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バードさん
平均点: 6.14点 書評数: 315件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.18 6点 乱鴉の島- 有栖川有栖 2023/08/30 16:16
火村シリーズ長編への期待値くらいの出来。犯人特定のロジックも、島のメンバーの目的も、全体的にパンチは弱いが、それなりにまとまっている。

積極的に人に勧めるほどの作品ではないが、気軽に安定感のあるミステリを提供してくれる点が有栖川さんの強みとすると、6点にはぎりぎり到達。

No.17 6点 火村英生に捧げる犯罪- 有栖川有栖 2022/03/20 07:48
火村シリーズ短編集にしては収録作ごとの好き嫌いが大きかった。特に表題作はタイトルが格好良く、その使い方も上手い良作である。表題作以外では「鸚鵡返し」が短いながら切味抜群。反対にケツの二つの話は水増し感があり、無い方が良かった。

<個別書評(ネタバレあり)>
・長い影(7点)
トリック自体は無難だが、「長い影」というタイトル回収の上手さが光る。

・鸚鵡返し(7点)
文庫本でわずか9ページだが鮮やかに犯人を告げる鸚鵡。策士策に溺れるとはまさにこのこと。

・あるいは四風荘殺人事件(5点)
作中作形式にした意味も薄く、無駄にごてごてした微妙な話。里中の構想が火村の想像通りだったとしたら、現代視点ではインパクトが足りなさそう。それこそまんまの展開の作品が既にあるし。

・殺意と善意の顚末(6点)
これも「鸚鵡返し」に並んでコンパクトな良作。しょーもないと感じる人もいそうだが。

・偽りのペア(5点)
アリスも言っているようにトリックがしょーもない。

・火村英生に捧げる犯罪(7点)
事件の真相自体の面白みは薄いが、散々火村に注意を向けさせる書き方をしておき、キーはアリスというのが良い。格好いいタイトル自体がミスリードな点も含め構成力で魅せてくれた。本短編集のマイベスト。

・殺風景な部屋(4点)
『名探偵コナン』辺りにありそうな安直なダイイングメッセージ。申し訳ないがあまり面白くなかった。

・雷雨の庭で(4点)
この話の強みってなんだろうかと考えた時に何も思い浮かばない。

No.16 6点 怪しい店- 有栖川有栖 2021/02/06 08:41
本短編集は「店」が共通テーマ。『絶叫城殺人事件』もそうだが、統一テーマものは結構好き。今後『暗い宿』にも挑戦したい。

<個別書評>
・古物の魔(6点)
モノの値段を決めるのは客というのには、はっとさせられた。今後、買い物で悩んだらこの考え方に従おう。収録作の中で、一番気に入ったストーリー。

・燈火堂の奇禍(6点)
店主の奇妙なポリシーが死に設定でなく、事件の原因として活きておりgood。無駄話少な目の引き締まった良短編。

・ショーウィンドウを砕く(6点)
犯人像がイマイチ掴めなかったが、火村の仕掛けが冴えており、ミステリとしては収録作の中で一番好き。

・潮騒理髪店(6点)
旅先で髪を切った経験はないけれど、冒険するのも意外と楽しそう。変な髪型になっても笑い話できるしね。

・怪しい店(5点)
表題作だが本短編集の中ではワースト。ミスリード以外に役割の無いキャラが多く、物語に締まりがない。短編なのだから仕方ない、のではなく短編なのだからこそ、そういうキャラのシーンはカットすべきと思う。

No.15 5点 幻想運河- 有栖川有栖 2020/04/27 15:36
空間的に隔てた大阪、アムステルダム両所で起こったバラバラ死体遺棄事件、という本格色の強そうな本作。当然本格よろしく、探偵役があっと驚く真相を解明するものだと思って読み進めたら、まさかの真相を明示せずに終了。
悪いとは言わないが、「そう来たか」という感じ。
異国の地で暮らす者同士の親しいようで他人事な距離感を描いた一つの物語としては面白かったが、私が有栖川さんに求めているのはこういう話じゃないんだよね。

本作は(私の基準だと)解釈を読者に委ねすぎだと思う。
例えば、
・遥介の超能力
・水島の殺害方法(恭司の推理は証拠無し。余談だが恭司が主張したアリバイトリックは上手い手と思えなかった。)
・水島殺害の動機(美鈴の予想だけ)
・美鈴の自殺理由
などである。登場人物の見解が述べられているものもあるが、いずれも予想の域を出ない。もちろんあえて語らないことで物語に深みを出す作戦なのだろうが、全体的にもう少し白黒つけて欲しかった。

No.14 8点 双頭の悪魔- 有栖川有栖 2019/10/19 17:33
質のいい犯人当て小説を世に出している新本格作家は?と聞かれたら誰だろう?私的には「孤島パズル」を書いた有栖川さんは筆頭候補者の一人である。
本書は三回もの読者への挑戦状付きで非常に楽しませてもらった。(その分読むのに4週間くらいかかったが。)
豪勢な犯人当て×3をもってして基本点を10点とする。ただし犯人当てクイズを売りにするからにはその論理を多少厳しく評価してみる。

(以下ネタバレ)
挑戦状の事件ごとに評価
・小野殺し(第一の挑戦状)
犯人が単独犯なら(これ重要)、江神のロジックで犯人を絞れる。私も推理が的中。感心した点も文句を言いたい点もないのでここ単体としては±0。


・相原殺し(第二の挑戦状)
相原が自ら手紙を右後ろポケットにしまうのは不自然という点から、小学校で密会することを伝える手紙が一度犯人に渡ったという、望月の推理には感心したので+1。(相原が手紙を渡せていなかった場合を私は捨てきれませんでした。)

アリスの推理は私も的中。しかしここは有栖川さん(作者)に一つ文句がある。犯人特定パートにてアリスが
「相原さんが手紙を書いたのが四時。僕たちについて宿を出たのが六時。その間、宿の外部の誰とも接触していません。書いた手紙をどうするつもりだったんでしょうか?」
(p.533 十三章 3(1999年 創元推理文庫))と言い、これを起点に相原が手紙を渡せた相手を限定していく。しかし挑戦状より前の情報で相原が四時~六時の間に宿に籠っていたという記述はない。
該当場面を見ると四時頃に相原が手紙を渡した場面から、飲み会の場面に移りその会話の中で六時頃に相原とアリス達が宿を出たという情報がでる。警察の事情聴取パートでもこの時間帯の相原の行動を明記している箇所はない。つまり読者は
「四時~六時の間に相原が直接犯人(例えば診療所にいる中尾や保坂)のもとに出向いて小学校で密会することを伝えようとするも、何らかの理由で直接会えなかったので、念のため用意した手紙を犯人宅のポストにいれた」
というストーリーも作れる。
これは挑戦状の前に必要な情報に不足ありと言えるだろう(-2)。


・八木沢殺し(第三の挑戦状)
これは別解があるように思える。どういう別解かというと犯人=千原由衣という解である。
「マリアがピアノの音を聞かなかったのはおかしい。(作中の江神の推理と同じ。)ゆえに犯人は八木沢がピアノを弾けない状態にあると知っていた。八木沢がピアノを弾けない状態とは眠っている状態、つまり音楽室に入る前に飲んでいたコーヒーに睡眠薬を仕込めた人物千原由衣が犯人である。」
という推理である。これが頭によぎったため犯人を千原由衣と真犯人の二択で絞れなかった。上記の推理のネックは小野殺しの事件の顛末を盗み聞きした人物Xと千原由衣がイコールでない点であるが、X=殺人犯は作中でも江神の推測で終わっているので否定材料にはならないと思う。
この別解は動機の点で苦しいが、可能性が否定されないうちは-1です。

あと犯人特定の決め手となった、死体とピアノに香水をふりかけたという行動に犯人のメリットがなく、全登場人物の行動の中で一番不自然な行動と思うので-1。


・事件全体について
交換殺人が行われていたというのは相原殺人の犯人の家から小野の耳が出てきたあたりで想像できたので±0。しかしそれを直接二人がやっていたのではなく、仲介人がいた、というのは完全に意識外で二つの事件の結び付け方としては面白く、非常に驚きだった(+1)。

しかし一連の事件が複数人の共同犯罪とすると小野殺しの犯人に異議をさしはさむ余地がでてくるんだよね。例えば第一の犯人(小野殺し)と第二の犯人(相原殺し)の間で
第一の犯人「俺が香水をかけておくから、後から鍾乳洞に入り、においを頼りに小野のもとに行き、殺せ。」
第二の犯人「了解。」
というやりとりがあれば、第二の犯人を小野殺しの犯人とすることもできる。(第一の事件の段階で橋は落ちていない。)それに実は他にも別解を作れる。総合的にこれも-1。だから共犯ものは苦手なんよ。犯人達の自由度が上がって別解が増えすぎるから。


・最後に勝手な思いつきで勝手に加点
第一の犯人が小野の死体を岩棚の上に担いだ理由は、もちろん共犯者と思っている第三の犯人(八木沢殺し)を容疑圏外に外すためだろうが、それ以上に愛するあの人を容疑圏外に外したかったのではないかと思う。これは作中で話題になっていないので真相は不明だが、なんとなくこの解釈は気に入っている(勝手に+1)。


以上で合計8点。真面目にロジックで勝負をしてきた作者にはこのくらい真面目に採点します。いつもより厳しめかもだが、これはこれでということで。

No.13 5点 ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 2019/08/05 11:01
辛辣だが、ほめられた出来でない。(私のようなシリーズファンなら許容できるけど。)

普段の火村シリーズなら真相を推理して読むのだが、本短編の中にはそうするに値するものが無い。となると衝撃的なしかけに期待するも、せいぜい「わらう月」がそこそこくらいで後はイマイチ。本書はシリーズファン以外は読むべきでないし、シリーズファンでも必読書ではないと思う。

(個別書評)
「切り裂きジャックを待ちながら」(4点) 本短編集で一番これまでの火村シリーズっぽい話。普段は気にしないけど動機がよく分からんかった。事件は見た目のインパクトだけで、ミステリとして優れたポイントは無い。

「わらう月」(6点) 写真のトリックの発想は面白く、本短編集の中では一番の作品と思う。しかし、犯人は発想はいいが、あんな子供騙しの写真で警察をだませると思ったのだろうか?

「暗号を撒く男」(3点) 火村先生も言うように解いたからなんだよ、というレベルの謎。イマイチです。

「赤い帽子」(5点) まさかの火村 and 有栖が全く出てこない話。これはこれでいいかも。地味ながら、小さい根拠から犯人に迫るこのやり方は有栖川さんの良さが出ていると思う。

「ペルシャ猫の謎」(5点) 個人的には許せるけど、これは賛否両論というか否の人が多そうだなあと。ミステリとしては大きく問題有りなので、かなり読み手を選ぶ話かと。

「悲劇的」、「猫と雨と助教授と」(採点不可) ミステリでないので評価の対象外とする。火村先生のバックグランドの一端が垣間見られるという点は悪くない。

No.12 6点 朱色の研究- 有栖川有栖 2019/03/15 13:51
有栖川さんの平均点くらいの作品。
5.5点くらいの評価だけど、今回は6点にしておく。(昔読んだ「ダリの繭」も5.5点で、そちらは5点にしたので調整ということで)

序盤の雰囲気はいいのに解決編であらら?という感じ。今回の事件では、火村先生は犯人を当てたとはいえず、あれではいいとこ推定だね。確かに夕雨子殺しの犯人の推定の筋は通してるけど物証は無い。陽平殺しの方も無理が無い話に仕上げただけ。(まあこちらは警察が本気になれば物証もでそうだが。)
つまり、犯人が自白したから解決したことになってるけど、解決方法がそれはお話としてどうかなと思う。そもそも、最後の段階で自白しないといけないというほど犯人は追い詰められていないのでは?

No.11 5点 英国庭園の謎- 有栖川有栖 2014/03/16 16:51
有栖川さんの国名シリーズも4冊目だが短編集の出来としてはなんとなく1冊目の「ロシア紅茶の謎」を超えられてない気がする。今回はオチが投げっぱなしというか、そんな印象を与える話が多かった。

火村シリーズは好きなので楽しめたけどNonシリーズ物でこの内容だったらやや不満、同じ5点でも「ブラジル蝶の謎」よりも評価は下、表題作の暗号は解きたかったなぁ(ついつい話が気になって我慢できずに先を読んでしまった。)

No.10 6点 幽霊刑事- 有栖川有栖 2014/01/20 06:20
ミステリというよりはメロドラマな気もするがそれはそれで良かったと思う。なんというか最後のシーンではすっかり感情移入しててもの寂しかったなぁ。

ものすごく漠然とした感想になってしまったがこんな感想、小説のタイプとしては島田さんの「異邦の騎士」に似てるかな?

No.9 6点 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 2013/10/06 23:07
どういう本か知らずに有栖川さんの本を読みたかったので買ったら短編集だった(ほんとは長編が読みたかった)
すべてが妙な建物にまつわる話で雰囲気が好み、好きな話を挙げるとしたら1、2、4話目といったところ。

No.8 5点 ダリの繭- 有栖川有栖 2013/09/24 22:23
火村シリーズの平均的レベルの作品。読んでいて先が気にはなったが中盤あたりで怪しい人物の候補が大方絞れるので最後の驚きはあまり得られなかった。論理的な破たんはないにしても地味なイメージ。

No.7 7点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2013/09/21 09:29
火村シリーズの中でも作風が好きな作品。登場人物のイメージが付きやすくどのような環境で事件が起きたかも想像しやすかった、自分も将来こういう家に静かに住みたいものだ。
トリックは中々簡単だと思うが読んだ当時まだ雪による密室に慣れてなくて推理がかすりもしなかった(笑)

No.6 5点 ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 2013/09/02 10:28
つまらなくはなかった、ただ有栖川さんの国名シリーズでは一作目の「ロシア紅茶の謎」が一つの基準となりそれに比べると印象的な話が少なかった気がする。

No.5 10点 孤島パズル- 有栖川有栖 2013/08/24 17:32
ちょっと甘いかもしれないがこの点数を。前作の「月光ゲーム」と比べると格段に読みやすくなっていてそこがまずプラス、今回先輩コンビはメインで出てこなかったがかわりにヒロインキャラが登場したのでシリーズ物的にも不満はない。内容に関してはやや地味だったかもしれない。

個人的に最も評価した点は犯人特定のロジックがこれまで読んできたミステリの中でも一番鮮やかであったことである。読者への挑戦が付いている作品はいくつも見てきたがここまで正々堂々とした挑戦状は見たことが無かった。当てさせる気のないミステリもある中犯人当てをさせる難易度としてはすばらしい調整と思えたので満点。

No.4 5点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2013/08/22 12:56
作家アリスシリーズに比べると比較的に評価の高い学生アリスシリーズだがこの作品は少し読みにくかったな・・・。
読まれた方の多くが漏らすことだが登場人物が多すぎる、それに一人一人の情報差がありすぎてあきらかに重要でない人物が多いという印象。プラス犯人の動機も好きになれない。

ただデビュー作ということを考えると十分な出来で特に火山の噴火によるパニックの中での殺人と緊張感のあるんだかないんだかの「閉ざされた山荘」という舞台設定は好みだった。

No.3 6点 ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 2013/07/10 11:33
短編集のザ・平均といったでき。5~6点の間ぐらいの評価でどうするか迷ったが八角形の真相を当てられて気分が良くなったので6点で(笑)。

No.2 6点 46番目の密室- 有栖川有栖 2013/07/03 11:51
良くも悪くも有栖川さんの作品といった感じかな。読みやすくてトリックや推理は小奇麗にまとまっている、その一方どんでん返しや目だったシーンもない。

この作品のメイントリックは長編一本のトリックとしては弱いと思う、それでもうまいこと考えるなと納得もしやすかった。

No.1 8点 マジックミラー- 有栖川有栖 2013/05/06 20:49
初の有栖川さんの作品がこれだった。なぜ作家有栖でも学生有栖でもないこの作品からだったのか・・・?
自分はフーダニットが最も好きなのでアリバイ崩しものの評価は辛くなりがちだがこれは面白いと思えた。切符の指紋に関するトリックがシンプルだがきれいだったと思う。

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バードさん
ひとこと
ミステリ好きを自称してるもののまだ超有名な名作ですら未読のものが多いにわかファンなのでご容赦ください。あと感想の文体に丁寧語を用いないため生意気な批評と感じる方もいらっしゃるかもしれません、もし不快に感...
好きな作家
(海外)エラリー・クイーン アガサ・クリスティ (国内)江戸川乱歩 島田荘司 綾辻...
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 315件
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