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斎藤警部さん
平均点: 6.68点 書評数: 1243件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.18 5点 野球が殺した- 佐野洋 2015/11/18 10:51
右翼手が目を隠した/打者が左足を引いた/捕手が声をかけた/走者が塁を回った/塁審が胸を叩いた/観客が手を伸ばした/投手が球を落とした
(角川文庫)

洋さん野球が好きなんだろうけどその割妙に試合描写のリアリティが上滑りなのも味のうちと言った所で.. 笑。ともかく、架空の日本プロ野球リーグ(人気の強豪は天馬ペガサスと明星プレヤデス!)を舞台にスタジアム内外で巻き起こる奇妙な事件の数々は、現実のプロ野球が嫌いにならない程度にゆんわり愉しませてくれます。佐野洋ファンを自認する人、または、佐野洋がまあまあ以上好きで日本のプロ野球もまあまあ以上好きな人、どちらかに該当する人にだけお薦め。両方の人は必読。但し熱狂的プロ野球ファンは読むなw

No.17 5点 夢の破局- 佐野洋 2015/11/17 22:25
悲劇的な男女のストーリーを軸とした短篇集。
表題作の真相は現実物語と思えばかな~~りトンデモ無い。。 が佐野洋ストーリー的には普通のことかも。

不幸な女/甘い血/白すぎる球/夢の破局/青白い旅/狂う炎/青いレンズ/蘇える/守ること
(集英社文庫)

No.16 8点 元号裁判- 佐野洋 2015/10/30 12:15
おお、これは「社会派・日常の謎」ではないか!
運転免許証の生年月日、「昭和XX」の部分を消して上から西暦で書き直した男が、その行為を主軸に権力筋と闘う。この一連の事件(?)を新聞記事にしようと記者は飛び回る、が。。。
最初は「これ、推理小説かァ?」てなもんだったけどね、滅法面白いんですよ、本当。ためになる薀蓄も豊か。左翼魂丸出しなのもまた微笑ましからずや。

併録「年齢論争」は、こちらも良い意味で微妙な「日常の謎・ソフト社会派」のお話。誕生日と年齢の関係性について盲点論理追求の遊びは興味深し。

No.15 7点 姻族関係終了届- 佐野洋 2015/10/24 07:04
役所に提出する各種届を俎上に置いて料理した企画短篇集。これも洋ちゃんの得意満面が目に見える様です。本当にこういうの上手だよねえ好きだよねえ向いてるねえ。
ところで短篇集タイトルにもなっている「姻族関係終了届」って何のことか分かりますか? 離婚届とは違うんですよ。この表題作が何とも、心理の機微ってやつを突いていてね。。

死亡届 /被害届 /欠勤届 /弁護士選任届 /認知届 /姻族関係終了届 /養子離縁届

No.14 7点 殺人書簡集- 佐野洋 2015/10/24 06:41
収められた短篇の題名だけ見れば普通のミステリ集のようだが。。短篇集全体のタイトルが示す様に、もっぱら手紙のやりとりだけで構成された企画色強い一冊。佐野氏の得意な顔が見えて来る様です。「俺にこういうの書かせたら、ちょっとヤバいよ!」って。

御用の節は /完全離婚 /失踪計画 /愛すればこそ /割れたガラス /一等車の女 /推理小説を読みましょう /EPマシン /迷惑なプレゼント /あなたも犯罪者 /お試し下さい

No.13 6点 親しめぬ肌- 佐野洋 2015/10/24 06:32
ばらばらバラエティな感じの短篇選集。軽くエロいのはいつのもの通り。SFもちょい入ってる。そっちも軽くエロい(笑)

かたつむり計画 /無罪判決 /傷 /火と煙 /哀れな夢 /親しめぬ肌 /不毛の設計 /烏鳴き /牽制死球 /ふたりの妻 /異臭の時代
(講談社文庫)

No.12 6点 折々の殺人- 佐野洋 2015/10/19 12:24
東大文学部卒の浮雲エリート仲間、大岡信が朝日新聞(佐野氏の勤めた読売のライヴァル)に連載した 文芸コラム”折々のうた”で紹介された古今の和歌・俳句にインスパイアされた小品を収めた後期短篇集。インスパイアと言っても核心部分では元の”うた”から離れている作ばかりで、小説と和歌との共鳴し合いをしみじみ玩味する様な代物ではないのがちょっと企画の浅さを感じるが、各作の前に置かれた、大岡氏による元のうた紹介とそのオリジナル解説、佐野氏による元のうた及び大岡氏の解説に対する感想と自分の小説に対する前書き、という都合五段構えの各プロローグ(長くはありません)を読むのも新奇で愉しく、また肝心の小説部分がじゅうぶん読書に堪えるのはやはり手堅い業師の仕事。めちゃ軽いですけどね。

中に一つ、氏にしては珍しいほど笑いに直結させる下ネタ押しで驚いたのがあった(品の有る艶笑っぽいのは氏によくあるけど)。と思ったらそれがミスディレクションだったってのかまさかの重い終盤展開に目を白黒、、とあっけに取られていたら最後は。。と意外なストーリー展開で飛びぬけて印象に残ったのがあったなあ。他に、老父の娘への切実な愛情がちょっと凄い形で具現化された、なのにどういうわけか心温まる殺人物語(?)もちょっと忘れがたい。とは言え全体で見ると質の高い読み捨て用といった趣き。悪くはありませんが、ファン向けだね。

最後に余計な事を言うと、本作連載の頃(平成に切り替わる前後)、氏は男性機能の衰えに煩悶されていたのではないかな、と窺える表現や主題が所どころ鼻に、いえ目に付きましたかな。中にはもう、そういうテーマの軽医学エッセイ(?)を照れ隠しにミステリの蓑を被って書いてるような作もありました。それはそれで興味深い。

その時の2人/固い背中/盛り上がる/階段の女生徒/夢の旅/衰える/ひそかな願い/意地悪な女

No.11 7点 盗まれた影- 佐野洋 2015/10/14 12:03
大学時代のグループは男3人、女3人。やがて大人になり家庭を持って、記憶の底に隠蔽された暗い過ちを呼び覚ます悪夢の手紙を受け取ったのは男2人、女2人。。

東野圭吾の仕掛けっぷりを思わせる、興味津々のストーリーと真相。これは読ませます。
洋ちゃんファン以外にも大いに薦めます。

同じく洋ちゃん「盗まれた嘘」とお間違え無き様。

No.10 7点 死んだ時間- 佐野洋 2015/10/14 11:49
いくら俺と浮気旅行の最中だったからって、折角のアリバイを否定するのかこの女は、殺人容疑が掛かってるってのに。。 ともかく独自の捜査を始める俺だったが、その行く手には思わぬ犯罪の闇が。。 って感じでしたかね、詳しい所はもうさっぱり記憶にありませんけどね、とにかく相当に面白い昭和の本格推理なんですよ。洋ちゃんファンならまず必読だね。

No.9 6点 砂の階段- 佐野洋 2015/10/14 11:21
新聞社にて。報道写真に写っているのは、交通事故で逝った筈の、元同僚のあいつだ!!まさか、あの時の屍体は偽装で、本人は失踪でもしたってのか!?って事は奴は殺人者か、少なくとも死体遺棄!?
しかも俺、奴の奥さん(未亡人??)に捜査を頼まれたんだけど、彼女が好きになっちゃったかも!?

そんな滑り出しで「俺」が追う謎の行方は官界やら球界やら巻き込み中々の大風呂敷を広げますがベースが新聞社だからそう不自然じゃない。とは言え最後は謎の拡散を上手に回収し切れなかったか意外と地味に収束。。意味のあり気な題名は焦点が少し暈(ぼ)けてるかな。。

でも洋ちゃんファンなら読みたいでしょう。充分イケますよ。

No.8 8点 崩れる- 佐野洋 2015/08/19 00:38
かの「銅婚式」にも通じる手触り。 佐野氏の技倆と矜持がぎっしり詰め込まれた傑作撰。

ある自殺 /崩れる /慰藉料 /人脳培養事件 /検事の罠 /透明な暗殺 /誘った人 /善意の報い /駐車禁止
(講談社文庫)

No.7 7点 同名異人の四人が死んだ- 佐野洋 2015/08/19 00:30
同じ名前の四人の人達(四人の亀取二郎とか)が死ぬんじゃないですよ。作中に登場する、連続殺人事件を扱った推理小説の四人の被害者と同姓同名の四人が次々に亡くなるんですよ。どうです、そっちの方が面白そうでしょう? うん、実際面白いんですよ。きれいに脂の乗った時期の佐野洋だからね、好きな人にはたまりません。詳しい中身は憶えていませんよ。

No.6 8点 秘密パーティ- 佐野洋 2015/07/08 07:08
暗闇の中、卑猥な映像が映し出されて始まる、男女入り乱れた怪しいパーティー。。その中で一人の女性が殺害されるが、参加者の中に政治家がいた事もあり、事を小さく収めるため病死という扱いに。ところがその「インチキ」を脅迫する者が現れた。。
若い時節に読み、その結末に うぁっ! となった忘れ得ぬ作品です。

No.5 7点 大密室- 佐野洋 2015/07/08 06:59
舞台がけれん味に溢れた表題作は、漆黒の闇で音も響かない完全密封の部屋(音響機器会社の実験室)に閉じ困られた男女、片方は屍体で発見され。。と始まる企画色の強い特異な密室モノ。 他にも、殊更に探偵小説の何らかの古典的テーマ、一人二役とか変装とか怪奇心霊現象とか、を現代社会(もうかなり昔ですが)を背景に仕立て直したりナニしたりして強力な個性を備えた六つの現代ミステリ小説群。ブラックユーモアの度合いも強い、興味津々の短篇集。

大密室 / 温かい死体/ 別人になる / 汚れた手 / 完璧な賭け / 妻の肉を喰った…
(徳間文庫)

No.4 7点 狂った信号- 佐野洋 2015/06/17 10:50
ミッシング・リンクこそ肝の筈が題名でいきなりほぼネタバレ(?)、 かと言って告発一本槍の社会派とは明らかに触感が違う不思議なサスペンスに終始包まれた、際どい所で本格推理と呼びたい良作。

No.3 8点 大滑空- 佐野洋 2015/06/08 11:33
アウトドア・スポーツを通しテーマに置いた、これは本格ミステリの隠れた傑作短篇集。代表作に数えられていないのがあまりに勿体無い。
大胆な伏線が思いも寄らない場所に音を立てて引っ掛かり、崩れる様にまさかの結末へ。。 言うまでも無く文章は洒落ている。お洒落は通奏低音、主旋律はストーリーと謎解きのデュエット、中盤の分厚いハーモニーがサスペンス、時々エロスのアタックが入っては消える。 「世の中には頭のいい奴がいるんだなあ」という後味を残す。

大滑空 /血滴る矢 /心を読む馬 /絶対本命 /空の蛇 /赤い点が光った
(講談社文庫)

No.2 8点 一本の鉛- 佐野洋 2015/06/08 11:21
都会派佐野洋、初期の佳品。 表題の意味は最後の最後に明かされ、同時に事件の真相も一気に収斂します。
秀れた技巧が悪目立ちせず、ひたすら作品の完成だけに貢献する、フランス音楽で言うラヴェルのようないい香りのする若き熟練の一品。事件は女性ばかり暮らすアパートにて、バーのホステス殺し(昭和!)。容疑者は現場で確保。一見ごく当たり前の事件の様ですが。。

それにしても、これだけ洒脱で明るいムードなのに、ここまで強いサスペンスと深い謎めき度合い。かなり踏み込んだエロティック描写を爽やかに描き切る手管。天性と育った環境の存在を感じさせずにはいられません。日本共産党も惜しいシンパを無くしたものです。

No.1 9点 銅婚式- 佐野洋 2015/05/19 18:28
素晴らしく充実した本格ミステリー短編集。意外性の宝庫。
海外ミステリばかり読んでいる人(今時いないかも知れませんが)が「たまには(乃至はじめて)日本のミステリも読んでみたい」なんて言うならこの第一級短編集を薦めてあげたいかな。

後年のあっさりした短編群も嫌いじゃないですが、敢えて人に薦めたいのはやっぱり初期の、洒脱ながらも何気にこってり濃厚な作品達かな。

不運な旅館 /赤いすずらん /さらば厭わしきものよ /二度目の手術 /銅婚式 /離婚作戦 /不貞調査 /カメラに御用心
(講談社文庫)

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.68点   採点数: 1243件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(54)
松本清張(52)
鮎川哲也(50)
佐野洋(38)
島田荘司(36)
西村京太郎(34)
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