皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ALFAさん |
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平均点: 6.63点 | 書評数: 238件 |
No.7 | 6点 | パリから来た紳士- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/26 07:14 |
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表題作「パリから来た紳士」のエンディングが面白い。取って付けたような趣向ではなく、プロットに巧みに織り込んである。
何より本編の消失トリックが、この本家と同じというかパクリというかオマージュというか・・・ もちろんカーとしてはオマージュのつもりなんだろう。 一方「取りちがえた問題」の痛そうなトリックは近年の国産人気作で再利用されている。同じというかパクリというかオマージュというか・・・いやこちらはオマージュではないだろうな。 |
No.6 | 8点 | ビロードの悪魔- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/24 07:22 |
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冒険活劇+歴史ミステリー+SFタイムスリップで、もうお腹いっぱい。
歴史学の教授ニコラス・フェントンは300年前の古文書に記された毒殺事件の謎を探るべく、悪魔の手を借りてタイムスリップする。同名の貴族に憑依するという、まことに手際のいいやり方で。 この悪魔、メフィストより俗っぽくて笑える。 長い尺の半ばまでは、猥雑な17世紀ロンドンを舞台にした冒険活劇。街の臭さが漂ってきそうなリアリティ。後半になって俄然ミステリー濃度が高くなる。 特殊設定のロジックがしっかり通ったフーダニットで、伏線も十分。 ジャンルミックス型エンタメ大作にして、カーの代表作である。 |
No.5 | 7点 | 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/17 07:31 |
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ポンペイの遺跡を観光で訪れた、何やら不穏な家族と友人グループ。
それを目撃する探偵役・・・ クリスティさながらのオープニングである。 起こる事件は、子供の無差別殺害と衆人環視下での実業家の毒殺。 密室はないが、魅力ある不可能犯罪が牽引力になって安心?して読み進められる。 フェル博士の毒殺講義と終盤の真相開示がやや冗長なのが残念。 |
No.4 | 7点 | 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/13 07:42 |
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カーはトリック愛に満ちた作家だと思う。いかにして読者を惑わすか、きっと本人も楽しみながら書いたんだろう。
濃い人間ドラマや精緻なロジックではそれぞれクリスティやクイーンに譲るが、トリックはテンコ盛り。ときには突っ込みどころ満載だったりするけどそれも楽しい。 この短編集も密室中心の良作揃い。 中でも、表題作「妖魔の森の家」はトリックだけに終わらない大仕掛けな秀作。 それにしてもHM卿、それ重くなかったか? |
No.3 | 8点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/04 07:36 |
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私見だが優れたミステリーには天才型と秀才型があると思う。
瑕があっても突出したワンアンドオンリーを具現化したものが天才型、精緻でバランスよく欠点の少ないのが秀才型。 この「三つの棺」は・・・(以下ネタバレします) 「○○○が犯人」というトンデモ設定を着地させた点で天才型。クリスティの「XXXが犯人」という某有名作と同じ。 天才型にありがちな歪みはある。大がかりな密室+アリバイトリックは突っ込みどころ満載だが、ここはカーのサービス精神。 密室トリックで語られることの多い作品だが、ワンアンドオンリーのこの趣向こそが真髄。 |
No.2 | 6点 | 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー | 2025/08/28 14:46 |
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数十年ふりに再読。
申し分のないツカミ、ジミ目の解決、そしてエピローグに至って洗練されたホラーになる。 しかしこの手のハイブリッド形ホラーミステリーは、近年国産の名作が数多くあるからなあ・・・ |
No.1 | 7点 | 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー | 2023/01/21 14:19 |
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数十年ぶりに再読。すっかり忘れていて楽しめるかと思ったけど、けっこう覚えていて残念!
シンプルなプロット、整理された登場人物、小粒だがキレのいいトリック。まさに優等生のような本格ミステリー。 ただ十代の頃とは違い、スレッカラシ読者の今となってはもう少しコクというかアクというか個性、さらに言えば独特の世界観が欲しくなる。ここではカーの個性は強く出ていない。 そういう意味では、同じ動機とトリックからなるクリスティの某作品のほうが好みではある。 どちらも名探偵と名犯人が登場するが、あちらにはさらに名被害者と濃い人間ドラマがあるぶん楽しい。 |