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了然和尚さん
平均点: 5.53点 書評数: 116件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.13 5点 殺人行 おくのほそ道- 松本清張 2016/04/14 18:42
テレビドラマにもなっている典型的な松本清張もので、少し平均より落ちる気がしたので−1点。
いつものように、いいペースで人が死んだり謎が暴かれたりします。結末もまあまあです。(テレビと真犯人が入れ替わっていたのは興味深かった。 どっちもあり) 松本清張作品は旅情感と昭和の時代感が好きなのですが、本作ではその辺がものたりません。タイトルからは見立て殺人やトラベルミステリーを期待しますが、効果的に「おくのそ道」が使われていません。後の殺人では静岡が舞台で、かろうじて地名の共通点で「おくのほそ道」に引っ掛けていますが、なんか「日本海パートの取材ができなかったので、馴染みの伊豆あたりでやっつけておくか」みたいな裏事情を勘ぐってしまいます。

No.12 4点 考える葉- 松本清張 2016/03/12 23:48
全くいつも通りな松本清張なのですが、どこか空虚というか熱が入っていないような気がしました。全然つまらないわけでも破綻しているわけでもないのに。松本清張の全作品の中で1つだけゴーストライターがあるとすればどれか?とか聞かれたら、本作をあげたくなるような感じです。あとがきによれば本作は日本の黒い霧、球形の荒野、わるいやつら、砂の器と同時に書かれたとのこと。(納得)

No.11 4点 火の路- 松本清張 2016/01/23 12:14
失敗作!(と断言)
本作はミステリーと歴史考察ものが同居しているというのが売りだと思うが、全く水と油で小説として成り立っているかすら疑問。
歴史については斉明天皇と日本へのゾロアスター教の伝搬というテーマで、松本清張のイラン紀行と大論文が展開されています。
ミステリーについては、この歴史考察につながりを持つように話を絡めようとしていますが、あざとい。(最初のシンナー少年が出た時点でなんとなく酒船石の役目も。。。。)
ま、1冊で2冊分読んだと思えば、宗教史や古代史好きにとっては読み応えがあり、読んで損なし。
ミステリーパートの方は大損。

No.10 4点 落差- 松本清張 2015/12/23 14:30
本格ものを基準とした祭典ですので4点ですが、読み物としては6点ものです。本作では、推理要素とかは出てきませんし、傷害事件(多分起訴猶予?)が1件あるだけです。
本作の主人公の大学教授は、最低エロ爺(40代半ばだが、まあエロ爺と呼びたい)で、「わるいやつら」のボンボン医師が可愛く思えるぐらいの悪党です。いつ報いを受けて命乞いするような死に方するのかとページが進みます。
犯罪小説ではないのですが、最後に関係者一同が高知に集まってクライマックスを迎えるあたり、清張流で、結末がぼんやりというのも、いつものパターンですね。
作品の舞台は教科書検定なんですが、昭和35年頃の話です。つい先日、出版社が学校の先生の接待等でニュースになってましたが、50年以上進化なしですか。。。

No.9 6点 高校殺人事件- 松本清張 2015/11/29 13:45
252ページ一気読みできた本でした。高校生雑誌向けということもあり文章が平易で読みやすかったということでしょうか。構成的には特に高校生向けを感じない内容でしたが、主役が高校生グループというのが対象読者へのサービスでしょうか(あまり生きてなかったが) むしろ開発されていく武蔵野の風景描写に味がありました。ま、私は関東圏ではないので実感は薄くて残念なんですが。
で、結末はいつもの清張のパターンで残念な終わり方なのですが、終盤に「萌えいとこ」が探偵役で登場しますが、これは衝撃でした。(プラス1点)
本書が好評であったのなら(多分、良くなかった?)、続編として女子高生探偵ものが連続して書かれて、推理小説の進化が50年早まったのではとかと妄想してしまいます。ちなみに女子高校生探偵たちの愛読書はクリスティーとガードナーだそうです。

No.8 7点 不安な演奏- 松本清張 2015/09/29 18:27
本格を基準として採点してますので、本作は−2点しましたが、面白さは清張作品のトップクラスでした。清張はもう何冊も読んできましたが、まだこんな傑作があったかというかんじです。本作の弱点はラブホでの盗聴(しかも普通のは飽きたので男X男希望とか言ってます)という、なんだかなあという導入にあるのかもしれませんが、殺人計画を偶然録音する環境として苦肉の索なので、堪忍してください。しかも、最後にはトリックの一部としてひらっています。展開は謎、素人の追求、旅、偶然の発見、次の死体の繰り返しですが、信用できない仲間、黒い教会、政治家、土建屋などと何かミュージシャンのベスト盤を聞くような楽しさでした。(結末のあっけなさも含めて!)
また、本作では語り手の宮脇平助(すけべに読める)、久間監督(太っている、フェル博士級の天才かと思ったが後半行方不明で残念)、葉山良太(食わせもの)の探偵役3名が面白い味を出していて、パスティーシュが読みたいキャラ達でした。

No.7 2点 紅い白描- 松本清張 2015/08/31 15:27
殺人も詐欺も出てきません。よって2点ですが、読み物としては4点ぐらいです。
デザイン問題が世間を騒がしていますので、業界の内幕的な内容を期待して読んだのですが、「天才画の女」の劣化版でした。(あとがきによると「天才画の女」の方が本作を元に発展させているようなので当然か) 
注目すべきはラストでのデザイナーの潔さでしょうか。盗用を暴かれた有名デザイナーは、騙し続けることの苦痛と自らの能力の限界を感じ、全てを告白してデザイン事務所を解散し引退しました。 胸がスッとしました。

No.6 4点 山峡の章- 松本清張 2015/08/29 07:22
4回もテレビドラマ化されているようです。内容は心中物なので「点と線」を思わせます。(官僚だし) 松本清張を読んでいて楽しいところは、テーマとなった各種業界などの内輪ネタが語られるところですが、本作では夫は官僚ですが、妻の視点で語られるため、新婚生活がテーマのようになっていて、小粒な感じです。犯罪小説としては、目新しさもなくイマイチでしたが、腐乱死体との対面から野焼きによる火葬あたりの場面の雰囲気は良かったので、ドラマ化でどのように扱われたか気になります。

No.5 5点 蒼ざめた礼服- 松本清張 2015/07/15 00:34
世間が防衛問題で騒がしい中、防衛庁がらみということで読んでみましたが、いつもの松本清張スタイルで楽しめました。プラス点は、比較的結末の収まりが良かったこと、マイナス点は旅情が無かったことです。清張ミステリーの楽しみ方として、昭和の歴史物として読む楽しみがありますが、今回は東京湾での海苔の養殖が語られています。ま、私は関東圏の人間ではないので、ピンとこなかったのは残念でした。

No.4 3点 天才画の女- 松本清張 2015/05/28 20:52
犯罪要素が少ない作品ですので、本格ミステリー好みの本サイトでは低い評価です。しかし、小説としては6点(楽しめた)ぐらいで、面白さはあります。前半では松本清澄の評論家(本編では美術評論家になってますが)嫌いがちょっとしたファースになってます。(あの評論家先生の説明。。。 あれはないやろ)全体の半分の150ページぐらいから謎の追跡に入りますが、殺人も盗難も詐欺と言えるようなたいそうなこともないのですが、いつもの旅情物で展開します。最後にちょっとサスペンス風になりますが、ごく短く語られる結末はまたもファース的で笑えます。

No.3 5点 影の地帯- 松本清張 2015/05/22 12:37
いつものようなパターンで楽しく読めたのですが、なんか少し他の力作より落ちるような気がしました。地方が舞台であっても作者の特徴である旅情感が無かったかと思います。

No.2 6点 時間の習俗- 松本清張 2015/04/01 00:43
松本清張の作品って、捜査側の人間が神がかり的な発想でトリックを見破っていくのが多いですね。本作も動機も背景もわからぬまま、ただアリバイが完全であるだけで容疑者にされます。犯人側が可哀想すぎます。女性同伴の男が殺害されますが、アリバイに協力したと思われる男性が死体で発見されます。実は同伴女性が女装男性で殺されていたという構図には震えるほど感動しました。どうせなら動機が男ー男ー男の三角関係なら、プラス2点でした。(昭和37年では斬新すぎか) 他の清張作品よりは手がかりが多く本格色が強いのですが、定期券の謎は、当時のカラープリント事情を知らないので無理ですよね、このように、清張作品は昭和時代の歴史小説的趣もあるので、読んでいて楽しいです。

No.1 5点 夜光の階段- 松本清張 2015/03/05 20:39
作者のいつものパターンの平均作といったところでしょうか。探偵役の人物が、ほとんど直感的にすべてを(過去を含めて)見通すのも、他の作品同様ですね。最後の50ページぐらいで、検察(公務員)が雑誌にネタを流して、あいまいに殺人を告発し、犯人側の名誉毀損の訴えを誘発しようとするのは、ちょっとワクワクしました。(ペリーメイソンっぽい) ま、結果は。。。 他の清張作品よりは、結末はしっかりしていると思いますが、冤罪者のその後も含めて、やっぱりすっきりしない。(これで、本当に無罪になれるの?)

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了然和尚さん
ひとこと
本格ミステリーを中心に研究しています。
古典のビッグ4である クリスティ、クイーン、かー、クロフツを再読を含めて全部読破が目標です。

「気ちがいじゃが仕方がない。」
好きな作家
採点傾向
平均点: 5.53点   採点数: 116件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(30)
カーター・ディクスン(15)
松本清張(13)
ジョン・ディクスン・カー(10)
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