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パメルさん
平均点: 6.12点 書評数: 708件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.168 5点 死体を買う男- 歌野晶午 2017/09/04 01:15
松の木で首を吊って自殺している人物を発見するが自殺に疑問を抱いていた江戸川乱歩と萩原朔太郎が真相を追及していくという探偵小説「白骨鬼」の内容が現実の世界の事件に繋がっていくという構成
乱歩風の文体で描かれ江戸川乱歩・萩原朔太郎の推理合戦は楽しませてくれたがミステリとしての驚きは残念ながら小さい

No.167 8点 造花の蜜- 連城三紀彦 2017/08/29 01:01
嘘なのか?真実なのか?敵なのか?味方なのか?
複雑な人間関係が露になる中犯人は身代金を減額してきたりして意味がわからなくなってくる
犯人の真の目的は何か?この犯罪の裏に隠されたものは何か?と先の読めない展開に読み進めていっても頭の中はクエッションだらけになる
また大胆かつ緻密な劇場型犯罪にアッと驚かされるしどんでん返しの連続で翻弄される快感が残る
最後の最後まで気の抜けない展開に楽しめました

No.166 4点 親しい友人たち- 山川方夫 2017/08/23 01:08
「三田文学」の編集に携わり自作5編が芥川賞の候補作となるなど純文学に大きな足跡を残した作者のショートショート集
早世の天才の才気を示す傑作選と紹介されているが星新一氏のような切れ味鋭い作品は少ないためそれを期待していると肩透かしを食らうことになるでしょう
全体的な出来からするとこの点数だがSFありホラーありとジャンルも多岐にわたっている
奇妙な味わいを楽しめる作品や人生の根本的な在り方を探求する哲学的な作品
そして独特な感性が光る作品があり埋もれてしまうには勿体ない作品集と言えるでしょう

No.165 7点 殺人方程式- 綾辻行人 2017/08/17 13:15
犯人は何のために死体の首と腕を切断したのかという謎の理由に必然性があり説得力もある
また大掛かりな物理的トリックも実現性に関し身体の部位の重さまで慎重に調べられ図で示しながら論理的に解説されている点が好印象
またなぜ死体を移動させなくてはならなかったのかのホワイダニットや意外性のある犯人の正体のフーダニットも十分に楽しめる
何といっても一番驚いたのはこのサイトでの平均点の低さです

No.164 6点 盲目の鴉- 土屋隆夫 2017/08/09 01:13
長編では「妻に捧げる犯罪」から8年ぶりに発表された作品・・・あまりにも間をあけすぎでしょう(寡作にも程があるが好きな作家の一人なので許します)
田中英光・大手拓次など文学者たちの詩を紹介しながら文学的ロマンと謎解きの面白さを巧みに融合している
行方不明事件と不可解な殺人事件の二つを結ぶ鴉の謎が興味をそそられる
男?女?怨恨?憎悪?復讐?と動機ははっきりしないし犯人像さえも浮かんでこない展開で楽しませてくれる
ただ毒殺トリックは成功するとは思う反面たわいもないトリックだったのが残念(期待しすぎた)

No.163 6点 ノッキンオン・ロックドドア- 青崎有吾 2017/08/03 13:33
七編からなる短編集
「不可能」担当と「不可解」担当の二人が主人公でそれぞれ得意分野を活かし補い合いながら真相に迫り事件を解決していく
それは無いだろうという部分もあるがそれ以外はトリックのアイデアには唸らされるし新しさを感じる
特に「髪の短くなった死体」はどうしてこのような状況が生まれたかを現場に残された手掛かりから再現してみせ犯人を特定するところなどパズラーの傑作といえるでしょう
このシリーズは続くようなので次回作も非常に楽しみだ

No.162 7点 満願- 米澤穂信 2017/07/29 01:04
切りつけてきた男を交番勤務の巡査が射殺した事件の真相に迫る「夜警」
いわくつきの温泉宿で拾った遺書の謎を解く「死人宿」など一作ごとに舞台や設定は異なるがいずれも奇妙で不可解な出来事とその真相を解くロジックが丁寧に書き込まれた六つの短編が収録されている
表題作「満願」は周到な伏線がしかれたうえで驚きの真相が最後に明かされる
「柘榴」・「万灯」は生身の人間が持つ心理をしっかり描きつつ思いも寄らない展開を用意している
個人的には「関守」が一番好みだが全体的に上質で読み応えのある作品が揃った一冊

No.161 6点 夜歩く- 横溝正史 2017/07/24 13:24
旧家で発生する連続首無し殺人事件に複雑な血縁関係と男女関係が入り乱れ真相をなかなか掴ませてもらえない
その登場人物も夢遊病者・酒乱で刀を振り回す老人・淫蕩な未亡人・佝僂(「くる」せむしの意)など個性派揃いで申し分ない
またケレン味に満ちた道具立ても揃っておりワクワクさせてくれる要素が満載
そして誰もが開けられるはずのない金庫に保管していた刀が凶器として使われていたという不可解さに惹きつけられる
ただ死亡推定時刻の解釈には不満が残るし佝僂に関しては身体的差別用語を文字面だけ残し読み方も意味も記述していないのは不親切に感じる

No.160 5点 イニシエーションラブ- 乾くるみ 2017/07/18 13:49
1980年代後半の静岡と東京を舞台に若い男女の恋愛を描く作品。
「クリスマスイブのシティーホテル」「ソフトスーツ」「男女七人夏物語」・・・と当時の世相を思い起こさせるキーワードが散りばめられ携帯電話が無い時代状況が恋が始まるじれったさやもどかしさを加速する
若さゆえのまっすぐさ・愚かさ・残酷さもストレートに描き引き込まれる
「これは伏線か?」と思う部分はあるが「次はどうなるんだ?」とページをめくるうちに疑問は薄れてしまう
読んでいる最中は素直でほろ苦い恋愛小説にしか思えない
最後の数行に差し掛かるまでは・・・
それにしてもあれだけ「必ず2回読みたくなる」と煽られ気をつけて読んだのにまんまと術中にはまってしまった
「再読のお供に」と題された解説・80年代の風俗を紹介した用語集もしゃれている
ただ上手く騙された感はあるがミステリとしてはどうかと思う

No.159 5点 アムステルダム運河殺人事件- 松本清張 2017/07/13 23:43
1969年の中編2編を収録
表題作は実際に起きた事件をもとに作者が再構成し推理を加えた作品
被害者は行方不明の被害者なのかと前半はドキュメンタリー調に事件を紹介している
後半になると主人公と医者の二人組で現地で迷宮入り事件を再調査していく展開
「死体が首と手首を切断されたのは何故か」の意表を突く真相には驚かされる
ただ作品の性質上仕方がないといえば仕方ないのだが盛り上がりに欠ける点は残念
セント・アンドリュースの事件はアリバイ工作には鮎川哲也氏の前例あるトリックと江戸川乱歩氏ばりのトリックが融合している

No.158 6点 黒い白鳥- 鮎川哲也 2017/07/08 23:41
前半は疑わしい人物を多く配置し第二第三の事件が発生しフーダニットとして興味を抱かせてくれる
また労働争議と新興宗教という社会的題材が扱われておりその状況がミスディレクションを容易にしている点が実に巧妙
ただ中盤になると容疑者は一人に絞られメインは時刻表トリックなどアリバイ崩しとなっていくためこの時点で個人的にはトーンダウンとなってしまった

No.157 7点 殺人ドライブ・ロード- 井沢元彦 2017/07/04 01:12
第一部では犯人による殺人計画の遂行課程そして第二部ではそのルートにそって探偵役が捜査し終幕にすべての事柄が暴かれるという最後まで息もつかせないようなテンポで進む展開に惹きつけられる
トリック自体はある程度地理に詳しい方ならすぐにピンとくると思うし少し無理があるため感心は出来ない
ただ冒頭のある部分と序盤に描かれた事実が後半に大きな意味を持ってくるという構成力は素晴らしい
これですべて決着がついたと思わせておいての最後のどんでん返しは驚かされるしフーダニット・ホワイダニットとも十分楽しめる

No.156 6点 轢き逃げ- 佐野洋 2017/06/27 01:02
小紙文化面に掲載された追悼文で「骨法正しい謎解きミステリを現実社会と緊密に結びつける作風を松本清張氏より引き継ぎ発展させた第一人者は佐野洋氏にほかなりません」と宮部みゆき氏が語っている
この作品も思いも寄らない事件により被害者・加害者またその周りの人物の人生が変容しそれによりフーダニットとしての面白さが増していく
本格ミステリであると同時にサスペンスでもあり新聞記者出身らしい社会派の視点も備えており現代社会の深淵をとらえた感性が光っている

No.155 7点 赤い帆船(クルーザー)- 西村京太郎 2017/06/22 01:07
スケールの大きな企みが仕掛けられた海洋ミステリ
毒殺された被害者には彼を恨んでいた人物が数多くいた
ただ真犯人は早い段階で想像がつくと思う
しかしアリバイ工作はレベルが高く十津川警部補もいくつかの方法を思いつくが容易にアリバイは崩れず犯人の仕掛けた罠に嵌っていく展開
脇役の使い方も上手く被害者が犯人に●●●●●●を●●●●●●というのも面白い
余談ですが松本清張氏の短編「火と汐」のネタバレがあるので要注意

No.154 5点 ジークフリートの剣- 深水黎一郎 2017/06/17 01:09
怪しげな占い師は主人公には不気味な宣告をしそして婚約者には非情にも死の宣告をする
この後この言葉がどう繋がっていくのだろうと惹きつけられる
ただ婚約者は呆気なく死亡してしまうし最後の最後まで全くと言っていい程事件は発生しない
舞台の閉幕が近づいていく中オペラの蘊蓄とナンパな主人公が女性を口説き落とすという展開で物足りなさを感じる
ミステリとしての魅力は少なく極論を言えば序章と終章で成立してしまうストーリー
ラストの数ページでの構成は見事で結末も美しく巧さは感じられたが面白いとは思わなかった

No.153 6点 房総・武蔵野殺人ライン- 深谷忠記 2017/06/12 19:30
タイトルからするとトラベルミステリのように思えるが実は本格的な法廷ミステリ
それにしてもこの作者は●●・●●殺人ラインという安易なタイトルが多いですね
「もう少し考えれば」とお節介を焼きたくなる
旅情味は無くそしてアリバイ崩しやトリックで楽しめるわけでも無く地味な印象は否めない
事件の様相が新証言により次から次へと変化していく展開で巧みなミスリードにより真犯人に中々たどり着けないように仕組まれている
ある人物の関係性が突然露になり推理する余地が無い点は残念だが意外性には驚かされる

No.152 5点 眠りの森- 東野圭吾 2017/06/06 01:22
華やかなイメージのあるバレエの世界だが現実はプロになってもお金を稼ぐのが難しく食事制限での体型維持を強いられるなど厳しくさらに閉鎖的な人間関係が当たり前というのを思い知らされる
そのバレエ団を舞台にした殺人事件
正当防衛問題を含んだ事件とその後に起きた殺人事件との繋がりは何か?と興味をそそられる
そしてバレエに情熱を注ぐ者たちゆえの悩みや憎しみがある真相に繋がっていく
後半に明かされる真相は美しくそして切ない
また余韻が残るラストも素晴らしい
ただミステリとしては淡々としていて盛り上がりに欠けるしトリックやフーダニットで驚かされるという事は難しい点が残念

No.151 6点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2017/06/01 13:09
この作品はなんといっても消えた足跡トリックだと思うがそれを証明するためにいくつかの手掛かりをロジカルに組み立てていくさまが鮮やかで謎解きの面白さを堪能出来る
作者は海外のある作品に良く似たものがあると気付くが同じ足跡トリックでもルーツが異なるため大丈夫だと確信が持てたため発表に踏み切ったそうです
ただ犯人の行動は無理があるしリスクが大きすぎると感じてしまった
トリックよりロジックが好きという方にはお薦め出来ます

No.150 5点 火の接吻- 戸川昌子 2017/05/27 01:18
何が起きているのか何が起きようとしているのかが見えずらく幻想的で奇妙な作風が特徴的な作者
この作品も「消防士」「放火魔」「刑事」の三視点で微妙に繋がり微妙に食い違うため
現実と妄想の区別が定かでは無いまま進行していき少々読みずらさを感じる
人間関係の解明と謎の解明とが一体となった心理サスペンスで物語は二転三転する展開で楽しめる
ただし伏線は弱いし何故●●●ンなのか何故●●●男なのかの謎は残ったままなところが不満

No.149 6点 なんでも屋大蔵でございます- 岡嶋二人 2017/05/22 13:31
五編からなる短編集で「日常の謎」の先駆けとも言われている作品
法を犯す事で無ければ依頼があれば何でも引き受けるというなんでも屋さんが難事件を次々と解決していく
主人公が飄々としているため全体的にホンワカした雰囲気が漂っており軽い感じがする点は好みから外れているが肝心の部分は細部まで計算された本格ミステリに仕上がっておりフーダニットとして十分楽しめる

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ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.12点   採点数: 708件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(32)
岡嶋二人(21)
有栖川有栖(19)
綾辻行人(18)
米澤穂信(18)
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