皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
青い車さん |
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平均点: 6.93点 | 書評数: 483件 |
No.12 | 7点 | 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン | 2020/03/20 22:07 |
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超能力による殺人というそれまでなかった謎に挑んだ意欲作。相変わらず大きな偶然に頼っている部分はあるのですが、トリックには目を見張るものがあり、細かい伏線がパズルのようにはまっていく快感も味わえる佳作です。挑戦的なタイトルも悪くないと思います。 |
No.11 | 8点 | 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン | 2018/11/27 21:12 |
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シャープに仕上がった小品という感じ。不可解な殺人事件が犯人の仕掛けた単純なトリックを軸に展開されており、そのトリックが暴かれることで全てが無理なく収束されます。肝心の○○の偽造が上手くいくかは意見が分かれるようですが、そこに目を瞑れば完成度はかなり高いです。 |
No.10 | 5点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2018/11/27 20:51 |
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人物の行動が理に適っていて良くできてはいるのですが、個人的には強引にでも驚かせるような作品を書くカーの方が好きです。また、注釈が付いている伏線があまりにも細かすぎて読者にはまず気付けません。厳しめの5点。 |
No.9 | 6点 | 墓場貸します- カーター・ディクスン | 2018/11/20 18:47 |
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人間消失ものという作者好みなテーマの一作で、奇術系な犯行が巧妙で完成度は高いです。この手の作品のパターンを抜け出せてない(どうしても○○犯じゃないとこの謎は成立しないのはわかるけど)のだけが不満。 |
No.8 | 6点 | 殺人者と恐喝者- カーター・ディクスン | 2016/08/24 23:14 |
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叙述のフェア、アンフェアの概念がまだ定まっていなかった頃の作品であるためか、確かに今読むと反則すれすれです。ただ、それでも最後の逆転は見事ですし、邦題の付け方も上手く、読みながら推理してやろうというタイプではない僕は十分満足できました。催眠術に便乗して殺人を起こすという犯行は面白いものの、種明かしされてからその状況を想像するとかなりヘンテコです。しかし、それもこの作者なら許せてしまえます。傑作とまでは言いませんが読んで損はありません。 |
No.7 | 5点 | 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン | 2016/08/24 23:00 |
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題名になっている「一角獣」が、ほとんど内容に必然性を持たせていないのが残念です。そんな凶器普通は知らない上に明らかに不合理ですし、単なるハッタリで終わってしまっています。それを抜いてしまえばアイディアはすり替わりのみで、クローズド・サークルの情緒も引き出せていません。カーター・ディクスンにしては不出来な部類の作品だと思います。成功すれば、荒唐無稽でも爆発力がそれを上回るのが魅力の作家なのですが。 |
No.6 | 8点 | 貴婦人として死す- カーター・ディクスン | 2016/05/22 15:17 |
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崖から飛び降り心中自殺したはずの男女は至近距離から射殺された死体となって発見された……。不可能犯罪に新たなヴァリエーションを加えた作者の発想力に脱帽。トリックも現場の特性を活用した切れ味抜群の出来です。終盤からの犯人指摘の演出までサスペンスに満ちた、隠れた名作といっていいのではないでしょうか。 |
No.5 | 7点 | 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン | 2016/05/18 23:25 |
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カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)の生んだ数ある密室殺人の中でも、一際異彩を放つ設定です。それまでも『赤後家』の毒殺を用いた密室という特例はありましたが、今回はガス自殺に見せかけたテープの目張り密室。不可能犯罪の大家も同じようなものばかりでなく、様々なパターンの密室に挑んでいたんですね。
労力の割にあっさり他殺と見破られるなど、効率的なネタとは言い難いですがアイディアの面白さは抜群。トリックも奇想でありながら、さり気ないヒントの提示で、論理的な解決に成功しています。強いて弱点を挙げるとすれば若い男女のロマンスの描き方がクリスティーなどと比べてぎこちないところでしょうか。 大山誠一郎さんが短篇で同じ目張り密室殺人をフェル博士に推理させています。こちらも面白いのでオススメです。 |
No.4 | 7点 | 孔雀の羽根- カーター・ディクスン | 2016/02/13 18:10 |
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本作のメイントリックは物理的な面で疑問を呈する人もいるそうです。確かにアレがうまいこと部屋に入って〇〇する、というのは出来すぎではあります(ネタバレしないようにぼやけた言い方になっています)。しかし、カーの作品を読んでそんな細かな瑕疵をあげつらうのは野暮でしょう。リアリティを愚にもつかないものと断じている作家なのですから。実行可能性の問題に目をつむれば、伏線の妙を堪能できる良作に仕上がっていますし、本作は密室トリックの新たなヴァリエーションを素直に喜んで読むべきではないでしょうか。 |
No.3 | 9点 | ユダの窓- カーター・ディクスン | 2016/01/31 20:15 |
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トリックだけ取り出せば、あまり感心できるものではありません。この方法でどれだけ確実に相手を殺害できるのかは、大いに疑問。しかし、ストーリーの面白さはディクスン名義では屈指のものです。言い逃れできない状況で恋人の父親殺しの容疑をかけられた男、彼を救うためH・M卿が繰り広げる白熱した法廷シーン、意外な真犯人と動機と、実によく練られた構成です。トリックの弱さを補ってあまりあるストーリー・テリングの巧みさはまさに傑作と呼ぶに相応しいものと思います。また、けして褒めてはいないトリックではありますが、それを暗示するタイトルの付け方はなかなか洒落ています。 |
No.2 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2016/01/29 00:01 |
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かなり読みにくかったところ以外は非常によくできた作品だと思います。密室状況を特殊な殺害方法と複合させたトリックはさすがの完成度です。ただし、負け惜しみになりますが足跡のない密室の解答としてこの真相はちょっとずるいような…。僕が読み落としているだけかもしれませんが、読者に対し不親切な記述であるように思えます。それでも、カーのトリック・メイカーぶりがよくわかる佳作であることは変わらないのでこの点数は堅いです。 |
No.1 | 7点 | 赤後家の殺人- カーター・ディクスン | 2016/01/28 23:50 |
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細部は忘れていて、メインの毒殺トリックを評価の対象としますが、これが実によくできていてシンプルながらユニークです。H・M卿シリーズの中では出色といっていいでしょう。作品の雰囲気もオカルト趣味な彩りという作者の持ち味が存分に発揮されていて高水準です。でも、最初に述べたとおり物語の細部は失念しており、本作に限らず僕にとってカーの作品はトリックのイメージだけは鮮烈に覚えていても動機などは記憶に残らないものが多く、最悪の場合誰が犯人だったのかすら忘れてしまうものさえあります。アガサやクイーンならそんなことはまずないのですが、そのあたりで僕のカーへの思い入れは他の大家たちに比べて一枚劣ります。 |