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名探偵ジャパンさん
平均点: 6.21点 書評数: 370件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.8 7点 ノッキンオン・ロックドドア2- 青崎有吾 2021/01/08 21:12
当初の予定からかなり期間を空けての刊行となってしまいました。
キャラクター小説という側面がある以上、登場人物のキャラクター像や人物関係をおさらいしてから読むべきで、そうしないと面白さが半減してしまうのでしょうけれど、面倒くさくてそのまま読んじゃいました(登場人物の名前も含めて、「探偵が二人組」ということ以外、ほとんどすべての設定を忘れていました)
こういうことがあるから、キャラクター小説は読者の記憶が確かなうちに矢継ぎ早に出していかないと駄目なのです。

相変わらず手堅いミステリを量産できる器用な作家ですね。「ハズレ」のない良い短編集でした。
最後に登場人物の関係性の総決算が行われるので(少年漫画の打ち切りラストみたいな駆け足感でした)、できれば前作から続けて一気読みすることをおすすめします。

No.7 4点 アンデッドガール・マーダーファルス2- 青崎有吾 2019/02/01 21:47
刊行以来、長らく登録されていなかったのですが、やっぱり内容が問題だったのでしょうか。
前作において異彩を放っていた「特殊世界でのミステリ」という要素は綺麗さっぱり消え去っていました。ミステリっぽい部分は、ルパン対ホームズのお宝をめぐっての戦い(頭脳戦)のみ。後半は特殊能力を持つ超人同士の戦い(物理)という、ラノベみたいな展開になってしまいます。
続刊以降どうなるのか分かりませんが、本巻だけを取り出せば、「SF/ファンタジー」というジャンルにカテゴライズせざるを得ません。

No.6 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎- 青崎有吾 2017/11/09 17:51
長編は、さすがのロジックを繰り出してきて、ガチ本格にキャラクター小説のスパイスを振りかけた。程度に収まっている本シリーズですが、本短編集くらいにまでなると、半分以上キャラクター小説です。
正直、そこまでこのシリーズのキャラクターに入れ込んで読んでいたわけではなかったので、ほぼ全てのキャラクターの読み分けが出来ていない「お前、誰だよ」状態でした(登場キャラクターに年齢、職業的相違がない、ほとんどが女子中高生ということも理由のひとつでした。舞台がそうなので当たり前なのですが)。

私は、「混ざるべきでない食品同士が混ざってしまう」という状態に異様な嫌悪感を覚えるので、「もう一色選べる丼」に出てくる「二食丼」は絶対に食せない自信があります。同じ丼に盛る以上、境界線で絶対に混ざるでしょ。麻婆丼と親子丼の具が混ざるって、考えられません。混ざらないように食べるには、相当な努力を要するはず。こんな悪食な真似をするなら、ハーフサイズの丼を二つ出してもらいたいです。これでも本作のトリックは通用しますよね?

一番面白かったのは、「その花瓶にご注意を」でしょうか。あとは、結構、真相を知ったときに「そうだったのか!」と膝を打つというよりは、「しょーもな!」と感じてしまうものばかりで(特に表題作は、それをやったとして、そんなにリターンが見込めるかなぁ?)、やっぱり個人的に、ミステリには「犯罪者」がいないと、どうにも締まらないな、という感想を改めて持ちました。

No.5 7点 ノッキンオン・ロックドドア- 青崎有吾 2017/07/26 21:02
新鋭、青崎が新たに送る連作ミステリシリーズ。
スタイリッシュなメインタイトル。お洒落なカバーイラスト。ここからどんな洗練されたロジックを見せてくれるのかとページを開くと、いきなり第1話で、バカミスに片脚突っ込んだ大胆すぎるトリック! どうした? 平成のクイーン。
が、これは作者が引き出しの深さを見せたというまで。相変わらずの高度なトリックとロジックに、魅力溢れるキャラクターたちの軽快なやりとり。これを「軽い」と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、若い読者(作者も若いし)には程よく受け入れられるのではないでしょうか。
外れのない短編集というものを久しぶりに読みました。
こういうものを大手ラノベレーベルで出すことは出来ないのでしょうか。こういった質の高い(そして適度に軽い)本格ミステリをもっと若い人に読んでもらい、ミステリファンの裾野を広げていきたいものです。

二人の探偵、警部補、そしてもうひとりの人物。四人の思惑を乗せて、シリーズは続刊します。

No.4 8点 図書館の殺人- 青崎有吾 2017/04/15 22:23
解答編パートが前二作品(『体育館』と『水族館』)よりも短く、かつ分かりやすくなっています。前二作品(特に『水族館』)が数学の問題を解くかのごとき、あまりにスパルタンな構成だったことに対する反省なのでしょうか。分かりやすく、かつ、あくまでロジカルに。これは大変よい傾向だと思います。
初登場時は不愛想で慇懃無礼な変態だった、探偵の裏染天馬のキャラクターも、次第に軟化してきているように思われます。

私も、多くの方のご指摘にあるように、犯人の動機に最後まで「?」が拭えませんでした。「最後の最後で納得のいく驚きのホワイダニットが明かされるのか?」と身構えていたのですが、そこまでは行きませんでした。そこをしっかりと締めてくれたら、「古典的なロジカル推理と現代的なサプライズ性が融合」した文句のつけようのない大傑作が生まれていた可能性があっただけに、(このレベルの作品に対して言うことでは本来ないのですが、それほどの期待を込めているため)残念に思いました。

しかしながら、奇襲的サプライズやキャラクター、専門的な知識に頼ったミステリが多い現代の中で、ここまでロジックにこだわった本シリーズの存在は稀有で貴重なことに変わりはありません。この作者の年齢で、ここまで書ける作家というのは、そうはいないでしょう。ゆくゆくは、本邦ミステリ界を牽引するようなビッグネームになってほしいと切に願います。

No.3 7点 アンデッドガール・マーダーファルス1- 青崎有吾 2016/07/29 21:13
昨年末に創刊された、講談社の新文庫ブランド「タイガ」ロンチの目玉作品。
書き手は「平成のクイーン」こと青崎有吾。

吸血鬼や人造人間などの「怪異」が実在し、しかも人間と一部共存しているという特殊世界もの。平成生まれの作者は、こういったガジェットに物心ついた頃から接していたはずで、ある意味本領発揮といえるのではないでしょうか。さらにそこに、「ベルギー人の探偵(この時点では官職で警部)」「Mを頭文字に持つ教授」など、本格ミステリ界の重鎮も加わって、さながら「スーパーミステリ大戦」の様相を呈してきます。

怪物、魔術などが存在する世界とはいえ、推理はあくまでロジカル。ファンタジックなガジェットを前提として、作者得意の理詰めの展開が繰り広げられます。
第一章の最後で、犯人が判明するや否や、いきなり主人公が犯人をボコり始めたのには、唐突すぎてちょっと笑ってしまいましたが。

「高度に発達した技術は魔術と見分けがつかない」とは、SF作家、アーサー・C・クラークの有名な言葉ですが、携帯電話やパソコン、地球外にまで飛びだすロケットなど、百年前の人から見れば、まさに「魔法」としか思えないでしょう。そんな「魔法」に囲まれた我々の世界でも、今でも変わらず本格ミステリは生み出され続けています。「魔法」があるからといって、そこにロジカルな思考と解決が無意味になることなどないのです。
「魔法とか怪物とか出てくるのか……」と食わず嫌いをせずに(それは本作を読む前の私だ)本格ミステリファンにはぜひ読んでほしい一冊です。

No.2 7点 水族館の殺人- 青崎有吾 2015/07/02 10:15
前作「体育館の殺人」の続編のため、前作読了は必須。
別に続きのストーリーではないのだが、前作で容疑者だった人物が普通に登場したりしているので、先にこちらを読んでしまうと、「体育館の殺人」を読む時に大変なことになってしまう。
解決編での展開は、「みんな遅れないようについてこい」状態で、読むスピードがいつもの半分になってしまう。
卓球大会だの、妹登場、探偵の家族の秘密など、キャラクターものの側面も強めてきた。間違えて本作や、次巻以降から読んでしまう人が出ないように、シリーズナンバーを振るべきではないだろうか。
キャラクターものは、ばらまいた設定を読者が忘れないように、期間を置かずに出版することが求められるが、この作風ではシリーズを量産できない。作者、過酷な道を歩み始めたなぁ、と思った。頑張れ、とエールを送りたい。

No.1 7点 体育館の殺人- 青崎有吾 2015/03/16 09:38
今どき、こんなコテコテの本格を書く人がいたとは。
しかも、クイーン好きをこじらせたオールドファンかと思いきや、作者は、隔世遺伝的まさかの平成生まれ!
無愛想で失礼、しかもアニメオタクという名探偵は好き嫌いが分かれるだろうが、これが、奇抜で変人、という名探偵のお約束を新世代が解釈した形なのだろうか。
大胆なトリックや叙述などの仕掛けもない、ファンタジックな特殊設定もない、あくまでロジカルに犯人を追い詰めていくクラシカルなスタイルは、今時の若者にはあまり受け入れられないかもしれないが、それを書いているのがまた読者に近い若い作家だというのは希望だ。
青崎有吾、本格ミステリの救世主となるか?

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名探偵ジャパンさん
ひとこと
絶対に解かなければいけない事件が、そこにはある。
好きな作家
有栖川有栖 綾辻行人 エラリー・クイーン
採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 370件
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