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パメルさん
平均点: 6.13点 書評数: 622件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.202 3点 浮気妻は名探偵- 梶龍雄 2018/04/09 12:57
推理小説に少しだけ官能小説風の味付けをした感じの8編からなる連作短編集。
推理小説としてこういう点に不満があるとか指摘する以前に、小説としてストーリーが面白くない。これはもう致命的。
夫の単身赴任で暇を持て余している主人公の女性が、刑事と浮気をしながら、様々な事件に顔を出し推理するという、不道徳にして愉快な設定。面白いと思ったのは、この設定だけだった。
余談ですが、この作者の一部の作品はとても高い価格で取引されている。以前、ヤフオクで「龍神池の小さな死体」が8000円で落札されたのを見たことがある。amazonでは、今現在9999円で出品されている。この作品は読んでみたいのだが、この価格では手が出ないし、かといって自分の住んでいる周辺地域では、図書館にも置いていないのが残念だ。復刊を望む作品の一つです。

No.201 6点 殉教カテリナ車輪- 飛鳥部勝則 2018/04/04 01:08
二重密室殺人の真相が、謎の自殺を遂げた無名の画家によって描かれた2枚の絵画に込められていたのかと、絵画から事件の背景を読み解いていこう(図像解消学)という着手方法が新鮮。また、この変態的な絵が作者自身が描いていたというから驚き。
推理合戦も楽しいし、読者を真相から遠ざけるミスリードも巧妙でお見事。ただ、密室トリックは偶然の産物と思われる点が残念。

No.200 7点 ジェリーフィッシュは凍らない- 市川憂人 2018/03/27 22:18
21世紀の「そして誰もいなくなった」という謳い文句に惹かれて読んでみました。
登場人物は外国人ばかり(カタカナ名前は覚えるのが苦手)だし、物理学、化学など理系ミステリなのかと思わせるような記述があり、読むのに苦労するかなと思ったが、専門的な知識は必要なかったため、楽しむ事が出来ました。
誰が犯人なのかと仮説を立てるが、誰を当てはめてみても矛盾が出てくるし、外部の人間かというとこれまた考えにくい。捜査を進めれば進めるほど、不可解になっていくところが読みどころでしょう。
大胆なトリックが解明した時の衝撃的な真相はミステリとして理想的だし、トリック自体も洗練されており、説得力もあった。
フーダニット、ハウダニットともに十分楽しめた。装丁も幻想的で美しい。

No.199 6点 闇に香る嘘- 下村敦史 2018/03/20 22:24
全盲の主人公からの視点で描かれ、ほとんどの人の言動に疑心暗鬼になり、揺れ動く心理状態とスリリングな展開を楽しめる。また、細かく散りばめた伏線を回収していく過程も素晴らしい。(こんなことまで伏線だったのかというのもありました)
視覚障碍者の苦労や中国残留孤児の問題も考えさせられたし、感動的な場面もあった。
ただ、人物造形が今一つだし謎に記憶障害を絡めてくる点は不満が残る。

No.198 6点 体育館の殺人- 青崎有吾 2018/03/20 22:24
平成のクイーンと呼ばれるだけあり、現場に残された物証から次々とロジカルに推理し、消去法で犯人を特定する過程は、パズラー好きには十分楽しめると思います。
探偵役が、アニメオタクでノリが軽いためラノベ風な作品に仕上がっている点は好みが分かれるでしょう。(何を言っているのかわからない時があった)
巻末の選評で北村薫氏が、あることを指摘し、可能性をひとつにあっさりと切り捨てるのは乱暴だと述べていたが、この点は同感でした。

No.197 6点 マリオネットの罠- 赤川次郎 2018/03/07 14:03
ユーモアミステリで有名な作者だが、この作品はそのような特徴は皆無で、ダークな雰囲気を存分に味わうことが出来る。サスペンス調に物語は進行しスピード感があり、意外性のある展開、そして終盤のどんでん返しと楽しませてくれる。
ただし、ある記述にアンフェアさを感じるところが残念。

No.196 6点 倒錯の死角−201号室の女−- 折原一 2018/03/01 14:43
「騙されないぞ」と気合を入れて読んでみた。
まず、登場人物が奇人変人ばかりで魅力的。三人の視点で書かれた日記、独白による構成でサスペンス調にストーリーは展開し、最後まで飽きさせないし、真相に辿り着かせない点は見事。ある人物が語ったことに違和感を覚えるが、全体に仕掛けられたトリックは、見えそうで見えてこず最終的には騙されてしまった。
最後に明かされる叙述トリックの真相(オチ)は、人それぞれ意見があると思うが個人的には納得できない。
最後まで楽しませてくれた分、落胆も大きい。

No.195 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2018/02/16 00:59
読者への挑戦を掲げた遊び心たっぷりの叙述トリック短編集。
アンフェアのように思わせておいて、地の文には虚偽の記述は無くフェアに徹している点は好印象。
ただし、「フェラーリは見ていた」は真相は完全に推理不可能だしオチも今一つ。
表題作では「十角館の殺人」でもおなじみの海外の有名作家が登場してくるし、「伊園家の崩壊」では、あの陽気な家族で有名な漫画がパロディ化されホラー色たっぷりで楽しませてくれる。

No.194 7点 時鐘館の殺人- 今邑彩 2018/02/10 00:58
6編からなる短編集。
ガチガチの本格もの、サスペンス、ホラー、SFと様々なジャンルが楽しめる。
展開も二転三転したり、切れ味抜群揃いなのも嬉しい。
冒頭作品は山口雅也氏の、表題作は綾辻行人氏の作品を意識して書かれたのだろうが、単なるパロディに終わっておらず、作者らしい雰囲気に仕上げ緻密なパズルとして組まれており読み応えがあります。

No.193 7点 私という名の変奏曲- 連城三紀彦 2018/02/05 13:22
七人の人間が、自分が犯人と確信しているという状況とはどういう事か?少し考えれば、思いついてしまうトリックだし綱渡り的で感心できないが、文章が流麗なため物語に引き込まれてしまう。
奇妙な状況の裏には、何か途方もない仕掛けがあるのだろうと読み進めるが全体像がなかなか見えてこないような描き方も上手い。
結局、加害者は誰なのかは、最後まで明かされず、それでいて謎があり解決があるというアクロバティックな趣向が巧妙。

No.192 8点 屍人荘の殺人- 今村昌弘 2018/01/29 13:53
「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10国内編」全てで第一位。それに加え鮎川哲也賞まで受賞となるとさすがに読まずにはいられなくなりました。
この作品の設定は、現実離れしているため好き嫌いがはっきりと分かれると思うが、その点を受け入れられる方で、本格ものが好きな方は相当楽しめると思います。
合宿所近くでテロ事件が発生、同時に合宿所でも事件が発生する。この二つの事件に関係性はあるのか?また合宿企画時に届いた脅迫状の真意は?と惹きつけられる。
●●●を最大限に活用した殺人トリックは、今までにない斬新さで唸らされたし、それらを精緻なロジックで暴く推理も素晴らしい。
フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットと最後の最後まで楽しめる。
次回作も期待せずにはいられないと思わせてくれた。

No.191 6点 強き蟻- 松本清張 2018/01/24 01:07
夫の遺産を狙う女と彼女を取り巻く四人の男が入り乱れる物語。
自分の欲望を満たすためには、手段を選ばない女は男たちを手玉に取り、支配していく過程が読みどころ。欲望の激しさ、哀しさを冷たくリアルに見つめ作者らしいピカレスク小説に仕上がっている。
ただ利用される側が逆襲を図るラストは途中で想像出来てしまう点が残念。

No.190 6点 夢幻花- 東野圭吾 2018/01/19 13:42
殺人事件の捜査が難航するなか、黄色いアサガオが事件に何らかの関係性があるのではないかという謎が浮上する。3人の視点で語られており、それぞれの人生模様が物語が進むにつれ複雑に絡み合っていき、謎が謎を呼ぶ展開で惹きつけられる。
リーダビリティも高く最後には、散りばめられていた伏線やエピソードが見事に回収されて鮮やか。
ただドラマ性やミステリとしての真相も強烈な印象を残すことはなかった。

No.189 8点 田沢湖殺人事件- 中町信 2018/01/12 02:00
トラベルミステリっぽい安易なタイトルが残念だが、中身はガチガチの本格もの。
有名な作品群「●●の殺意」と比較しても決して引けを取らないという事で読んでみた。連続する殺人事件に過去の事件を絡ませ、密室トリック、フーダニット、アリバイ崩し、そして作者お得意の叙述トリックなど、本格ミステリの要素がたくさん詰まっていて楽しむことが出来る。
緻密なプロットにストーリー展開も二転三転し、これで決着と思わせてのもう一波乱を持ってくるなど驚かせてくれる。哀愁漂うラストも素晴らしい。

No.188 5点 ディレクターズ・カット- 歌野晶午 2018/01/06 01:20
殺人鬼をテレビのやらせディレクターが追跡する物語。
物語に大きな仕掛けがあり、終盤で驚くことになるのだが、それ以上に面白いのはテレビとネットの関係でしょう。すでに終了しているコンテンツとしてテレビを見ているネット信奉者に対し、巨大なテレビがあるからこそネットが光っているのであり、テレビがなかったらネットの影響など大したことがないことを訴える。
犯人との対話や駆け引きをリアルタイムで中継しようとするテレビマンの独善的苦闘の一部始終が、単にトリッキーな小説としてではなく、社会派ミステリとしての広がりをもつ。テレビに対する大衆の肥大化した欲望と、それにこたえるべくいたずらに刺激を追求するテレビマンの姿が強烈な印象を残す。

No.187 4点 クリスマス・イヴ- 岡嶋二人 2017/12/23 12:49
クリスマスに合わせて読んでみた。まあ、最初からそんな楽しいストーリーではないとわかっていたが、なぜ作者は、このタイトルにしたか全く理解できない。タイトルって大事だと思うんだけど。
昔、13日の金曜日というホラー映画がったが、それに近い感じでオチも大体予想できてしまう。
またその映画程、恐怖感は味わえないし展開力にも不満が残る。
ホラー小説と恋愛小説を合体させたような作品だがどちらも中途半端な感じが否めない。

No.186 5点 魔術師の弟子たち- 井上夢人 2017/12/19 01:22
超能力をめぐるSFサスペンス。
パンデミック(感染症大流行)パニックものとしての緊迫感あふれる場面がいきなり冒頭から描かれ、たちまち物語に引き込まれてしまう。
中盤以降は、まさに魔法使いさながらの超能力を高め自分のものとしていく3人の姿がじっくり描かれると同時に、奇妙で異常な出来事が重なりサスペンスが増していく。どこに着地するのか、全く予想できない。
さらに後半、ウイルスと超能力の謎にまつわる生死をかけた闘いが、時空を超えてスペクタルに展開する。
奇妙なアイデア、いま目の前で起きているかのような緻密でリアルな描写、そしてあっと驚く意外性と良い所ばかり並べてきたが・・・。
謎解きのようなミステリとしての魅力は皆無に等しいし、(SFエンターテインメント作品と割り切れば良いのだが)冗長のため途中で飽きてきてしまう点が残念。(もう少しコンパクトにまとめられたはず)

No.185 7点 叫びと祈り- 梓崎優 2017/12/12 13:58
世界を旅するジャーナリスト・斉木が遭遇した奇妙な事件をめぐる物語が5編収録されている連作集。
苛酷な環境や、特異な集団内で起こる出来事に対して、まずは謎とその推理が次々と示されていく。異国の気候や風景を記す文章も臨場感があり鮮やか。広大な砂漠、夏のスペイン、秋の修道院と毎回場所や季節は違っても、たちまち物語に引き込まれてしまう。
作者は、それぞれの土地の風俗や伝説、人々の習慣や信仰などをもとに、残酷な殺人、ロマンチックな謎、狂気の世界を用意し、毎回ラストで驚くべき真相を明かしている。日本人旅行者の視点を巧みに生かした語りもお見事。

No.184 6点 高層の死角- 森村誠一 2017/12/04 12:46
企業間争いという社会的背景と怨恨、愛憎、金銭以外の動機を示した社会派ミステリのモチーフの中に、外側と内側の両方に鍵がかかった状態での二重の密室、アリバイ崩しという本格ミステリとが融合している。
乱歩賞選考委員は、密室トリックを褒めていたらしいですが、後半からの容疑者の鉄壁のアリバイを崩していくところが、やはり読みどころでしょう。
アリバイ崩しの攻略のヒントとなる発想も、特に不自然に感じることなく、刑事の執念による追及の演出の描き方は素晴らしい。
ただ、●●●を利用したアリバイに、少々不都合に思える点が残念。

No.183 5点 暗い宿- 有栖川有栖 2017/11/29 01:10
取り壊し寸前の民宿、南の島のリゾートホテル、冬の温泉旅館、都心のシティホテルと宿屋ホテルを舞台にした事件を描いた四編からなる短編集。
雰囲気を味あわせて読ませる作品集で、ミステリとして秀でた作品は無く、また短編ならではの切れ味の鋭さを感じることは出来なかった。
特に残念だったのが「201号室の災厄」で、その場しのぎのパターンでのオチになっており、ロジックが売り?の作者とは思えない作品。

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パメルさん
ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.13点   採点数: 622件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(30)
岡嶋二人(20)
有栖川有栖(19)
綾辻行人(18)
米澤穂信(18)
西澤保彦(16)
松本清張(15)
歌野晶午(15)
法月綸太郎(14)
横山秀夫(14)