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青い車さん
平均点: 6.93点 書評数: 483件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.33 6点 ダブル・ダブル- エラリイ・クイーン 2017/03/08 19:33
 童謡殺人テーマを大きく捻ったことでユニークな事件の構図を作り上げているのですが、いかんせんストーリーに盛り上がりがなく、引き込まれ夢中になるだけの魅力が欠けています。個人的にハマれなかった『盤面の敵』ほどではないにしても、やや趣向・仕掛けが不発気味に終ってしまっているように感じます。ピークを過ぎたクイーンの変化を付けようという試行錯誤や意欲は買われるべきだと思いますが。

No.32 6点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2017/03/08 19:24
 これほど人により評価の分かれる有名作も数少ないのではないでしょうか。登場人物表だけで犯人が割れてしまうなどと言われることもあり、これを名作と考えるか凡作と考えるかは読者の好みや懐次第と言えます。そして、個人的には凡作とまでは行かなくても不満が残る作品と捉えています。口に入れたものがあまりに予想外な味だったら美味しくても不味いと感じてしまうように、クイーンに求めるのはこれではなかったんですよね。そもそも高度な理解力を要する作品を楽しむにはある程度の素養が必要で、僕にはそれがまだ欠けていたのもあるかもしれません。いつか再読した頃には面白いと思えるようになりたいものです。

No.31 4点 第八の日- エラリイ・クイーン 2017/01/21 00:23
 エラリー・クイーンが後期に多く扱った宗教絡みの事件です。そこが面白いと取るかどうかが評価の分かれ目でしょうが、僕の主観ではクイーン本来の謎解きの楽しみを大きく減殺している夾雑物にも感じられ、却ってマイナス要因になってしまいました。好きな作家だからこその厳しめ採点です。

No.30 6点 帝王死す- エラリイ・クイーン 2016/11/09 14:24
 やはり、クイーンはどの時代でもパズルとしてのミステリーに拘りを持っていたことがわかります。今回も不可能犯罪のテイストを取り入れつつ、あくまで論理的な思考でエラリーは真相を解き明かします。伏線のそつない張り方と、終盤でのそれらの回収は相変わらず見事です。マイナスなのは、島という舞台装置を持て余し気味に感じること、事件が起きるまでの起伏に乏しい展開、そして(あくまで相対的にですが)初期ほどの推理のキレが見られないことです。

No.29 7点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2016/09/27 21:33
 今日ポケミス版で読了しました。つい昨日書評したバークリーの『服用禁止』と同じ毒殺もので、しかも12年前の事件を捜査する設定のためかなり地味めの作品です。しかし、犯人は彼で間違いないとしか思えない事件をどうひっくり返すのか、先が気になり一気に読み切ってしまいました。そしてやはり被疑者の容疑を否定する手際の見事さはさすがクイーンです。クライマックスでの盛り上がりも、派手さというよりドラマとしての味で満足させてくれます。前作『災厄の町』よりもとっつきやすく、推理にも重きを置いている分よりエラリー・クイーン的かもしれません。本当に奥の深い作家です。

No.28 6点 悪の起源- エラリイ・クイーン 2016/09/27 20:02
 『十日間の不思議』や『緋文字』と同じく、この『悪の起源』もまた殺人がだいぶ後半になるまで起きません。そこに至るまでの冗長さで評価を大きく落とす方もかなり多いですが、そこはクイーンも承知の上でやっているのでしょう。死体の数で面白くなるのなら、誰も苦労しないからです。本作は次々と送られてくる脅迫の謎で物語を引っ張ることで勝負しています。とはいえ、それが成功しているのかというと微妙なところです。終盤の鮮やかな推理、手紙のトリック、最後のどんでん返しと、感心するポイントも多々ある点はクイーンの矜持を感じさせるのですが。

No.27 5点 緋文字- エラリイ・クイーン 2016/09/27 00:44
 本格ミステリーとしての魅力はダイイング・メッセージ一本です。つまり、そのメッセージが解けてしまえばすべての真相が割れてしまうという訳で、付随する推理がないためこの『緋文字』の印象は薄味なものになってしまっています。物語の発端が浮気調査という地味なものでなかなか事件が起きないプロットは後期クイーンの工夫なのでしょうが、それも成功しているとは言い難いです。『十日間の不思議』ほど劇的な展開があればインパクトは違ったのでしょうが。

No.26 4点 盤面の敵- エラリイ・クイーン 2016/09/23 23:55
 クイーンが後期に拘ったという「操り」テーマの一作。まだこの時点ではあまり書かれていなかった設定に驚くべきひねりを加えているのは称賛すべきかもしれません。しかし、そのひねりが正攻法から大きく外れる要因になってしまっているように思え、逆に僕にとってはよけいでした。エラリーの推理もアルファベットをひっくり返してみるなど、ちまちましていて魅力に欠けます。『ギリシャ棺』のような重厚感には遠く及びません。好きな作家なだけにハードルが上がっていたのもありますが、あらゆる点で物足りない出来でした。

No.25 7点 エラリー・クイーンの新冒険- エラリイ・クイーン 2016/08/07 20:29
 クイーン屈指の大トリックと緻密な伏線に、爽やかな読後感まで揃った『神の灯』。エラリーのとった心理テスト的な罠が印象的な『宝捜しの冒険』。犯人の失言とあるアイテムから紡ぎ出すロジックにキレがある『がらんどう竜の冒険』。以前も用いたアイディアを奇抜な犯行に応用してみせた『暗黒の家の冒険』。ミステリーとしては薄味でも小説として読ませる『血をふく肖像画の冒険』。毒殺トリックがユニークで、かつ論理の土台もしっかりしている『人間が犬をかむ』。こちらは銃の使い方が見どころなショートショート的作品『大穴』。意外なロジックで犯人を唯一人に絞り込むクライマックスに迫力がある『正気にかえる』。アメリカ銃~でもあった灯台下暗しな隠し場所が肝の『トロイヤの馬』。
 『神の灯』が圧倒的に世評が高いですが、個人的なベストは『正気にかえる』です。全体の水準は冒険の方が上だと思うものの、それでもこれだけの面白さを維持しているのはさすがです。

No.24 7点 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン 2016/07/24 22:57
 『Yの悲劇』のハッター家の再来を思わせる、狂った一族を中心にした事件にエラリーが挑戦します。犯人は見え見えとの声もありますが、拳銃の工作は単純そうでなかなか練られています。また、何よりどんな事件でも純粋にロジックを積み重ねて犯人を導き出す姿勢はやはりエラリー・クイーン、といった感じです。ファン投票ベスト10は伊達ではありません。そして、あの人物が初めて登場する記念すべき作品でもあるのでファンは要チェックです。

No.23 8点 十日間の不思議- エラリイ・クイーン 2016/07/24 22:39
 登場人物が少ないため、「誰が犯人だろうか」と考えながら読む楽しみはほぼありません。僕は別の本で笠井潔氏が犯人をバラしているのを先に読んでしまいましたが、本作に関してはそれはまったく問題になりませんでした。内容の方は、ライツヴィルもの一作目の『災厄の町』と同様に、割とゆったりと展開していきます。殺人事件そのものがなかなか起きず、本格好きが喜ぶような華々しいプロットとは到底言えません。
 ただ、そのなかなか殺人が起こらないという構成が魅力と言えなくもないかもしれません。地味ながらも不穏なストーリーが、終盤になって急激に本格ミステリーに変貌します。それも、クイーンが後年に拘ったあのテーマの一種と呼べるようなもので、最初読んだときはとても新鮮でした。
 もうひとつ興味深いのが、犯人指摘の後、エラリーが犯人にある行為を許してしまうところです。アガサ・クリスティーも初期の代表作で同じことをしていますが、ポアロもエラリーも法の裁きに信頼を置いていない、ということでしょうか?

No.22 7点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2016/07/24 22:08
 飯城勇三氏によれば、『災厄の町』は「二度読んで面白さがわかる」そうです。個人的に本作は初読時あまりピンと来なかったのですが、今日パラパラと読み返してみました。
 僕があまり楽しめなかった原因には、推理の醍醐味が薄いこと、そして人間ドラマに今ひとつ乗れなかったことがあります。特にエラリーがあまりに精彩を欠いているのが気になりました。『エジプト十字架』事件を解決した彼が終盤まで手も足も出ないままだったのには違和感が拭えません。ドラマの方も刺激的な展開が起きる訳でもなく、割と地味に、淡々と進んでいる印象です。
 ただ、ラスト一行「今日は母の日だぜ」のセリフにはどうしようもない切なさ、哀しさがあり、最上の締めだと思います。推理もあの手紙の手がかりは非常に秀逸。そこらへんはさすがクイーンといえます。

No.21 6点 日本庭園の秘密- エラリイ・クイーン 2016/07/24 21:42
(直接的な説明は避けていますがネタバレ気味です)



 『日本庭園の秘密(ニッポン樫鳥の謎)』の肝は何と言っても○○に見えて実は××だった、という点に尽きます。そして裏にそれを仕向けた人物がいた、というのも凝った趣向です。初期クイーンは直球の本格ばかりだと思われがちですが、実際は基本のパズラーの核はあってもけっこう色んなアイディアに手を出しています。大袈裟に言ってしまえば、現在のミステリーの教科書に載るような手法を網羅しているかのようです。
 僕は幸せなことにこの手のパターンは本作が初だったので、解決篇には興奮を覚えました。ただ、「傑作の本格推理」を求めて読むとがっかりするのもわかります。そこが、ニッポン樫鳥が代表作に比べて評価がパッとしない原因なのでしょう。

No.20 8点 ガラスの村- エラリイ・クイーン 2016/05/20 17:01
 先日図書館で借りて読んだ読み残していたエラリー・クイーン。この作品の頃になると、クイーンはストレートな本格ミステリーから遠ざかりドラマに重きを置くようになり、好みの違いはあれど謎解きの純度が落ちているのは概ねどのファンから見ても意見が一致しているようです。僕は比較的初期のパズラーを愛好していたのでこれはしっくり来ないのでは、と思っていました。ですが、読み終わったら大満足。思わぬ大当たりでした。
 淡々と村やその住人、事件の発生、裁判が描かれるため中盤にかけては正直退屈でした。しかし、主人公ジョニー・シンの無実の男を救うため立ち上がるクライマックスには大袈裟でなく感動しました。クイーンを読んでこんな感情を覚えるとは。知的好奇心から事件に首を突っ込む最初期のエラリーや、『Zの悲劇』でのドルリー・レーンとはその点比べものにならないカッコよさです。
 それでいてもうひとつの見どころは意外にも高水準な謎解き(作者の手にかかればこんなものが推理の材料になるのか!)。考えてもみれば自明のことなのになかなか気付けない、絶妙な難易度です。犯人の犯行経緯やアリバイトリックまで実に緻密に考えられています。長々と書きましたが、ファンならマイナーだからといってけして外せない作品とお薦めします。

No.19 10点 死せる案山子の冒険- エラリイ・クイーン 2016/05/11 16:05
 『ナポレオンの剃刀の冒険』と同じく、このたび再読。初期長篇で利用したアイディアをアレンジして取り込んだもの、中期以降のドラマ性を重視したものなど色んなクイーンの顔を見ることができてお得です。おそらく大衆受けを狙ってのものであろう、秘書のニッキイとじゃれあうエラリーの姿も見られます。
 このラジオ・ドラマ集でもうひとつ強調したいのは、飯城勇三氏による解説の面白さです。一見推理ものとしてはさびしいエピソードの意外な伏線のうまさや見どころが確認でき、それだけでなく各エピソードの弱点に関しても愛のある意見が見られます。
以下、各話の感想です。

①『<生き残りクラブ>の冒険』 クリスティーに先を越されたため没になった長篇のプロットを本作で使った、という説があるそうです。このアイディアを活かすには、ストーリー作りのうまいクリスティーの方が確実に向いているので、短めにまとめたかたちで発表したのは正解と言えるかも。
②『死を招くマーチの冒険』 解説にもあるように、きわめて論理的なメッセージの解明はクイーン的。しかし、このテーマだとどうしても推理がちまちまとなってしまい、爆発力という点で物足りないのは仕方がないところです。
③『ダイヤを二倍にする男の冒険』 ミスディレクションにより謎が深まっている不可能状況ですが、考え方を変えると実にシンプルな事件です。犯人のよけいな小細工が、逆に自分を犯人に直結させてしまっている皮肉にも面白いものがあります。
④『黒衣の女の冒険』 オカルト風の謎でも、そこはエラリー・クイーン、見事論理的に解決しています。しかし、関係者の職業から安直にあるトリックを想像していたのですが、エラリーにまっさきに排除されて恥ずかしかった…。
⑤『忘れられた男たちの冒険』 証拠の意外性と、短いならではのキレの良さ。単純にミステリーとしてならいちばん好きかもしれません。提示がさり気ないだけでなく、ちゃんとフェアプレイも両立させています
⑥『死せる案山子の冒険』 ロジックは国名シリーズ的な一方、一族の悲劇を描いているところには中期っぽい雰囲気もあります。特に血を流したカカシやパイプからは『エジプト十字架の謎』が、ストーリーからは『九尾の猫』が想起できます。
⑦『姿を消した少女の冒険』 のちの誘拐ミステリーの雛型と言えそうなプロットです。現に、僕の好きなクイーン・ファンの新本格作家はこれをさらに発展させたような長篇を書いています。今となってはさして意外な犯人ではありませんが、解説を読むと意外にも緻密に組み立てられたストーリーであることに気付かされました。

No.18 10点 ナポレオンの剃刀の冒険- エラリイ・クイーン 2016/05/06 23:51
 以前図書館で借りて既に一回読んでいましたが、このたび再読。そして改めてその造りの見事さに驚かされました。よくできたミステリーは二回読んで真価がわかるものと思います。クイーン作品のほとんどがそうで、事実この本もその例に洩れませんでした。どのエピソードも制作されたのが約70年前とは信じられないほど質が高く、音声のみという縛りがあるにも関わらず謎解きの内容にはパズラー作りのセンスが行き渡っています。特に気に入っているのは『殺された蛾の冒険』です。
以下、各話の感想です。

①『ナポレオンの剃刀の冒険』 知識による手がかり、状況の不自然さ、宝石の隠し場所、といった複数のアイディアが盛り込まれ、かつミスディレクションも巧みな佳作です。
②『<暗雲>号の冒険』 冒頭の何気ない会話が解決に不可欠なヒントになっているのが面白いところ。ただし、多くの日本人は気付けないだろうとも思います。
③『悪を呼ぶ少年の冒険』 トリッキーな事件の構図が目を引きます。まずほとんどの人が騙されるでしょう。動機があまり釈然としないところを除けば文句なしです。
④『ショート氏とロング氏の冒険』 チェスタトンの『見えない人』をベースに、より巧妙なアレンジを加えた作品です。タイトルからまったく別の不可能トリックを想像させてしまうのも見事。
⑤『呪われた洞窟の冒険』 メインのトリックは小さい頃推理クイズで見たことがあり、さほど驚きはありません。しかし、再読でその緻密な伏線の数々に気付き、傑作であると評価を改めました。
⑥『殺された蛾の冒険』 何でもないような物証から、犯行時間や犯人の細工をすべて暴いて見せるエラリーの軽やかかつスマートな推理は国名シリーズを彷彿とさせます。
⑦『ブラック・シークレットの冒険』 ③と同様、意表を突く犯人です。しかし、本作の見どころは三つの犯罪に三人の犯人という特殊な事件、そして意外な整合性をもったダイイング・メッセージにあります。
⑧『三人マクリンの冒険』 最後に収められているのはキレの良い推理クイズ的作品です。短い分量で証拠の提示も堂々としているので、きっと解ける人もいるはずと思います。

No.17 8点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2016/02/27 23:31
偽の手がかりを散りばめ短篇で多重推理を実現した『アフリカ旅商人の冒険』。チェスタトンとポウのオマージュ的な謎の設定が魅力の『首つりアクロバットの冒険』と『一ペニイ黒切手の冒険』。小噺的な遊び心があふれる『ひげのある女の冒険』。シンプルなトリックが効果的に機能した『三人のびっこの男の冒険』。銃弾をめぐる推理が面白いストレートな逸品『見えない恋人の冒険』。シンプルでキレのあるロジックが冴えわたる『チークのたばこ入れの冒険』。オカルト趣味なようでいて異色の解決を見せてくれる『双頭の犬の冒険』。ダイイング・メッセージに先鋭的なアレンジを加えた『ガラスの丸天井付き時計の冒険』。もっとも不可思議な謎を突き詰めた結果おぞましい真相が現れる『七匹の黒猫の冒険』。
エラリー・クイーンの持ち味、論理的解決が短い中にも詰まった好篇がそろっています。特に『ガラスの丸天井付き時計の冒険』がお気に入り。長篇『シャム双子』と同様ダイイング・メッセージをひねりにひねった作品ですが、意外なところが犯人の落とし穴となった皮肉さがたまりません。

No.16 7点 ハートの4- エラリイ・クイーン 2016/02/27 21:42
 不思議とあまり話題にはのぼらないものの、意外や意外かなり楽しめました。はじめはいつになくチャラチャラしたエラリーに戸惑いましたが、華やかな雰囲気に彩られたプロットには新鮮な楽しさがあります。二つの俳優親子同士のロマンスや、それぞれの親がハネムーンの飛行機の中で毒殺されるという派手な演出には釘付けになり、読む目を休めることができません。ハリウッドものの特色は『悪魔の報酬』よりさらにディープになり、クイーンの苦心の跡が見て取れます。
 犯行方法についての罠を看破すれば、機会から自ずと犯人がわかってしまう弱さはあるものの、動機の問題も絡むことで先を見えにくくしており、本格ミステリとしてもなかなか上質です。クイーン・ファンの人にはもちろん、お堅いパズラーは苦手という人にも読んで損はないとお勧めしたいです。

No.15 6点 悪魔の報酬- エラリイ・クイーン 2016/02/26 21:48
殺害トリック、犯人特定のロジックはともにクイーンの安定を感じます。新味に欠けるとも言えますが。とはいえ、国名シリーズの諸作よりサプライズが劣るのはあくまで比較したらの話で、パズルとしては一定の水準を超えた出来です。男女間のロマンスを積極的に取り入れ、物語に華を加えようという作者の試みは評価に値すると思います。現に最初期の頃と比べリーダビリティは格段に上がっており、読み物としてはさらに高ランクなものと言っていいのではないでしょうか。

No.14 9点 中途の家- エラリイ・クイーン 2016/02/20 22:12
散々言われていることではありますが、初期のクイーン作品より人物描写の深みがぐっと増しています。それに加え、中期以降薄れていったパズラーの魅力も損なわれることなく盛り込まれた、非常にバランスのいい作品。個人的に国名シリーズのAクラスの作品群に匹敵する傑作として推したいです。マッチ、コルク、ナイフといった何でもなさそうな物証から思わぬロジックで犯人の特性を導き出す推理は、最初期のたとえば『フランス白粉』『オランダ靴』を思わせます。特にマッチの本数から、当然付随すべきあるものの存在について考察する推理には感動を覚えました。タイトルがまえがきで触れられた『スウェーデン燐寸の謎』でもまったくおかしくないほど上質の本格推理小説であり、国名シリーズが気に入った、という人に是非お勧めしたいです。

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青い車さん
ひとこと
正面からロジックで切り込むタイプの作品を愛好しています。ただ、横山秀夫『半落ち』なども夢中になったので、面白ければ何でも読む、というのが本当かもしれません。
雰囲気重視の『悪魔が来りて笛を吹く』『僧正...
好きな作家
エラリー・クイーン、アガサ・クリスティー、D・M・ディヴァイン、横溝正史、泡坂妻夫...
採点傾向
平均点: 6.93点   採点数: 483件
採点の多い作家(TOP10)
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク(46)
アガサ・クリスティー(39)
エラリイ・クイーン(33)
有栖川有栖(32)
法月綸太郎(22)
米澤穂信(17)
綾辻行人(13)
S・S・ヴァン・ダイン(12)
カーター・ディクスン(12)
麻耶雄嵩(12)