皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ねここねこ男爵さん |
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平均点: 5.65点 | 書評数: 172件 |
No.12 | 3点 | ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 | 2017/12/18 11:16 |
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個人的にはかなり好きな短編集だけど、これに高得点をつけるわけにはいかない。
ファンブック的な性格が極めて強い。特に後半の話。この作者はあちこちの作品で登場人物の口を借りながら自身の推理小説観を少しずつ語っていて、たまにとても前衛的と言うか実験的なことをやる。それを踏まえていないと表題作は意味不明と言うか、読者は怒るんじゃなかろうか。前半の話はそれなりにミステリしているが、出来はどうにか水準といったところであり、高評価は難しいかな。 この作者の初めての作品が本作にならないことを祈るばかり。本作は避けて避けて、他作品で作者のファンになってから読んだほうがよいかと。 |
No.11 | 7点 | 論理爆弾- 有栖川有栖 | 2017/12/04 23:09 |
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ジュブナイルあるいはヤングアダルト向けの作品にコレをもってくるとは…
本作は本格ミステリをある程度読みこんだマニアが本来の対象でしょう。帯の煽り文句の最適具合では史上屈指。少なくとも本格物を二十冊以上読んで嗜好や思想が固まってから本作に取り掛かることを強くおすすめします。 |
No.10 | 7点 | 狩人の悪夢- 有栖川有栖 | 2017/11/13 21:40 |
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安定と信頼の有栖川ロジック。
極めて限定された状況下なので、犯人の意外性は期待できませんが、とっ散らかった犯行現場に火村准教授が秩序をもたらしてくれます。学生アリスの探偵役である江神さんとは毛色の違う、リアリズムに満ちた狩りは見事。 火村英生シリーズは学生アリスシリーズと比べて量産型作品というイメージがあったのですが(超失礼)、『鍵の掛かった男』あたりからまさにツートップと呼ぶにふさわしいクオリティになった感じがします。しかもどちらもロジカルでありながら性格個性が異なりきちんと住み分けがなされていて素晴らしい。 ロジックよりトリック、フェアプレイより衝撃や意外性重視な人は読んではいけません。 |
No.9 | 9点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2017/11/09 17:37 |
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ほぼ表題作のみの評価。ロジックもの短編の国内ベスト。
ロジックものはどうしても複雑な状況を作り複雑に解説するという形式になりがち。容疑者を一人ひとりふるい落とす根拠を用意せねばならず、そうすると容疑者の数が増えるほど長く複雑にせざるをえなくなる。さらに面白みを加えるためか、関係ありそうで無関係な事象を平行して走らせる小説が多く(出来の悪い長編あるある)、そうするともう何がなんだかとなりがち。 この作者は論理のために無理やりオーダーメイドされた世界を作ることをせず、ぱっと見意味のないような些細な状況から論理を構築するのが異様に巧みで、文章力もあいまって読ませる。特に表題作の見事さは『孤島パズル』に匹敵。 ちなみにその他の3短編も悪くなく、標準的なレベルにはあるかと。『女彫刻家の首』は首切り死体はなぜ首を切られるか?のバリエーションのひとつ。 『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。 |
No.8 | 7点 | 白い兎が逃げる- 有栖川有栖 | 2017/11/03 02:07 |
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粒揃いの短編集。
この人はワンアイデアを手堅くまとめるのが上手いです。 地下室の処刑の『なぜ死刑執行直前に毒殺したのか?』は結構好きです。 どんでん返しと衝撃の真実が好きな人は読んではいけません。 |
No.7 | 10点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2017/10/24 14:58 |
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トリックでなくロジックであるこの作者の最高レベルの傑作。3つある読者への挑戦がタイトルへとつながっていくのはお見事。『孤島パズル』と並んでこのタイプのミステリでは国内最高峰でしょう。この作者はとにかく文章が上手いですね。
個人的に江神さん以外の推理研メンバーが活躍するのも好きです。 「ロジックよりトリック」「どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!」な人には全くオススメできません。 |
No.6 | 3点 | 海のある奈良に死す- 有栖川有栖 | 2017/10/20 22:55 |
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この作者一の駄作かと。
文章の上手さでそれなりに読めますが、「え?これ!?」感満載。 |
No.5 | 7点 | 江神二郎の洞察- 有栖川有栖 | 2017/10/13 21:12 |
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ファンブック的な性格がどうしても出てしまっていますが、それでも楽しめます。
有栖川有栖氏の文体の美しさを一番堪能できるでしょう。 ある有名作品の、誰しも引っかかってる欠点をフルボッコにしてるのと、登場人物の口から語られる作者の推理小説観は必読かと。 『桜川のオフィーリア』はある意味で最も有栖川氏らしいと思いますがいかがでしょうか? 個人的に裏ベスト短編です。 |
No.4 | 8点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2017/10/04 21:52 |
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学生アリスシリーズの一作目にして評価がイマイチの本作です。
①登場人物が多すぎ ②動機が納得しがたい(個人的にはそうでもないが) ③犯人に意外性がない ④③も含めて全体的に地味 あたりがその理由でしょうか。つまり作者の『若さ』が出てしまっているということなのでしょう。デビュー作ですし。 ただ、本作以降の学生アリスシリーズの高評価につながるもの、心意気が本作にはあり、この作者の他作品中の言葉を借りれば「どこまでも推理小説である推理小説」であろうとした結果なのだろうと思います。 クイーンのファンを公言する作者や法月綸太郎氏は、クイーンの作品を読んだとき「モノが違う」と感じたそうですが、自分にとっては本作がソレです。「何故この人が犯人なのか?」をきちんと説明してくれるミステリは本作が初めてでした(大半のミステリがやる『こう考えれば辻褄が合う』という説明になってない説明は大嫌いなので…)。 最近評価される推理小説はとにかく衝撃重視で、『意外でありさえすればいい犯人』『インパクトがあれば非合理でもよい真相』『それらを比較的簡単に表現できる叙述トリック』になりがちなところを、あえて古典的作法に忠実に書ききったことにこの作品の価値があるのだと思います。逆に、非論理的でも良いから衝撃だけ貰えればよいとする向きには低評価となるのではないでしょうか。 というわけで、『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。 |
No.3 | 4点 | 乱鴉の島- 有栖川有栖 | 2017/09/30 23:55 |
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魅力的な導入部分に対して、解決がちょっとあっさりしすぎな感。
登場人物たちの(ある意味高尚な)秘密と、ごくごく平凡下衆な犯行動機とのコントラストを狙ったのかもしれませんが…。 島や館の雰囲気だけで長編を引っ張るのはきつい。圧縮して中編ならもうちょっとバランスがよかったかも。惜しい。 |
No.2 | 8点 | マジックミラー- 有栖川有栖 | 2017/09/28 23:17 |
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この作者の2大シリーズもの以外では最高傑作では。
ロジックよりトリックに比重が置かれていますが、切符の指紋など細かいところまでよく出来ています。長さもちょうどよく、無駄な下りもほぼなし。人物も結構好きです。 有名な『アリバイ講義』ですが、個人的には講義本体よりもそのあとの推理小説観にグッときました。 |
No.1 | 10点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2017/09/21 12:51 |
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タイヤの跡を起点とするロジックが超秀逸。
不合理なはずのタイヤ痕のせいで「変なことになったりはせえへん。犯人が判ってしまうんや」… 奇妙だが必然的な犯人の行動、事象を論理一本で解明していくのは圧巻。作者のベスト作品かと。 それから、この作品の密室は密室史上屈指の美しさだと思うがいかがか。 『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。 |