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パメルさん
平均点: 6.12点 書評数: 692件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.152 5点 眠りの森- 東野圭吾 2017/06/06 01:22
華やかなイメージのあるバレエの世界だが現実はプロになってもお金を稼ぐのが難しく食事制限での体型維持を強いられるなど厳しくさらに閉鎖的な人間関係が当たり前というのを思い知らされる
そのバレエ団を舞台にした殺人事件
正当防衛問題を含んだ事件とその後に起きた殺人事件との繋がりは何か?と興味をそそられる
そしてバレエに情熱を注ぐ者たちゆえの悩みや憎しみがある真相に繋がっていく
後半に明かされる真相は美しくそして切ない
また余韻が残るラストも素晴らしい
ただミステリとしては淡々としていて盛り上がりに欠けるしトリックやフーダニットで驚かされるという事は難しい点が残念

No.151 6点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2017/06/01 13:09
この作品はなんといっても消えた足跡トリックだと思うがそれを証明するためにいくつかの手掛かりをロジカルに組み立てていくさまが鮮やかで謎解きの面白さを堪能出来る
作者は海外のある作品に良く似たものがあると気付くが同じ足跡トリックでもルーツが異なるため大丈夫だと確信が持てたため発表に踏み切ったそうです
ただ犯人の行動は無理があるしリスクが大きすぎると感じてしまった
トリックよりロジックが好きという方にはお薦め出来ます

No.150 5点 火の接吻- 戸川昌子 2017/05/27 01:18
何が起きているのか何が起きようとしているのかが見えずらく幻想的で奇妙な作風が特徴的な作者
この作品も「消防士」「放火魔」「刑事」の三視点で微妙に繋がり微妙に食い違うため
現実と妄想の区別が定かでは無いまま進行していき少々読みずらさを感じる
人間関係の解明と謎の解明とが一体となった心理サスペンスで物語は二転三転する展開で楽しめる
ただし伏線は弱いし何故●●●ンなのか何故●●●男なのかの謎は残ったままなところが不満

No.149 6点 なんでも屋大蔵でございます- 岡嶋二人 2017/05/22 13:31
五編からなる短編集で「日常の謎」の先駆けとも言われている作品
法を犯す事で無ければ依頼があれば何でも引き受けるというなんでも屋さんが難事件を次々と解決していく
主人公が飄々としているため全体的にホンワカした雰囲気が漂っており軽い感じがする点は好みから外れているが肝心の部分は細部まで計算された本格ミステリに仕上がっておりフーダニットとして十分楽しめる

No.148 4点 二の悲劇- 法月綸太郎 2017/05/17 01:11
ノスタルジックな恋愛小説をミステリ風味に仕立ててみましたというような感じの作品
内向的な乙女の様々な葛藤がもどかしく語られた純愛小説でどうも肌に合わなかった
ある真相は意外性があるがトリックやフーダニットで楽しむ事は難しいと思う
二人称叙述という変わった手法を用いており終盤に至るための語りとしては非常に有効的だったという点は評価出来る

No.147 6点 密室20秒の謎- 日下圭介 2017/05/12 12:55
マンションのエレベーターを舞台に連続殺人事件が発生する
犠牲者はいずれも一人でエレベーターに乗りノンストップで一階に着くまでに殺されるという不可解な状況
マンションの住民は一癖も二癖もある人ばかりで興味をそそられる
ただコンパクトな作品でありながらやたらと登場人物が多いため(警官を除いて30人ぐらい)名前と人物像が一致しなくなり混乱してくる
途中で諦め初めから読み返しメモする事にしました
些細な事件など散りばめられた伏線の回収も上手いしフーダニットとして十分楽しめる
しかし密室トリックは好みから外れているし(西澤保彦氏のある作品に似ている感じ)全体に流れているヘンテコなユーモア感覚がどうも肌に合わなかった

No.146 7点 奇面館の殺人- 綾辻行人 2017/05/08 13:56
あるインタビューで作者はこの作品の着想のきっかけは楳図かずお氏のホラー漫画「笑い仮面」と答えていた
ただこの作品はホラー要素は無くどちらかと言えば初期の館シリーズに近いと思います
人の入れ替えはあったのか?そして妖しく揺らめく”もう一人の自分”の影など様々な想像を掻き立ててくれ惹きつけられる
探偵役は思いも寄らぬ仮説などあらゆる可能性を提示しそれらを一つづつ消し込んでいき真相に近づいていく推理の過程が楽しめる
ハウダニットとしては中村青司設計ならではの館の秘密を堪能できるしフーダニット・ホワイダニットにしても最後の最後まで楽しませてくれる
ただ皆さんが不満として指摘されている点は同感なところもあります

No.145 6点 黒白の囮- 高木彬光 2017/04/30 00:59
捜査陣を攪乱するためにあの手この手を使って周到に練られた計画殺人
様々な確執や人間関係が露になっていき全ての人間が怪しく思えてくる
読者への挑戦も盛り込まれておりフーダニットとしても意外性があるし二転三転する展開力で飽きさせません
冤罪者を一人も出さないをモットーとする「グズ茂」こと近松検事も味があって良い
ただしあるトリックは特殊な知識が必要だしアリバイの崩れ方が偶然以外の何物でも無い所が不満

No.144 8点 エコール・ド・パリ殺人事件- 深水黎一郎 2017/04/23 01:05
密室殺人の謎を解く鍵は被害者自身が執筆した「呪われた芸術家たち」の中に隠されているという構成が見事
まさに芸術と本格ミステリの融合で個性豊かなキャラも楽しめる
散りばめられた伏線を一気に回収し終盤に明かされる真相は衝撃度が高い
芸術家たちの蘊蓄や作品の特徴・数々のエピソードが語られ芸術の興味を抱かせてくれる

No.143 6点 網走発遙かなり- 島田荘司 2017/04/18 01:03
ある人物の半生が各編の所々から浮かび上がる仕組みになっている連作短編集
幻想的な雰囲気を漂わせながらそれぞれの章で繋がれてきた謎が最終章で収束し真相が明らかになる
ストーリー自体は面白いし上手くまとまっているがミステリとして起伏が少なく謎自体も小さいため物足りなさを感じてしまった

No.142 7点 爆殺予告- 草野唯雄 2017/04/13 01:03
会社社長の息子が誘拐され身代金を渡さなければ爆殺するという脅迫電話が・・・
しかし身代金を手に入れた犯人は逃走中に交通事故で死亡してしまう
時限爆弾を仕掛けられた子供の運命はどうなるのか?
また予想外な方向へのスリリングな展開と惹きつけられていく
終盤に明かされる真相に驚かされることは間違いないでしょう
サスペンス調に物語は推移しながらも仕掛けられた伏線やミスディレクションも見事で本格ミステリの技巧が凝らされている

No.141 7点 求婚の密室- 笹沢左保 2017/04/08 01:02
使い古されたトリックの焼き直しや安易な機械トリックに飽き飽きしていた作者が初めて密室トリックに挑戦した意欲作
策謀と駆け引きが張り巡らされて陰湿で悲劇的な人間模様が描かれている
ダイイングメッセージに今一つ納得出来ないがフーダニットとして意外性もあるしある人物が事件に関与していたという真相はこれぞ盲点といった感じで驚かされた
ここまで上手くいくかなという疑問もあるが密室トリックも独創的で良いアイデアだと思う

No.140 6点 北アルプス殺人組曲- 長井彬 2017/04/03 13:22
世間一般にあまり知られていない(勝手な想像です)この作品はタイトルでかなり損していると思う
巷に溢れているお手軽なトラベルミステリではありません
作者の趣味を活かした山岳ミステリで神々しく美しい北アルプスを舞台に禍々しい殺人の意図が隠された推理とロマンが一体化した本格ミステリであり登山が好きな方はより楽しめると思います
ただある人物の行動が怪しすぎて犯人が予測出来てしまった点は残念

No.139 5点 鬼畜- 松本清張 2017/03/29 12:38
七編からなる短編集
前半四編が凡作で後半三編が佳作という印象
「甲府在番」は左遷に等しい甲府勤務を自ら望んだ男がある計画が思惑通りにいかず罠に嵌っていく恐怖が描かれている
時代物ミステリで真相が明らかになるにつれてホラー風に変わっていくところは読み応え十分
表題作の「鬼畜」は良心に苦しみながらも徐々に深みにはまっていく心理を丁寧に描き人間の弱さと恐ろしさを思い知らせてくれる作品

No.138 7点 刺青殺人事件- 高木彬光 2017/03/25 01:01
禁断の三すくみ「大蛇丸」「地雷也」「綱手姫」の刺青を彫られた三兄妹の運命は?
密室状態でのバラバラ死体が胴体だけが持ち去られたのは何故か?
事件の陰に暗躍する謎の女の正体は?
とミステリとしてワクワクさせてくれる要素が満載で惹きつけられる
密室殺人事件を隠れ蓑に使った「心理の密室」という二段構えの仕掛けはお見事
残念な点は犯人が早い段階で予測出来てしまい意外性も無いところ

No.137 9点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2017/03/20 01:15
消費税12円を請求された事に腹を立てナイフで殺人を犯したとされた老人
この裏には何かあると老人の過去を洗い出し数十年前の奇怪な殺人事件に辿り着く
・走行中の列車のトイレでピエロが拳銃自殺し30秒後に焼失
・列車飛び込み自殺した死体が歩き出す
・赤い目をした巨人による列車転覆事故
このような怪奇現象的なトリック(トリックでは無いものもあるが)も良く出来ていると思うしこれらの現象を一つ一つ解明しつつ犯人は変わりようが無い中動機の真相を追及していく吉敷刑事のカッコ良さが堪能出来る
また「冤罪」という問題も考えさせられる作品

No.136 5点 宿命- 東野圭吾 2017/03/15 12:23
殺人事件は発生するがフーダニット・ハウダニットに関してはこれと言って面白みは感じられない
この作品のキモはホワイダニットと登場人物の関係性
過去の秘密を暴き利用しようとする者と頑なに守ろうとする者との闘い
ミステリ要素は少ないのでそれを期待していると肩透かしを食らうかもしれない
運命のイタズラとはこういう事を言うんだろうと読後には脱力感を覚える

No.135 4点 女相続人- 草野唯雄 2017/03/11 01:09
多額の遺産相続を巡り金に目が眩んだ欲深い人間達があれこれと悪知恵を絞って横取りしようとするさまが楽しめる
半倒叙形式で語られるサスペンスでフーダニットとしては意外性があり驚かされる
ただ現場検証の杜撰さを含め刑事たちの無能さが酷く所々に粗さが目立つ
よくぞこの状況で●●と判断したものだと思わず笑ってしまった
またある人物の証言も呆れて物が言えない状態
これらのような点からも今一つ集中出来ずのめり込めなかった

No.134 6点 リア王密室に死す- 梶龍雄 2017/03/06 01:17
分類的には青春ミステリに属すると思う
多少は男女の恋愛が描かれているが甘ったるさはなく全体的に硬派なイメージ
密室状態での殺人事件はトリックやプロットが充分に練られており本格ミステリとして楽しめる
ただフーダニットとしては真相が見えやすいし動機が釈然としないため読後感はどうもスッキリしない

No.133 9点 白昼の死角- 高木彬光 2017/02/27 01:07
戦後の混乱期で不安定な日本経済の中スケールの大きな手形詐欺を行った天才的悪党の物語
詐欺の手口は鮮やかで舞台設定もよく考えられている
経済事犯では首謀者だったとまでは推定されるが証拠を掴ませない
捜査を進めてもどんな法律を適用しようと思っても巧みに逃げ切る
法律の抜け道・盲点を発見する点は天才的で魅力的
結局は逮捕されてしまうのだが主人公が刑事に最後に言い放った言葉も負けん気が溢れていてカッコ良ささえ感じた
悪い奴だとは思いながらも読後は爽快感さえ残る

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パメルさん
ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.12点   採点数: 692件
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岡嶋二人(20)
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米澤穂信(18)
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