス、喜怒哀楽の感情のジェットコースター、複雑なプロット、意外なエンディングなど、さまざまな要素が揃ったエキサイティングな娯楽作品。 |
No.95 | 6点 | 都市と都市- チャイナ・ミエヴィル | 2020/03/16 19:20 |
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登場人物やプロットではなく、二つの都市の世界観を楽しむべきSFで、通常のSFや犯罪小説を期待しない方がいいかもしれない。文章はシンプルだが、状況を理解するのがやや困難。 |
No.94 | 5点 | わたしが眠りにつく前に- SJ・ワトソン | 2020/03/11 19:46 |
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消えた過去を取り戻そうとする主人公の葛藤を読み進めてゆくうちに、読者まで自分自身の記憶を疑ってしまうような臨場感がある。謎の数々が恐ろしい真実を少しずつ浮かび上がらせてゆく。 |
No.93 | 6点 | 007/ロシアから愛をこめて- イアン・フレミング | 2020/03/11 19:43 |
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他のスパイ小説のような暗さがなく、奇抜な悪役と美女、アクション満載の本シリーズは、男性にとってのロマンス本として楽しめる。今となっては歴史小説さながらのロマンチックさも。ボンドシリーズの中では5作目の本作が最高傑作とみなされている。 |
No.92 | 6点 | 闇という名の娘- ラグナル・ヨナソン | 2020/03/04 20:15 |
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主人公は、定年間近の女性警部フルダ。早期退職を迫られた彼女は、最後の仕事として未解決事件の捜査を始める。
物語の展開がもたらす衝撃もさることながら、読み進めるにつれて浮かび上がるフルダの内面と人生も印象深い。鬱屈とした読後感は決して心地よいものとは言えないが、忘れがたい余韻を残す。 |
No.91 | 5点 | ヒヒは語らず- アンナ・カロリーナ | 2020/03/04 20:11 |
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スウェーデンの警察小説。薬物とレイプ被害の末に死を選んだ姉。アマンダは彼女の死の真相を探るために刑事になった。上司や元売人に接近してまでアマンダが探り出す事実とは?
女性警官へのセクハラが横行する警察内部の描写、移民たちの組織犯罪と、スウェーデンの社会の一面を生々しく描く。策略渦巻くストーリーも驚きに満ちていて、意外な展開に驚かされる。重く激しい物語。 |
No.90 | 5点 | サマータイム・ブルース- サラ・パレツキー | 2020/02/26 20:46 |
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移民が作り上げたシカゴという街の闇の部分が興味深く、70年代のアメリカにおける時事問題を反映しているのも面白い。
しかし、最も魅力的なのはヒロインのヴィク。行動もさることながら台詞がタフで、クールでしびれる。 |
No.89 | 5点 | 風の影- カルロス・ルイス・サフォン | 2020/02/21 20:59 |
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一九四五年バルセロナ、もうすぐ十一歳になるダニエルは古書店を営む父親に「忘れられた本の墓場」に連れていかれた。そこでダニエルはカラックスという作家の「風の影」と出会う。その本を読み始めた少年は、物語にすっかり引き込まれ、作品の魔力にとらえられた。
だが、その後に何年かしてダニエルが謎の作家カラックスについて調べようとした途端、不気味な出来事が起こり始めた。何者かがカラックスの正体を秘密にしておきたがっているのだ。やがて、作家の過去とダニエルの現在は奇妙に絡み合い。 謎の迷宮を彷徨うと同時に、過去の波乱万丈の恋物語を堪能し、ダニエル少年の成長も楽しめる、重層的な作品。 |
No.88 | 6点 | チャイルド・ファインダー 雪の少女- レネ・デンフェルド | 2020/02/16 11:12 |
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自然描写が記憶に残る作品。
行方不明の子供を探す専門家ナオミ。彼女が受けた依頼は、三年前に、わずかな隙に姿を消した少女を探すこと。オレゴン州の山と森で、ナオミは探索を繰り広げる。 捜す者、捕らわれた者、犯人。それぞれの心理が描かれる。ナオミ自身も過去の記憶を失っていて、少女の探索は彼女自身の傷を埋める行為でもある。凄惨になりかねないストーリーを詩的な文章で包んで、読者の心を締め付ける。 |
No.87 | 7点 | 魔道師の月- 乾石智子 | 2020/02/11 19:23 |
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魔道師二人の物語の間に、タペストリーの物語が挟まった形になっている。
どちらも太古の闇を秘めた(暗樹)と魔術師たちの戦いの物語なのだが、その二つが実にうまく絡み合い、響き合って大きな世界をつくり上げている。そして魔術師たちを取り巻く人々、その人々の生活、食べ物、飲み物(葡萄酒と麦酒)などが驚くほどリアルに描かれ、また魔法の原理がファンタスティックに描かれていく。 作者ならではの独自の世界が説得力をもって迫ってくる。そしてそれを語る文章が見事。まさにファンタジーならではの魅力と楽しさを凝縮したような一冊。 |
No.86 | 5点 | 湖のほとりで- カリン・フォッスム | 2020/02/06 20:03 |
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湖のほとりで村の15歳の少女アニーの死体が発見された。長身で美しいアニーは村の家庭でベビーシッターもして、誰からも愛されていた。セーヘルは部下のスカッレとともに捜査に取り掛かる。
アニーの複雑な家庭環境や、アニーのボーイフレンド、ハルヴォールのつらい生い立ちと屈折した心情などが綿密に描かれていくと同時に、セーヘルの個人的な生活や悩みも語られ、物語に引き込まれる。丹念な筆致で描かれる捜査過程や人間模様が読みどころ。 |
No.85 | 5点 | 怪談飯屋古狸- 輪渡颯介 | 2020/01/29 21:04 |
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時代ホラー専門の作者の手になる新シリーズ。
曲がったことが嫌いで、幽霊が苦手な虎太。看板娘のお悌に惹かれて、一膳飯屋「古狸」に入った。そこは実話怪談を聞かせると、飯が無代になるという、奇妙な店だった。さらに怪談の現場を検証すれば、何度も飯が無代になる。常連の隠居の階段を聞いた虎太は、お悌と無代の飯のため、幽霊を見た住人が次々と死ぬという長屋に乗り込むのであった。 一膳飯屋が怪談を求める理由にも工夫があり、設定が実に凝っている。さらに虎太は、幾つかの幽霊騒動にかかわるのだが、これがひとつに収斂していく。もちろんミステリ要素があり、非合理と論理が入り交じった、独特の作品になっている。すっとぼけた虎太のキャラクターが、恐怖を中和してくれるので、ホラーが苦手な人でも大丈夫。先が楽しみなシリーズ。 |
No.84 | 8点 | ジェノサイド- 高野和明 | 2020/01/21 20:34 |
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死んだ父からのメールを発端に、創薬科学を学ぶ日本人大学院生と米国人傭兵の人生が交差する。かつて内向きの日本人には手が届かなかったフレデリック・フォーサイス風の情報小説が、力量ある作家の手にかかれば、今やごく自然に書かれることを示した。
このワールドワイドな物語が評判を呼んだのは、私たちの興味や現実の在り方が的確に捉えられているからに他なるまい。 |
No.83 | 5点 | 強盗こそ、われらが宿命- チャック・ホーガン | 2020/01/13 20:14 |
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強盗を生業とする四人組を描いたアウトロー小説。強盗団のリーダー、ダグが押し入った銀行の女性支店長に本気で恋をしてしまってから、彼らの運命は大きくゆがみ始める。
スリリングなラストの攻防はもちろん、ダグの純粋な恋心、仲間同士の丁々発止のやり取りなど、巧みな筆致で引き込んでいく。切なさを漂わせた幕切れもいい味を出している。 |
No.82 | 8点 | 屍人荘の殺人- 今村昌弘 | 2020/01/08 19:52 |
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神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子と共に、映画研究会の夏合宿に参加する。「今年の生贄は誰だ」という脅迫状が届き、辞退者が続出していたのだ。合宿一日目の夜、みなで肝試しに出掛けるが、そこで生死を分ける極限状況に直面し引き返す。やがて部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。
閉鎖された環境での密室殺人を探偵少女が名推理で解き明かす・・という、ありきたりな設定だが、本書が異色なのは、誰もがみな命を狙われる状況にあるということ。死と対峙する絶望的な状況下で、なぜ犯人は殺人を犯すのかが大きく問われることになる。このロジックが実に緻密で面白い。 |
No.81 | 4点 | 逃亡医- 仙川環 | 2019/12/30 20:10 |
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世間から見ればエリート中のエリートである心臓外科医は、なぜ逃げなければならなかったのか。失踪した人物が独特なキャラと過去を持っているため、どこか奇妙な味を持つ作品だ。追う者、追われる者の物語が交互に描かれるシンプルな構造ながら、さまざまなエピソードが効果的に配されている。尻すぼみ感はあるが、人間ドラマとしてはまずまずの面白さ。 |
No.80 | 6点 | 背後の足音- ヘニング・マンケル | 2019/12/23 18:35 |
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今回、ヴァランダーは長年の不摂生がたたり糖尿病と診断されてしまう。喉の渇きや疲労感と戦いながら、身を削るようにして犯人を追い詰めていく姿は人間臭く、共感を覚えた。犯人の視点からの不気味な描写を挟みながら、クライマックスになだれ込む展開もスリリング。厚い上下巻だが一気読みだった。 |
No.79 | 5点 | 堕落刑事- ジョセフ・ノックス | 2019/12/19 19:36 |
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押収品のドラッグを盗んで停職になった刑事の物語。彼は麻薬組織への潜入捜査を命じられ、さらに有力政治家の娘を組織から引き離す任務まで負うことに。
薬物汚染、警察の腐敗、性と暴力。社会の暗部をはい回る。堕落した刑事の陰鬱な魅力が、しっかりした捜査の物語と、犯人捜しのミステリを支えている。 |
No.78 | 5点 | 吊るされた女- キャロル・オコンネル | 2019/12/14 11:28 |
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刑事マロリーシリーズ。美しくも冷徹な主人公マロリーの古い知り合いスパローが首をつられ、自分の髪を口に詰め込まれたうえ、周囲のハエの死骸が大量にばらまかれている、という異様な事件現場で幕を開ける。
発見時は息があったスパローだが、救急のミスで植物状態に。連続殺人事件と主張し、過去の類似事件を洗うマロリー。相棒のライカーは、現場に残されていたウエスタン小説の本とストリートチルドレン時代のマロリーとの関係を調べ始める。 マロリーを含め、愛に飢えた登場人物が切ない。過去と向き合うヒロインの心の氷が、ほんの少しでも溶けてくれたらと、祈りたくなった。 |
No.77 | 5点 | 州検事- マーティン・クラーク | 2019/12/09 19:59 |
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出来の悪い兄と優等生の弟の古典的な対立、メイスンの恋愛と結婚生活、人生の残酷な皮肉、思春期の娘との関係、黒人の州検事補カスティスとの厚い友情。それらが主人公のメイスンを軸にじっくり描き込まれている。
「良心を行動の規範とする」とき、法という正義をどこまで貫くべきか?作者はこの作品で一つの答えを与えている。ラストの「人生は一筋縄ではいかない」という言葉が深い余韻を残す。 |