皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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パメルさん |
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平均点: 6.12点 | 書評数: 656件 |
No.216 | 7点 | 細い赤い糸- 飛鳥高 | 2018/08/03 16:22 |
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第15回日本探偵作家クラブ賞受賞作。
一見、何の繋がりもないと思われる4人が次々に殺される。手口は一緒で同一犯と思われるが、手掛かりは現場に残された赤い糸のみ。 なぜ、この4人が殺されなければならなかったのか?この4人には何か繋がりがあるのか?現場に残した赤い糸の犯人の意図とは?と惹きつけられる要素が多く楽しめる。 丁寧な文章と小説全体に仕掛けがあるような構成は素晴らしいし、緊迫感がある雰囲気も好み。 被害者に関わる4つのエピソードを描き、残り数ページで4つの事件をまとめあげるプロットは良く出来ている。結末は後味が悪く、好みは分かれそうですがミッシングリンクものの作品として隠れた名作だと思う。 |
No.215 | 5点 | 超・殺人事件―推理作家の苦悩- 東野圭吾 | 2018/07/25 01:25 |
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ユーモアと皮肉がたっぷりの8編からなる短編集。
かなりデフォルメされているとは思いながらも、出版業界の舞台裏や推理小説作家の苦悩を垣間見たような気分になれて嬉しい。 それぞれ面白いが、「超長編小説殺人事件」は馬鹿馬鹿しさを受け入れることができれば、かなり笑えると思います。 ただ、笑いを織り交ぜながらも出版業界の窮乏に対する強い危機感と使命感を示していて違った意味で興味深い。 ミステリとしての面白さは少ないため、点数はこの程度になります。 |
No.214 | 4点 | 扉は閉ざされたまま- 石持浅海 | 2018/07/17 01:18 |
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倒叙形式の作品で冒頭数ページで、すでに犯人と殺害方法は明らかにされている。今後、どのような展開で楽しませてくれるのかと期待したのだが・・・。
このような作品の場合、フーダニット、ハウダニットに関しては犠牲にしているのだから、例えばじりじりと犯人を追い詰める様子とか、精緻なロジックで偽装工作を暴いていくとかが、面白さを左右するのだと思うが(まあ、設定上難しいと思いながらも)、手に汗握る緊迫感は伝わらないし、探偵役の推理のロジックも「普通の人ならば・・・だろう」という類ばかりで行動心理に甘さを感じる。トリックもなあ・・・。 |
No.213 | 6点 | かがみの孤城- 辻村深月 | 2018/07/09 14:07 |
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2018年本屋大賞受賞作。
ミステリ要素は多少あるが、これはファンタジーの世界。ミステリとして期待して読むと、肩透かしを食らうかもしれません。 それぞれが事情を抱え、学校にいけない少年少女たちが、謎めいた城で不思議な体験をする。会話が多くのんびりした感じで進行する点は好みでは無いし、ある真相のヒントは、会話の中にあからさまに出てきて(違和感ありすぎ)、想像できてしまうし、全くその通りだったため、がっかりした。 しかし、それだけでは終わらないのが、この作品の良いところ。残り20ページでもう一つの真相が明らかになり、涙が溢れ止まらない。(久しぶりに本を読んで泣いた) リーダビリティが高く、万人向けといえる。特に中高生には読んでいただきたい。 |
No.212 | 8点 | 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 | 2018/06/29 13:50 |
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濃い霧、鎧武者の亡霊、夜泣き石、心霊写真・・・伝説などを事件に絡ませて、胡散臭い雰囲気を漂わせながら、ストーリーは進み惹きつけられる。(雰囲気はとても好み)
事件の謎を解けば、摩訶不思議な現象の謎も解けるという構図になっている。犯人には目星がつき、フーダニットとしての楽しみは味わえないが、ハウダニットとして独創的で豪快なトリックが味わえる。(バカトリックですが)また、吉敷刑事の人間味あふれる魅力が存分に出ていて嬉しい。 建物を上から見た図から、トリックが何となく想像できたが、実際はそれを遥か上を超えていた。トリックが物理的に可能と証明できれば、9点いや10点でもいいです。 |
No.211 | 7点 | 硝子のハンマー- 貴志祐介 | 2018/06/21 01:12 |
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この作者は、代表作の「黒い家」・「クリムゾンの迷宮」などホラー作家のイメージがある。しかし、この作品はガチガチの本格もの。(詳細な平面図も嬉しい)
暗証番号が必要なエレベーターに監視カメラ、非常階段はオートロック、窓は防弾ガラスと最新鋭の厳重なセキュリティーシステムの中での密室殺人。 推理すればするほど、不可能さが強まっていく。建物の構造を踏まえ、豊富な防犯知識で、ありとあらゆる仮説を立て検討されていく討論が読みどころでしょう。 前例のない斬新なトリックは素晴らしいが、専門知識が無いと推理が難しい点が残念。 |
No.210 | 5点 | 水族館の殺人- 青崎有吾 | 2018/06/10 01:08 |
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何気ない小道具や手掛かりから、消去法で徐々に犯人を絞り込んでいき、犯人を特定する丁寧な推理は読み応えあり。アリバイ崩しがメインではあるが、ロジック好きには楽しめると思います。
しかし、不満な点も多い。動機には全く納得できないし、違った方法で解決できたはず。さらに、序盤の卓球大会の描写はなんだったの?何かしら事件に絡んでくるのかと思いながら、読み進めていったが、全く関係ないなんて酷すぎる。探偵役のキャラクターも、変なノリだしどうも気に入らない。 |
No.209 | 7点 | 三毛猫ホームズの推理- 赤川次郎 | 2018/05/31 01:16 |
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数多くの作品を輩出している量産型作家でありながら、初期作品は良作が多いというのは、誰もが認めるところだと思う。
この作品も、猫が事件の手掛かりを主人公に導くなど、ユーモアの中に多くの謎を絡ませての伏線回収はお見事で、スケールの大きな独創的な密室トリックに驚かされる。 また、主人公の恋の行方や妹の不審な行動に疑心暗鬼になるなど、人間ドラマとしても読み応えがある。 世評では「マリオネットの罠」の方が評価が高いようだが、個人的にはこちらの方が好み。 |
No.208 | 8点 | 聯愁殺- 西澤保彦 | 2018/05/23 01:12 |
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ミステリ作家・私立探偵・犯罪心理学者が集まる推理集団「恋謎会」が、連続無差別殺人の唯一の生き残りの梢絵をゲストに呼び推理合戦をする。
ほぼ全編に渡り、推理合戦が繰り広げられるが、飽きることは無かった。 内容的には古典的な多重解決ものですが、それだけでは終わらない。正統派と思わせておいて、最後には衝撃的などんでん返しが待っている。 大胆なミスディレクションと構図の技巧が光る作品。 再読をおすすめしたい作品のひとつで、初読時とは違った印象を持つと思います。 |
No.207 | 6点 | 十三番目の陪審員- 芦辺拓 | 2018/05/15 01:15 |
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この作品は、裁判員制度が施工される十年以上前、「もし日本に陪審員制度が存在したら・・・」という発想から生まれたらしい。
弁護側と検察側の今まで経験の無い陪審員制度に四苦八苦しながら、心理的な駆け引きが繰り広げられ、惹きつけられる。 そして、結審により驚愕の真実が明らかになる。法廷ミステリでありながら、本格ミステリとしても楽しめる、一粒で二度おいしい・・・そんな作品。(古っ) |
No.206 | 6点 | 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 | 2018/05/09 01:15 |
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パズル・ロジックを重きをおいた作品ばかりで、さすが短編の名手と言われているだけあって切れ味が鋭い。
その中でも一つの事件からガラリと反転する「背信の交点」と語りの仕掛けとトリックが噛み合った「身投げ女のブルース」が好み。 ただ、登場人物に魅力が欠ける点と、ストーリー自体が地味な作品が多いため、パズル好き以外にはお勧めできない。 |
No.205 | 7点 | マツリカ・マトリョシカ- 相沢沙呼 | 2018/05/02 15:11 |
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シリーズものと知らず読んでしまった。前2作を読んでから読めば、さらに楽しめたと思う。
過去の密室事件と現在の密室事件の謎を高校生同士が推理合戦する学園ミステリですが、殺人が起きているわけではない。殺トルソーという変わった設定。 二転三転する多重解決ものとしての面白さに、切れ味鋭いロジックから明かされるトリックと犯人の暴き方も実に鮮やか。犯人の動機も青春してていい感じ。青春ミステリが好きな方は、十分楽しめると思います。 余談ですが、「トルソー」って聞き慣れない言葉だったので調べてみましたが、服をディスプレイするときに使う、頭・腕・脚がないマネキンみたいなものらしいです。 |
No.204 | 5点 | 火の虚像- 笹沢左保 | 2018/04/25 01:14 |
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コンパクトにまとめられた長編ながら、何気ない中に伏線を張り緻密に考えられた構成は好印象。
ただ、登場人物は少ない事もありフーダニットの楽しさは味わえないし、ハウダニットにしても・・・。自殺に見せかけた2つの殺人はどのように行われたのかという謎が、被害者の心理がもたらす影響と犯人の腹づもりが噛み合いトリックが成立するのだが、この真相はかなり実現性に乏しく好みではない。最後に明かされるもう一つの真実は、ひねりが効いていて良かったと思う分残念。 |
No.203 | 6点 | ひとり芝居- 佐野洋 | 2018/04/18 01:28 |
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212ページという短めの長編ですが、コンパクトながら複雑かつ意味ありげなことが重なるなど、構成全体が真犯人を隠すための仕掛けとして機能しており、フーダニットとして十分楽しめる。
緻密に計算された伏線や、登場人物ひとりひとりの心理描写も丁寧で好感が持てる。 ただ関係者同士が疑心暗鬼になっていく過程で、詰めの甘さを感じた点に不満が残る。 |
No.202 | 3点 | 浮気妻は名探偵- 梶龍雄 | 2018/04/09 12:57 |
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推理小説に少しだけ官能小説風の味付けをした感じの8編からなる連作短編集。
推理小説としてこういう点に不満があるとか指摘する以前に、小説としてストーリーが面白くない。これはもう致命的。 夫の単身赴任で暇を持て余している主人公の女性が、刑事と浮気をしながら、様々な事件に顔を出し推理するという、不道徳にして愉快な設定。面白いと思ったのは、この設定だけだった。 余談ですが、この作者の一部の作品はとても高い価格で取引されている。以前、ヤフオクで「龍神池の小さな死体」が8000円で落札されたのを見たことがある。amazonでは、今現在9999円で出品されている。この作品は読んでみたいのだが、この価格では手が出ないし、かといって自分の住んでいる周辺地域では、図書館にも置いていないのが残念だ。復刊を望む作品の一つです。 |
No.201 | 6点 | 殉教カテリナ車輪- 飛鳥部勝則 | 2018/04/04 01:08 |
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二重密室殺人の真相が、謎の自殺を遂げた無名の画家によって描かれた2枚の絵画に込められていたのかと、絵画から事件の背景を読み解いていこう(図像解消学)という着手方法が新鮮。また、この変態的な絵が作者自身が描いていたというから驚き。
推理合戦も楽しいし、読者を真相から遠ざけるミスリードも巧妙でお見事。ただ、密室トリックは偶然の産物と思われる点が残念。 |
No.200 | 7点 | ジェリーフィッシュは凍らない- 市川憂人 | 2018/03/27 22:18 |
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21世紀の「そして誰もいなくなった」という謳い文句に惹かれて読んでみました。
登場人物は外国人ばかり(カタカナ名前は覚えるのが苦手)だし、物理学、化学など理系ミステリなのかと思わせるような記述があり、読むのに苦労するかなと思ったが、専門的な知識は必要なかったため、楽しむ事が出来ました。 誰が犯人なのかと仮説を立てるが、誰を当てはめてみても矛盾が出てくるし、外部の人間かというとこれまた考えにくい。捜査を進めれば進めるほど、不可解になっていくところが読みどころでしょう。 大胆なトリックが解明した時の衝撃的な真相はミステリとして理想的だし、トリック自体も洗練されており、説得力もあった。 フーダニット、ハウダニットともに十分楽しめた。装丁も幻想的で美しい。 |
No.199 | 6点 | 闇に香る嘘- 下村敦史 | 2018/03/20 22:24 |
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全盲の主人公からの視点で描かれ、ほとんどの人の言動に疑心暗鬼になり、揺れ動く心理状態とスリリングな展開を楽しめる。また、細かく散りばめた伏線を回収していく過程も素晴らしい。(こんなことまで伏線だったのかというのもありました)
視覚障碍者の苦労や中国残留孤児の問題も考えさせられたし、感動的な場面もあった。 ただ、人物造形が今一つだし謎に記憶障害を絡めてくる点は不満が残る。 |
No.198 | 6点 | 体育館の殺人- 青崎有吾 | 2018/03/20 22:24 |
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平成のクイーンと呼ばれるだけあり、現場に残された物証から次々とロジカルに推理し、消去法で犯人を特定する過程は、パズラー好きには十分楽しめると思います。
探偵役が、アニメオタクでノリが軽いためラノベ風な作品に仕上がっている点は好みが分かれるでしょう。(何を言っているのかわからない時があった) 巻末の選評で北村薫氏が、あることを指摘し、可能性をひとつにあっさりと切り捨てるのは乱暴だと述べていたが、この点は同感でした。 |
No.197 | 6点 | マリオネットの罠- 赤川次郎 | 2018/03/07 14:03 |
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ユーモアミステリで有名な作者だが、この作品はそのような特徴は皆無で、ダークな雰囲気を存分に味わうことが出来る。サスペンス調に物語は進行しスピード感があり、意外性のある展開、そして終盤のどんでん返しと楽しませてくれる。
ただし、ある記述にアンフェアさを感じるところが残念。 |