皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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風桜青紫さん |
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平均点: 5.62点 | 書評数: 290件 |
No.20 | 7点 | ハケンアニメ!- 辻村深月 | 2016/01/14 01:50 |
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導入部はミステリ仕立てなんだが、そこに話が終始しないのが辻村作品らしい。言ってしまえば「どうして監督が消えたのか」という話が、「消える監督がどう人間か」というところに切り替わっていく。導入はミステリで、内容は人間描写、という構造が高いリーダビリティを生んでおり、このようなところに辻村さんの技術の高さがうかがえる。アニメ業界の人間模様の面白さはもちろんのこと、そこに現代人のアニメに関する価値観の違いが投影されているのがまた良い。王子監督はイケメンのくせによくぞいいことを言ってくれた。 |
No.19 | 5点 | ふちなしのかがみ- 辻村深月 | 2016/01/14 01:36 |
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『踊り場の花子』は辻村さんらしい学園スピリチュアルもの。話としてはよくまとまっており、花子の親近感ぶりとラストシーンには苦笑い。『ブランコをこぐ足』はスクールカーストの描写がなかなか巧み。ホラー・ミステリとしては弱いものの、この作品集では一番の完成度ではないだろうか。『おとうさん、したいがあるよ』は粗削りな手段というレベルではないが、シュールな笑いやあり。『ふちなしのかがみ』は新本格的な手法が用いられており、新本格らしい強引さが鼻につく。発想としては面白いのだが。『八月の天変地異』は学園スピチュアルもの。ラストはやや首をかしげるものの、これまた小学生談志の痛々しさが絶妙に描かれている。全体的に小粒ではあるものの、辻村テイストを楽しませてくれる一冊。 |
No.18 | 5点 | ロードムービー- 辻村深月 | 2016/01/14 01:15 |
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『冷たい校舎の時は止まる』のキャラ小説。似たような趣向の『百鬼夜行陰』はモブキャラどんちゃんわっしょいで反応に困る作品だったが、こちらは辻村だけあって、キャラひとりひとりへの思い入れが伝わり、キャラクター小説・青春小説として楽しめた。初期作の名残が強く、『ロードムービー』や『雪の降る道』は本格ミステリ的な仕掛けがほどこされているが、カタルシスを得られるかは微妙。やはり辻村テイストの人間模様に作品の面白さがある。ミステリ色の強くない『道の先』『トーキョー語り』が特に面白く読めたのである。 |
No.17 | 7点 | 盲目的な恋と友情- 辻村深月 | 2015/12/20 03:07 |
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ルリエール最高です。『恋』を読んだ時点では「ベタな恋愛ものだなぁ」と思っていたけど、『友情』が抜群に面白い。んもう、ルリエール自意識過剰すぎでしょ……。「どうして私が知らないの?」じゃねえよ。もう見てらんねえ、けど、すでに知ってる先行きが気になって仕方ねえ、となってしまう。ブスの自意識過剰ぶりを二つの視点で浮き彫りにするってシステムが良くできてる。あえていえば、『恋』のほうにも何か面白い仕掛けがほしかったかな。ほんと、がんばれよ、ルリエール。まあ自意識過剰なブスのルリエールより、明るくて胸が大きい(揺れすぎ)美波のほうが魅力的なのは言うまでもないから、また物悲しいんだけど。 |
No.16 | 8点 | 鍵のない夢を見る- 辻村深月 | 2015/12/20 02:48 |
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笑いと怖さは紙一重って話を聞いたことがあるけど、この作品はほんとうにこれ。登場人物(特に男たち)がどいつもこいつも阿呆みたいなことを言ってて笑いがこみあげてくるけど、自分では正しいと信じているのが伝わってくるから無性に気味が悪いの。たとえば『石蕗南地区の放火』のバックドラフト先輩なんてもう最高。絶対こいつ魔法使い。猫の写真を送りつけたり、電車で颯爽と注意したり、「俺かっこいいだろ?」みたいな空気がすごくゾクゾクくる。それを突っ込む主人公のスレっぷりがまた笑えるんだが、その当の主人公が売れ残りのアラフォーってのがまた「だめだこいつら」感を加速させてくれる。その他の短編でも『凍りのくじら』のわかおくんがさらにスマートになったような連中が暴れてくれます。自意識過剰な連中に笑いと共感と恐怖あり。辻村さんの作品ではこれがベスト。 |
No.15 | 5点 | 島はぼくらと- 辻村深月 | 2015/12/20 02:34 |
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島という閉鎖された空間での人間模様。辻村さんのお得意技。定期的に嫌な奴らが出てくるのもお約束通り。この作品の村長みたいに、いい人かと思ったら、実は嫌な面もありますっていうのが、実にうま味。多くの作家はわかっていても(プロットに引きずられて)書けないであろうところをうまくストーリーに絡めている。といっても、辻村さんの作品では平均的な出来映えかな。本屋大賞にノミネートされたのはただ辻村さんの知名度が上がったからと思える。これより面白い辻村作品は多いと思うし。 |
No.14 | 7点 | オーダーメイド殺人クラブ- 辻村深月 | 2015/12/20 02:18 |
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アン、嫌なリア充女なんだけど、ところどころ優しさが見えるのがいいんだよね。周りの人間を馬鹿にしつつも、なんとなく優しくするところ。作中のシーンでいえば、「あの子が泣く」な思想なんだろうけど、なんだかんだで子どもっぽい優しさが見えてくるから、嫌なリア充女でも憎めない。辻村さんはこのあたりのキャラ作りが良くできてるね。でもストーリーはどちらかといえば、いまいちな気が。掴みはいいんだが、結末がどうにも唐突な感じがして消化不良だった。とはいっても、中学生主人公の青春小説としてはかなり面白い部類なんで7点。しかし、アンのおかあさん、愉快でいい人だww。娘からするとうっとうしいかもしれないけど、ろくな奴がいない辻村ワールドの母親じゃ随一のいい人に見える。 |
No.13 | 5点 | サクラ咲く- 辻村深月 | 2015/12/20 02:06 |
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ジュブナイルって広告で出てると、こんなスイーツストーリーも普通に楽しんで読めてしまう(笑)。三話の韓流顔の先輩がわりと辻村的な嫌な男。主人公たちが「あんたキモいよ」とやり返すのはなかなか痛快。これ読んだオタク男子たちが胸をはって生きれるようになりゃいいと思います(最近は不良でもラブライブやるらしいけど)。 |
No.12 | 5点 | ツナグ- 辻村深月 | 2015/12/20 02:00 |
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頑固親父の話がけっこういい。辻村さん、根はいい人だなって思えるのは、こういう「嫌な人」にもちゃんと目を向けて書いてあげようと思うところなのよね。嵐やキラリちゃんの話も嫌いじゃない。歩の説得シーンはいかにもすぎて興ざめしたけど、まあ、初期の名残というところか。辻村さんの作品では平均的。吉川新人って期待が大きすぎたかも。なんだかんだで楽しめはしたんだけどね。 |
No.11 | 6点 | 水底フェスタ- 辻村深月 | 2015/12/20 01:40 |
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絡み付いてくる幼馴染みをうっとうしがる厨二主人公……。と思いきや、本当にうっとうしがってて笑える。おせっかいなおかあさん、ひょろいけど理解のあるおとうさん、診療所の頼れるアニキ、不良だけど純心なトモダチ。少年マンガの主人公みたいな悪くない家庭だけど、オリバーが新しい価値観を持ってくることで一気に身近な人間が恐ろしくなってまう。正直下手なホラー小説よりぞくりとくる。辻村さんのたくらみにまんまと乗せられたと言えよう。しかし幼馴染みの「門音」って名前……ww。これは一種のブラックジョークなんだろうか。 |
No.10 | 5点 | 本日は大安なり- 辻村深月 | 2015/12/20 01:20 |
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非道だけどなんだか親近感が持てる奴らが多いです。前から疑問に思ってたんだが、どうして辻村さんの描く美男美女はこんなに他人に対して風当たりが強いのよ(笑)。辻村さんが美形に偏見を持っているのか、それとも世の美形は実際にこういうやつらなのか。スターサイドシステムで狐塚と恭司が出るけど、なんだか浮いちゃってる。初期とは作風がけっこう違うから、恭司の月並みな不良っぷりがギャグになってまうんだな。そろそろ恭司が誰かからバンチを食らうべきでは。 |
No.9 | 4点 | ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。- 辻村深月 | 2015/12/20 01:10 |
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うーん、いまいち。辻村さんは聡明な人だと思うから、安直に「文学」を意図したわけじゃないんだろうけど、読んでて退屈だった。みずほのおかあさんの虐待とか読んでて「ひええ」となるし、こういう身近なトラウマを書くうまさはさすが辻村って感じがするけど。ストーリーの枠組みが地味なんだな。しかしこの世界のおなごはよく壁(今回はロッカー)を蹴るなあ……。辻村さんも腹をたてたときは壁キックを決めるんだろうか(ちょっと想像しづらいww)。 |
No.8 | 6点 | 太陽の坐る場所- 辻村深月 | 2015/12/20 00:56 |
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島津くんの絶妙なキモさがたまらん。この昆虫系男子め。ハゲのヒョロ男がタカビーのゲス女(男の前だと性格違うww)に惚れてしまうありさまが痛快すぎてニヤニヤが止まらないです。高校生ってもっと純粋で阿呆な生き物のような気がするけど、辻村ワールドの人間たちはたとえ小学生でも自意識過剰だからなあ……。ミステリとしては薄味(というかミステリ成分いらん)だけど、依田いつかも苦笑いのドロドロした人間模様は、まあ、面白いです。 |
No.7 | 4点 | V.T.R.- 辻村深月 | 2015/12/20 00:43 |
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十七歳してはよく書けてると思うが、こんな手作り感満載の作品で読者(というか俺)をあざむけるかと思ったら大間違いだぞ、コウちゃん。現実(?)ではあんなに素朴でいい奴なのに、小説を書かせれば、こんなセックス三昧の性欲タンクだったとはがっかりだ。少しは辻村深月の作風を見習ったらどうだろうか。 |
No.6 | 6点 | 名前探しの放課後- 辻村深月 | 2015/12/20 00:37 |
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スターサイドシステムが妙に楽しいです。このスピードで時間軸が進むとすぐに教授が老衰しちまうんじゃないのか(笑)。高校生たちの胡散臭い友情物語としても結構面白い。いつかは出ると思っていた嫌なイケメン、いつかくん(いつかだけに)。この上から目線と、情けなさがたまらんのだよ。あとシュートがところどころ狩野英孝みたいなキャラに見えて笑える。おまえ、こんな奴だったのか。ラストのどんでん返しは新鮮味がにから素直に驚けなかったけど、読者をほっとさせるって点ではよくできてる。初期作の集大成みたいな感じかな。 |
No.5 | 6点 | スロウハイツの神様- 辻村深月 | 2015/12/20 00:25 |
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冷たい校舎や夜と遊ぶほど盛り上がらんので、普通に読む分には単調。スロウハイツの連中の生き様をつづった『史記列伝』として読もう。美男子ばかり作ってきた辻村さんがコウちゃんみたいなブサ男を出したのは意外と衝撃的。しかもこのラノベ作家、やけにかっこいいぞ。見た目はどうあら、趣味に身体はれる人ってなんだか憧れちゃうのよね。「恋愛もの」とか「感動もの」とかレッテル張りしてしまうと一気にせこい作品になっちゃうけど、オタクたちの楽しげな日常生活を描いた作品としては十分に楽しめた。しかし、すみれのダメ女っぷりが絶妙にむかつく(笑)。環はこやつにもキックを食らわせるべきではないか。 |
No.4 | 5点 | ぼくのメジャースプーン- 辻村深月 | 2015/12/20 00:08 |
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こんな思慮深い小学生がおってたまるかい。SFっぽい設定にワクワクしながら読んだけど、最後はまあ、なんていうか、優等生のオチかな。そこまで驚きはしなかった。納得はできるけど意外性はないのよ。ふみちゃんはいい奴。いい奴が胡散臭くはならないのは子どもの特権。スターサイドシステムも結構楽しめたし、なんだあんだで面白く読めた。教授、紳士ってかスケベじじいに見えてくるな……。 |
No.3 | 6点 | 凍りのくじら- 辻村深月 | 2015/12/20 00:01 |
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厨二病女子の上から目線ストーリー。似たようなタイプの語り手が出る作品なら同じく辻村さんの『オーダーメイド殺人クラブ』のほうが良くできていると思うけど、こっちも嫌いじゃない。なんか主人公のドラえもんLOVEに共感してしまうのよ。ファッションとかじゃなくて真にドラえもん好きってのがよく伝わってくる。たぶん辻村さんもドラえもん好きなのだろうな。わりと嫌な女であろう主人公にすら共感させてしまうあの青ダヌキ……さすが、と言っておこう。 |
No.2 | 7点 | 子どもたちは夜と遊ぶ- 辻村深月 | 2015/12/19 23:43 |
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我孫子武丸の『メビウスの殺人』のパクり。辻村さんは我孫子読者なので、偶然話が似たということはまずないでしょう。それでも7点と(風桜的な)高得点をつけるのは、単純に作品が面白いから。我孫子より辻村さんのがストーリー書くの上手なんだもん。主人公である浅葱の月並みな美男子キャラぶりと、不良学生(?)恭司のこれまた月並みな不良ぶりは、前作同様胡散臭さMAX(まあ辻村さんも女の子だから……)だが、彼らを囲む脇役が良くできている。月子も狐塚もいい人っぷりがにじみ出てるし、(iと浅葱に)殺される人たちも妙に共感できる連中ばかりだから、美男子たる浅葱の「俺やっちまったよ……」的な心情になんだか説得力が生まれてくる。浅葱って一人称だけなら絶対好きになれないだろうけど、月子たちの視点があるから不思議といい奴に見えるのね(笑)。あとトリックが明らかになるあたりから、無性に話は盛り上がっていく。トリックについてはずるいといっちゃずるいけど、面白いから許す。こういう話を盛り上げるトリックってのが風桜的には理想です。なんだかんだで問題点も多いけど、パワーがあるうんぬんで7点。 |
No.1 | 7点 | 冷たい校舎の時は止まる- 辻村深月 | 2015/12/19 23:23 |
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辻村さんは若手でもトップクラスの実力だと思ってるけど、良くも悪くもこれはデビュー作。青春ストーリーぶりが実にスイーツ的というか、うさん臭い。作者と同じ名前の主人公で逆ハーレムをつくっちまうのはどうよ。それでも、ただの妄想スイーツ小説で終わらないと思えるのは、現実に根差した悪玉キャラクターの存在ゆえか。ハルちゃんとか、昭彦の友だちを自殺させた奴とか、「こういう奴おるわー」となる。しかも悪玉だからときって完全に悪い人間でもない(ハルちゃん、清水さん擁護しちゃうし)。だから登場人物がいらついて、そこから、なにやら話がふくらんでいく。辻村さんはこのタイプの話運びが実に上手。人物の視点ごとにけっこうテイストが変わってくるから、宮部みたいに単調な引き延ばしにはならず、見ていて楽しい(それでも無駄に厚いというあるようだが、まあ、そこは趣味の問題でしょう)。いろいろ問題点はあるものの、それ覆すほどのパワーも持った作品。でもやっぱスイーツだな(笑)。 |