皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.69点 | 書評数: 1433件 |
| No.893 | 7点 | 闇の歯車- 藤沢周平 | 2019/06/26 00:04 |
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| 屈託と事情を抱えて馴染みの酒場(門仲だったか)に寄り合う、お互い素性も知らない四人の男達。一人は浪人、一人は商人、他の二人はアウトロー。あるとき、彼らを繋いだのは同じ酒場で出会ったいっけん陽気な差配人。彼に乗せられての犯罪計画。陰気なギャングに仕立て上げられた四人は、それぞれの人生一発逆転を賭けて押し込み強盗の仲間に一枚ずつ咬むのです。 「ここが面白いところですよ、みなさん」 捜査側とのカットバックで大江戸犯罪劇はカラフルに情感豊かに進行し、こいつらまさか地球を回す気でないかと危惧する飛ばしっぷりも時々。(地の文から台詞へのあからさまな地続き語りにシビれる箇所があったな) まあこれ以上のストーリーは言いませんが、 エンディング、、、 こう書いたらもうネタバレでしょうが、、、 やはり周平さんらしい、湿って優しい甘ったるさが目に沁みました。 もっと暗い所に突き落としてくれても、良かったんだぜ。。 | |||
| No.892 | 9点 | ある詩人への挽歌- マイケル・イネス | 2019/06/19 17:25 |
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| 俺は連城が好きだ。本作の目を見張る反転劇も濃密な文章世界も愛情の対象だ。 クリスマスシーズン、雪に閉ざされたスコットランド古城で起きた偏屈城主の墜落死と来た!(だが館モノとも博多者とも言い難い) 英国式にたっぷりのユーモアがゴシックロマンの中核を浸食。「月長石」を思わす、時系列大いに謎めかせた手記リレー構造(おっと、、いや何でもありませんよ)と重厚でスムゥーズな旨味。謎解きなるモノの「解き」のみならず「謎」そのモンを大事に扱う小説だね。時計と役者の喩えはなかなかグッと来た。 でまァこれはネタバレとは似て非なりと思うんでふつうに書きますけど、真相はaかと思ったらbだった、かと思ったら実はcだった、んじゃなくてほんとはdだった、ってんじゃなくて、aかと思ったらa+bだった(・・途中略・・)結局の所a+b+c+d(±α)だった、という、多重解決ならぬ多段階上乗せ解決の喉越しが何とも魅力あります。 医師がどうしたとか、贅沢がどうしたとか、、ちょーっとばかし作り物の違和感軋むとこもありましたけどね。。気にしませんよ。 極上に良い意味で、最高にキメまくりの時の(クスリやってるって意味じゃありません)連城短篇のスライト劣化版、言い換えれば拡張版、と呼んでしまいたい。
アンコール章前の実質的ラストシーンが本当に最高の、さり気ない◯◯(or◯◯◯)ダニットの大集結場になっている、こりゃ泣けました。 そしてラスラスの短いアンコール章もまた、繊細にして剛力な淡白い何ものかで溢れています。 そういや終盤の短い活劇シーンも悪くないアクセント。 しかしですな本作、再読してみたらきっと、初読時には単なる雰囲気づくりの文面にしか見えなかったありとあらゆる顕示的伏線の樹皮という樹皮が次々とボロボロ樹幹から剥がれて行く風景の壮観さにしたたか酔わされっぱなし、となる事でしょうな。 教養文庫、二賀克雄氏の巻末解説がまた本作の英国ユーモア精神を引き継いだようで、適所に皮肉を滲ます筆致と確かな内容が実に良い、ホンの数頁です。 |
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| No.891 | 6点 | 青い記憶- 佐野洋 | 2019/06/13 12:48 |
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| 手練れに過ぎて、あまりにスイスイ読めちゃうよ、もっと引っ掛かって立ち止まって考えさせて、みたいなな不満さえもたらしそうな、良く書けたミステリ作品群。文章がスムーズ過ぎて全体的に地味に感じてしまうかも。書くに当たっては悩みの無さそうな、しかし題材は悩みの多そうな不倫がらみのお話がほとんど。(全部だったかも)
赤い蝶・青い猫/密告/細い橋/九回裏二死満塁/重苦しい空/赤い時計/二年ぶりの街/通話記録/暗い偶然/脱がされた/青い記憶 (講談社文庫) |
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| No.890 | 5点 | 華麗なる醜聞- 佐野洋 | 2019/06/13 12:44 |
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| アリャ、A氏が二人いるぞ。と思ったら更にもう一人。。 社会派をダシに使い切れなかったのが悪いのか、サスペンスの道筋と糾弾の矛先が大いにずれたまま大爆発無くモヤモヤと終了。ルポルタージュの真似事(あまりに小説臭い!)風に視点がコロコロ替わる構造の面白味も終盤近くで自然消滅。最後の最後でバランス悪さを露呈。でも結末に至る前までは中々に面白く、実にリーダブル。
昭和三十年代中盤の実社会を騒がせた複数事件を組み合わせたモチーフを使いつつなお「これは実際に起きた事象である」振りをしているコンセプトの故か”疑似ドキュメンタリー”の嘘っぽさが溢れ出てしまい、スリルだとか知的興味だとか、大事な何かを削いでしまっている気がする。それでもまず面白いのは、洋ちゃんの底力ですな。 |
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| No.889 | 7点 | マルタの鷹- ダシール・ハメット | 2019/06/08 21:27 |
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| 「そんなやつは死んじまってるさ」
本作への評価を押し上げた神髄はその最終章に在るや在らずや。スペードも良いが敵役ガットマンが最高だ、ファンキーガッツマン(m.c.A・T)を思い出す。激烈にして爽快無比な最終章と、そこで生まれた一瞬の弛緩を二段構えで締めに締める、ラストシーン。だがやはり、ミステリ軌道の深い抉りは感知出来ない。冒険のきらめきや拡がりも無い。SFの街も迫って来ない、坂道を感じない。それでも長い短篇の様な鮮やかな蠢きの連続が引き摺り込んでくれる、痛快なる一篇。ヘイ、ヨウ、そっちの、命を賭けて追い求めた幻は、こっちの、無理に叩き出して結局棄てる事になった幻よりも、価値があるのかい? 「用心してりゃよかったものを」 マイルズ。。。。 お前は本当にクズ野郎だったのかい? |
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| No.888 | 6点 | 東京殺人地図- 島田一男 | 2019/06/06 00:35 |
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| ポケベル、デートクラブ、新風営法、新語「ソープランド」、新聞社にもコンピューターシステムの導入により。。。。シマイチ先生の描く昭和末期風景連作(ブン屋モン)。なんもかんも良い意味でチャッチャカチャッチャカ、犯人の意外さに正面から向き合わないのもよしと出来る結果オーライの勢いで快調、晩年が見える歳になっても飛ばしまくり!
死者の身上書/“金魚”殺人事件/夜の猟人/土曜日殺人事件/死神のラブコール/青田刈り殺人事件/山手線の女/死神は夜走る (徳間文庫) |
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| No.887 | 7点 | 血族- 山口瞳 | 2019/06/04 06:12 |
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| 「いつか教えてやるよ。」
ミステリタッチの私小説(私ドキュメンタリ)。昔の両親の写真に関する不審(大震災で焼失したので記憶頼み)と自らの生年月日への違和感を契機に”出生の●●”の疑惑の霧へと斬り込んで行く、既に有名人の筆者(元サントリー宣伝部)。 中程でうっすらと読者への挑戦めいた文言が飛び出ます。続いて叙述トリック宣言らしきものまで登場。。 んで、、これ言うとネタバレですかね? 山口氏がプロパァのミステリ作家ではないとの、更には私小説であるとの判断材料から無意識に導き出されるであろう或る予断ってやつが、なかなか。。また「血族」というタイトルも、物語主題の象徴であると共に結構なミスディレクションとして機能しちゃってます。 ラストシークエンスでいきなり爽やかな救いの風に吹かれるのは良いです。ああ、人生によくあるなあ、こういう場面展開、って思います。たった二行の最終章が、重くも痛くもなく、ただ勇ましくグサッと楔を刺すだけってのが良いです。 その最終章に至る直前、ラス前の一文がまた、最高に沁みるなぁ。。。。 それにしても文春文庫の表紙に何故レイザーラモンRGが?と一瞬思ってしまいました。(作者が掴んだ真相を)早く~言いたい~。。という判じ物かと。まあ悪い冗談ですけど。(作者本人の若い頃らしですな) |
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| No.886 | 6点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2019/05/29 23:47 |
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| なんですかこの “無限大に拡がり過ぎて解は不能ならぬ不定です” の有様を逆から見たような結末は。 本作まさか ”何を評してもネタバレ” というコンセプトのもとに逆算して作られてないか? 後期クイーン問題どころじゃないんじゃないか(笑)? などと、不思議に奥深さを感じさせるが、感じさせるだけのようでもある一篇。 このコンセプトで、短めとは言え長篇に仕立てた事こそトリックというか、ミソなのかも? 逆エディプスコンプレックスみたいな蛮説をエラリィが持ち出したのは印象的だった。 なんだか青臭くとも不思議に頼れそうなエラリィ。 ふむ、締めづらい。 ♪ Fox hunting on a weekend .. | |||
| No.885 | 7点 | レベル7- 宮部みゆき | 2019/05/27 22:10 |
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| ノークラ オートマ 。。 うすらぬるいサスペンスが不思議と心地良い、平成初期を偲ぶに良い一篇。空気が緩いからこその死角にいつの間にか絡め取られてそうな焦燥感はなかなか得体が知れない。エピローグに担保されているのであろう、いまだ見えざる全貌楼閣の魅惑ダダ漏れ幻想に背中を押され、サスペンスとは別の何物かで満ち溢れる物語は可読性抜群。カットバックされる二つのストーリー両方に登場するあの登場人物のヒカりっぷりったら無え。一方のストーリーでは”目覚めると記憶が無い”若い男女の自分探し assisted by 謎の中年男、他方では失踪した少女の行方を追う大人たち。両者を合わせて呑み込もうとするものの在り処はいったい何処に。。。。
併走ストーリーズがぶつかりそうになるあたりで急遽ユーモア奔出しだすのはいい意味苦笑。終始微妙にゾヅツトゥリックゥがどっかに潜んでねえべかと疑ってしまう思わせぶりな。。 しかし最後の六分の一が激熱だ! いや最後の最後はちょっと緩いかな。真相を無駄に複雑にし過ぎのきらいはあるかな。いちばんの悪役さんさえ最後は妙になんだかハートウォ~ミングで絵空事の国の住民みたい。”実質主人公”の内面やらナニやらにもう一歩踏み込んだ抉りが欲しかったな。 てかむしろその、レベルなんとかを応用した遊びの趣深さと危なさをもっと掘り下げても良かったのでは? 。。。な~んてあげつらったけど、ミヤミユさんの悪い意味のやさしさがいい方向にはたらいたなかなか良い作品、だと思います! |
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| No.884 | 7点 | ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女- スティーグ・ラーソン | 2019/05/23 11:41 |
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| 実績に裏切り無し、流石の娯楽大作。 荘厳なる物語を予感させひとしきり疾走し、絶妙に遅めのタイミングで急速に通俗の領海に舵を切る。カットバックの不規則な間合いが良い。サディストを惨酷無比なサド返しで仕上げるくだりは極上。小説のほぽ真ん中で二人の主人公が初めて相対するシーンはなかなか新鮮だが、そこで急にラノベ風に変身されても困る。すぐ普通の通俗味に戻ったけど。(そのへんだけ小説手触りがちょっとデコボコ)
いかにも本格ミステリ風な大小地図に巨大家系図、数十年前の密閉孤島で起きた大事故と失踪事件、大富豪一族の愛憎劇。。 だが巻末解説にある「第I部(本作)はオーソドックスな密室もののミステリー」というのは大嘘もいいとこで、本格偏愛度の高い人ほど「はァ~あ?」と眉を吊り上げずにいられないでしょう。 ただ、一点だけ際立って本格を感じたのが、、 これちょっとネタバレですけど、、、 或る重要な共犯像、もしやおアガサがインスパイア元の、超おぞましパロディック応用篇沙汰か。。。 ?!!? 物語の幕開けは、飛ぶ鳥を落とす勢いの新興実業家への名誉棄損罪で三か月の禁固刑を言い渡された、経済誌『ミレニアム』の記者兼共同経営者である主人公1のミカエル(♂)が、往年の大実業家老人(今でもかなりの勢力はある)から、その憎っくき新興実業家を撃墜できる致命的大ネタ及びかなりの大金を報酬に、そのむかし若くして行方不明になった(死んだとされている)大姪の死の真相(老人は彼女が死んだものと決めつけている、ようだ)をミカエルの見上げたジャーナリスト魂と技とで暴き出して欲しい、と申し出を受ける所から。 カットバックで並走するもう一つのストーリーは、とある探偵事務所にフリーの調査員として勤務する、心の病を抱えた超豪快天才ハッカーの主人公2,、リスベット(♀)が、大実業家老人がミカエルを前述の用件で雇うに先立っての身辺調査を引き受ける所から始まり、、、、 ミカエルがやたら現代ミステリをチェインリードしてるのがいい。セックスよりミステリのほうが頻度高げなのがいい。ニッポンの東野や連城も読んでいてくれたらなと思う。 寂しさと哀しみのラストシーン。 重要な脇役群(どころか主役級も)についての情報があまりに多く蓋をされたままの終結は、続篇の連発を予想させるに充分。 後続篇では前述の”仕上げられたサディスト”が鬼の復讐に乗り出すらしい。最高だ。 作者は全体で10部だかなんだかを構想しておったらしいが第3部まで仕上げ、出版前に夭折してしまいました(現在第4部以降は他の作家達によって引き継がれている)。 「カラマーゾフの兄弟」の書かれなかった第二部への逆ノスタルジアに思いを巡らさせるったらありゃしねえです。 ところでエルヴィスの看板、誰かサルベージしてあげて。。 |
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| No.883 | 3点 | スイート・ホーム殺人事件- クレイグ・ライス | 2019/05/20 13:40 |
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| ママ(ミステリ作家)の子供の一人が口から出まかせでデッチ上げた架空の人物が実際に現れるという、まるでファンタジー小説もどきの不可能興味(合理解決される)はそれなりに惹かれるものがありますが、何しろ物語のムゥードがほんわか緩過ぎなもんだからスリルや刺激に繋がらないこと!! 物語3分の2をとうに過ぎて初めて、この様な内なる忖度まみれに見える特殊本格推理の中でいったい誰が最も電撃的かつブラックじゃない真犯人像になり得るのかと遅い考察を巡らしてもみたのですが、、話はいつしかドタバタ押し切りで終わっちゃってましたね。 所々いい挿話やいい流れもあるんだけど、個人的にミステリとしてもユーモア譚としても決して’面白い’の領域を脅かしもしません。平たく言や好みに合わないってだけですね。で犯人誰なんだっけw
【 一応ネタバレでしょう 】 これでもしママが真犯人だったら。。。ママが獄中で書いた懺悔手記という設定だったら。。 或いは、死に別れたはずの父親が実は××とか。。。 どの暗黒妄想も当然の様に、ガーター越えて隣レーンに飛んじゃうくらいの大外れでした。あぁ良かった。 |
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| No.882 | 6点 | 11人いる!- 萩尾望都 | 2019/05/16 07:02 |
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| SFミステリ少女コミックの古典。 物語の設定とディテール(絵も!)は面白いんだが、ミステリとしては 【ここからちょっとネタバレ的】 真犯人が意外性的にまったくキラキラしてないのは致命的! だが第一に味わうべきはそこでなかろう、ミステリだと構えて読まないほうがよかろう、或るスペシャルな人物を中心に物語と絵のきらめきを愉しむのがいいですよ。そしたらこりゃオモロいよ。
全宇宙の超エリート層を養成するその名も「宇宙大学」入学者選抜試験のラストステージは、外界との接触が一切遮断された宇宙船の中で10名の受験者が(地球風に言うと)2か月程度の期間を共同生活でつつがなく最後まで過ごせるかという課題。 ところが、試験が始まってみると船内にいるのは10名よりちょっとだけ多い11名。 1名ニセモノが紛れ込んでる。誰だ。。。。。。。。 という設定で進むお話。 |
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| No.881 | 8点 | 二冊の同じ本- アンソロジー(国内編集者) | 2019/04/24 23:40 |
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| 日本推理作家協会編。同理事長なりし松本清張氏が名実ともにシーンのリーダーらしい気合い溢れる「まえがき」を執筆。シリーズ名に「最新」とありますが、昭和四十年代の事。ミステリとしても小説としても高水準の一冊 by カッパ・ノベルス。
「二冊の同じ本」 松本清張 8点 ぎりぎり日常の謎、の体で何処まで引っ張るのか。。。と思えば! ラストの締め付けられるよな痛みはやはりこの人らしい。 「永臨侍郎橋」 陳舜臣 8点 最後の手紙に”行き違い”の趣向は好きだ。その手紙の中で明かされる更なる深いナニもまた良し。ストーリーの紆余曲折を随分と押し込んだもんだが、まず能く発酵したと言えよう。しかし、アリバイ材料に漢詩の朗読とはな! 「『わたくし』は犯人」 海渡英祐 8点 ん〜〜ん、ぉフレンチ! 現代日本の感覚では反転真相のエグ味にもう一刺し欲しい人も多かろうが、これはこれで雰囲気押し切り勝ちなんじゃあないですか。 「醜聞」 結城昌治 7点 ミステリ視点の意外性はかなぐり捨てたかの様だが、、心に残る冤罪サスペンス。 「青い蝶・赤い猫」 佐野洋 5点 初読時(かなり前)と変わらぬ”洋ちゃん、これちゃんと詰めてないだろ”感が芬々。ハイレベルな本選集の中でボコンと一段落ちる。もっとイイのを入れて欲しかったねえ、洋ちゃん。 「詩集を買う女」 多岐川恭 7点 またもおフレンチ。もう幾何かの残酷さがあったら連城の域。締めの台詞がいい。 「酒場の扉」 戸板康二 6点 手垢の付いたオチ、かと思うとショートショート流儀の駄目押しツイスト、で片付けてしまうにはちょっとばかし深い人間ドラマ。 「眠れる美女」 永井路子 8点 地味に展開し最後は派手に化ける歴史政治経済ミステリ。或る意味 ●●術殺人事件に通ずるトリックかも知れない。 「ロカビリアン殺人事件」 大谷羊太郎 8点 青木ってリトル・リチャード系シンガーだったんだ! いいぞ、パンチのきいたゴーゴーリズム! 社会考察的さり気ない伏線の決まり具合、お見事! (作者自身が属していた)芸能界ならではの動機推察機微、とそこからの推理派生には唸った! 処女非処女って、何をそこまでこだわるの。。と思ったら、そういうことだったのね。。。。青木の生活描写がも少しあれば、もっと好きだ。 「ガラスの棺」 渡辺淳一 10点 やっべーー、そうこなくちゃ! これぞ”イヤ奇妙な味”の完璧形! 医師をいい奴に描いてるのが神髄ではないですかね、この作者独特のフェミニンな味の。 「蝶の牙」 島田一男 8点 先生の曲者スペクトラム具合がよく現れてる。ひょっとして’ツソ〒”しう●●’が本作のインスパイア元か。。” 老いてなお”系のエロシーンはどうも好きになれんが。 「双頭の蛇」 黒岩重吾 8点 よく考えたら何の捻りもない哀しき阿呆共の顛末なんだが、その文筆の熱量にやられた。ミステリの意外性は更に希薄。それで構わん。ストイックに過ぎるラストは、主人公の零落する未来を暗示するものか。。 わざわざ<愛憎編>と銘打っただけあり、結末で明かされる意外にエグい心理要素にグッと来る作品多し。その手の昭和作品(四十年代モノ)がしっくり来る方にお薦めします。 |
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| No.880 | 7点 | 人喰い- 笹沢左保 | 2019/04/19 00:42 |
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| つァ面白い、スカッと爽快! 物語を逆算するてと相当なイヤミス真相だってのがまた、たまらん。 殺傷事件が物語を襲うたび生存説が更新される第一容疑者は、姉妹二人で暮らしていた主人公の姉。 労働組合の幹部をやらされている彼女は社長(傲岸極まりなし)の息子(好青年)と恋仲。妹への遺書を残して消えた彼女は彼氏との心中現場(社長の息子は屍体で発見)から一人消えたと目された。姉の無実を証明するために彼女の死亡を確認する必要に迫られた主人公は、姉と同じ会社に勤める、以前からの恋人と共に真相を追及する。。。。 これ以降のストーリー展開は言わずにおきましょう。 いや、新社長は進歩的センスで社員からの信望厚いハンサム・ガイという事は言っておこう。
快速プロットに大中小トリックと穏当ロジックと、絶妙なミスディレクション、適度な社会派ドラマにやや複雑な恋愛劇に。。。盛り込みも凄いがバランスが最高に良くて読みやすいことこの上なし。サスペンスいっぱいの昭和三十五年本格力作。大型心理トリックには圧倒されたが、小型の心理的物理トリック(図解付き)も妙に心に残る。 しかし連れ込みの偽名に「徳川忠勝」 w 真犯動機と結末にあと一歩半のキツい深みがあったら8点行きましたね。惜しいとこ。 さてここから後はネタバレになりましょうが、読了してみると表題に取って付けたよな違和感が。ミスディレクション(旧社長、実は新社長も?の悪意を匂わせる)もあるのかな。それと、作者が意図してかせずしてか、昔の大映ドラマみたいな思わす噴き出すベタな痴話喧嘩シーン、時代ってコトかとうっかり気を抜いてたら、それがまさかの大伏線だったとはねえ。んで、ここまで言ったらたぶん完全ネタバレだけど、クリスティとアイリッシュの某代表作どうしをクロスさせたよな(タイムリミットが咬ませてあるのも含めて)作品構造ですかね。最後、敵同士でしかないと思われた女どうしの間に意外な友情萌芽が連発したのは、いい意味で参りました。 |
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| No.879 | 6点 | 奇想博物館- アンソロジー(国内編集者) | 2019/04/16 23:22 |
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| 有り体なら即バレの性別誤認を際どい工夫で正面突破した某作。 深みは穿ったが広がらない恨みの某作。 出だしからやさしく攻めまくり、いかにも怪しい作中作… 作者らしい、幸せで明る過ぎる反転と締めの具合は、、やっぱり納得させられてしまった某作。 ゆるいなぁ つまらんなぁ ん、ちょっといい話かも、それから? と思った途端に終わって、結果ちょっと面白かったな。、なんてホラーもどき(?)の某夏のお話。 しかし、某作の「前×作をぶっ飛ばして堂々登場」感は半端でなく頼もしかったなあ。。全体通してユルユルで手に汗握りようも無い作品が目立ちましたが、どれもそれなりに楽しめたのは間違いありません。
編纂は西上心太。他薦と自薦を組み合わせたちょっと複雑な手法で選ばれた近年作15篇とのこと。 伊坂幸太郎「小さな兵隊」 石持浅海「玩具店の英雄」 乾ルカ「漆黒」 大沢在昌「区立花園公園」 北村薫「黒い手帳」 今野敏「常習犯」 坂木司「国会図書館のボルト」 朱川湊人「遠い夏の記憶」 長岡弘樹「親子ごっこ」 深水黎一郎「シンリガクの実験」 誉田哲也「初仕事はゴムの味」 道尾秀介「暗がりの子供」 湊かなえ「長井優介へ」 宮部みゆき「野槌の墓」 森村誠一「ただ一人の幻影」 拙者の場合名前だけ馴染みある未読の作家がチョコチョコ含まれており、そういう人たちの作品に一気に触れてみたいなと思って手にしたわけです。編者あとがきにもありましたが、そういう需要に応えてくれる一冊です。 |
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| No.878 | 7点 | インシテミル- 米澤穂信 | 2019/04/12 00:34 |
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| 平成を偲ぶ一冊。 普段は好きでないロジックのためのロジックめいたものも、こんだけ適所でカチャリカチャリとキメてくれると気分爽快この上ない。それだけじゃない物語全体を揺るがしそうな大きな深い謎もしっかり存在感キープし適時増殖。なかなかのユーモアがサスペンスと両立してくれたら、と前半は思いもしたが、むしろサスペンス味は消しといた方が本格に振り切った味わいに専念出来て良いのかも。めちゃ小粒な叙述トリックとか、中途半端な真相追及ロジックだとか、意外性やインパクトに縁の無い殺人トリックやらがチャカチャカ登場したけど、お話自体の大きさに包まれて満足でした。終結はちょっと、乱歩さんがわけわかんなくなってテキトーにチャーハン炒めてチャンチャンみたいだったけどさ、それすら味わったよ。
わたしは須和名さん好きです。最終コーナーの”計算”解決には萌えたなあ、麻雀みたいだった。滞っていたのは”お生◯”じゃなかったのか。。ベタベタのようで結構味わい深い黒幕側の構造を垣間見せて終わるのがいいね。結局いちばん共感した某登場人物の馴染みの古本屋って、もしや西荻窪の.. |
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| No.877 | 8点 | 予告された殺人の記録- ガブリエル・ガルシア=マルケス | 2019/04/04 06:23 |
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| まさかそこで終わる! 凄まじく勇敢で凄烈な、いろんな意味で武士道を感じる、ラスト数ページ!
実際に起きた”●●のための”予告殺人の背景と顛末が ”わたし”の調査により 色彩豊かに解き解される様を描いた中篇。事実に基づいたセミ・ドキュメンタリーだが、(出版に反対する関係者の多くが鬼籍に入るのを待ったため)長い長い時を経ての大胆な事実再構築となった結果、むしろディープなミステリ興味の薫るフィクションとして完成されている、そんな感じです。 即興で唄った、結婚のあやまちの唄。。。 他の書評サイトを見ると、とある ”さりげない台詞” にゾッとした、なる意見多し。さもありなん。 しかし 終わってみると “あの男女” の数十年後のエピソードこそ、眩しく残る海底の宝石だな。 こんな呆気ない長さの小説ながらその昔中途リタイアした (読書じたいほとんどしない時期だった)のを、リトライ再読しました。 |
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| No.876 | 7点 | とむらい機関車- 大阪圭吉 | 2019/03/27 06:38 |
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| 創元推理文庫の選集x2も今や古本プレミア付き。
とむらい機関車 8.3点 例の『動機』、明言せず暗示で締めるのが素晴らしい。しかもその暗示の手紙の立ち位置! 初読時((こっからネタバレになると思います))、その動機が”患部”切断のための実験かと妄想で思い込んだものです。実際そういうミスディレクションも少しばかりあったのか、無かったのか。 連城の某有名短篇とどちらを先に読んだのでしたか。 デパートの絞刑吏 6.6.点 鮮やかな物理トリックに薬味の心理トリック。導入の謎が地味だが解明ロジックの充実と結末の大胆な意外性は目を引く。しかしこの死に方はなかなか怖い。 カンカン虫殺人事件 7.3点 昔の港の殺人噺はいいなあ。推理小説より犯罪実話の体だが満足。勝新の「かんかん虫は唄う」とは雰囲気違う。私にとってこのストーリーは絶景。どうにも忘れ難き一篇。 白鯨号の殺人事件 7.0点 ひどく散文的な物理解決に導き出されたのは、冒険への郷愁を誘う大型真相と、残酷な詩情溢れるドラマチックなエンディング。ホームズを地道に仕立て直した様な構造の物語だが、この意外な大ラストシーンの訴求は忘れ難い。巻末解説を読んだ限りでは改稿「死の快走船」のほうが充実してそうだけど(ラストシーンの伏線となる絶妙な台詞追加とか)、本作の素っ気ない魅力もまあ悪かねえ。 気狂い機関車 5.3点 物理物理し過ぎる小型物理トリックで引き摺るショッぱさも、ビジュアルが映えるドラマ性強いカタストロフのお陰で和らいだか? 鐵道に纏わる風物は悪くないやね。あとまァ、なんツか唐突ながら意外な犯人てやツスか。 石塀幽霊 5.1点 小味ながら鮮やか、不思議興味を唆る光学系物理トリック(ピタゴラスイッチで紹介されそう)。 これはこれでドラマなど不要。しかしこのトリック核心、派手に応用出来たら相当に。。。。 あやつり裁判 6.4点 面白いかもな、その遊び。だがその犯罪行為まで手を伸ばすのは最悪よ、純粋に楽しみゃいいものを。結末は見え透いとるが展開の奇妙なサスペンスが良い。んで題名と店の名前はちょっとね。。 雪解 8.3点 こりゃあいいぜ。どうにも光り過ぎの某人物のナニが最後にこう活きるわけか。。考えオチってやつですよね。 本格だけでなく戦時系でもなく人間派サスペンスのこういうブツも大坂なおみ選手はキメられるんだなあ〜! 間違えた、圭吉っつぁんか、大阪か。 坑鬼 8.7点 ホヮイダニットの鬼(色んな意味で)。社会派で本格。導入の瞬間から文言濃いこと(途中すぐ普通になったが)、展開敏捷なこと! しかし犯人、よくもその限られた時間で。。。!! 初出がかの『改造』誌ってのが凄味を放ちますよね。 ラストシーンの恐怖は胸に沁み入る。。。。後から”より”じわじわ来る一篇です。 小説群のあとは短い随筆がいっぱい。東野「名探偵の掟」にも直結する推理小説愛・本格ミステリ愛が真摯に軽快にスプラッシュしまくりです。 「我もし自殺者なりせば」はエッセーなのにまるでブラッドベリの掌編。読んですぐ、これに影響されたであろう不気味に美しい空中風景の夢見ちゃいました。 「探偵小説突撃隊」の自由平等両立宣言も愛おしい。 言及される方の多い「お玉杓子の話」はアツいですねぇ~~ (9.0点)。 「幻影城の門番」も、今の自分よりずっと若輩の、しかしずっと大人であったであろう作者の筆と思うとなんともくすぐったい味がある。 随筆部分のみ、まとめて8.3点あげちゃいます。 |
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| No.875 | 8点 | 名探偵の掟- 東野圭吾 | 2019/03/23 08:34 |
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| 『電気グルーヴのメロン牧場』並みに、電車で読むと危険な本(ブッと噴き出しちゃうから)。メタパロディの領域掠める大パロディ大会の体だが、一作ごとそれなりにちゃんとした推理小説的ヒネリの落とし前を付けているのが素晴らしい!チェンジオヴペースの置き所も絶妙。王道を踏む事にこだわる著者ならではの新変化球アイデア素描(本作に登場するトリックそのものではない)の様相もあり興味津々(このへん文庫解説の方が詳説)。一作、一部で知られる某ディープ論理パズルを彷彿とさせる大笑い結末のブツがあり、その結末を剛腕センタリングでアシストするパロディ大車輪の噴出部分も含めて流石は俺の東野、魂は理系ミステリの鬼だぜと、膝を叩いたものでした。一番気を持たせるタイトルの某作、アンフェアの中にも、読み返せば、しっかりフェアであることの伏線(言い訳?)が張ってあるのにはシビレます。著者代表作の一つに数えられてしかるべきでしょう。氏の最高傑作と称する人がいても不思議ではありません(私は違うけど)。本当に、よくぞ書いてくれました、こういうの。珍妙な登場人物名でいちばんヤバかったのはアリバイ工作に勤しむ「蟻場耕作(ありば・こうさく)」かな。こりゃ噴き出しましたよ。 | |||
| No.874 | 7点 | 髑髏城- ジョン・ディクスン・カー | 2019/03/20 01:59 |
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| 名犯人、名探偵、名真相、名解決。。の全てが●●●!! トリックがどうとかの話じゃないとは思うけど、空さんもご指摘の、あの指紋の手掛かりの機微にはしびれましたわ。バンコランにさっぱス魅力を感ズないオイラだが、あのなんとか男爵は好きだ。HM卿の代わりと見做してしまいそうだった。爽やかなエンディングも良し。老眼でイソベル・ドオネイがイッペイ・シノヅカに見えちまった。
ところでクリスティ再読さんと同じく私も本作、世界大ロマン全集の旧訳(抄訳らしですな)で読みました、とは言え往時リアルタイムではなく近所の古本屋で見つけたカバー無し百円本ですが。巻末目録キャッチコピー最後の太字『家中で一生楽しめる大ロマン全集』にはクスッと笑いながらも時代の電気を感じてシビれます。 大ロマン全集に併録の「目に見えぬ短剣」「もう一人の絞刑吏」も折角なので久しぶりに再読してみました。やはり「絞刑吏」の締め方(絞首刑だけに)は味わい深い。(初読時知らなかった)浜尾四郎の短篇を彷彿とさせる。真相の尻すぼみ感が痛い「短剣」さえ怪奇ロマンの雰囲気で充実。流石です。 |
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