皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.30点 | 書評数: 1071件 |
No.151 | 6点 | 密室の如き籠るもの- 三津田信三 | 2011/04/03 19:54 |
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短編3本と,表題作の中編1本の,刀城言耶シリーズ作品集。緻密に練られたロジックと舞台設定で重厚に読ませるこれまでの長編もよいが,このくらいの作品では,登場人物の数が限られているがゆえに推理を楽しみやすく,気軽に楽しめるというよさがある。「首切の如き裂くもの」の袋小路のトリックや,「隙魔の如き覗くもの」の学校を舞台にしトリックは面白かった。また,こうした短編や中編でも,因習や伝承などを必ず絡め,作者らしさを決して失っていないのもさすが。 |
No.150 | 5点 | ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル- 今野敏 | 2011/04/03 19:42 |
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STシリーズが再開されたことは嬉しいが,今回の話はSTメンバーの卓越した才能が生かされたとは言い難い内容に感じた。それぞれのキャラクターがもっと生かされ,引き出されれば・・・。文章は相変わらず読みやすく面白かったので,読んで損はないが,シリーズ作の中ではそこそこ。 |
No.149 | 10点 | 写楽 閉じた国の幻- 島田荘司 | 2011/03/20 15:31 |
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久しぶりの10点満点。
寛政6年に彗星のごとく現れ,その年の内に姿を消した謎の浮世絵師,東洲斎写楽。その正体についてはこれまで多くの研究者が諸説を唱えてきたが,それらとは全く異なった推理が本書で展開される。 氏としても初の長編歴史ミステリであったと思うが,私自身も読むのは初めてだった。しかも江戸時代の浮世絵文化という,ほとんど自分には知識のないジャンルが舞台とされているので,はじめは及び腰でもあったが,読み進めるうちに謎にどんどん引き込まれていった。作品で,写楽や歌麿の描き方について説明されているくだりがあるが,実際に見てみたいと,図書館で浮世絵や写楽の本まで借りて,夢中で読んだ。 述べたように,浮世絵文化や研究史に知識はないので,この島田氏の推理しか知らないわけで,これまでの諸説と比較することは出来ないが,少なくとも史実や文献に基づいた推理は非常に説得力を感じさせるとともに,見事なまでに一本につながっていくさまは,何か背筋が震える感じさえした。 虚構ではない,史実の謎を追う楽しみと,自分の見聞が広がっていく楽しみを存分に味わえた。 |
No.148 | 5点 | イニシエーションラブ- 乾くるみ | 2011/03/02 16:15 |
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「この恋愛話から何か事件が起こっていくのだろう」と純粋にミステリ的な展開がどこかで起きるのだとばかり思い,そうした先入観のもと「事件が起きるのはいつか?いつか?・・・まだか?・・・おかしいな・・・」と訝りながら最後まで読んでしまったので,まったく途中で気付きませんでした(情けない)。なので,一瞬意味が分からず,分かった後も,それまでそういう目で読んでいないので,あとで読み返してみてやっと仕掛けのうまさに気付いた次第です。しかしやはり,作中で謎が謎としてちゃんと提示され(たとえこうした事件を題材としたものでなくても),読み進めながら解いていくスタイルのほうが私は好きなので,ミステリとしての評価はイマイチです。
ただ,「イニシエーション・ラヴ」という恋愛概念や,登場人物の心情描写,さらに80年代をリアルに描いた作風など,昔を懐かしく思い出してしまい,それはそれで楽しめました。 |
No.147 | 6点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2011/03/02 15:45 |
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ミステリの楽しみ半分,小鳩くん,小佐内さんの「小市民に徹するコミカルなやりとり」の楽しみ半分の作品なので,小佐内さんのダークな部分が見えたのは意外でした・・・(どう考えても「小市民」のやることではない)
しかしその分ミステリの要素が高まったため,結果として採点は前作と変わらずです。この作品でますます堂島健吾が好きになりました。 |
No.146 | 6点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2011/03/02 15:41 |
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日常的な高校生活の中で,些細な謎にめぐり合いそれを解いていくというほのぼのしたミステリ。肩に力を入れずに読めて,こういうのもアリかな・・・気に入りました。小鳩くんと小佐内さんはもちろん,個人的には堂島くんのキャラもよい。それにしても,小鳩くんの過去は作中である程度示されていますが,小佐内さんはいったいどんなだったのか・・・気になります。 |
No.145 | 6点 | あなたが名探偵- アンソロジー(出版社編) | 2011/03/02 15:30 |
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泡坂妻夫「蚊取湖殺人事件」・・・湖の氷上の死体の謎。
西澤保彦「お弁当ぐるぐる」・・・空の弁当箱と,蔵に所蔵されたお宝の謎。 小林泰三「大きな森の小さな密室」・・・密室状況の必然をもつのは誰か。 麻耶雄嵩「ヘリオスの神像」・・・ガスとエアコンと水道が使用されっぱなしになっていたわけは。 法月綸太郎「ゼウスの息子たち」・・・双子同士の二組の夫婦の謎。 芦辺拓「読者よ欺かれておくれ」・・・欺かれました。 霞流一「左手でバーベキュー」・・・遺体から切断された左手が焼かれていた謎。 やはりフーダニットはミステリの王道。それを手軽に味わえるこういうアンソロジーはいいですね。 |
No.144 | 7点 | 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー- アンソロジー(出版社編) | 2011/02/13 15:28 |
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読者の「犯人当て」を主眼とした企画アンソロジー。夕刊フジに連載され,読者から解答を募ったものだそうで,その正解率も各短編のはじめに示されていて謎解きの意欲を掻き立てられます。私なりに難易度を示してみました。
◇有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」:普 一番分かりやすかった。描写の中に含まれている推理の手がかりも気付きやすい。 ◇貫井徳郎「蝶番の問題」:超難 被害者の手記をいかように読むかがポイント ◇麻耶雄嵩「二つの凶器」:普 短時間に起こった出来事をいかに時系列に整理できるか。 ◇―霧舎巧「十五分間の出来事」:難 これも描写にヒントが隠されています。 ◇我孫子武丸「漂流者」:普 これも主体は被害者の手記。犯人というより,人物当て。 ◇法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」:難 ちょっと科学的というか医療的な知識も要るが,常識の範囲。 私は2勝4敗でした。しかも1勝は,犯人と大体のトリックは分かりましたが,犯人の行動の「なぜ」について完全に説明は出来なかったので,本当は「敗」かも・・・。何にせよ,まさに「気分は名探偵」の楽しい一冊です。 |
No.143 | 6点 | お前が犯人だ- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 15:08 |
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資産家シャトルワーズィ氏が殺害され,次々と明らかになる状況証拠から,甥に疑いがかけられ,甥は収監される。しかし,事件が解決したと思われたそのときに,死体となったシャトルワーズ氏が表れ,「お前が犯人だ」と名指しする。
話の展開からも,タイトルにより最後に真犯人が示されるのだという予測からも,読んでいるうちに大体の筋書きは読めてきてしまう。それでも,その最後の瞬間が楽しみで,興味は失せない。真犯人が最後に明らかにされるという形からも,一応ミステリの体をとっている作品といえるのではないだろうか。 |
No.142 | 5点 | 盗まれた手紙- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 14:53 |
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殺人は起きませんが,ポーの推理小説は三篇とする説によれば,「モルグ街」と「マリー・ロジェ」とこの作品だそうです。(初期は「探偵小説」と言われていただけに,単にデュパンが登場するのがこの三作品だからかもしれませんが)盗まれた手紙がどこにあるか?をデュパンが推理するのですが,その種は(特に今では)単純といえば単純です。しかし,この視点というか手法は,手を変え品を変えその後多くの作品に応用されたことを考えると,最初にこの視点を生み出したポーの力量の高さ,頭の良さは十分に感じられると思います。 |
No.141 | 5点 | モルグ街の殺人- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 14:42 |
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世界初の推理小説としてあまりにも有名で「犯人」も知っているので,デュパンがどのように推理を進めるのか,最初の推理小説とはどんなものなのか,が興味の中心でした。
各証言が箇条書きのように並べられ,それを付き合わせたデュパンの推理の部分がそのあとに続く構成ですが,余分な描写や場面展開がなく,ある意味読みやすく感じました。(冒頭のデュパンの人となりを紹介する部分はその逆ですが・・・しかし「探偵」という人物が登場する初めての物語だったことを思うとこういうものでしょう)。 事件と「犯人」だけを聞くと,「何だそりゃ」と笑ってしまいますが,読んでみると犯人特定のための筋道だてた推理はちゃんとされていて,納得もしました。 |
No.140 | 6点 | マリー・ロジェの謎- エドガー・アラン・ポー | 2011/02/13 14:35 |
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「モルグ街の殺人」の続編として,探偵オーギュスト・デュパンが登場し,マリー・ロジェという女性の殺害事件解明に挑むのですが,これはニューヨークで実際に起こった,メアリー・セシリア・ロジャーズという二十歳の女性の暴行殺害事件をモデルとした話となっています。
実際の事件も未解決で,この創作はポーの事件への推理でもあるようです。作品発表後に分かった事実もあるようで,そう思うとこの推理がどこまで的を射ているのかは分かりませんが,各新聞の論調・推理について一つ一つ検討していく過程は非常に論理的で,読ませるものがあります。 何よりも,真相は今も闇の中,ということが何か背筋をぞくっとさせます。 |
No.139 | 6点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2011/01/30 14:10 |
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副題にある「バベルの会」という読書サークルが全短編を通して登場するが,作品によってはほぼ不要のものもある。むしろ,贅沢なお屋敷に住むお嬢様の召使(女性)が物語の主要人物(ときには語り手)になっているという共通設定が面白い趣向だと感じた。ラストのどんでん返しに主体を置いた作品集だと受け止めるが,その評価は作品によりけり。私としては,「身内に不幸がありまして」「玉野五十鈴の誉れ」がよかった。 |
No.138 | 7点 | 暴雪圏- 佐々木譲 | 2011/01/30 14:02 |
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「制服捜査」の駐在警官,川久保を主人公にした長編。積雪の中から発見された女性の死体,ヤクザの留守宅に押し入った強盗,出会い系サイトとで知り合った男性との不倫関係を清算したい主婦,社長の金を盗もうとする中年男性,義父のいたずらに耐えかねて家出した少女・・・十年来の猛吹雪となった道東を舞台に,複数のストーリーが並行して進み,やがて一つの場所につながっていく。それぞれのストーリが間断なく展開していくため,読んでいてまったく退屈しない。川久保巡査の誠実で勇気ある人柄も前作と変わらず,好感がもてる。一晩読み続けてしまった。おりしも,外は雪で,読書の舞台効果も満点だった(笑)。 |
No.137 | 7点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2011/01/30 13:51 |
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不可能犯罪,仕掛け・細工を弄したトリックを主体にした謎解きものは現在の作品にはあまりないので,こういう古典でこそ楽しめます。トリック主体の小説であるためか,無駄な場面の推移がなく,全編が事件と謎解きに費やされているのもこの時期の本格作品を感じさせます。
トリックのための事件だったのではないかと思うぐらい,「そんなのありか」というタネでしたが,さすが密室トリックの第一人者,よく考えたなあと思いました。 |
No.136 | 7点 | 新海外ミステリ・ガイド- 事典・ガイド | 2011/01/30 13:35 |
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海外ミステリはまだまだ新規参入者なので,純粋に指標としてほしいと思い購入しました。「海外ミステリの歴史」「各派」「名探偵の系譜」「トリック」などが整理されてまとめられていますが,それぞれが文章で解説され,作品について著者の主観的な評価が書かれているのが,私としてはよかったです。著者と作品名をリストのように並べられても,私にはなかなか分からないので・・・。「トリック」の章は,まだまだ未読の多い私は,目を逸らすのに必死でした(笑)。
また,ミステリの歴史や各派など,体系的なことについて知識を得るのも楽しめました。今後読みたい本ばかりがぐんと増え,ますます読書意欲が高まりましたが,全てこなせるだけの時間はなかなかないでしょう・・・。地道にがんばります。 |
No.135 | 6点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2011/01/30 13:15 |
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処女作らしく,一つの謎を解き明かしていく過程を純粋に丁寧に描いてあります。犯人へとたどり着く手がかりは,まさにタイトルの「ローマ帽子」一本で,現在読むと、物足りなさを感じるところもあります。ミスリードの役割も果たす捜査の各段階の描写は,読むのがもどかしく感じる部分もありますが,古典作品らしいよさだとも感じます。
犯人特定にいたる決め手も,「そんなこと書いてあった?」と思うぐらい描写に埋もれていた感がありましたが,何にせよ氏の記念すべきデビュー作を読んだという満足感はありました。 |
No.134 | 6点 | マリオネットの罠- 赤川次郎 | 2011/01/30 12:56 |
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<ネタバレぎみ>
ラストにさらなる真相があるとはそもそも考えていなかったので,アンフェアだとは特に思いませんでした(というかそういうどんでん返しがそもそもアンフェアなのかもしれませんが)。ただ,あのラストによって面白さがグッと増したのは間違いないです。タイトルの意味も納得できました。内容は残酷でしたが。 軽妙なタッチの作品が多い著者ですが,私は著者のこういう作品のほうが好きです。 |
No.133 | 6点 | 招かれた女- 赤川次郎 | 2011/01/30 12:41 |
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ユーモア・ミステリが有名な氏としては希少なサスペンスの様相が強い作品です。赤川氏の作品解説文などでは,「マリオネットの罠」と二つ並べて,他作品とは違う位置づけがされていました。
なるほど,軽妙なタッチの他作品とはちがい,怖さ,陰惨さを感じさせる物語で,読みやすさもあって一息に読んでしまいました。ラストも意外な結末に驚かされました。 |
No.132 | 5点 | チーム・バチスタの栄光- 海堂尊 | 2011/01/16 18:07 |
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ミステリの味付けがされた医療エンタテイメントという感のほうが強い。犯人が意外(でもないか)なだけであって,物語の筋としては犯人探しがメインではあるが,楽しみとしては田口&白鳥コンビの魅力がメインといった感じ。
楽しく一気に読めたのは間違いないが,これ以降このシリーズを積極的に読む気にはあまりなれなかった。 (最新の「アリアドネ・・・」はミステリ要素が濃いといううわさなので読んでみたいが) |