皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.10点 | 書評数: 1679件 |
No.619 | 4点 | ダイナー- 平山夢明 | 2014/06/23 13:00 |
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『ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、カナコは生き延びることができるのか? 次々と現れる奇妙な殺し屋たち、命がけの恋──。』 第13回(2011)大藪晴彦賞。第28回日本冒険小説協会大賞。 脱出できないダイナーで、いつ殺されてもよいような状況のカナコ。助けてくれるはずの殺し屋もやがて・・・。人がバタバタ殺されるグロ描写には、やや食傷気味となります(苦笑)。サスペンス感や主人公の心情がいま一つ伝わってこないのが痛いところ。ラストもよくあるパターン?。他サイトで評価が高かったので残念な結果。 |
No.618 | 6点 | 霧の迷宮から君を救い出すために- 黒田研二 | 2014/06/22 10:29 |
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裏表紙より 『動くものが見えない・・・。高原に建てられた災害用のシェルター。その近くで“僕”は暗闇の中、何者かに襲われて崖から転落し、頭を打った。包帯が取れたとき目の前に広がったのは、一面、白い霧の世界。脳を損傷し、動くものを認識できなくなってしまったのだ。そして、密室のシェルターの中からは女性の死体が発見されて…。霧は最後に晴れ渡る!』 著者らしい特異設定(六秒間ごとにしか現実を認識できない。動くものが見えない)でのフーダニットものです。前半は、僕(28歳)の従妹(結婚して子供もいる)を慕う気持ちと、事故の見舞に来てくれる女性に恋をするという恋愛物語のようでもある・・・。中盤は活劇もあり後半へ。ラストは特異設定と本格ものが融合した解決へと導かれます。ブラックな味わい(好きなタイプ)が待ち受けていました。 |
No.617 | 5点 | 萩・津和野殺人事件- 中町信 | 2014/06/20 12:42 |
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裏表紙より『サラ金から3千万円が強奪され、逃走中に犯人が交通事故死した。だが、現金は車中から発見されなかった。当然、事故現場を目撃した3人の男女に横取りの嫌疑がかかる。しかし、無実を主張する容疑者たち。やがて、1人が自殺をとげ、1人は草津行きの特急列車で刺殺される。残る1人が観光で萩へ向かった時、事件は…。小京都を舞台に連鎖する3千万円をめぐる殺人。』 意外な真相・犯人で読者を騙してやろうという意気込みは感じられるのですが、メインの事件(猫ババ)そのものがあまり面白くありませんでした。連結列車のトリック、ダイイングメッセージなどありますが、あまり驚きはありません。まあ、意外な真相ではあるのですが、伏線が弱かったような気がします。 |
No.616 | 5点 | 密室の鎮魂歌- 岸田るり子 | 2014/06/18 11:06 |
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真相は面白いと思いましたが、全体的に後出しの印象が強いですね。伏線が弱いことと、探偵役が不存在?(推理が弱い)の点が原因か?。倒叙物であれば、第2の密室を仕掛けることにより、犯人を追いつめるということが読者に伝わるのですが、ミスリードのためとなればあまり効果はなかったような気がします。密室自体も面白くはありませんでした。女性の心理(嫌な面)はさすがにうまく描かれています。 |
No.615 | 4点 | ふたり探偵―寝台特急「カシオペア」の二重密室- 黒田研二 | 2014/06/16 08:42 |
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裏表紙より『ムック本取材のための北海道旅行からの帰路。向河原友梨ら取材班は、寝台特急カシオペアの車中にいた。一方、友梨の婚約者で刑事のキョウジは、連続殺人鬼Jを追っていた。が、殺人鬼の罠にはまり、意識不明の重体となってしまう。やがて、友梨の頭の中に彼の声が聞こえてきて…。Jはこのカシオペアに乗っているというのだ』 SF的設定は好みではないのですが、その点はあまり気にならず読むことはできました。真相はあるトリックの応用で、面白い試み(氏の特徴が出ている)とは思いますが、いまいち納得性(リアリティ)の面でこの評価。 |
No.614 | 4点 | ドーヴァー4/切断- ジョイス・ポーター | 2014/06/13 08:19 |
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評価に悩む作品。短編であれば、ブラックユーモアとしてラストのオチ(終わり方)は高評価としたいところ。結構好きなタイプです。ただし、長編であるので犯人?側の心理描写(面白い動機)や、ある程度の証拠(伏線でも可)が欲しい。ダメ刑事のひらめきだけでは物足りない感じがしました。 |
No.613 | 7点 | 鬼火島殺人事件- 天樹征丸 | 2014/06/09 16:41 |
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中表紙より『殺戮の光景!探偵は、鍵穴ごしにそのすべてを確かに目撃したのだ。なのに・・・。駆けつけた管理人が、合鍵でドアを開けると、そこには何もなかった。誰もいなかった。煙のように、幻のように、全てが消え失せていたのだ。この”密室”から。青ざめた死体も、恐るべき殺人者さえも・・・。』
密室の物理的トリックはあまり好みではありませんが、本作は初物で楽しめました。意外な犯人も目新しいものではないのですが、見せ方や伏線の使い方がうまいと感じました。 |
No.612 | 5点 | 二枚のドガの絵- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク | 2014/06/09 08:46 |
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初のコロンボものです。犯人の計画は、3か月かけたもので自信満々なのですが、かなり杜撰なところがありましたね。完全犯罪を崩すところを期待したので残念です。犯人を追い込むこと(逮捕)が主体のようで、犯人が苦労した?アリバイも崩していないし、共犯者の殺害にも触れられず終了。自白させるということなのでしょうか。物足りなさが残りました。まあ、TVを見ているようで面白いのですが・・・。 |
No.611 | 5点 | 襲名犯- 竹吉優輔 | 2014/06/07 22:41 |
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第59回江戸川乱歩賞受賞作。「デス・コレクターズ」「二流小説家」で連続殺人者の信奉者が描かれており、日本ではこの手の作品は難しいのでは?と思っていたら本作がありました(笑)。
「BOOK」データベースより『十四年前、ある地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。逮捕後、その美貌と語り口から、男には熱狂的な信奉者も生まれたが、やがて死刑が執行される。彼の「死」は始まりにすぎななかった。そしていま、第二の事件が起きる―。』 著者の意気込みが感じられる作品で、ストーリーは面白いと思います。しかし、冗長な部分があること、回想が読みにくいところが難点でした。動機の異常性を読者に納得させる描き方や叙述テクニックを磨けばという感じがしました。 |
No.610 | 6点 | 煙の殺意- 泡坂妻夫 | 2014/06/05 14:52 |
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①赤の追想~恋愛の機微とは?②椛山訪雪図~ダリのような騙し絵か?③紳士の園~浮浪者の死体までも片づけられる公園とは?④閏の花嫁~閏年の結婚式の意味は?⑤煙の殺意~火災と殺人の関連は?⑥狐の面~狐の憑き物の退治方法は?⑦歯と胴~完全犯罪成立か?⑧開橋式次第~15年前の事件とそっくりだが? ⑦が一番の好みですね。阿刀田高氏の最もお気に入りの作品(1978)と同じモチーフでした。氏のファンとしては、本作より1年前の発表でホッとしています(笑)。④はロアルド・ダールの「奇妙な味」的な雰囲気。②はダリの騙し絵が取り上げられていますが、マニアックな作品で同ファンとしては、おもわずニヤリとしてしまいました。短編は余程のインパクトのある作品でないと高評価は付けづらいので、やや辛目です。 |
No.609 | 6点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2014/06/01 19:29 |
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雪密室の古典ということで拝読。先駆的ということでの評価です。雪密室のトリック(トリックとは言えないのかも?)のため、犯人設定などプロットにかなり無理があるように思いました。犯人が仕掛けたトリックを探偵が解き明かすに醍醐味を感じる派なので、そういう点では物足りなかったですね。あと、文章が読みにくい(スチエーションが頭に入ってきませんでした<苦笑>)。 |
No.608 | 5点 | 悪と仮面のルール- 中村文則 | 2014/05/30 21:27 |
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「BOOK」データベースより~『父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、居場所がわからなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。それは、絶ったはずの家系の男だった―。刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編』 ウォールストリートジャーナルミステリートップ10(2013)に選出されたとのことで拝読。探偵、刑事が登場するも、ミステリー要素は少ない。悪を描くことにより人間を描くという文学的要素の色彩が強い作品でしたね。芥川賞作家ということで、少し斜に構えて読んでしまいました(笑)。主人公の中で、香織が偶像化されてしまい、彼女の人物像がいまいち伝わってこなかったのが残念です。 |
No.607 | 6点 | デッドマン- 河合莞爾 | 2014/05/29 18:02 |
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テンポもよく、ユーモアもあり、スラスラ読めます。犯行状況など細かいところはカットしてしまう難?(猟奇的な雰囲気が伝わってこない)もありますが、そういうことをあまり考えさせないような物語の展開ですね。リーダビリティがあると言えるのかもしれません。登場人物のキャラは特徴があるわけではないのですが、なんとなく親しみが持てます。 |
No.606 | 8点 | 空白の殺意- 中町信 | 2014/05/28 09:46 |
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~大げさではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまで引っぱて行く『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私はためらわずに、本作を筆頭に挙げている。~裏表紙より。 心理的トリックがあると書かれていても見事に引っかかりました(笑)。復活版の本サイト評価は「模倣の殺意(新人賞殺人事件)」5.69点(13人)「天啓の殺意(散歩する死者)」7点(9人)本作「空白の殺意(高校野球殺人事件)」5.2点(5人)ですが、私としては筆者の言う通り、本作が一番の出来(プロットも良し、アリバイトリックも良し)と思いました。解説は叙述の折原一氏で、氏が学生(ワセダミステリクラブ)だった1974年、日本にも「この手のミステリ」を書く作家が現れたのかという驚きをもったと記しています。 |
No.605 | 10点 | 追憶の夜想曲- 中山七里 | 2014/05/25 11:27 |
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もう続編はないのか?・・・。ありがちな題材を匠の技で、実に味のある奥行きの深い作品に仕上げた印象です。久しぶりに鳥肌ものでした(笑)。ヒールもの、動機、伏線の妙、題名、ミスリード、コロンボ並みの目の付け所、法廷の緊迫感、ひねりのあるどんでん返し、思いがけない真相など、好みにぴったりでした。著者の作品は既読8冊のうち、9点以上が4冊目となり、余程相性が良いのかもしれません。「贖罪の奏鳴曲」の続編にあたります。よって、背景を理解する上では前書を先に読んだ方がラストなど心にしみ納得できると思います。 |
No.604 | 7点 | 二流小説家- デイヴィッド・ゴードン | 2014/05/22 11:06 |
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連続殺人犯の信者がいるという点では、「デス・コレクターズ」と背景が似ています。アメリカ的と言えるのかもしれません。日本ではこの手の作品は難しいかも?。エログロ描写もかなりありますが、主人公ハリーの人間的魅力?で全体の雰囲気を和らげています。サイコサスペンスですが、ミステリー要素(フーダニット、サプライズ)もあり、エンタメ系作品として楽しめました。 |
No.603 | 6点 | 転迷- 今野敏 | 2014/05/20 10:17 |
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シリーズ3は恋の苦悩物語らしいので飛ばして本作4へ(笑)。スピード感、スッキリ感を味わえますね。縄張り争いに相変わらず重点が置かれています。事件そのものはシリーズ2の方がよかったような気がします。 |
No.602 | 6点 | 二重生活- 折原一 | 2014/05/19 19:02 |
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プロットは気に入りましたが、ラストの明快さにやや欠ける点があると思います。エピローグで第三者視点で叙述部分を解説してくれると、もっとインパクトがあったような気がします。頭の回転が悪い読者なので(笑)。二重生活の複数の意味合いは判り易かったです。共書の利点は女性心理がよく描かれていた点ですね。 |
No.601 | 6点 | 白鳥の歌- エドマンド・クリスピン | 2014/05/18 11:30 |
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裏表紙より『オックスフォードで催されるワーグナー歌劇の稽古中、歌手としては一流ながら人間的には最低の男ショートハウスが様々なトラブルを引き起こしていた。そして初日も間近に迫ったある夜、歌劇場の楽屋でショートハウスの首吊り死体が発見される。死亡時刻には現場は密室状況にあり、作曲家で奇行で知られる被害者の兄、恋敵の歌手、理不尽な扱いを受けていた新人指揮者など、殺人の動機を持った容疑者には事欠かなかった。友人の求めに応じて事件の解明に乗りだしたオックスフォード大学の名物教授ジャーヴァス・フェンだが、歌劇場の周辺ではその後も怪事件が相次いだ…。J・D・カーターばりの不可能犯罪』 単なる物理的密室(どのように密室にしたか?)より、他の意図があったというアイデアが良かったと思います。最近は物理的密室そのものにはあまり興味が湧きません(苦笑)。本作は、密室より「皮肉な真相」の方に軍配を上げたいと思います。会話に引用文が多くちょっと読みにくいのが難点でした。 |
No.600 | 8点 | 果断- 今野敏 | 2014/05/15 11:46 |
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1作目の隠蔽捜査より楽しめました。エンタメ系と捉えているので、細かいことには目をつぶりましょう(笑)。警察関係の方から見れば、題名にかかる判断や行動等は大いにクエッションマークがつくものと思いますが、それはそれで楽しめればいいのでは・・・。金融関係者としては、半沢直樹シリーズ(TV)は食指が動かなかったのですが、妻や子供たちは大いに楽しんでいました。そんな感じで本作を捉えています。普通のことを普通に言うと「変人」扱いされることはよくあることですね。大昔の話ですが、金融機関は融資をするため企業の決算分析に力を入れるのですが、自分の会社(金融機関)の分析をほとんど行っておりませんでした。これではおかしいと言うとよく「変人・奇人」扱いされたものでした。竜崎の心情が理解できます(笑)。今や金融庁検査はこれが主流となっています。かなり横道へ逸れてしまいましたが・・・。このサイトに投稿を始めたころは、ミステリーは謎である、よって謎のない小説は低評価としていましたが、ジャンル別が導入(発案者ならびに管理人の方に感謝)されてからは、考えが変わってきました。本格系、サスペンス系、エンタメ系などジャンルを考慮するようになりました。また作品が書かれた年代も考慮するようになって来ました。進歩か?。この書評が600冊目となり、ちょっと関係ないことを書いてみたい気分でした。 |