皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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青い車さん |
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平均点: 6.93点 | 書評数: 483件 |
No.22 | 7点 | 赤い部屋異聞- 法月綸太郎 | 2020/02/09 20:28 |
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東西の有名小説を元ネタにした短編集。こういう趣向は書く側の読書量とテクニックを要すると思いますが、この場合は充分成功といえるのではないでしょうか。表題作『赤い部屋異聞』は、研究家・評論家としての法月綸太郎の強みが存分に出た好例です。個人的ベストは『対位法』と『まよい猫』。前者は仕掛けの切れ味、後者は奇妙かつ小気味のよいオチが面白い快作だと思います。 |
No.21 | 7点 | 法月綸太郎の消息- 法月綸太郎 | 2019/09/12 21:30 |
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実に7年ぶりとなる探偵・法月綸太郎の新刊。なかなかに興味深い内容と構成だったため、やや長めのレビューを書きます。
まずは、ストレートな安楽椅子もの二作から。『あべこべの遺書』は提示される謎が飛び抜けて不可解な一作です。尚且つ、それを一から十まで理詰めで解こうというスタンスも相変わらず維持しています。わずか50ページの短編にして情報量が濃くて読み応えがありますが、やや複雑すぎるのはネックでもあるでしょうか。 『殺さぬ先の自首』はモノでなく心理をカギにした謎解きの一作です。こちらはかなりわかりやすい解決ですが、最後に至るまでそれを読む側に悟らせないのは流石といえます。少し有栖川有栖『モロッコ水晶の謎』を思い出しました。 そして、この本ならではの異色作が、上記の二作をサンドウィッチする形で収録された『白面のたてがみ』『カーテンコール』です。作者ならではの律儀な研究ぶりが窺われる途方もないホラ話(貶してるわけではなくいい意味)で、ドイル、チェスタトン、アガサらに対する敬意がきちんと表れている点が好印象でした。 |
No.20 | 5点 | 挑戦者たち- 法月綸太郎 | 2016/09/20 00:15 |
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面白いは面白いんですが、想像していたのとまったく違ったベクトルの異色作になってしまいました。それ以前に、これは正確には小説というより評論集といったほうがいいかもしれません。元ネタを知らなければ楽しめない部分も多々あり、間違ってもベストセラーにはなりえない作品です。
『キング~』『犯罪ホロスコープ』は間違いなく法月さんの新たなピークを刻んだ作品群だったと思うので、そろそろSFや、パロディ、批評を混ぜ込むといった遊びから抜け出してほしいのがファンとしての願望です。作者曰く新たに綸太郎シリーズの腹案があるそうなので、そちらに期待しましょう。 |
No.19 | 5点 | 怪盗グリフィン対ラトヴィッジ機関- 法月綸太郎 | 2016/05/22 15:37 |
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どうも最近の法月さんは『キング』で労力を使いすぎたのか、自分の書きたいものを奔放に書いているという感じがします。それが悪いとは言いませんが、少なくとも僕個人としてはもっとストレートな本格が読みたいです。
本作も途中までは『絶体絶命』と同じくポップなユーモアが溢れていて楽しかったのですが、終盤はほとんど理解不能でした。書こうと思えば普通のミステリーにもできたはずなので、もしかしたら狙ってやっているのでは?とさえ思えます。不定期連載していた『挑戦者たち』も非本格なので僕が求めているような作品は当分お預けかもしれません。 |
No.18 | 6点 | しらみつぶしの時計- 法月綸太郎 | 2016/05/02 00:49 |
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『パズル崩壊』以来のノンシリーズ短篇集ですが、極度にエッジの利いた部分がなくなったことで、安心感と同時に若干の物足りなさも感じます。それでも全体的に考え抜かれた短篇が揃っており、充実の内容なのは確か。個人的ベストはやはり表題作の『しらみつぶしの時計』ですが、リドル・ストーリーを主題にした『使用中』交換殺人テーマをアレンジした『ダブル・プレイ』論理パズルとして秀逸な『盗まれた手紙』などどの作品にも何かしら見るべきものがあります。ただ、都筑道夫のパスティーシュ風(僕は本家を読んだことがありませんが)だという『四色問題』に関しては、説得力が弱い解決で純粋にミステリーとして一枚劣ると思います。 |
No.17 | 7点 | パズル崩壊- 法月綸太郎 | 2016/05/02 00:33 |
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まず最初の『重ねて二つ』のぶっ飛んだトリックに度肝を抜かれました。これは本当に法月さんが書いたのか?と思ったほどです。そこから意外な証拠が決め手になる『懐中電灯』三重密室という趣向を奇妙に描いた『黒のマリア』など、様々な方向から攻めてくる短篇集。綸太郎シリーズでは自重していた冒険をしている、という印象です。個人的に心に残ったのは非ミステリーの『トランスミッション』でしょうか。独特の文体で綴られる平凡な男の奇妙な体験は普段、本業では書けないところだと思います。「こんなのも思いつくのか」と感心しました。ボーナストラックとして執筆を断念した長篇の第一章を載せるのは、ファンには嬉しいサービスですが蛇足と思う人もいるかも。 |
No.16 | 8点 | 怪盗グリフィン、絶体絶命- 法月綸太郎 | 2016/04/30 18:51 |
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ポップでユーモア溢れる雰囲気というかタッチがとてもステキ。主人公グリフィンの小粋な語り口も魅力的で、僕の目から見てまさに理想的なヒーロー像です。最初から最後まで一貫して飽きさせない展開であり、まるで海外作家が書いたかのような洗練も感じます。
推理小説的にも、子供相手と手を抜いてないところが好感がもてます。小学生高学年くらいの子には難しいかもしれませんが、繰り返し読み込んで楽しめると捉えれば欠点ではないでしょう。この本がきっかけでミステリーにはまる子が出てくれることを願います。 |
No.15 | 6点 | 生首に聞いてみろ- 法月綸太郎 | 2016/04/09 22:41 |
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確かに長い作品です。表面的な派手さや外連味が薄いために、退屈に感じる人が多いのも当然と言えます。しかし、僕は「無駄に」長いだけではないと主張したいです。
少し注意深く読み返してみたらば、緻密な伏線が張り巡らされている、引き締まった本格作品であることに気付くはずです。そして、最後に浮かび上がる真相は一際輝き、分量に見合っただけの内容であると感じられます。『ふたたび赤い悪夢』で克服したかに見えた家族悲劇にふたたび立ち向かい、打ちのめされる綸太郎の姿には何か意味を感じてなりません。 ただ、ファンとしては支持したい作品ではあるものの、事件が一件だけであること、首切り殺人というテーマの割にさらりと犯人が判明・逮捕される演出の淡白さなど、(おそらく意図的であると思いますが)スピード感と迫力が不足しているのは否めないので極端に高評価はしづらいかな、というのが正直なところです。 |
No.14 | 5点 | ノックス・マシン- 法月綸太郎 | 2016/04/09 21:52 |
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正統な本格ミステリーを書くことに神経が使われている印象だった『生首』や『キング』と対照的に、この短篇集はマニアの遊び心の極みとでもいえるような書きっぷりです。ミステリーとSF、両方好きな人にのみ100パーセント楽しめるという内容はちょっと難があります。クイーンやクリスティー好きにはたまらない部分もあるものの、正直やはり作者に求めたいのはストレートな謎解き小説なので、個人的には手放しには歓迎できない感じですね。
以下、各話の感想です。 ①『ノックス・マシン』 有名なノックスの十戒をモチーフに、タイムマシンを絡めたSF小説を仕立てた奇想作品。気の利いたオチも決まっています。 ②『引き立て役俱楽部の陰謀』 有名な名探偵の助手たちが勢ぞろいした非常に楽しい一篇です(僕はワトスン、ヘイスティングズ、ヴァン・ダインぐらいしか知りませんでしたが)。アガサの失踪事件を『アクロイド殺し』のフェア、アンフェア問題とリンクさせたアイディアもいいです。 ③『バベルの牢獄』 これはかなりSF寄りに傾いた作品。難解なワードがあまりに続出するため、こればかりは正しい評価はできません。ただ、トリックは初めて体験したパターンでした。 ④『論理蒸発 ノックス・マシン2』 クイーンの国名シリーズ『シャム双子の謎』の、「消えた読者への挑戦」をモチーフにした作品。本格好きにはしびれる題材ですが、③同様かなり難解なのでちゃんと楽しめた自信はありません。 |
No.13 | 9点 | キングを探せ- 法月綸太郎 | 2016/02/25 23:25 |
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「スタイリッシュな本格」に限りなく近づいた作品ではないでしょうか。キレのいいコンパクトな長さで、トランプのカードを駆使した騙しのテクニックにも作家としての成熟が感じられます。無機質なパズルのように見えて夢の島をはじめとした犯人たちの視点の章を挿入し、作品に深みを与えている工夫も評価できるポイント。派手な見せ場でなく、あくまで仕掛けの上手さに拘ったのが作者らしい渋い作品です。 |
No.12 | 10点 | 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 | 2016/02/25 23:04 |
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中段のサスペンスを捨て論理展開の面白さのみでストーリーを支えた印象の話が多いです。特に『縊心伝心』が秀作。高水準な短編集であり、初めての法月作品としてもピッタリです。
以下、各話の感想です。 ①『イコールYの悲劇』 捻ったダイイング・メッセージもので、ボールペンの骨っぽいロジックがいかにも作者らしいです。 ②『中国蝸牛の謎』 トリックのためのトリックではありますが、あれをカタツムリに見立てたという発想が面白いです。 ③『都市伝説パズル』 ほぼ綸太郎と法月警視とのディスカッションのみで構成された作品。血文字の謎をスマートに利用し、その他の別解を丁寧に潰していく緻密さも兼ね備えています。 ④『ABCD包囲網』 見え見えの虚偽の自首を繰り返す男に、読者は先の展開が容易に読めません。クリスティーの元ネタを上手くアレンジしています。 ⑤『縊心伝心』 ③と同様にディスカッションが中心となっています。現場のありふれた証拠から、「なぜ打撲により死んだ被害者を首吊りに偽装したのか」をはじめとする様々な違和感が解けるのが快感です。 |
No.11 | 8点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2016/02/21 21:15 |
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一人称の『一の悲劇』と打って変わって、本作はあまり見られない「二」人称のパートが含まれています。男女の哀しきすれ違いが生み出したせつないラヴ・ストーリーであり、残念ながらあまり本格ミステリーらしい要素はありません。しかし、叙情的な描写にぐいぐい引き込まれ、そこそこの分量をあっという間に読めてしまいました。ハッピー・エンドとは程遠いのに美しい余韻を残すのも素晴らしいです。プロトタイプの中篇『トゥ・オブ・アス』も読みましたが、このストーリーを堪能するなら、やはりこの長さが必要だと思います。
それと、あとがきではかなり自虐的になっている法月さんですが、ファンとしてはもうちょっと自信を持ってくれと言いたくなりました。 |
No.10 | 8点 | 犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題- 法月綸太郎 | 2016/02/18 21:30 |
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より玄人受けする『ノックス・マシン』の陰に隠れてしまいましたが、実は2014年版本格ミステリベスト10で第5位だった短篇集。前半六作より謎解きが高密度で上質な短編がそろっています。個人的ベストは『錯乱のシランクス』。
以下、各話の感想です。 ①『宿命の交わる城で』 作者お得意の交換殺人テーマをうまく料理しています。複雑な構図なので流し読みには向かない作品。 ②『三人の女神の問題』 ケータイの通話履歴という現代的な手掛かりから、ロジカルな推理を展開してみせる手際がさすがです。ミステリーの21世紀における可能性が垣間見えた気がします。 ③『オーキュロエの死』 緊密なプロットの構築度はこの連作中一番だと思います。最後に浮かび上がる犯人の切ない思惑が何とも言えない余韻を残します。 ④『錯乱のシランクス』 ダイイング・メッセージの捻りっぷりに心酔しました。ただ、飛躍気味な部分もあるので気に入らない人もいるかもしれません。 ⑤『ガニュメデスの骸』 殺人事件の犯人当ては完全におまけで、奇妙な誘拐事件の謎を中心に据えた異色作。非本格な内容ですが、この作品が入っていることでこの本のヴァラエティが広がっています。 ⑥『引き裂かれた双魚』 不穏なストーリー運びに戸惑いましたが、全ての謎が解けた後の母親の狂気とやりきれない結末が印象的です。 |
No.9 | 7点 | ふたたび赤い悪夢- 法月綸太郎 | 2016/02/17 23:34 |
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『頼子のために』事件での痛手を引きずる探偵・法月綸太郎が、危機に陥ったアイドル・畠中有里奈こと中山美和子を救うため奮闘。歪んだ家族の悲劇に正面から立ち向かい、ついにわずかな希望の光を見出す。
ファンなら絶対に外してはならない記念碑的なストーリーの大長篇です。この感動的なプロットの緊密さは法月作品随一で、600頁を長さを感じさせず読ませてくれます。作者は失敗作と謙遜していましたが、これがなければ今の探偵・綸太郎はなかったと言っていいでしょう。冷たい推理機械であることに疑問を抱き、悩み、そしてついに古風な名探偵であり続けることを選んだ綸太郎の最重要のステップといえます。 |
No.8 | 7点 | 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題- 法月綸太郎 | 2016/02/16 23:35 |
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『法月綸太郎の功績』など他の短篇集と比べると小粒なのは否めませんが、キレのあるトリックはちゃんと堪能できます。個人的ベストは『冥府に囚われた娘』です。
以下、各話の感想です。 ①『ギリシャ羊の秘密』 メインの仕掛けは他愛のない言葉遊びですが、それを成立させたアイテムや、「犯人が勝手に」メッセージとして受け取ったというひねりも面白いところ。 ②『六人の女王の問題』 読者に推理できない難解な暗号ですが、これを作成した作者の労力は凄かったことでしょう。暗号を作った動機や事件の真相など、異色な要素が目を引きます。 ③『ゼウスの息子たち』 ①②で今ひとつだったプロットと神話の関係性が一番強い作品です。疑似餌の配置が巧妙で、意外な犯人を導き出す推理が華麗に決まった秀作。 ④『ヒュドラ第十の首』 ゴム手袋の凝った推理がよくできています。しかしそれだけに終わらず、さらに突っ込んだ推理をすることで犯人を炙り出す二段構えの造りが魅力です。 ⑤『鏡の中のライオン』 鍵となるピアスの扱いは非常に面白いです。伏線の弱さを除けば、意外な方向からひっくり返る事件の構図が楽しめる好編といっていいでしょう。 ⑥『冥府に囚われた娘』 練られたプロットの見事さで読ませる作品。ドラッグが事件に関与しているという点は作者のあとがきでも触れられているとおり『都市伝説パズル』と共通していますが、似て非なるアプローチです。 |
No.7 | 8点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2016/02/11 22:18 |
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語り手、山倉史朗の「一」人称で綴られる骨太なドラマが魅力的です。読者の盲点を突く誘拐殺人トリックも秀逸で、本来なら疑いの目が向きそうな人物を自然にぼやかす効果を挙げています。あと、『頼子』の書評でも書きましたが、痛ましい悲劇を描いているにも関わらずあまり悪趣味さを感じさせない点もいいです。密室状況の解決にこじつけ感があるのが若干のマイナス・ポイントですが、端正な本格推理小説として高く評価します。 |
No.6 | 9点 | 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 | 2016/02/06 22:32 |
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パズラーとして端正でありながら人間の心を随所に関連付けることで物語としてのコクもあり、傑作ぞろいといっていい出来だと思います。特に『背信の交点』『現場から生中継』『リターン・ザ・ギフト』の三作は絶品です。
以下、イントロダクションを除いた各話の感想。 ①『背信の交点』 読み始めたときは時刻表ものか?と錯覚しましたが、ふたを開けるとガチガチの本格ものでした。事件の構図が本作中もっとも華麗に反転しています。 ②『世界の神秘を解く男』 超能力のタネは拍子抜けなものの、下劣なマスコミの生態や封建的な学会の事情などを絡めることで印象的な佳作に仕上がっています。 ③『身投げ女のブルース』 トリックの前提が大きな偶然に頼っていることを除けばほぼ文句なしです。予想外の方向からの解決に見事背負い投げを食らいました。 ④『現場から生中継』 犯人の致命的ミスから生まれた決定的証拠が秀逸です。携帯電話という当時最先端のアイテムからこんな作品を編み出した作者の発想力に脱帽します。 ⑤『リターン・ザ・ギフト』 事件が交換殺人であることを早々に明らかにし、その上で様々な可能性を論理的検証でふるいにかけるユニークな作品。最後に浮かび上がる登場人物たちの心情が切ないです。 |
No.5 | 8点 | 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 | 2016/02/05 23:17 |
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以下、各話の感想です。
①『死刑囚パズル』 殺害方法や注射器の処分方法などから緻密な推理で犯人を絞り込む手際が実に素晴らしいです。意外な犯人と動機も心に残ります。綸太郎が初期のエラリーのように回りくどいしゃべり方をするのも面白いですね。 ②『黒衣の家』 サイコパス診断で似たようなクイズがあると後で知りました。ショッキングな結末は①以上です。 ③『カニバリズム小論』 グロテスクな題材を論理的に解き明かすことに挑戦した作品。様々な推理小説的発想を否定し尽して辿り着いた答は思いもよらないものでした。 ④『切り裂き魔』 完璧に合理的な行動とは言い難いかもしれませんが、日常を舞台にしたホワイダニットととしてはよくできていると思います。 ⑤『緑の扉は危険』 物語の膨らみが小さいのが残念です。しかし密室トリックの解法は非常にユニークです。新機軸といえるのではないでしょうか。 ⑥『土曜日の本』 これだけは頂けないです。魅力的な謎をどう解くかと思ったら楽屋オチとは、ちょっとがっかりです。ただ、作中の他のミステリー作家の名前と作品タイトルの言葉遊びは楽しめました。 ⑦『過ぎにし薔薇は……』 ちょっとした日常の謎が、人間の心の闇が原因で引き起こされたとわかる展開が予想外でした。良作だと思います。 やはりベストは①だと思いますが、その他も高水準のものが多いです。ただし他の方も述べておられますが、前半の暗く重い作品に対し後半のライトさはアンバランスにも思えます。 |
No.4 | 8点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2016/01/29 17:09 |
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父親による娘の復讐を綴った手記から始まる物語の重さは僕の嗜好とは相容れないものなのですが、ほぼノンストップで読めてしまいました。最後の最後で浮かび上がる真相は強烈な後味の悪さを残しますが、不思議とどぎつい理不尽さや悪趣味さを感じさせません。これだけの悲劇を一気読みさせてしまう点で、法月さんの筆力の向上がしっかり実った作例といえそうです。 |
No.3 | 7点 | 誰彼- 法月綸太郎 | 2016/01/28 18:41 |
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『密閉教室』『雪密室』より格段に読みごたえが増しています。アイディア満載の内容で読者へのアピール力は前二作と比べずっと上がっており、終盤のくどいほどに二転三転(いや、四転五転か?)する真相に読む目を休ませることができませんでした。ただ、そのひねりが結果として面白い着地をしたかというとちょっと疑問でもあります。中には真相がどうでもよくなってしまった読者もいるかもしれません。そこが引っかかったので7点にとどめます。
ところで、ラスト・シーンが『オランダ靴の謎』を思い出させるのですが、わざとでしょうか? |