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バードさん
平均点: 6.14点 書評数: 315件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.10 6点 孤島の鬼- 江戸川乱歩 2020/03/18 00:05
本書は序盤から中盤にかけて雰囲気が大きく変わる。普通(?)の殺人事件の捜査をする『D坂』のような序盤と、中盤以降の冒険もの(横溝さんの『八つ墓村』に近い?)が滑らかにつながる見事な構成で、本書は両雰囲気を一冊で楽しめるお得な作品である。
また、かたわ者や同性愛者といった登場人物達が不気味さを醸し出し、作品に良い味付けをしていた。乱歩さんにこの手の題材を書かせると自然と筆が乗るのか、良い感じ。私が読んだ創元推理文庫には竹中英太郎さんの挿絵があるが、これも不気味さの演出に一役買っていた。

ただし、面白いが手放しに褒められない、というのが本書に対する私の総評だ(理由は後述)。
文庫版の背表紙には、本書が『パノラマ島奇談』や『陰獣』に並ぶ乱歩さんの長編代表作、とあるが、コンパクトな『陰獣』の方が本書よりも好き。(『パノラマ』は未読。)
テーマや事件を考えると、7~8点に到達するポテンシャルがあったはずなのだが、惜しい作品という印象。

手放しに褒められない理由
・大胆な省略がある一方、もったいぶる、回りくどい言い回しが多すぎてテンポが悪い。乱歩さんらしいこれらの文章表現は、短編や小噺では語り手に親しみを覚えさせる表現としてプラスに機能しているが、長編で多用されると、早く言えよ!とイライラ。

・序盤の殺人事件の真相がしょぼい。(書かれた時代を考慮すると致し方ないですが。)

・ストーリー展開が全体的にご都合主義すぎる。
例えば終盤で「偶然」生きていた徳さんに「都合よく」再会して、おまけに事件の真相まで語ってもらうというのは中々にご都合主義よね。これ以上の列挙はあえてしないが、他にも都合の良すぎる例はあるように思える。

No.9 8点 江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)- 江戸川乱歩 2019/05/04 14:36
まさにタイトル通り乱歩さんの傑作選だね。乱歩作品読みたいって人にはとりあえずこれ読ませて、あうあわないを考えてもらえばいいんじゃないかな。
全体を通して思ったのは、乱歩さんの書く犯人(?)ってある特定のものに打ち込みすぎた人か、とにかく退屈でしょうがない奴の2パターンが多いね。知り合いがこんな人物ばかり書いてたら少し心配になるかも(笑)

個別書評(部分的に再読)
・二銭銅貨(再読) 7点
暗号は解ける気しないけど、話の転がし方に乱歩さんらしさがつまっとるね。この手のおちもデビュー作からのお家芸なのよね。

・二廃人 7点
夢遊病も好きな題材なんでしょうね。別の短編集に「夢遊病者の死」ってのもあったしね。しかけはシンプルでも十分読ませる話になってる。

・D坂の殺人事件(再読) 6点
前読んだときはやや否定的な印象をもったけど、今回はプラスの印象。多分明智の探偵のやり方(物証をやや軽視する)に慣れてきたからかな。

・心理試験 8点
このような犯人しか知りえない情報の自白で探偵が追い詰めるやり方の作品の中には、言い逃れ可能だろ!と思う作品も結構ある。しかし、本作はその前のテストのおかげで不自然さがなく、犯人特定がきれいにきまっていると思う。

・赤い部屋(再読) 8点
前に読んだときも思ったけど、T氏が語る殺し方一つ一つでおもしろいミステリが書けそうなのに、さらっと一小話に使ってしまうのに贅沢さを感じる。おちの賛否はあると思うけど、引き込まれるいい書きっぷりでしょう。

・屋根裏の散歩者(再読) 6点
タイトルは有名だけど、この作品集の中では実は地味な方かも。犯人がわりと普通の人っぽいからかな。あと、完全に個人的意見だけども、探偵が証拠をでっち上げて自白させるやり方は好みでないね。

・人間椅子 8点
単純に面白かった。無茶苦茶な設定ながらぞくりとさせる上手さがある。作品の感想じゃないけど、タイトル見て人間を材料に椅子作る狂人の話かと思ってました。

・鏡地獄 8点
これも単純に面白いっすね。正直おちは全く想像できなかった。鏡の球内ってどうなるんだろう・・・。

・芋虫(再読) 8点
これは印象強すぎて内容忘れないんだろうな。前と同じ感想だけど、自分の身に置き換えると・・・。想像するだけで恐ろしい。

No.8 5点 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2- 江戸川乱歩 2019/04/26 22:45
乱歩さんのおどろおどろしさが堪能できる欲張りセットではないか。
日常的なホラーのお手本的なものかと。ただし、出来が良いのは間違いないと思いつつ、私はホラーはそれほどなのでこの点数で(笑)

個別の書評
「芋虫」 本短編集の中で一番かも。最後世界との一切の接触が断たれた須永中尉を自分に置き換えるとかなり恐ろしい。最早自殺が最良の選択肢としか思えない絶望感だろう。

「指」 軽くまとまった良作。

「火星の運河」 私の読解力が低いのか、正直良さが分からなかった。?ただし乱歩さんの素が一番出てるかも。

「白昼夢」 いまひとつかしら。ちょっと話がストレートすぎる。

「踊る一寸法師」 手品を始めた瞬間からもう嫌な予感しかしなかった。嫌いというほどではないけどこれもひねりは少ないかも。

「夢遊病者の死」 本短編集の中で最もミステリっぽい作品(と思う)。ただし、あくまでホラーで、ミステリではない。こういう思い込みを誘発させて他人の行動を操作する方法は相当上手くやらないと、ミステリでは駄作になりやすいが、ホラー要素を主役にすることで、本作は名作となっていると感じた。

「双生児」 これは双子がいれかわる話なのだけど、弟はくず野郎だね。おちは読めるけど、死刑囚が懺悔してるという形式なのが面白さを引き出していると思う。

「赤い部屋」 おちはあれで良いのか?と思うけど、語り方が上手く内容にはぐっとひきこまれた。本短編集で二番目に好き。

「人でなしの恋」 私には門野の気持ちが全然分からないからそれほど面白いと思えなかった。あの手の異常性性癖の人を知ってれば感想も変わるかもしれない。

No.7 6点 暗黒星- 江戸川乱歩 2014/02/24 22:51
面白かった、暗い雰囲気がひしひしと伝わってきてはらはらした。ただ全体的に突っ込みどころは少ないけど現代ミステリがあふれてる現代の人の目線からすると少しストレートすぎるかな、ということで点数は伸び悩んだ。

でもこれがでた当時だったら全体的にハイレベルな水準の作品だと思う。

No.6 6点 屋根裏の散歩者- 江戸川乱歩 2014/02/24 22:40
とても有名な古典ミステリなのではや読んでおきたかったので少しハードルが上がっていたかもしれない。まぁ犯人の動機はだいぶ適当だと思ったけど乱歩さんの作品はこのくらい動機に対してドライでもあまり気にならない文体なのがいい。探偵が証拠をでっち上げて自白させるのは今現在ではいい手とはいえないが当時としては斬新だったのだろうか。

No.5 5点 D坂の殺人事件- 江戸川乱歩 2014/02/22 10:08
乱歩さんの作品の中ではイマイチ、ダミーの推理とは言っても縞々の服って・・・。まぁ特に言うことはない。

No.4 8点 陰獣- 江戸川乱歩 2014/02/22 09:55
とてもおもしろかった、犯人の意外性がないのは長さ的にしょうがないがそれをふまえても良かった。

普通ミステリで未解決というか最後にもやもやさせてくるのは好ましくないと思うがこの作品についてはかえってそれが良かったのかもしれない。春泥の作品がもろ過去の乱歩さんの作品だったのもいいスパイスだった。

No.3 7点 二銭銅貨- 江戸川乱歩 2014/01/29 10:03
読んだのは短編集だが表題作が二銭銅貨なのでここに感想を書かせていただく。点数は短編9本の平均だが二銭銅貨自体もちょうどこの点数。

暗号というのは大概こじつけになってしまうから長編で暗号がメインになると謎解きの説得力が弱い気はする、しかし短編だとさくっと読めるし乱歩さん特有の軽い文体とも相性が良かったと思う。
明智もいいけど松村というキャラももう少し見たくなった。

No.2 5点 怪人二十面相- 江戸川乱歩 2013/05/19 13:12
ふと古本屋でタイトルを見て有名作なのに読んでないと気づき購入し一気読みさすがに子供むけとあって読みやすかった。
個性的なキャラたちが動いてて面白かった、でも以外な展開があるわけでもなく再読は多分しないと思う。

No.1 7点 蜘蛛男- 江戸川乱歩 2013/05/16 13:06
犯人がいい感じに狂っていて読んでて楽しかった。丁寧な伏線のおかげで犯人の正体はかなり早い段階でわかるので、明智探偵が指摘するまで誰も犯人に気づけないのはなんとなくよんでいて笑えた。ただ若干情報を出しすぎている気もし、もう少し正体を隠す書き方だった方が盛り上がったかもしれない。
表題作じゃないもう一本は特にコメントなし。

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バードさん
ひとこと
ミステリ好きを自称してるもののまだ超有名な名作ですら未読のものが多いにわかファンなのでご容赦ください。あと感想の文体に丁寧語を用いないため生意気な批評と感じる方もいらっしゃるかもしれません、もし不快に感...
好きな作家
(海外)エラリー・クイーン アガサ・クリスティ (国内)江戸川乱歩 島田荘司 綾辻...
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 315件
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