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斎藤警部さん
平均点: 6.68点 書評数: 1241件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.34 7点 華麗なる誘拐- 西村京太郎 2022/12/31 23:58
人質は日本国民全員! 身代金は五千億円! 退屈と無駄の無い抜群のリーダビリティでブッ飛ばすのは、ありきたりの予想を粉砕する意外性あるストーリー。 まさか「アレ」では・・・との疑惑も少なからずよぎった。 まさかの地点でまさかのツイストも急襲。 左文字探偵夫妻登場シーンなど少しほんわかするが、決してユーモアに傾ききらない絶妙なバランス。 身代金回収法その2(その3?)にはクスクスしたが。。そこからの奇想天外な展開は、いつしかまるで寓話のように発展。 そして更に伸びる怖るべき逆説の味わい。 ただ、最終コーナーに至ってのドタバタ失速は、勿体ないぞ。。。。とわざわざケチ付けたくなるくらい、最後の最後を除いてはまっこと面白さ炸裂、疾走するエンタテインメント快作!

No.33 6点 ある朝 海に- 西村京太郎 2022/09/17 12:14
表題が、加山雄三の哀感ほとばしる名曲「ある日渚に」を思わせる、京太郎さん海洋期の意欲作(意欲は買いたい)。
英国から米国へ、大西洋を渡る豪華客船がシージャックされた。若く多国籍な犯人グループの要求は、南ア黒人の解放に向け、国連が実効ある手を(今度こそ本気で)打つこと。

いっけん地味な犯罪小説 with本格もどき&社会派もどき要素、のようであるものの、最後には『困難千万な或る事』を実行するための、グイッとえぐって来る大トリックが明かされる。これに魅惑されるかどうかが評価の別れ目でしょうか。 ただ、その折角の大トリックさえ可惜あっさり提示されるもんだから、ちょっとなかなか。 
“南アの黒人達が一般的に無気力” という冒頭の描写が何気なミスディレクションになってもいましょう。でもそこすら地味にポッと弾けてミステリ的には終わりなような。もったいないな。 
なーんだか、京太郎さんの優しさが優しさだけで完結しちゃったのかな、ミステリの要素として働いてなさ過ぎのような感じを受けました。 最後、強烈にしみじみさせて終わってくれたらまた違ったろうが、踏み込みの浅い社会派アクセサリーを付けて終わり、なんて言ったら厳し過ぎ寂し過ぎでしょうか。

海洋京太郎でも「赤い帆船」や「消えたタンカー」のようにめくるめく謎とプロットとトリックとサスペンスの圧に翻弄される黄金長篇に比べたら随分と薄味なもん、けどやっぱ、面白いんですよね、四捨五入で6点に届くと思う。5.7くらい。 冒険小説的にとても魅力的な人物が軸として登場するのは、好感度高い。 頻出する “コムミュニスト” の表記には面喰らいました。

No.32 7点 おれたちはブルースしか歌わない- 西村京太郎 2021/11/19 18:24
“おれには、それを許せそうもない。  おれたちには、やっぱり、ブルースが似合うんだな。”

「シンデレラの罠」盗作事件!(←歌の題名です) 更には私立探偵が殺されたり、犬が消えたり現れたり、恋する青年がアダな年増女に翻弄されたり、呑気に構えているとアッと言う間に連続殺人が、、、意外とジェットコースター、コロンボ(刑事)まで怪しく見えて来る堂々の展開!! 妙に身体的特徴の光る人物が二人もいるのは。。 真犯人、真相ともども隠匿の技はな~かなかに熱い! 京太郎さん、軽いタッチで油断させといて、本気で書きやがったな!(笑) 思いも寄らない人物の、物語内での化けっぷりにも、このヤング文体に紛らせといてしっかりと伏線が! いやー、真相巻き返しの術、凄かった、ナメて掛かった甲斐があった(笑)。   

著者初期(鉄に行く前)のおどけた青春ミステリ。若き日の十津川さんが出て来てギター弾きながらおどけるわけではないです。
主人公たちがブルースバンドって感じがまるでしないのと、何にしろ音楽がまったく聴こえて来ないのは、、まあミステリの面白さで許せますよ。

No.31 6点 特急「あずさ」(アリバイ・トレイン)殺人事件- 西村京太郎 2020/12/25 10:49
タイトルに、こう見えてなかなかヒネリ有り。アリバイと言っても、目の前の事件より一つ奥の事件に絡む特殊過ぎる謎。。ううーむ、堂々のアリバイ剛腕変化球!しかもその奥の方の謎がふてぶてしくドオンと膨らみみやがるんだね。無駄なく味わいも失わず、推理小説として最適化された素晴らしい文章と展開。ただ、そのトレードオフで悪癖の思い込みズバズバ的中がちょっと目を覆う暴走レベルだったりするが。。旅情まで見事に素っ飛んでますが。。極限まで体を絞ったご都合ミステリもまた良し!ラストクォーターの冒険アクションでアンチクライマクスほぼ回避!不当なほど爽やかなラストシーンも、、されど優しい。馬鹿だなあ、俺。新井優子ってのが新木優子に思えて仕方ない。ちょっと過激な社会派要素は強烈なスパイス。仮に本作をガチ社会派と想定したらいくらなんでもリアリティがグラグラ過ぎる(だが小説より奇なるリアル世界では逆にありそう)。 何気に奇想が光る一冊。 忘れ難き読み捨て本、になりそうな予感。

No.30 7点 寝台急行「銀河」殺人事件- 西村京太郎 2019/02/19 00:20
常習の交通費チョロマカシで使った寝台急行にて、乗っている筈のない不倫相手の絞殺事件に遭遇した井崎は十津川の旧友。多方面に気まずい第一容疑者となった井崎が釈放されたのは「自分こそ犯人だ」と名乗る警察宛ての郵便が根拠。そこには真犯人しか知りえない情報と、持ちえない物的証拠があった。会社から冷や飯を喰わされ妻には見捨てられ欝々とする井崎の無実を信じ捜査と推理を続ける十津川の奮闘、を後目に目撃者や関係者が次々と殺害され、最後には。。

悪癖アンチクライマクスは今回ありません(その代わり結末に仄かな唐突感が、ま許せる範囲)。 何より本作の真犯隠匿技は、何気にちょっとクリスティ、ああ見えてモンキー。まさか犯人が××以外の人物とは。。そして最後のコロシの犯人も。。てっきり今度こそそいつだと思ったら。。まさか真犯ではあり得ないであろう容疑者(井崎)が何処までも更に怪しい 状況証拠やら上級解釈やらに苛まれ続けるこの、まるで臍の緒で繋がれたかの様な無間緊迫よ! なかなかに込み入った本格推理でありますな!! アリバイ工作は、詰めの一手(本作の場合そこはちっとも重要じゃない)のほんのオマケとして付いてます。 私立探偵の名前が藤沼。アナーキーの人を思い浮かべてしまいました。 それと、あるシーンで眠ってしまったあのお二人に、萌えました。 幕引きの手練れ感、半端ありません。

なお本作、測量ボーイさんが書評しておられる津村秀介「寝台急行銀河の殺意」とは別物です(作者が違うんだから当たり前ですが)。お間違えなきよう。

No.29 6点 伊豆・河津七滝に消えた女- 西村京太郎 2018/01/01 18:32
「河津七滝に消えた女」「鬼怒川心中事件」「伊豆下田で消えた友へ」
(光文社文庫)

ヤマハスタジアムに磐田川崎戦を観に行った際、折角だからと新横浜のKIOSKで買った一冊。 ま同じ静岡ったって遠江と伊豆じゃ「國」が全然違いますけどね(おまけに間に駿河は挟まるし。。鬼怒川に至っては静岡でさえない)、いんですよ、これがそん時の店先でいちばんご当地に近い京太郎だったから。言ってみりゃ、浅草観光に行こうとしたついでに吉原まで足を伸ばす米国人のジョニー(仮名、26歳男性)みたいなものですか。んで試合はたしか前半2-0でジュビロ磐田がリードし、後半で2-4と川崎フロンターレの絵に描いたような大逆転勝利でした。本の内容は、いつもながらシュアーです。

No.28 6点 謎と殺意の田沢湖線- 西村京太郎 2018/01/01 14:26
「謎と殺意の田沢湖線」「謎と憎悪の陸羽東線」「謎と幻想の根室本線」「謎と絶望の東北本線」
(新潮文庫)

北国特集。肌寒い感触が素敵。やはり京太郎は旅情が書ける作家。
内容を特筆はしませんが、弛緩の無い、スリルを備えた安定感は流石です。

No.27 6点 寝台特急六分間の殺意- 西村京太郎 2017/04/12 00:52
こういうキラキラした魅力をふりまく京太郎が好きだ。

「列車プラス・ワンの殺人」「死への週末列車」「マスカットの証言」「小さな駅の大きな事件」「寝台特急六分間の殺意」
(講談社文庫)

初期のガッツリしたのも素晴らしいが、量産期もまた良い。才能ってのは凄いね。

No.26 7点 浅草偏奇館の殺人- 西村京太郎 2017/02/11 16:09
犯人はかなり見え透いてましょうがね。。。。雰囲気で押し切られちまいまさぁね。古い浅草。。。京太郎さんの内に秘めた暗い情念が最善の方向に勢いよく噴出したかのようで。
金持ち代表エノケン登場も貧乏芸人の希望の象徴として頗る良し。心に残る一作です。

No.25 5点 韓国新幹線を追え- 西村京太郎 2016/12/15 01:01
初めて韓国新幹線(ソウル⇒釜山)に乗る機会を前にし、出発前の日本で読んでみました。実際乗車してみると、京太郎さんの正確な描写説明力には舌を巻きます。車輌前半分と後半分の座席群がまるで英国議会の様に対峙するというか向かい合う、日本人から見たら何とも斬新なスタイルで、なーんとなく乗客全体でサッカーゲーム(バーをくるくる回して戦うやつ)をしている様な気になって来なくもありません。

ソウル駅の次の停車駅(東京で言えば品川駅の様な?)から乗れると京さんは書いているのですが、現地の友達の一人が「紛らわしい別の駅(新橋の様な?)」から乗れる筈だと(いくら京さんの本を見せても信用せず)言い張り、実際その駅に行ってみたら駅員から「ここには停まりません」だと。現地人より京太郎さんが正解だったのは今も良い思い出です。

ミステリ濃度は低く、派手派手しくも薄っぺらいストーリーなんですが、やっぱりサスペンスは強く、読ませる魅力があるんです。ところでどんな話だったかな? たしかテロを阻止せよとかそういうんだったかな。個人的に4点には落とせない5点(合格)作ですが、人には無理に薦めません。

No.24 4点 イレブン殺人事件- 西村京太郎 2016/11/30 00:27
孤島の廃館で合宿に勤しむサッカーチームのメンバーが次々に殺される物語でないのは良いとして、てっきり十一篇の連作企画と思いきや、十年越えの長きに渡って雑誌掲載された作品達の寄せ集めと来た。アンバランスな関係の乃至バランス崩した男女の思惑サスペンスが大勢。中途半端に無理のある設定が多い上、どれもガツンとは来ない反転結末で読み捨て向けだが、4.48の四捨五入で4点に落ちるのが惜しまれる程度の魅力は有る。これも京太郎の底力。
しかしながら、イカす京太郎、良い京太郎、強い京太郎を読んで欲しいファンとしては、人には薦められない。

ホテルの鍵は死への鍵/歌を忘れたカナリヤは/ピンクカード/仮面の欲望/優しい悪魔たち/裸のアリバイ/危険なサイドビジネス/水の上の殺人/危険な道づれ/モーツァルトの罠/死体の値段.
(角川文庫)

No.23 8点 下り特急「富士」(ラブ・トレイン)殺人事件- 西村京太郎 2016/09/22 12:49
京太郎の鉄道モノにはアリバイ本格/非アリバイ本格/非アリバイサスペンスとあるが本作は三番目に属する技巧と情感たっぷり変格サスペンスの快作。「北帰行殺人事件」で初登場した橋本豊元刑事が網走刑務所での刑期を終えて出所、その際、所長から、ある経緯により獄死した老人の所持品を東京在住のある人物に届けるよう託されるが。。

粗筋はここまで書くに留めますが、最初から最後まで謎と精気が充実した、子持ちシシャモの卵も肉もびっしり詰まった上物を思わせずにいない密度高の逸品です(その割にサラッと書いてそうな筆致がニクい)。京太郎悪癖のアンチクライマックスは見られません。実は、最終章の直前で、ストーリーの根幹を覆す、スケールの大きなドンデン返しが露わになるのですが。。それはきちんと理由あっての事で、また決して興味がそこでシュンと萎んじゃう類のものではない上に人間ドラマ的にカァっと一気に熱くなるポイントなんですよね。

一見ちょっとしたお飾り趣向かと思われた「暗号」がなかなかどうして!作成した人物の心理の綾を読み解きながらその真意を明らかにする過程は本格ミステリ領域に大きく踏み込んで、一つの大きなハイライト・シーンを形成していました(清張の「陸行水行」を思わす趣向も面白い)。「逃亡」方法とそれを取り囲むシンプルながらちょっと分厚めのトリック集積群もかなりの本格興味を唆ります。ある人物の印象がガラッと変わるのも存外に深い心理トリック。そして、前述した「或る大反転」。これだけの強力な本格推理要素をがっつり備えていながらも、やはり本作の精髄、その本籍地はサスペンスにあると見るのが正解でしょう。サスペンス色豊かな本格ではなく、本格要素を贅沢なスパイスに遣いまくったサスペンス小説。おまけに瑞々しい旅情も格別だ。今さら言うことでもないですが、京太郎の底力は本当に凄いなあ。(こんなチャラそうな題名付けといてからに!)

重要な脇役の口から出る、最後の台詞。 ミステリらしからぬその微笑ましい切り口が、心に残ります。

No.22 6点 第二の標的- 西村京太郎 2016/08/17 12:34
第二の標的/謎の組写真/アクシデンタル・ジャイブ/神話の殺人/危険なダイヤル
(光文社文庫)

スルッと読めちゃって、結構忘れるけど、悪くない読み捨て用。
男ってやつは時々、こういうのが欲しくなるからな(ほんまかいな)。

No.21 6点 夜ごと死の匂いが- 西村京太郎 2016/08/17 12:28
夜ごと死の匂いが/危険な賞金/危険な判決/危険な遺産/危険なスポットライト/狙われた男/私を殺さないで
(廣済堂文庫)

いい意味で安心しきって浸れる短篇集。傑作選とは呼べないまでも充実したプロの仕事。
こういう本をゆるぅい気分で愉しめる幸せを、しっかり噛み締めたいものです。

No.20 9点 赤い帆船(クルーザー)- 西村京太郎 2016/07/29 10:54

こりゃズッシリ来たねえ、唸りますよ。

読み逃していた海洋期京太郎の傑作、十津川のデビュー作をようやく髄までしゃぶり尽くす事が出来ました。 あいつがポルシェで死んだ東京の夜、あいつはレースで太平洋の真っ只中。。。。 色んな所で意表を突いて人がどんどん死に、誰をどう疑えばいいのか焦点も定められないままサスペンスは加速熟成拡散深化。このアリバイ偽造の魂(ソウル)はマリアナ海溝よりも●●●●●●●●●●(←●●過ぎる洒落)よりも深くて暗いよ、もう最高よ!我が愛して止まないミステリにおける対称性の美が、思いも寄らない、まるで復讐的な深淵から突き上げて来るのには驚きましたよ。

十津川がいきなりタヒチ語でおどけ出した(?)のは驚いたなァわらぅたなァ。。しかし、まさか。。いゃ まさか その アレのそれが あいつ。。。さて、そんなピンポイントで、まさかのパスポートによるアリバイ成立押し!本には指紋、旅券に押印てか! 「男性」と書いて「ガイズ」! このタイミングで、その杉山!? そこでふと思ったのが、その故意の遅延性云々を鉄道領域へと雪崩の如く適用させてみたら、そこには如何なる異化美あふれる風景が。。ということ。 松本清張「火と汐」のサーチアンドデストロイ級ネタバレにゃあ鼻からペチンコ玉も飛び出したってナもんですが、それはそれでしっかり必然性あるネタバレでした。 と思うと或るシーンではあのシュガーベイブの山下達郎さんが事件周辺に登場(?)、あわよくばまさか共犯の一翼ベェイベでは。。。なかろうかと妄想もしてみたよ。色々あらァな。。

しかしすげーなー、京太郎さん絶対クロフツの海洋アリバイもんに真っ向勝負挑んだんじゃろ、自信満々の体(てい)でよ。 ‘課長は皮肉でなく言った。’←痺れる一文だ。 或る漢字語の振り仮名に’イントリーギング’じゃなく’スプレンディッド’! “チバシ”というその響きに一抹の疑い。。まさかポリネシアのどこかの島ににそんな名前の邑でもあるんでないかと。。(笑) 待てよ、もしもアガサク的に意外な犯人吊るし上げショーをやるのが主眼ってんなら、まさかあの●●●●●が真犯人だったりはしないでしょうか。。。。?? と忙しい多方向疑惑の渦に呑まれながらもストーリーは高速航行を続けます。

さて、愈々こんな終局近くに来ても。。。何たる彫りの深いアリバイ工作だよ! 一瞬「地球は丸いから。。」なんてナンセンスな考えなんぞしちゃったじゃないか。 罪の無いヨット談義。。ライフジャケットの秘密(ちょっと怖い)。。’その時に調整’か、よし俺もそうしよう。 心理の小道具は’飲料水’かよ。。。。どこまでも慎重な犯人(ヤツ)。ヨットマン十津川も思わずシンパシィ・フォー・ジ・海の悪魔でねえがよ。

いや、信じるよ・・十津川よ! いや、まさかのその、殺した人数の見込み違いの水平線。。。。
十津川推理の部分は晴天正解、だがしかしその領域外には予想を超えた。。って、抉(えぐ)りのラインが深すぎるじゃないですか、京太郎さん。真犯人が、第一のターゲットを無事仕留めた事を確認した経緯前後、そこに、嗚呼、まさかの複数の悪魔的要因が爪を尖らしていたとは!! ふたたび、信じよう。。まるで伊藤由奈の歌だ。。過去の妙な経験が嫌な形で役に立った。。暗い机の引出し。。

なんだか最後のほう、質実剛健でスポーツマンシップにのっとった連城みたいになっていません?? 複雑にして深すぎるよー。。。。。こりゃまるで「三つの棺」のアリバイ版を狙ってるんじゃないですか??? ミステリ世界で普通だったら白けさせるもの代表たる「偶然」がこんなにも泣かせる輝きを。。。何故なら、そこに海があるから。。。。それだけじゃあない。

これは大事なことだから明記しておきますが、本作には京太郎さん悪癖のアンチクライマックスは有りません。
それにしても、十津川の直上司が近未来の十津川そのものだ。まさか、鬼貫ではあるまいな。。

もちろんですね、いわゆる冷静に考えたら(以下全略)


No.19 5点 東北新幹線(スーパー・エクスプレス)殺人事件- 西村京太郎 2016/06/10 16:00
記憶違いでなければ。。おいらがはズめて手にした京太郎は本作。京さん原作のドラマはチョィチョィ観てましたけどね。 ライヴ感覚溢れる、、実際の東北新幹線の中で読みました。そスたらまンヅ(そうしたら何と)長い長い蔵王トンネル通過中、ほんとに蔵王トンネルの場面を通過しちゃったよ、っていう。ま実際長いんだから確率的にそんな珍しい事じゃァないんだどもなス、ありャなかなかの萌え体験でしたよ。 

で、当時の読んでの感想は
「今まで読んでたような推理小説と較べるとずいぶん薄味だが。。。。どういうわけだか面白い。」
「冒頭のつかみが凄いなあ。。 だんだん尻すぼみになるんだけど、、ま詰まらないまで落ちないからいいや。」
「やたらと、句点(、)は、多い、が、スイスイ読みやすい!」
「流石に書き慣れてる!」
「意外とシャラくさくない!」
「青臭さのかけらも無い!」
「こりゃ売れるのも納得!」
「そっかー、鉄道だからってアリバイものとは限らないんだなー」
「サスペンス小説が得意な人なんだな、きっと。」
と言ったあたり(ずいぶん多い)。 その後しばらくして、何処かしらか摑んだ情報を頼りに初期(黄金期?)の諸作にちょっとずつ手を付けて行くわけです。。

既に滅茶苦茶ハイペースな量産期に入っている時代の作品ですが、それでも一定の密度はきっちりキープしています。やはりこの人の作品は最低でも5点。まず4点には落ちないね。

No.18 6点 歪んだ朝- 西村京太郎 2016/04/19 01:08
第一長篇「四つの終止符」より更に前、最初期の隠れた名短篇である表題作は、社会的テーマをミステリ興味そのもので染め上げており秀逸。叙情性が強く、それなりの文学的感慨もある。

歪んだ朝/黒の記憶/蘇える過去/夜の密戯/優しい脅迫者
(角川文庫)

表題(作)のインパクトの割にバラけた雰囲気の統一感無き作品集だが、悪くはない。
ドタバタサスペンスからちょっと感動の終結に至る「優しい脅迫者」は(締まりが甘く、さほど出来が良いとは言えないが何故か)忘れ難き味わい。 読ませるデビュー作「黒の記憶」が収められているのも特筆事項。

No.17 6点 発信人は死者- 西村京太郎 2016/02/16 12:28
先の大戦で撃沈された艦船からのSOSを定期受信せり!! まさかオカルト小説の筈は無いよなと京さんを信頼しつつ、往時の海軍将校謎の死も絡み臨場感たっぷりの南洋冒険譚を堪能し終わると。。そこには意外性の薄い結末が待っていた。だが決して詰まらなくない。本作はやはり、謎と因縁多めの冒険小説と思って行くのがイカした読み方でしょう。海洋期京太郎なら「消えたタンカー」等に較べて確かに謎・冒険の双方からの圧倒的迫力を誇ると言った風情ではないが、かと言って熱心なファン向けの小粒作品とは言えません、まだ広く読まれて然るべきと思います。(でもやっぱ「タンカー」を先にトライして欲しいなあ、その余韻のうちに本作に来るとすごくいいよ)

No.16 5点 十七年の空白- 西村京太郎 2016/01/13 09:31
十七年の空白/見知らぬ時刻表/青函連絡船から消えた/城崎にて、死/琵琶湖周遊殺人事件
(祥伝社文庫)

思わせぶりな題名に魅力的な謎、推進力ある筋運び、存外淡々とした中継部から尻すぼみの結末。。 これの典型みたいな表題作が愉しめる人向け。私は嫌いじゃない。
良質の読み捨て短篇集として、命や心に余裕があるなら目を通すも良し。

どうでもいい私事ですが、台風で電車止まっちゃって色々あった日に、飛ばされそうな屋外にて蕎麦を啜る様に一気に読んだ本でした。良い想い出です。

No.15 7点 展望車殺人事件- 西村京太郎 2016/01/13 09:01
重い反転の「友よ、松江で」、十津川警部過去の友情に絡んだドラマ「特急『富士』殺人事件」、大掛かりなトリックが色彩豊かに陰影も深い表題作等、一定の重みある爪痕深めの短篇集。 量産すれど堕せず、京太郎。

友よ、松江で/特急「富士」殺人事件/展望車殺人事件/死を運ぶ特急「谷川5号」/復讐のスイッチ・バック 
(新潮文庫)

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.68点   採点数: 1241件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(54)
松本清張(52)
鮎川哲也(50)
佐野洋(38)
島田荘司(35)
西村京太郎(34)
アガサ・クリスティー(33)
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