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斎藤警部さん
平均点: 6.69点 書評数: 1496件

プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.476 8点 砂の器- 松本清張 2016/01/27 18:27
‘蒲田’と言やぁむかし乗換え駅でよく途中下車したもんです。どこぞの呑み屋行ったんだろ、例の二人は。ひょっとして「鳥万」かな?と思って原典確認したら”トリスバー”だった! しかし蒲田如きでもう場末と呼ばれるとは、時代を感じますねえ。

構築美に少しく皹(ひび)が見られるのは承知ですが、破綻する程の破格でもなく、適宜の余裕を湛えた準大河小説として併せ呑む許容内ではないでしょうか。そんな人間臭い蟠(わだかま)りの萌芽も含め素晴らしい味わいを端から端まで並べ尽くした作品と思います。日本列島を股に掛ける遠望ゆたかな旅情は目鼻に眩しく、人情と社会の歪ませ合いがひりひり痛い。謎伏せの深さがいつにも増して雄大な渾身の力作だ。躊躇無く「社会派推理小説」と呼びたい。生前の祖父と、本作について少しでも語り合いたかったなァ。

例の音楽ですが、例のバカトリックですが、、いいんですよ小説の場合はアレで。逆に映画版の様な佐村河内さんもかくやの絢爛悶絶恩讐交響詩を清張文章で表現された日にゃ、ちょいと違うものに捩れてしまいまさあねえ。そういうのはまぁ中山七里さんに託したい所で。

No.475 8点 高木家の惨劇- 角田喜久雄 2016/01/27 13:30
よいこのみんなには「発狂」でおなじみ角田喜久雄おじさんの健筆が、退屈弛緩を排除した滑り出しの勢いそのままに終結まで颯爽と駆け抜ける快作! 時折のアクセントに煙草。

果たしてこれはアリバイトリックのお話なのか、それとも。。思いの外早い時点で”装置”の存在が露呈するや予想外の安っぽさが湧き上がるが、それに抗してバランス取るかの様に、事件背景が実はこちらの憶測よりずっと複雑であるとの暗示物件が次々と忍び入る。
されどやはり物理トリック満開な雰囲気に苦笑するも、先走り癖のある読書を宥める様に作者は更に先走り、優しい解説と共に更なる謎の泥沼まで提示してみせるってんだから、そのしたり顔ぶりは見事だ。
終結が呆気なく来たなと思えば、、まさかの”トリック反転”ですか!こりゃ参りました。ストーリーが反転するのでなく、トリックが反転するってどういう事よ!こういう事だよ。。それと表裏一体なのが、クリスティ再読さんご指摘の際立って格別な「犯人像」ですよね。。そして蟷螂の斧さんの言及される(第一)被害者の、結局は自らを死に至らしめたその企図たるや。

さて事件の隠された全景も晒され、題名の本当の意味は、そういう事なんですね、と納得し、刑事ドラマの様にちょっとくだけたシーンで〆。

むかし祖父の書棚に何処かの叢書と思しき本作が置いてあり、ずっと気になっていたのでありますが、幼い頃は題名が怖いのと、後には何故か読むのを遠慮し、時のはずみで生前ないし遺品として貰い受け損なったこのクラシックな本格推理、何処と無く梗概を聞きかじったつもりで重い腰を上げ読んでみますると、これがアナタこっちの憶測を豪快にぶち破る大きなヒネリと機動性に満ちた作品で存分にシビレさせていただきました。音楽に喩えれば意外とジョージィ・フェイムの様な味わい、かも。


【ネタバレ】
第二の探偵にして有力容疑者、且つ証人でもある人物が終盤に来て第二の被害者となる錯綜急展開(軽くシンデレラの罠状態!?)には参ったよ

No.474 7点 地獄から来た天使- 土屋隆夫 2016/01/26 18:52
氷の椅子 /潜在証拠 /絆 /老後の楽しみ /私は今日消えてゆく /わがままな死体 /地獄から来た天使
(角川文庫)

エロかったりドタバタだったり、なんかネジ具合のおかしい土屋さんが目立つ短篇集だが、ミステリとして水準は高い。そうそう「絆」は中でも異質の(普段の土屋さんらしい)涙を誘い背筋を伸ばす文芸推理の佳品。アクの強い倒叙「潜在証拠」は浸食力抜群。

No.473 8点 泥の文学碑- 土屋隆夫 2016/01/26 18:37
空中階段 /りんご裁判 /ある偶然 /虚実の夜 /盲目物語 /夜行列車 /穴の穴 /泥の文学碑
(角川文庫)

これは充実の短篇集ですね。創意ある復讐譚の表題作からして本腰が入っている感じ。言うだけ野暮ですが文芸作としても(勿論ミステリとしても)抜群の冴えと味わいの作品群です。日本に生まれて良かった!

No.472 6点 企画殺人- 鮎川哲也 2016/01/25 18:10
錯誤 /偽りの過去 /蟻 /墓穴 /憎い風 /尾のないねずみ /てんてこてん
(集英社文庫)

魅力ある題名が体を表し損なった感のある小粒な倒叙ミステリ集。ギザじゅうさん、測量ボーイさんおっしゃる通り犯行の露呈や犯人特定の決め手が偶然頼りな作品ばかりで、では倒叙本格は棄てて倒叙サスペンスに専念したのかと言うとそこまで腹を括っちゃいない。まぁそんな清張流儀を鮎川さんにお願いしても仕方ありません、これはこれで悪くもありません。「TTT」を最後に持ってくるのはちょぃと粋だね。(どうして粋かは言えないよ)

No.471 6点 謎解きの醍醐味- 鮎川哲也 2016/01/25 17:19
寄せ集めでもファンには嬉しいもの。フーダニット中心、良作も何気にちらほら。謎が興味を引く「塗りつぶされたページ」の論理展開は鮮やか。三本のエッセイも見逃せません! “南区南太田”なるタイトルには思わず「暗闇坂」を思い出してしまいましたがあっちは同じ京急沿線でも”西区戸部”だったか。

離魂病患者/夜の断崖/矛盾する足跡/エッセイ 日記/プラスチックの塔/エッセイ 南区南太田/塗りつぶされたページ/緑色の扉/霧笛/エッセイ ペテン術の研鑽
(光文社文庫)  

No.470 7点 晩餐後の物語- ウィリアム・アイリッシュ 2016/01/25 16:41
サスペンスだとか雰囲気よりも面白い物語集として、ストーリーを追いオチを探って読むのがいい感じの一冊。酒に合う。名作の誉れ高い表題作は、フーダニットの風薫る中間部にスリルがあって良いですね、そうしておいて実は父子愛の泣かせる物語でもある。最後の見え見えなアレはオマケ。他も手を替え品を替え実に美味。「ヨシワラ」はアンコールピース。

晩餐後の物語/遺贈/階下で待ってて/金髪ごろし/射的の名手/三文作家/盛装した死体/ヨシワラ殺人事件
(創元推理文庫)

No.469 7点 わたしを離さないで- カズオ・イシグロ 2016/01/25 11:01
「或るおぞましいこと」を主題に据えた問題作。終結近くまで隠すかと思われた謎の核心らしき事柄は物語のごくアーリーステージであっさり暴露。しかしまだ枝葉なのか幹なのか容易に素顔を見せない謎たちが居座り、隙あらば増殖せんとする気配もそこかしこ。一番の深淵な謎は語り手の人物が現在どんな状況に置かれているのか、とも思えるが.. これはある意味「日常の謎」か、はたまた「日常(?)の謎」か? しかし仮に「(?)」無しだとしても語り手にとってはるか昔の事柄だ。。という事は。。 いや、これはひょっとして、より大きく一般的な日常の謎、決して解こうとしてはいけない普段は見えない類の謎の隠喩なのだろうか。

さて物語の丁度真ん中あたり、核心その一に続きその二もあっさりと明かされる。それでもなお徐々に積み重なり行く違和感には二種類、語り手が過去に感じたと書かれているものと 読者が感じるよう仕向けられるものと。第二部から第三部へ移る瞬間、予期していたざわめきと突然の静寂が一気に吹き上げる感覚に掴まれた。「提供者」のみならず「介護人」なる存在、その実像と、物語の中で果たすであろう役割はまだまだ見せない。。「最悪の事態」って一体何だ? 謎が解けたりまた生まれたり、常に少しずつ増え続ける薄暗いモヤモヤ感よ。

最後の最後近くまで、もしや、まさか、と思わせる際どい筆致に寄り掛かってしまいたくなった。本当の終結部、まだ終わらずにちゃんと私を納得させよと祈るように読み進めたが、祈りは伝わらなかった。 その終結の、目を疑う抑制の際立ちに私は泣いた。

多くの登場人物が多くの会話を交わしながらのこの強烈な寂しさ、空気のうすら寒さは心に残る。
ミステリとすぐ隣り合わせの庭に秘かに育った、幹の太い樹の様な作品。

*ハヤカワ文庫表紙のカセットテープが「イニシエーション・ラヴ」を連想させるのは、本作をミステリ寄りに読ませてしまう一因かも..

No.468 5点 人質カノン- 宮部みゆき 2016/01/21 10:09
重い社会テーマを軽く短く展開。初期の東野圭吾短篇集を、洞察ちょっと浅くして、代わりに温かみをふうっと吹き込んだような。。

No.467 6点 返事はいらない- 宮部みゆき 2016/01/21 09:41
軽くてきれいで温かい。ちょっと怖くて淋しい。悪くないね。

No.466 5点 ミステリーを科学したら- 評論・エッセイ 2016/01/20 15:32
言うだけ野暮ですが、ミステリがちゃんと'分かった上で'書いてある本ですからね。色んな意味で信用出来ます。仮に嘘や間違いがあっても信じちゃいます。目立ってエキサイティングというわけでもないが、ふんふん、ふふん、ふふふ~~~んってな具合に読めちゃって、ためになる。そんな本でした。

No.465 9点 ブラウン神父の醜聞- G・K・チェスタトン 2016/01/20 14:07
【逆ネタバレかも知れません】
本短篇集の中に一つ、人気ミステリ映画「ユージ○○○・サスペクツ」の元ネタ乃至インスパイア元ではないかとサスペクトされる作品がありましてね、『醜聞』の中ではそれがいちばん好きです。一般人気も高そうなあの一篇なんですが。。
【逆ネタバレかも知れないのはここまで】

後半の通しテーマになっている感のある、往時のエマージング・ホット・イシューであったであろう共産主義について(資本主義もろとも!)キリスト者の立場から既にこんな深みある温かい洞察を施していたとはね。。感動を覚えますよ。更に思えば、共産主義が早晩滅びてしまう予見さえ包んで愛情豊かに労わろうとする文筆の慰めですよね、泣けて仕方がありません。このあたりに、作者の文章鮮度永続性の鍵が埋まっている思いがします。

巻末、訳者の片割れ中村保男氏による、著者への共感溢れつつ時に厳しく当たり、総括者意識豊かな解説文の洞察絵巻は賢明なる読者諸氏にとってこの上無い前方指標となり得ましょう。「共産主義者の犯罪」なる作品の標題そのものに対する謎解きがチェスタトンの持つ奥行き深さの良い実例解説になっている件(くだり)もハイライトの一つと言えましょう。

過日逝ったDavid Bowieに、チェスタトンだったらどんなにか含蓄と警鐘に富んだ最高の追悼挨拶を叩き付けた事だろう、と切実に妄想する今日この頃ですが、皆さんどうにかお過ごしでしょうか。

No.464 8点 蝶々殺人事件- 横溝正史 2016/01/19 18:41
ちょっと複雑な遠距離アリバイと、簡素な超短距離アリバイ。この二つだけで豪華版なのに、そんなアリバイ崩しを二つも含みながら、何故か容疑者さえ絞りきれないまま結末突入! そして真犯人の意外なこと意外なこと(評者が最初に睨んだ人物でしたが、途中から無意識にリスト外になっていました。。) このWアリバイ崩しと意外な犯人の一夫二妻マリアージュ(?)をくるりと包み込んでいるのが、まさかの、、、、おっとここまで。 真犯人以外にも’意外な役割’が最後に明かされる登場人物も複数人いたりして、本当に造作の贅沢な、それでいて小粋に機敏なる名品です。それもこんな太古の昔(1946=昭和21年)によくもまあ、ねえ(ためいき)。。 終始漂う明るくユーモラスな雰囲気も素敵だわ。その明るさの要因の一つさえ、また最後になって明かされるというね。。本当に分厚い推理小説ですよ、頁数は然程で無くとも。

蟷螂の斧さん仰る通り、類推されるのはクロフツのようでいてクリスティですよね。その理由は大きな声では言えません。。

【ここよりネタバレ的】
というか、鮎川哲也と中町信を掛け合わせた様なストーリーではないですか(二人ともぐっと後年なのに)。 まさかの●●トリックだったとはね。。

No.463 6点 まっ白な嘘- フレドリック・ブラウン 2016/01/19 16:58
若かりし頃、緩めに愉しませてもらいました。本業SFの合間に本気の趣味で書いてたんでしょうか、こういうの。氏のSF短篇に較べると若干切れ味甘いのが愛嬌です。有名な「うしろを見るな」なんかタイムパラックスで包み込んでSFミステリに仕立てる手もあったかな、なんて思っちゃったりなんかしちゃったりなんかして。「叫べ、沈黙よ」や「史上で最も偉大な詩」の様に大きく振りかぶった感のある作品が印象深いけど、本格パズラーやハードボイルド風を含め、意外とジャンル的バラエティに富んだ一冊に仕上げてあるのが好感触ですね。

笑う肉屋/四人の盲人/世界がおしまいになった夜/メリー・ゴー・ラウンド/叫べ、沈黙よ/アリスティッドの鼻/後ろで声が/闇の女/キャサリン、おまえの咽喉をもう一度/町を求む/史上で最も偉大な詩/むきにくい林檎/自分の声/まっ白な嘘/カイン/ライリーの死/うしろを見るな

No.462 7点 地獄の読書録- 事典・ガイド 2016/01/17 14:47
高校の頃、ハードカバーの安い古本を買ってチョコチョコ覗いたもの。小林信彦氏の簡素にしてユーモラスな文章が好きでした。当時氏の小説もいくつか見てみたけど、こちらの書評本がぐっと面白かったなあ。

当時の新作がメインですが、往年の抄訳や悪訳(? 一部の旧訳に対する氏の悪態が凄くて笑っちゃう)が生まれ変わった当時新訳の古典名作もチョイチョイ現れるのが良いアクセント。

当時新作の書評でやけに興味を引いたのが鮎川哲也「鍵孔のない扉」の不可能興味(応用度高い特殊密室トリック)の概説。もちろんネタバレは無し。「鍵孔」を実際に読んだのはずっと後になりましたが、その間もず~っと、簡潔で掴みの良い氏の書評が頭に残り、読了して「なぁるほど、そういう事だったのねぇ~」と感慨深くもスルンと腑に落ち、、おもむろに葉巻へ火を点けたものです。(最後のは嘘)

No.461 6点 あるフィルムの背景(角川文庫版/ちくま文庫版)- 結城昌治 2016/01/15 15:18
残酷なツイストに翻弄され、躍動ある暗黒が沁み入る、救われない物語八篇。

惨事/蝮の家/孤独なカラス/老後/私に触らないで/みにくいアヒル/女の檻/あるフィルムの背景
(角川文庫)

「みにくいアヒル」の最後、この根深い醜さには耐えられん。 「惨事」は悲惨極まりない小噺。 「老後」の後を引く怖さにあなたも是非、撃たれたし。 ちょっと長い表題作は、過去に撮影された「ブルーフィルム」の存在に翻弄されるサスペンスの好篇。 それにしても、どの作も題名から不吉なイメージが一気に迸(ほとばし)りますねえ。

No.460 7点 メグレと火曜の朝の訪問者- ジョルジュ・シムノン 2016/01/15 13:39
ストーリーの大半は、事件の起こる「ゼロ時間」に向かって進む「マイナス時間」のサスペンス。 警察にメグレを訪ねた夫曰く「妻が私を殺そうとしています。」別途、妻曰く「夫の精神状態がおかしいんです。」同居する妻の妹(わけありの淋しい女)は夫との慎ましやかな密会現場を見られ、妻は職場のボス(その妻は金持ち!)とただならぬ関係を匂わせるが。。 事件の萌芽を見せ付けられたメグレは「まだ起こっていない犯罪だから、もやもやする」と漏らす(本来の語義通りのサスペンスだ)。 果たして、本当に犯罪はまだ行われていないのか? と読者は暗い舞台裏に想いを馳せることも可能だが。。

同じ家に住む「三人」の内、或る一人が、残りの二人を殺害しようとする、しかし、その結果は。。。 という構造なのか? または、一人が別の一人を? 或いは二人で残りの一人を?? まさか、そこに自殺も絡んで来るとか。。。 そんなつかみ所の無い疑心と最終章標題(目次は無い)の意味深さが溶け合う時、騙し絵の様にミステリはくるりと向きを変え。。事件が起こって「プラス時間」に移行した途端、ストーリーは急遽謎解きに転じる! 物語の主題である「三人の本当の人間関係」が、最後に、死人が出る事件の真相構造として露呈、解決される。メグレはそこで手を引く。司法の手に回ったら、気の滅入る事件には関わりたくないと。

*正直、最終章の切ない謎解き急展開に1点upです。

No.459 5点 十七年の空白- 西村京太郎 2016/01/13 09:31
十七年の空白/見知らぬ時刻表/青函連絡船から消えた/城崎にて、死/琵琶湖周遊殺人事件
(祥伝社文庫)

思わせぶりな題名に魅力的な謎、推進力ある筋運び、存外淡々とした中継部から尻すぼみの結末。。 これの典型みたいな表題作が愉しめる人向け。私は嫌いじゃない。
良質の読み捨て短篇集として、命や心に余裕があるなら目を通すも良し。

どうでもいい私事ですが、台風で電車止まっちゃって色々あった日に、飛ばされそうな屋外にて蕎麦を啜る様に一気に読んだ本でした。良い想い出です。

No.458 7点 展望車殺人事件- 西村京太郎 2016/01/13 09:01
重い反転の「友よ、松江で」、十津川警部過去の友情に絡んだドラマ「特急『富士』殺人事件」、大掛かりなトリックが色彩豊かに陰影も深い表題作等、一定の重みある爪痕深めの短篇集。 量産すれど堕せず、京太郎。

友よ、松江で/特急「富士」殺人事件/展望車殺人事件/死を運ぶ特急「谷川5号」/復讐のスイッチ・バック 
(新潮文庫)

No.457 8点 天啓の殺意- 中町信 2016/01/12 18:07
便宜と混濁を兼ね備えた不思議な登場人物表(あれ?○○レベルがごっちゃになってないか・・?)の企みは。。と思えばその謎はすぐ解決。いや、その安心感にこそ何か企みでも潜んでいないか。。。 序盤を読み進めば早くもモヤモヤのドミノ倒し。浮かび上がる先駆者オーラには気品あるほくそ笑みが光っています。

アンバランスの仮面を被ったバランス、その構成の妙、分割の妙、それは叙述の妙。同じ中町叙述でも「模倣」の如く結末反転で物語が萎んでしまう(実像が幻影より小さい)ケースとは逆にむしろ物語が何段階か膨らむ(実像が幻影より大きい)構造になっているのが素敵。どちらも知的興味レベルでは同等の大範疇に整理されるものの、気持ち(エモーション)の問題としてはやはり、後者の突き動かされる感動にこそより惹かれる評者であります。

乱暴に纏めてしまえば某著名作の真相隠匿方法を複雑化した、って事なんだろうけど、実際そうだと思うけど、そんな簡単な物言いだけでは到底済まされまい。読んでみなけりゃその真価は味わい得ない。やっぱり小説だから。

そうそう、大事なこと言い忘れる所でしたが本作品にはちょっと驚きの「意外な探偵役」趣向がありましたね。しっかり伏線張ってるのが(当たり前の事とは言え)ニクい。
7.74点相当の8点。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.69点   採点数: 1496件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(61)
松本清張(58)
鮎川哲也(51)
佐野洋(41)
アガサ・クリスティー(40)
島田荘司(39)
西村京太郎(36)
島田一男(31)
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F・W・クロフツ(26)