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蟷螂の斧さん
平均点: 6.09点 書評数: 1668件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.608 5点 悪と仮面のルール- 中村文則 2014/05/30 21:27
「BOOK」データベースより~『父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、居場所がわからなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。それは、絶ったはずの家系の男だった―。刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編』                    ウォールストリートジャーナルミステリートップ10(2013)に選出されたとのことで拝読。探偵、刑事が登場するも、ミステリー要素は少ない。悪を描くことにより人間を描くという文学的要素の色彩が強い作品でしたね。芥川賞作家ということで、少し斜に構えて読んでしまいました(笑)。主人公の中で、香織が偶像化されてしまい、彼女の人物像がいまいち伝わってこなかったのが残念です。

No.607 6点 デッドマン- 河合莞爾 2014/05/29 18:02
テンポもよく、ユーモアもあり、スラスラ読めます。犯行状況など細かいところはカットしてしまう難?(猟奇的な雰囲気が伝わってこない)もありますが、そういうことをあまり考えさせないような物語の展開ですね。リーダビリティがあると言えるのかもしれません。登場人物のキャラは特徴があるわけではないのですが、なんとなく親しみが持てます。

No.606 8点 空白の殺意- 中町信 2014/05/28 09:46
~大げさではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまで引っぱて行く『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私はためらわずに、本作を筆頭に挙げている。~裏表紙より。              心理的トリックがあると書かれていても見事に引っかかりました(笑)。復活版の本サイト評価は「模倣の殺意(新人賞殺人事件)」5.69点(13人)「天啓の殺意(散歩する死者)」7点(9人)本作「空白の殺意(高校野球殺人事件)」5.2点(5人)ですが、私としては筆者の言う通り、本作が一番の出来(プロットも良し、アリバイトリックも良し)と思いました。解説は叙述の折原一氏で、氏が学生(ワセダミステリクラブ)だった1974年、日本にも「この手のミステリ」を書く作家が現れたのかという驚きをもったと記しています。

No.605 10点 追憶の夜想曲- 中山七里 2014/05/25 11:27
もう続編はないのか?・・・。ありがちな題材を匠の技で、実に味のある奥行きの深い作品に仕上げた印象です。久しぶりに鳥肌ものでした(笑)。ヒールもの、動機、伏線の妙、題名、ミスリード、コロンボ並みの目の付け所、法廷の緊迫感、ひねりのあるどんでん返し、思いがけない真相など、好みにぴったりでした。著者の作品は既読8冊のうち、9点以上が4冊目となり、余程相性が良いのかもしれません。「贖罪の奏鳴曲」の続編にあたります。よって、背景を理解する上では前書を先に読んだ方がラストなど心にしみ納得できると思います。

No.604 7点 二流小説家- デイヴィッド・ゴードン 2014/05/22 11:06
連続殺人犯の信者がいるという点では、「デス・コレクターズ」と背景が似ています。アメリカ的と言えるのかもしれません。日本ではこの手の作品は難しいかも?。エログロ描写もかなりありますが、主人公ハリーの人間的魅力?で全体の雰囲気を和らげています。サイコサスペンスですが、ミステリー要素(フーダニット、サプライズ)もあり、エンタメ系作品として楽しめました。

No.603 6点 転迷- 今野敏 2014/05/20 10:17
シリーズ3は恋の苦悩物語らしいので飛ばして本作4へ(笑)。スピード感、スッキリ感を味わえますね。縄張り争いに相変わらず重点が置かれています。事件そのものはシリーズ2の方がよかったような気がします。

No.602 6点 二重生活- 折原一 2014/05/19 19:02
プロットは気に入りましたが、ラストの明快さにやや欠ける点があると思います。エピローグで第三者視点で叙述部分を解説してくれると、もっとインパクトがあったような気がします。頭の回転が悪い読者なので(笑)。二重生活の複数の意味合いは判り易かったです。共書の利点は女性心理がよく描かれていた点ですね。

No.601 6点 白鳥の歌- エドマンド・クリスピン 2014/05/18 11:30
裏表紙より『オックスフォードで催されるワーグナー歌劇の稽古中、歌手としては一流ながら人間的には最低の男ショートハウスが様々なトラブルを引き起こしていた。そして初日も間近に迫ったある夜、歌劇場の楽屋でショートハウスの首吊り死体が発見される。死亡時刻には現場は密室状況にあり、作曲家で奇行で知られる被害者の兄、恋敵の歌手、理不尽な扱いを受けていた新人指揮者など、殺人の動機を持った容疑者には事欠かなかった。友人の求めに応じて事件の解明に乗りだしたオックスフォード大学の名物教授ジャーヴァス・フェンだが、歌劇場の周辺ではその後も怪事件が相次いだ…。J・D・カーターばりの不可能犯罪』                     単なる物理的密室(どのように密室にしたか?)より、他の意図があったというアイデアが良かったと思います。最近は物理的密室そのものにはあまり興味が湧きません(苦笑)。本作は、密室より「皮肉な真相」の方に軍配を上げたいと思います。会話に引用文が多くちょっと読みにくいのが難点でした。

No.600 8点 果断- 今野敏 2014/05/15 11:46
1作目の隠蔽捜査より楽しめました。エンタメ系と捉えているので、細かいことには目をつぶりましょう(笑)。警察関係の方から見れば、題名にかかる判断や行動等は大いにクエッションマークがつくものと思いますが、それはそれで楽しめればいいのでは・・・。金融関係者としては、半沢直樹シリーズ(TV)は食指が動かなかったのですが、妻や子供たちは大いに楽しんでいました。そんな感じで本作を捉えています。普通のことを普通に言うと「変人」扱いされることはよくあることですね。大昔の話ですが、金融機関は融資をするため企業の決算分析に力を入れるのですが、自分の会社(金融機関)の分析をほとんど行っておりませんでした。これではおかしいと言うとよく「変人・奇人」扱いされたものでした。竜崎の心情が理解できます(笑)。今や金融庁検査はこれが主流となっています。かなり横道へ逸れてしまいましたが・・・。このサイトに投稿を始めたころは、ミステリーは謎である、よって謎のない小説は低評価としていましたが、ジャンル別が導入(発案者ならびに管理人の方に感謝)されてからは、考えが変わってきました。本格系、サスペンス系、エンタメ系などジャンルを考慮するようになりました。また作品が書かれた年代も考慮するようになって来ました。進歩か?。この書評が600冊目となり、ちょっと関係ないことを書いてみたい気分でした。

No.599 9点 ポッターマック氏の失策- R・オースティン・フリーマン 2014/05/13 12:07
裏表紙より『英国の田舎に住む紳士ポッターマック氏。彼の生活は執拗なゆすりに耐える日々だった。意を決した彼は、綿密な計画のもとに犯人を殺害する。完璧とも思える隠蔽工作だったが、その捜査に乗り出したのは科学者探偵ソーンダイク博士だった。ソーンダイクはいかにして見破るのか…。』           1930年の作品。倒叙ものの隠れた?名作ではないかと思います。主な登場人物は4人と少ないのですが、その構築・関係性は魅力的でした。検視方法などは時代を感じさせますが、当時としては妥当なのでしょう。科学者探偵ソーンダイクと犯人とのやり取りは緊迫感がありましたね。ラストも好みです。

No.598 6点 赤い拇指紋- R・オースティン・フリーマン 2014/05/11 17:38
1907年作品。科学者探偵ソーンダイク博士初登場。~『ロンドンの貴金属会社で、ダイヤモンド盗難事件が起こった。現場に落ちていた紙には、血染めの指紋がくっきりと残されていた。この指紋が経営者の甥ルーベンの左手の親指の指紋とぴったり一致した。無実を叫ぶルーベンに科学者探偵ソーンダイク博士が立ち上がる。』~殺人事件は起こりません。当時の証拠としての「指紋」万能主義に一石を投じた作品であるような気もします。科学的探偵の初登場ということで敬意を表したいと思います。事件と並行して語られるジャーヴァス(語り部・博士の友人)の恋も楽しめました。

No.597 7点 隠蔽捜査- 今野敏 2014/05/07 12:58
ミステリーというより警察官僚の生き様を描いた作品でしたね。「変人」と捉えられているようですが、普通の人間と思います。正義感が強い一方、非常に打算的な考えも持ち合わせています。最初から違和感なく受け入れられました。願わくば、犯人の心情、およびヘロイン売人の顛末にも触れてほしかったと思います。氏の作品は2冊目ですが、非常に読みやすいですね。

No.596 5点 消えた玩具屋- エドマンド・クリスピン 2014/05/06 16:34
(英・米ベスト100ランクイン作品)原題はTHE MOVING TOYSHOP ユーモアミステリーに分類されるのかも。ドタバタ調系ではあるのですが、日本人に受けるかどうかは疑問です。ミステリーの謎設定は面白いのですが、解決篇では事前に犯人が判明し、それを追いかける方に重点が置かれていました。もったいない気がします。 

No.595 4点 幻影城の殺人- 篠田秀幸 2014/05/05 20:56
密室の組み合わせのうち一部については楽しめましたが、犯人像で低評価になってしまいました。前半はアトラクションの解説本を読んでいるようで味気ない。またアトラクションの説明として「本陣殺人事件」のもろネタバレをする姿勢に疑問を感じました。

No.594 5点 コールド・ロード- T・ジェファーソン・パーカー 2014/05/02 20:03
サンディエゴ市の実力者ピート・ブラガが撲殺された。トム・マクマイケル部長刑事が担当となるが、彼にとって、それは皮肉なものであった。ブラガ家とマクマイケル家の間には3世代におよぶ確執があった。トムの祖父はピートに射殺されたが正当防衛となっていた。その後、ピートの長男が襲われ、知能の発達が止まる。それはトムの父親の仕業と思われている。そしてトムもピートの孫娘パトリシアと10代のころ恋に落ちたが、両家の確執で恋は終わった。ピートの身の回りの世話をしていた看護婦サリーが容疑者となるが、トムはサリーを愛してしまう。~2つの家族の確執、親子の葛藤、元恋人との関係、容疑者との恋、警察内部の暗部等々盛りだくさんで600ページを超える長編です。読みごたえはありましたが、事件と恋くらいで納めてくれれば、ちょうどよかったかも。

No.593 7点 暗闇へのワルツ- ウィリアム・アイリッシュ 2014/04/28 16:38
「音のない音楽が流れ、踊る人影二つ そっと寄り添い、ワルツがはじまる。」「音のない音楽が絶え、踊る人影は崩れるように床に落ちて、ワルツが終わった。」・・・「俺たちに明日はない(ボニーとクライド)」(1967主演フェイ・ダナウェイ)を思い起こしました。主人公の名前も同じですしね。ほぼ2人だけの心理描写で、これだけの長編を書き上げた筆力に感心しました。

No.592 4点 ムーンズエンド荘の殺人- エリック・キース 2014/04/23 18:52
エンタメ系として評価すれば6点を計上できるくらい楽しめました。しかし、本格ものとするなら、好みの問題でポリシー通り辛目の4点といったところです。本書の前がカーの有名作品で同様の理由で同様の評価をしたので致し方ない。本文とは関係ないが、ムーンズエンド荘の表紙のイラストと荘の概略図がかなり相違しています(笑)。

No.591 4点 プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン 2014/04/21 14:24
雰囲気はいいのですが、2大トリックは拍子抜け(好みの問題)でした。凶器についての知識がないのでただ唖然とするだけでした。もう一つは許容範囲外(昔の物語では何回かお目にかかっているが・・・)ということで辛目の評価となりました。H・M卿の推理が出来過ぎで、もう少し悩んでほしい(笑)。

No.590 6点 殺意の団欒- ジェームズ・アンダースン 2014/04/18 20:15
裏表紙より『シルヴィアが夫を殺そうと決心したのは、ある水曜日のことだった。ところで彼女は知らなかったが、夫のエドガーは火曜日、すでに妻を殺す決意を固めていたのだった。・・・・・』          ユーモアミステリーです。心理描写と会話のギャップが楽しめました。行動のすれ違いも面白い。落としどころはまずまずといった感じです。

No.589 7点 五番目のコード- D・M・ディヴァイン 2014/04/15 22:40
人間造詣が巧みで、ラブストーリーにもなっており楽しめました。主人公が犯人扱いされるのですが、これを最後まで引っ張っていれば、もっとサスペンスフルになったと思います。いつもは深く考えずサラッと読んでいるのですが、どういう風の吹き回しか今回はじっくり読もうと思いました。その結果、犯人の独白(2P)と第1部の1(10P)で、物語の全体の構図が思い浮かびました。さて、当たっていたのでしょうか?。途中であれ?間違っているのかと思わせる記述があったのですが、いやこれは絶対ミスリードと言いきかせながら・・・。しかし、こういう読み方は疲れます(笑)。やはり作者の意向に沿って騙されるのが向いているようです。

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蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.09点   採点数: 1668件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(53)
折原一(48)
中山七里(34)
松本清張(28)
アンソロジー(国内編集者)(22)
歌野晶午(20)
東野圭吾(20)
西村京太郎(20)
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パトリック・クェンティン(18)