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風桜青紫さん
平均点: 5.62点 書評数: 290件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.19 4点 まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 2016/07/17 14:58
「有栖川有栖だから期待しすぎた!」なんて意見が多いようだが、有栖川有栖の短編なんて大半はこんなもんだろう。メルカトル鮎が馬鹿にしてそうな真相だが、作者特有の雰囲気が出ており、読み物としてはそこそこよかった。ところで、倉知や我孫子や麻耶を「当代を代表する一流の作家」と認識するのは少々まずいと思う。

No.18 6点 乱鴉の島- 有栖川有栖 2016/01/17 23:11
孤島上陸からハッシー登場すでのワクワク感はなかなかのもの。このどことなく流れる館の気味の悪さがね……。とはいっても、話の決着は有栖川有栖らしいホワイダニットに落ち着く。着眼点は鋭いし、面白いアイデアだけども、館なんていかにもなお膳立てがあるにしてはなんていうかしょぼい。これが島荘綾辻麻耶あたりなら、トンでもなオチを用意してくれるところだろうけれども、有栖川作品はそういう作風じゃないからなあ……。とはいえ、島の秘密については作家アリスらしい決着がついて楽しかったです。なんとも物悲しいロマンチックぶり。やはり作家アリスには好感をもたざるを得ないな……。

No.17 6点 妃は船を沈める- 有栖川有栖 2016/01/17 22:59
妃沙子のキャラがなんともたまらんです。しっかり男の子たちと肉体関係を結んでるあたりとかなんとも趣味が悪い……ww。第一部は平均的な有栖川短編。けれども「猿の手」の話やら、妃沙子のキャラクター性で楽しく読めます。第二部は偶然に焦点を当てたなかなか良くできた犯人当て。作家アリスのこういう妙にロマンチックなところがなんともいい。作家アリスシリーズ、回を重ねるごとに面白くなっている気が……。

No.16 6点 モロッコ水晶の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 04:47
作家アリス短編でも割と充実した短編集だと思っているので、評価の低さに驚く。『助教授の身代金』も『ABCキラー』もトリックのパンチは強くないものの、人物の心理的な動きを解決にからめたなかなかの作品だ。『推理合戦』は小夜子たんがかわいい。『モロッコ水晶の謎』は「登場人物のなかの論理」に着目した作品である。これをテーマにした『叫びと祈り』の成功を見る限りこの着眼点は悪くないように思えるが、異国文化という壁に圧倒的な説得力があったあちらに比べれば、ややアピールに欠けていたように思える。しかし毒殺トリックとしては間違えなく野心的な作品だし、毒殺トリック好きとしてはこのような形式でも掘り出し物として歓迎したいのだ。

No.15 7点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 04:31
『スイス時計の謎』は言うまでもなく犯人当て短編の傑作。犯人当てのとっかかりがイマイチ掴めないまま解決編に入るが、そこからの火村の推理には圧巻されるばかり。時計ひとつをここまで拡張させて犯人当てに利用するのは見事としかいいようがない。最後になんかアリスが少し報われたのもよかった。ヴェロニカさんを落としかけたテクニックをふんだんに使っていってほしい。

どうもこの短編集は表題作以外の評判が芳しくないようだが、私はどれもなかなか楽しめた。くだらないといえばそれまでだけども、三作品ともワンアイデアの適度な面白さがあるのである。『あるYの悲劇』の絶妙なくだらなさ、『女彫刻家の死』のあっさり感、『シャイロックの密室』のありそうでなかったとんでもトリック、どれも適度に楽しめた。

No.14 7点 マレー鉄道の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 04:21
短編でいいという意見もあるようだけども、いやいやこれは長編でこそ光る話ではないか。トリックだけ抜き出してみれば、有栖川有栖らしいワンアイデアの短編にありそうなネタだが、その場面を再現するまでの話運びがうまいミスディレクションになっている。どうして遺体を閉じ込める必要性があったのか、というアイデアの反転に初期の作家アリス(っていうか『46番目の密室』)に似たカタルシスを感じた。ここからの火村と犯人の対決シーンの妙な盛り上がりにはなんだか燃えてしまった。アリスと火村のホモ臭いやりとりにも磨きがかかってるし、作家アリスの長編ではこれが一番充実した作品ではないだろうか。

No.13 4点 ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 04:10
小夜子たんが登場する以外にとくに見るところはなし。火村センセの日常を描いたりだとか、森下くんのスピンオフをやったりだとか、『ペルシャ猫の謎』みたいなバカミスを表題作にしたりだとか、いろいろと新たな道を探ってるいるのはわかるけどもそれがどれも空回りしている印象。ああ、『わらう月』のせこいエロシーンがちょっと笑えた。ケツに注射ww。

No.12 4点 英国庭園の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 04:05
微妙だ……。どうして有栖川有栖はこんなに暗号ものが好きなんだろう。しかし表題作がその最後の決定版(?)みたいな役目を果たしてくれたからいいか。近親相姦をしてそうらしい兄妹になんか萌えた。つまらなくはないけどどの作品も地味かな。『完璧な遺書』は納得のできる解決と毒のあるオチがついていて面白かった。けれども有栖川有栖の平均的な微妙な短編集だと思う。

No.11 6点 ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 03:56
『ロシア紅茶の謎』に比べて、全体的に作品の質は上昇している。一発ネタという意見もあるようだけど、本格ミステリ短編なんぞ一発ネタじゃなきゃ量産できんではないか。表題作は犯人当てとしてまあまあの出来映えだけども、無駄なブラジル蝶の装飾の釈然としなさがおかしな後味を残すはめに。一発ネタの切れ味をもとめるとすれば、やはり目はブラジル蝶の回収に向かってしまう。一方、『鍵』や『人喰いの滝』のような「なんじゃこりゃあ!」な作品は一発ネタであるがゆえにカタルシスを得られる。バカミスだけど。その点では『蝶々がはばたく』がこの短編集では出色。ひとつの偶然が予期せぬトリックを引き起こす。ラストシーンと合わせて見事な出来映え。『蝶々がはばたく』は7点。全体で6点といったところか。

No.10 6点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 03:44
足跡トリックについては別に真新しくないし、そこまでインパクトがあるわけでもないんだが、なんか面白かった一冊。人妻ヴェロニカさんをうまく落とそうとするプレイボーイ・アリスの口運びには舌を巻くばかり。油断のならんやつだ。火村シリーズって江神シリーズに比べると本格としては弱いんだけども、ストーリーやキャラクター描写はこっちのほうが上手なように思えるのね。作者が歳をとってるから当たり前かもしれないけど。ああ、ザリガニ食べたい。文庫解説の宮部先生がノリノリで笑える。

No.9 7点 ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 2016/01/14 03:38
コナンくんと大差ない暗号系の短編がなんとも退屈。でも作者本人は好きなんだろうなあ。『屋根裏部屋の散歩者』のお笑い落ちは気が抜けて嫌いじゃない。しかしなんといっても『ロシア紅茶の謎』が面白い。矛盾から生じた疑問がとんでもないトリックを導きだすという過程は切れ味抜群。それまでの短編に退屈していただけにこのトリックに気づいたときは思わずうめきをあげてしまった。『スイス時計の謎』と好対照をなす有栖川短編の傑作でしょう。『ロシア紅茶の謎』だけなら文句なしの8点だけども、短編集全体では7点といったところ。

No.8 5点 朱色の研究- 有栖川有栖 2016/01/14 03:29
『ダリの繭』でも思ったけど、アリスが純情すぎてもはや好感が持てる。34にもなってなんていいやつなのだ。朱美が育てのパパンと風呂に入らされていた妙なスケベっぷりがこの空気とマッチしてなんか笑えた。アイデアも充実してたし、ラストも悪くなかったんだが、話がやや無駄に長かった(文庫400ぐらいだけど)割りにはそこまでカタルシスがなかったかな。正直ダルかった。火村センセの悪夢を終えただけでも、『海のある奈良に死す』を読んだかいはありました。

No.7 2点 海のある奈良に死す- 有栖川有栖 2016/01/14 03:20
こいつぁ……やべえ。初の連載小説とはいえやっつけすぎるのではないか。人魚のうんちくも読み飛ばしても問題ない程度に不要でくどい。というか何よりトリックがいかん。赤星さんの地図トリックが輝いて見えるレベルです。小夜子たんの初陣以外は取り立てて読むところは……ないなあ。

No.6 6点 ダリの繭- 有栖川有栖 2016/01/14 03:15
ラストシーンの「愛してる」に苦笑い。「おのれクソアマぁ!」としか言いようがないけども、本人に非はない(笑)。トリックは面白い装置を使ってるのだが、それに見合うだけのインパクトはなし。謎解きも悪くないけども江神シリーズや『46番目の密室』に比べるとアイデアがやや物足りない印象。やはり火村とアリスのラブラブ朝ごはんが楽しみどころか……。アリスのキャラクター性が出てきたって点でシリーズでははずせない一作。

(追記)
ドラマ版を見て評価を再検討。やっぱこれダリ髭の失恋ストーリーとしてよくできてる(笑)。5点→6点。

No.5 5点 46番目の密室- 有栖川有栖 2016/01/14 03:07
密室を構築した理由はなかなか面白かったが、それをごまかすための犯人の行動にはいまいち納得できず。白一色にそめるなんて面白いガジェットを出してきたと思ったら……。これ系のネタは有栖川作品では他にもあったが、どうにも肩透かしだし、やる必要性が弱く思える。冒頭シーンを始めとするあからさまなミスリードにも首をかしげた。アイデアは良いが、そのぶん荒らさが目立ってしまったのでは。火村もこの作品だけだといまいち掴み所がない人物なのよね。これじゃただの野蛮なおっさんじゃないか!

No.4 6点 マジックミラー- 有栖川有栖 2016/01/14 02:59
アリバイトリック、双子トリックをからめた有栖川有栖の野心的な一品。双子の必要性を、色々な意味でアリバイにからめた手腕は見事。ラストシーンの味わいもなかなか。このあたりから有栖川作品はストーリー面でも結構充実してると思うのだ。その代わりロジック推理が微妙になっていくけど。アリバイ講義については、かのフェル博士のお言葉(興味がなければ読み飛ばせ)通り、流し読みさせてもらった。こういうのってミステリ好きが自分の博識ぶりを知らしめたいだけに思えるのね……。

No.3 8点 双頭の悪魔- 有栖川有栖 2016/01/14 02:45
ちょっとした矛盾から推理のパーツが見つかり、それを積み上げていくことで真相が浮き彫りになる。これが本格ミステリの面白さだとするのなら、『双頭の悪魔』ほどそれを執拗にやってのける作品も稀だろう。読者への挑戦状三つで「おおっ」というカタルシスがどんどん生み出されていく。犯人との対決についても後の有栖川作品じゃなんだか拍子抜けするのに、本作では盛り上がりっぱなし。江神さん……感服しました。有栖川有栖の最高傑作というだけでなく、新本格のクイーン・鮎川系で文句なしにトップの完成度だろう。有栖川有栖の本領はレディ向けのホモ臭さじゃなくてやっぱこれなのだ。

No.2 8点 孤島パズル- 有栖川有栖 2016/01/14 02:32
作家アリスの某作で「本格ミステリにおいて必要なのはその場の推理にいかに説得力を持たせられるか」というよつな話が出ていたが、そこをいけば、『孤島パズル』は国内の本格ミステリでも最高クラスだろう。モアイ像パズルに関しては月光ゲームのダイイングメッセージと同じく、おいおいといった感じだが、目を引くパーツの数々から、真相が浮き彫りにされていく有り様は笑みがこぼれるそう派手な作品ではないものの、国内作品でもっともクイーンに近い作品を選べと言われればやっぱりこれになる。マリアかわいいし、アリスと江神さんのからみもなかなかいいぞ。それにしても新本格ってクイーン好きの作家が多いくせして、カーや横溝みたいなとんでもトリック系が主流だよね……。

No.1 6点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2016/01/14 02:13
新本格などとうたいながら、綾辻折原法月はまったくもって強引な解決だし、麻耶京極森に至ってはバカミス以外の何者でもないんだが、そこを行くと有栖川の誠実さは新本格随一である。多すぎる登場人物や拍子抜けするダイイングメッセージなどまだまだ粗削りな部分は多いものの、偶然から生まれる必然性によるロジカルな犯人当てが楽しませてくれる。文章も平易で本格ミステリとして十分。江神さんもアリスもなんかいいやつでなんかかわいいです。

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