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斎藤警部さん |
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平均点: 6.70点 | 書評数: 1303件 |
No.27 | 8点 | 刑事部屋(デカべや)2- 島田一男 | 2024/09/09 23:59 |
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今日は記念すべき昭和九十九年九月九日だってんだから、「刑事部屋1」と同じ九点を折角だから差し上げてえ所だが、、この「2」には、「1」にはまるで無えちょっとした緩みがあってナ、どうしたって八点にマケさしてもらうよ。「1」に較べると妙に話の本数が多い「2」なんだが、後半に行くに連れ短けえ話ばかりになってくる。短けえのはいいんだが、おわり三分の一となるとちょいとミステリの深みが底まで通じてねえような話が並ぶようになってな、寂しかったよ。 とは言え、その三分の一だってじゅうぶん文章のキレはあるし、イキのイイまず上等な短篇ばかりで六~七点は充分キープなんだがね。
始まって三分の二くらいまでは「1」と同レベルのミステリ深度と高いテンションとシビレるスリルと、もちろん最高の熱い文章力で「大衆文学と推理小説の融合」を高い次元でやっちゃってるディープ・サザン・ソウルが並ぶ。 意外性凝らしたストーリーに人情あり覇気あり殺伐あり。 あれ?推理小説ってもともと大衆文学じゃなかったっけ? ってそりゃ言葉の綾というモノでありましてね。 第一話 信号は赤だ 第二話 妖婦の檻 第三話 安全地帯 第四話 刑事部長(デカチョウ)物語 第五話 殺人環状線 第六話 土曜日の男 第七話 毒蛾の街 第八話 青い顔の男 第九話 死者の呼び声 第十話 地獄への脱走 巻末、「事件記者」役者だった原保美氏による解説、というよりエッセイ、ちょいとふらついた韜晦まじりの人情現場証言は、短いながらもスコープ広く情報たっぷりで、読ませます。 |
No.26 | 9点 | 刑事部屋(デカべや)1- 島田一男 | 2024/08/17 23:59 |
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昭和九十九年の夏に、昭和三十三年の島田一男が大当たり。 この連作短篇はやばい。 脂ののった最高のシマイチ文体がミステリの深い所にまで沁み通っている。 連城「戻り川」を大衆文学の文体と内容とでやり切ったような、文学とミステリの完璧な融合感がある。 地の文ならぬ「文の地」に強烈なスリルがあるからこそホント、読ませること脅迫状の如しである。 予想外の導入部から、最高のシズラーと言える中盤、そしてエンドがどれくらいバッドなのかハッピーなのかまるで見せない巧妙なムードの導線捌きまで、パターンの画一化ってやつが徹底的に排除されている。
今や死語となった職業名(やくざ、堅気を問わず)や風俗・文化事象がさりげなく説明されているのは後年の読者に優しい。 通しの主役はおなじみ新宿署の庄司部長刑事だが、第一話だけは昇進前のヒラ刑事という、ちょっとした歴史の目撃者感も愉しい。 前半三話のタイトルにはミステリ心を最高に唆るものがある(特にオイラのようなS30年代フェチには)。 内容は六話とも高いレベルで拮抗しており、甲乙付け難い! 第一話 俺は見ている 第二話 もう一人知っている 第三話 その血を返せ 第四話 脅迫状 第五話 東京犯罪地図 第六話 七色の地図 |
No.25 | 6点 | 夜の警視庁- 島田一男 | 2024/06/24 13:30 |
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日本の夏、昭和の夏に映えるは島田一男。 人気刑事ドラマ「警視庁の夜」で主役の捜査一課主任警部(部長刑事)を演じる俳優の栗林が、ドラマ撮影周辺の現実世界で起きる犯罪(ほとんど殺人)の真相を暴くシリーズ短篇集。 その表題でドラマタイトル通り「警視庁の夜」ってのが別にちゃんとあるのに、前後ひっくり返しただけみたいな「夜の警視庁」ってのが別にあるのはなんだか笑っちゃう。
凶音の輪舞/歪んだ円舞曲/蒼い葬送曲/悪霊の狂想曲/虚像の鎮魂曲/赤き血の独奏曲 (春陽文庫) 中でも特筆すべきは二篇。 悪霊の狂想曲 これは深いねえ、悲しいねえ、いいねえ。 一方では深くて長いスパンの人間ドラマと、他方でクソ浅くクソ短小な(当事者の片方はそう思ってない)人間ドラマ、この二つが皮肉な、ミステリ視点ではある種ロジカルな衝突を起こした故に噴出した悲劇。 赤き血の独奏曲 俳優の不慮の死に応じてストーリー設定や脚本や撮影スケジュールを、工夫を凝らしパズルの様に組み替えて行く様は面白かった。ネタは「アレ」と見せかけて実は更に悪どい裏側が・・と期待したものだが。。 この真相もドラマが深くて悪かない。 最後の、ソナタ【独奏曲】(←この逆ルビはおかしい)に寄せたホワイダニット大演説はちょいと笑わせなくもないが、そのへんの急に大上段になる感じもまたよろし。 同シリーズ別作品の評でも書いたけど、芸能界で有名スター絡みの殺人スキャンダルが頻発し過ぎで笑います。こりゃあつまり、克美しげる事件や◯あ◯子事件(?)みたいな爆弾が年に五、六回のペースで落とされる異常事態って事ですよね。 |
No.24 | 7点 | 古墳殺人事件- 島田一男 | 2024/01/06 12:51 |
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“ここでは逆に、地上にいて海上で味わう地上感を味あわそうという、きわめて不自然な努力と苦心が重ねられているのだった。”
いいですねえ、この逆説舞台装置、商船を模した丘中の邸宅。 一方の舞台『古墳』(多摩の塚原古墳群内)との連携も佳き。 探偵役の旧友である考古学者の撲殺屍体が発見されたのは、この古墳の方。 「いけません。円満にして敏速なる調査のためには、婦人の狂騒は、あらかじめ排除しておかねばなりませんーー」 会話、地の文、古代文学ペダントリ披露どれも濃いわぁ濃すぎ。武蔵小杉と新小岩が総武快速・横須賀線で繋がったのはこの作品の為だったのか。。だが意外とスッキリ最短距離で見通せる短篇的真相かと匂わせる展開もあり、どこまで作為的かはともかく、リーダビリティが停滞する作品と言うのでは総じてございません。 「(前略)とうとう最後までひっぱった。…… 案の定(後略)」 呼び出し暗号、擦れ違いの機敏。 機械的物理トリックと、人情心理トリックの重なり合い。 ブロバビリディの細やかな潰しから一気に攻め入るヒロイック推理披瀝の眩しくもある味わい深さ。 ほんの微かな数学趣向。 そしてやはり、ラストシーンの爽やかな明るさは忘れ難い。 さて本作、別の島田さん有名なアレのインスパイア元のような気はやはりしますね。本作の少し前に刊行された「○○殺人事件」や、十数年前に出ている「○の悲劇」に通ずる要素も検知されました。 ところで kanamoriさんご指摘の「犯人は何もしない方が目的達成」って、、ほんまや!! でもまあ、悲しむ人を無闇に増やさないという意味はあったかな? (飽くまで小説として、犯人本位ではなく、ですが) |
No.23 | 6点 | 黒い群像- 島田一男 | 2023/09/15 23:02 |
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第一話 夜の陽炎/第二話 黒い群像/第三話 美しき鬼/第四話 凶運の星 (徳間文庫)
夏の終わりに島イチ堅調。事件記者S40年代前半篇。活きの良い会話に締まった地の文は相変わらずの宝石箱。各話、掴みもさる事ながら中盤展開、手の早いスリルが抜群の推進力を発揮。チィとばかり結末で萎む傾向はあるんだが、文句は無いですよ。ただ最後の「凶運の星」だけは例外的にエンディングこそ熱く、深く、世界が広がる。。。(若干島荘風バカ真相の様相も・・) 難点を言やあ、全体的にタイトル付けがピンと来ないと言うかあまり上手くない気がするし、中には痛恨の表題ネタバレみたいなのもあるが、まあ愛嬌よ。 ヤマさんが殴られて気絶する度に噴き出しちゃつたり、牧の天然ぶりが妙に目を惹いたり、コマキレ女に嫌な女、とまあ色々。 記者の皆さん、警察の皆さん、市井のみんな、頑張れ!!! |
No.22 | 5点 | 金色の花粉- 島田一男 | 2022/08/24 18:27 |
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□□金色の花粉□□ 犯人は意外だが、思わせぶりなアガサ風高等戦術を匂わせた割には驚きの少ない犯人設定。だがそこから人情譚に雪崩れ込むラストは良い。浅草ストリップ劇場を舞台に錯綜気味の連続事件の中、殺人未遂の動機の機微にはやられた!
□□泥靴の死に神□□ 高級クラブホステスが妙な格好で電車轢死。鑑識側を主人公に、公安の斎藤警部も呼び込み、今回は脇に回った庄司部長刑事が豪腕人間属性トリックを静かに見守った、意外性突き抜けるキツめの一篇。 □□青い死化粧□□ 病院の外来者に対する無防備ぶりが招いた全裸屍体遺棄。意外性も話の動きも少ないし、犯人像も何だかなァてなもんだが、シマイチ話術にうっかり乗せられ、艶笑苦笑の物証発掘エンドに宥められておしまい。 □□宿敵□□ 激烈な倒叙ショートショート(と思ったら意外と頁数あった)。小さな郵便局の不良局長が毒殺された。。とこれだけでピンと来そうなささやかなトリックが使われるが、この熱いスリルは流石なにげに人間と人間ドラマが描かれてあるからこそ。鮎川と清張が短いのを共作したら島一に化けちゃった感じ。庄司さんがいつになくミステリ的に格好良くて嬉しい! □□密室の女王□□ 動機もトリックも微妙だが、ダイイングメッセージの意図と効能には意外性あり。大学教授が密室で頭を打ち死亡、周辺には怪しい人物がうようよ。しかし、もう少し人間ドラマ深掘りしないと結末に驚けないよなあ。またしても庄司部長刑事は脇に回る。 □□自殺要員□□ 凄いタイトルと、強い最後の台詞。この二つで話全体を支えておるな。大手芸能プロダクション社員が東京地検の厠所にて変死。社会派もどきと人情譚もどきの掛け合わせだが、それなりに読ませる。しかし、今度の庄司さんは脇どころかチョイ役やないか! |
No.21 | 6点 | Qを出す男- 島田一男 | 2022/07/01 21:38 |
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土曜日が半ドンだった時代、関東テレビ『七つの疑問』は視聴率3割を常に超える金曜夜の鉄板番組。現実の迷宮入り事件をドラマ(生放送!)に仕立て、ドラマの後は実際の事件関係者に登場してもらい、司会の質問に一つずつ答えるという、危険極まりない趣向。 案の定、当番組が契機となったとしか考えられない新たな事件が勃発しまくり、当番組のディレクター小暮がAD矢沢と手を取り短時間でバッサバッサと解決しまくる連作8篇。 今年は夏が早い。昭和の夏の季語、島田一男は早くも全開だ。
はい、本番!/特別出演/作者登場/おくら番組/特別参加/当てレコ/アドリブ/吹き替え (春陽文庫) 少ないページに真相のバリエーションをよくぞ頑張って揃えたもんだが、またアレのナニがそうなっちゃったんだろ?ってどうもパターンが見えてしまいがち。解決シーンも、読者はもう分かってるよって感じなのにやたらゆったりユタユタしてたり、かと思うと複雑怪奇な真相の暴露をラストスパート凝縮でやたらバタバタしてみたり、分かりやすかったり稀に分かりづらかったり、濃淡がマチマチなんですが、そんなんは大した瑕じゃありませんな。江守森江さん仰る通り、読んだら忘れる面白作品としては、そのへん変に凝ったり整えたりで文章の勢いを殺いでしまったら元も子もありません。 とは言え、玉石混交というのは違うけど、中にはなかなかガツンと来る本格魂ストレート内角高めの忘れ難きブツもやはり混じってるんですね。 ただ、そういうのだけ撰んでコンパイルしても島田一男の良さの全体像は伝わらなかろうねえ。 関係ないけど、むかし一部のマスコミで「男のいちも◯」を「Q」と呼ぼうというズッコケキャンペーンをプチ展開してた事があって、結局すぐポシャっちゃったんですけど(誰か憶えてる方いらっしゃいません? 1980年前後だったと思います)、この本のタイトル見るとそれ思い出しちゃって、ど~うも笑っちまうんです。 |
No.20 | 5点 | 夜の捜査線- 島田一男 | 2021/08/04 16:30 |
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妖精の舞踏曲(ボレロ)/悪女の三拍子(サンバ)/赤き死の組曲(スイート)/悪霊の合唱/千人斬り狂騒曲/墓掘り交響曲(シンフォニー) <春陽文庫>
昭和50年代前半、人気TVドラマ『警視庁の夜』で部長刑事(デカチョウ)役を演じる「栗チョウ」こと栗林はそれなりに人気の中堅俳優。新宿署に勤める本物の部長刑事「本チョウ」こと本田の信頼を得、芸能界で起こる本物の事件捜査に次々と協力しては本ボシを挙げて行く様を描いた連作短篇集。会話に文章は流石の高め安定だが、謎や解決はどれもチョイと浅めで、それこそ昭和の連続刑事ドラマ原作にはピタリな風情。「赤き死」や「墓掘り」あたりはもう少し深い真相で唸らせるかと見えたが、、存外シュンと終わりやがった、がそれでも合格点なのはこの人の文章力こそなせるワザ。ただ、昭和の性風俗がエロいというより厭らしいにおいで立ち込めるのはちょっと読者を選ぶかな。題名のルビに一部おかしいのが混じってるのはご愛敬。 それにしても、芸能界で殺人事件が頻発し過ぎです!! |
No.19 | 5点 | 現場捜査官- 島田一男 | 2021/06/25 11:35 |
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「現場」の読みは「げんじょう」。 ‘79年の捜査官シリーズ第五弾。 主役チーム科捜研の面々が鑑識や刑事部長(デカチョウ)達と屈託のない協力体制で事件に取り組む、明るい警察小説。
会話や地の文のウィットもミステリの妙味も、流石に飛ばし過ぎてカスレたのか若干薄味だが、まだまだ悪くない。 ちょっとした恋愛要素を深く掘らない匙加減も良し。 現場よ語れ/妖女の路/誘拐犯の顔/浴槽の女/嫌な家族/白い蜃気楼 (光文社文庫) 推理小説としては、一に「妖女の路」、二に「嫌な家族」、このあたりが謎に奥行き有りでよろし。 |
No.18 | 4点 | 影のない男- 島田一男 | 2020/08/28 15:40 |
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南京香水の女/香港岬の妖精/白檀国の女王/桑港(シスコ)の女神像 (徳間文庫)
日本の夏、昭和の夏と言えば島田一男の短篇だが、このシマイチはチョイとイマイチだね。 ミステリも文章も旨味に欠けて、ピリっとしねえや。 お色気で押してるとこも、何だかなあ。 ただ「白檀国」だけはちょっとばかり深い真相だったね(警視庁の斎藤警部も大活躍!)。その勢いで期待を持たせた「シスコ」がまさか、そんな優しい、毒の無い裏の無い結末だとは。。(ネタバレくさいけど、一男さん途中まであの女を犯人にする気だったんじゃ。。大使館のシーンとか、大いにニオったよ。) FBIのGメンである日系アメリカ人、表の顔は韓国系通信社のキャメラマン、サクラ・ドーモンが業界仲間(通信社のほう)のスペイン人アントニオ・アルカセル・ド・アフォンソ君や警視庁公安二課の斎藤警部と付かず離れずで国際事件をバッサバッサと解決する痛快お色気アクション!… と言いたいところだが、痛快とは行かんな。 映画だったらいいかも知らん。 「一杯飲みたいんだ」 「うしろのシートの下に、スコッチでもブランデーでも入ってるわ」 「音楽を聞きながら飲みたいんだ」 「ラジオのスイッチを入れればいいわ」 「飲んだら、ひと踊りしたいんだ」 「×××××なら、その前を右に入るのよ。でも、右折禁止だわ」 「歩こうぜ」 ↑ この会話は好きだ |
No.17 | 6点 | 銀座殺人事件- 島田一男 | 2020/06/26 12:14 |
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第三の顔/白い通り魔/血を盗む女/たそがれ慕情/運命の罠/黒い虹/白夜の決闘/銀座殺人事件 (廣済堂文庫)
人情譚と呼ぶには少しばかり熱過ぎる友情の混じる、泣ける話だとか。。 「たそがれ慕情」、「黒い虹」それぞれの自首ホワイダニットはチクショウ堪らなく泣けるなァ。。。。 ジェンダーの微妙な線を突いてくる話もちょっと目立った。 目方は無いが底は深めの、謂わば軽社会派めいた作品も目立つ。 庄司部長刑事(デカチョウ)の味わい深さで勝負あり。 |
No.16 | 6点 | その灯を消すな- 島田一男 | 2020/01/30 12:00 |
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「南郷さん、魚が仲よくするときは、どんな風に挨拶するんでしょう?」
「よし、わかった。おしっこをして寝たまえ。」 流石に、口のきき方の分かった島田一男だ。佳き旅情もたっぷりだ。 シネラマ見物、「爽快ですわよ!」 金丸京子役にゃア芳根京子がぴったりだ。 光文社文庫巻末解説の大内茂男、いいねえ。 “ホヤのくすぶった石油ランプが、そんな状況を、薄暗く照らしていた。” 南郷弁護士昔なじみの平家村で展開する連続殺人事件。題名に込められた意味をくどくど説きゃしないアッケ無さもシマイチらしいコイネスぶりだが。。。さてこっからネタバレ風な言いぐさになりますが、意外性とは共存出来ない類の大動機で締めるのかと、思いきや!! しかしその大落ち、質量併せてもうチョィたっぷり味わせてくれたらなア。。反転後が短過ぎるやなア。。と恨みにも思います。 ところで、光文社文庫表紙の女性はLiLiCoさんでしょうか? |
No.15 | 6点 | 東京殺人地図- 島田一男 | 2019/06/06 00:35 |
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ポケベル、デートクラブ、新風営法、新語「ソープランド」、新聞社にもコンピューターシステムの導入により。。。。シマイチ先生の描く昭和末期風景連作(ブン屋モン)。なんもかんも良い意味でチャッチャカチャッチャカ、犯人の意外さに正面から向き合わないのもよしと出来る結果オーライの勢いで快調、晩年が見える歳になっても飛ばしまくり!
死者の身上書/“金魚”殺人事件/夜の猟人/土曜日殺人事件/死神のラブコール/青田刈り殺人事件/山手線の女/死神は夜走る (徳間文庫) |
No.14 | 6点 | 十三度目の女- 島田一男 | 2018/07/18 02:21 |
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夏だ! エレキだ! 島田一男だ! シマイチ関西弁もチョコイと堪能出来る、三十年代昭和の空気でブンブンの短篇集。 某作、”助手の金丸京子の声にも顔を上げず、拡げた世界ヌード写真集のページをめくる”南郷弁護士って。。「世界ヌード写真集」って。。。 某作、そのタイミング、歯医者の打つ楔にクラクラだぜ。 某作、替玉の逆転劇こいつァなかなか、ブラウン神父への感服型挑戦状として有り難く受け取るぜ(俺が神父なんじゃねェが)。 全体で見るとトリックの工夫が深かったり浅かったり、トリックと人情物語との絡みがきつかったり緩かったり、色々ですが、細かいこたァ置いといて日本の夏にはやっぱり島田一男の短篇。 これは傑作撰ってガラじゃないお気楽な一冊だがキツい一発も数篇混じる。
銀色の恐怖/電話でどうぞ/黒い誕生日/拳銃何を語る/十三度目の女/赤と青の死/ガラスの矢/無邪気な妖婦/大兇/悲運の夜 (光文社文庫) |
No.13 | 7点 | 錦絵殺人事件- 島田一男 | 2018/01/26 01:59 |
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カズオ・シマダ最初期二作ごってり本格の後の方。(先の方は「古墳殺人事件」) ストーリーや舞台装置のベタな本格ミステリ性は量産期諸作とは異質の感がありますが、肉体化され感満載の蘊蓄連射や幅広く豊か過ぎる日本語表現の花束をヒョイヒョイ投げてくるあたりなんざ(探偵役は江戸っ子ファイロ・ヴァンスの趣)後年の軽快かつ人情非情どちらもこってりの会話/地の文キャッチボールに不思議と直結する堪えられない芳醇味がありんす。んで文章は最高に素晴らしいのですけどね、小説のほうは、、神奈川奥地の旧家(天守閣がある!)の主が失踪中だとか、髑髏のずらり並ぶ最上階で不可能殺人だとか、義経伝説見立て連続殺人だとか、まさかの愉しきタペストリー感で展開するちょっとした密室講義の嬉しさや、、とまず魅力充分の古式ゆかしい謎群に較べ、解決篇がちょっくらギスギスドタバタ、、無理感、不自然感の強い物理トリックで折角の大きな(とは言えさほどビックラはこけない)心理トリックの綾を準原色の油絵具で汚く塗り潰しちゃってるみたいなね。。ってまあその辺の人間臭さもご愛嬌で充分許せますけどね。私みたいに雰囲気良けりゃロジック三の次って人以外にはちょィと薦め難いが、シマイチ文学を愛する人でありゃ、是非とも手に取って! |
No.12 | 8点 | 社会部長- 島田一男 | 2017/09/02 19:01 |
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いつも気ッ風のいい手練れの文章で愉しませてくれる島田一男先生ですが、本短篇集のキレキレっぷりはまた格別!! 余ッ程α波が頭ん中スクランブル交差点を駈け巡ってたんでしょうナ! おなじみ有楽町は「東京日報」社会部の赤鉛筆使い、北崎部長がまた最高に良い! クシャクシャのハンチング、遊軍記者の亀田(亀チャン)もまた最高! 他に桐さん何さん、警察側とか、動きのいい脇役にチョイ役、いィ~っぱい出て来て活躍します。
社会部長(表題作) 解決はどうッて事も無いが、事件はちょッと面白い。要するに羊頭狗肉ってワケだが、何しろシマイチ先生の会話文も地の文も快調に飛ばし過ぎてるモンだから文句など付けられン。昭和の音楽業界の裏で起きた連続殺人。まァでも薄味ミステリだからネ、それでも7点。 三つの仮面 事件解決に直結したラストシーンが堪らなく沁みるんだ。。。。解決そのものは平々凡々、事件はまずまず興味深し。つまりは羊頭狗肉最後にまた羊ってナもん。またもや会話に文章最高。戦後の混乱を引き摺る昭和の失踪事件。親子の情の物語上級篇。やるじゃねえか、アプレの娘。。8点。 泥濘の町 泣けました。もうこれだけでネタバレです。都下の腐敗した街で起きた新聞記者殺し。8点強。 女殺陣師 稽古で使う竹光が真剣に掏り替わって人が死ぬ。ところがこの剣劇団、斬るシーン以外は普段から真剣でチャンバラやり合ってたってんで話がチト面倒。これも解決自体は平凡なもんだが、心に残るエンディング。刃傷からんだ人情話。7点。 三行広告 珍妙な新聞広告はもう出オチのネタバレに見えチャった。。果たしてその通りだったが解決の糸口はなかなか肌理(キメ)細か。某ホームズ譚の応用篇かな。緩さがB級ぽィが悪ヵない。 7点チョィ。 幻の男 某著名作とは関わり無し。自分は狂ってるかも知れない、狂ってないなら命が危ない、と精神科で不思議な陳述をした男が、殺された。魅力ある謎はまずまずの反転解決を見る。でもやっぱり会話文が最高、結末の驚きを上回っちゃってまさァね。7点強。 特ダネ売り 隻腕の彫刻家が持ち込む奇妙な事件ネタ。入れっぱなしって。。歯って、そっちか。。。よろしく⚫️⚫️すべし。。スッと消え行く寂寞のエンディング。こりゃァ独特の味。 8点弱。 アリバイ売ります 河内桃子。。最後の最後で急に話が大きくなった。隠しの巧いブラウン神父直系欺瞞+α。シマイチ流の複雑系タマシイがやっと炸裂してくれたってナ。ショートパス決まり過ぎのラスト数十文字、たまらンね! 8点強! |
No.11 | 8点 | 座席番号13- 島田一男 | 2017/07/07 10:53 |
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昭和三十年代。 上野、谷中、根岸、、気っ風のいい町医者が鐵道と愛慾がらみの怪事件をちょっとしたキッカケから一瞬のヒラメキで一気に解いちまう短篇八本。何時もの手練れの味が堪能出来るが、本作群は特に伏線の張り方が実~~に巧み、地のムードにすんなり溶け込み過ぎだよ! 話の本拠地が轢死と縁深い鐵路そばだけに物理的残酷味も時に濃厚だが三十年代らしい殺伐なりの人情厚さもよく機能しほろ苦く中和。 主人公を中心に磁場を拡げる臨場感、連帯感、危機感、安心感、存在感、、コッツ、コッツと靴音響く、、ゴーリ、ゴーリと◯を斬る、、スカリッ、と切り取られた○が電車の車輪に貼り付いた 、 、 っとシマイチ先生ならではのカタカナ擬音擬態語も素敵に充実臨場感。 カーの人気作を思わす大胆トリック登場、ブラウン神父直系応用篇ちらほら(こっちの医師は神父よりちィと無骨だが) 、 そして最高の。。まるで下町過ぎるクリスチアナ・ブランドの様な。。。表題作。 いやァそれにしても、今年も島田一男の夏到来ですな。。
ビンづめの拷問 /首をちぢめる男 /ある暴走記録 /かげろう機関車 /機関車は偽らず /座席番号13 /顔のある車輪 /ノイローゼ殺人事件 (春陽文庫) |
No.10 | 8点 | 上を見るな- 島田一男 | 2017/04/30 18:12 |
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クリスティか、ディヴァインか、島田一男の「上を見るな」か。
親族会議の必要は無くなりました。。。 それでも何や彼やで主人公、南郷弁護士には留まって欲しいと言う”彼”。。 「そんなに沢山仕事かありそうですかね?」 さあ、その殺人に、動機と言う名の帰還点は?! 或る重要登場人物が死ぬタイミング。。シビレさせていただきました。 結末へにじり寄るに連れ、予想外の圧縮が八方から抱きすくめに掛かります。 すげえアリバイトリック(ブラウン神父のアレの思い切った応用篇だ)。。。。でありながら、その!?!? ソ連だかアメリカだか。。 この周到にして鉄壁な犯人隠匿魂は、、まさか数年あとのD.M.なんとかさんに影響与えてないか?? 或る事の動機には「レーン最後の事件」にも通ずる清冽さが。。 脆弱な憶測を爆砕する瞬間冷凍の迫撃ラストと、それを冷静に見下ろすかの様な表題の機微、あるいは意味、または発言権! 本作をアガサかD.M.の翻案だと騙されて読んだら真犯人当てたかも知れない、そんなハッタリふかしといて結局は騙されるに違いない、猛毒含んだ意欲作。本は薄いが中味は分厚い!! |
No.9 | 7点 | 特捜検屍官- 島田一男 | 2016/07/15 12:10 |
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日本の夏、昭和の夏に島田一男だ。
よくある話かと思えばまさかの奇想押し、それも粋なヤツ。 間違い無い、昭和日本のチャンドラーは、もとい、マーロウは、シマイチだね(本当か?)。 中に一作「十津川さん」が登場したのは、ちょぃと萌えたね。もちろん、あの人では、ないんだよ。 検屍官の主人公が、母無しの愛娘を思う気持ちが、ほんのさり気ない言葉で触れられるのがいい。 ただ、検屍だとか鑑識とかならではの”とっかかりの妙”だとか独特の視点の斬れ味、ってのとは違う気がするんだよ、どれも普通の本格謎解き風で。けど、全く文句言う気がしない。抑えられチャうんだよねェシマイチ先生には。 まだ夏だ。もう二冊くらい行くか、島田一男。 屍臭を追う男/虹の中の女/素足の悪魔/黒い爪痕/雨夜の悪霊/大凶の夜/決定符(きめて) (青樹社文庫) そいゃ中に一つねえ、有名推理クイズのネタそのものの消失トリックのがあるんだけど、まさかこの作がそのオリジナル、って事なのかいな?? |
No.8 | 6点 | 誤報殺人- 島田一男 | 2015/10/24 23:35 |
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記憶違いでなければこれも何気に本格色の強い短篇集、だったはず。
もしそうでないとしても面白いのは間違いない。大丈夫だ。 妖かしの薔薇 /砂浜の秘密 /黒い掟 /二つの女画像 /死人に口なし /誤報殺人 (天山文庫) |