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HORNETさん
平均点: 6.32点 書評数: 1121件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.261 4点 完全なる首長竜の日- 乾緑郎 2013/08/30 20:34
 着想は確かに面白い。だが、物語の前半で仕掛けが分かると、要は「あとはどこまでこれが続くか」、逆に言えば「どこで切られるか」だけの話。そもそも弟の自殺未遂の真相が作中で明らかにされない時点で、そのへんの真相は何となく見当がついていた。正確に推理できていたとはいえないが、真相がわかっても「ああ、やっぱりそういうことね」という感があったことは否めない。
 ただ、センシングなどの虚構の近未来設定はよく考えてあったと思う。まぁそいういう意味でもSF要素が濃い作品。

No.260 8点 葬式組曲- 天祢涼 2013/08/30 20:21
 「〇〇の葬式」と題された各章で、視点人物が入れ替わっていく構成が、真相に関わっていくその仕組みが秀逸。スゴイ。葬式という形態が否定された近未来の日本という設定も面白く、各章単品でも楽しめるが、やはりこれは一冊を通して一作品となっている面白さこそ肝。作者の構成力、考えられた仕掛けに舌を巻いた。

No.259 7点 厭魅の如き憑くもの - 三津田信三 2013/08/30 20:08
 本シリーズの後続を読んでから、第1弾の本作を読んだ。刀城言耶初登場がこれか・・・と思って読むとそういう点でなかなか面白い。今よりさらに遠慮がち、自信なさげな感じがするのは気のせいか。どちらにせよ、頭脳がキレるのに謙虚な態度は変わらず好感がもてる。
 何かの書評で初期は土俗的・民俗学的要素が濃いと評されていたが、自分はあまりそういう感じはしなかった。神々櫛村、谺呀治家と神櫛家、神隠し、「カカシ様」などの、ムラ社会、呪術的文化は確かに「濃い」が、決して難解な感じはしなかった。むしろ(あたりまえであるが)本作の大きな魅力である。巻頭に村の見取り図があって内容理解の一助として大いに役立った。
 このシリーズは全部読みたい。

No.258 6点 体育館の殺人- 青崎有吾 2013/08/30 19:56
 赤川次郎のような(そこまでではないか)、ユーモアも交えた軽快なテンポで、いかにも新人らしいフレッシュな感じが好感をもてる。とはいえ、真相解明に至るまでのロジックは非常にしっかりとしていて、本格ミステリに憧れをもった若者の渾身の作というのがよく伝わってくる。ラストの真相も、ある程度予想の範疇だったが、これによって作品の深みも一段増している。
 今後の活躍に期待がもてる新人の登場。

No.257 7点 禁断の魔術- 東野圭吾 2013/08/30 19:47
 単なる謎解き・トリックだけではなく、そこに人間の悲哀や感動を絡める点で、非常に秀逸な存在だと感じる作品集だった。一章「透視す」は、義母に育てられたホステスの、二章「曲球る」は戦力外になったプロ野球選手の、家族との絆が感じられる感動的な話で、すごくよかった。ラストの「猛射つ」は中編と言っていい長さ。湯川の母校の後輩の、これまた悲哀の感じられる秀作だった。

No.256 6点 虚像の道化師- 東野圭吾 2013/08/30 19:39
 平均的にクオリティが高く、まずハズれないのはさすが。ただ、自身が推理して読むタイプの読者(私もそう)は、ガリレオが物理学者ということで、トリック・真相が科学的なことに帰結するのは仕方ないのだが、そういうものははじめから推理を放棄してしまう。だから、本作品でいえば後半の「偽装(よそお)う」「演技(えんじ)る」のようなタイプの作品が好き。いずれにせよ、ガッツリ長編を読む時間も気力もなく、でも読むなら没頭して読めるものを、というときに最適。

No.255 6点 密室蒐集家- 大山誠一郎 2013/06/30 09:43
「柳の園」「少年と少女の密室」「死者はなぜ落ちる」「理由ありの密室」「佳也子の屋根に雪ふりつむ」の5編。密室殺人事件にあたっている捜査陣の前に表れる「密室蒐集家」と名乗る男。それまでの事情を聞くだけで「わかりました」とずばり真相を当てる。確かに密室トリックに特化した,無駄のない謎解き主体の展開は心地よく,本格好きにはその姿勢からして好感が持てる。しかし,「密室トリックを成立させるため」のあまりにもできすぎた偶然が多い。言い換えれば,「この密室状況を説明するためにはこうするしかつじつまが合わない」というような,「密室状況成立ありき」のスタイルで,その現実離れした状況を密室蒐集家が一足飛びに(論理的ではあるが)言い当てる様にはあまり緻密さを感じない印象も残った。

No.254 7点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2013/06/30 09:39
 犯人の見当は早々についた。が、全裸の謎、マントの謎など、死体の状況の不審な点を論理的に解明していくことで犯人にたどり着くエラリーのロジックは相変わらずさすが。事件の背景となった人間模様も単純だが面白く、全体的に無駄のないシンプルな謎解きで、国名シリーズの中でも非常に分かりやすい作品ではないかと感じた。

No.253 8点 絡新婦の理- 京極夏彦 2013/06/30 09:33
ここまですごい評価の分かれ方(笑)。その上で高評価をキープしているのもまたすごい。
 ここまでのシリーズ中では一番リーダビリティが高いのでは。宗教に関する薀蓄はあるが、あまり現世離れした舞台でなく、特殊世界という感が薄れている印象や、間断なく次々と起こる殺人により動的な展開が続くことがその要因か。
 人がそう都合よく意図したように動くものか・・・とも思うが、論理よりもからくり重視の作風。そんなふうにつながり、まとめられていくのか、という過程を楽しめる。

No.252 2点 不滅の名作ミステリへの招待- 事典・ガイド 2013/05/06 19:26
 「不滅の」なんだからあたりまえなのかもしれないが、オーソドックスな超有名どころの紹介。その薀蓄に深みがあればまだよいが、いかにも初心者向けの「あらすじ」「作家」紹介。本サイトの投稿者の方にははっきりいって不要。1500円もした。もったいない。

No.251 5点 鉄鼠の檻- 京極夏彦 2013/05/06 19:16
 禅の薀蓄はそれはそれで面白い。著者の博学、多方面に渡る造詣の深さに心から舌を巻く。事件の不可思議性も十分に魅力的なだけに、面白く読み進めたのだが・・・。
 あの長さを経て納得のいく結末とは言い難かった。過程の長さの楽しみはイコールそれを請け負うだけの結末への期待となる。今回でいえば、動機、そして見立て(?)殺人の意味というか必然。それがあまりにも簡単で短絡的であったのが残念。久遠寺翁など懐かしい人物の再登場などはうれしかったり、世に知られていない謎の巨刹という設定は面白かったりしたのだが、シリーズの中では評価の高いほうだけに読後は期待以上のものではなかったという感が強い。

No.250 8点 狂骨の夢- 京極夏彦 2013/05/06 19:06
 「魍魎の匣」の直後だからその反動なのか、このシリーズの中ではあまりパッとしない評価の本書だが、私はシリーズの中でも全く遜色ない作品だと感じた。うまくいえないが前2作があまりにも特異で奇異な世界であったのに対し(それが京極作品の魅力ではあるのだが)、本作はやや現実感も伴うというか、泥臭いというか、横溝作品のような土着的な匂いも感じるような・・・そんな感じで本格的要素を色濃く感じた。それが京極作品らしさを欠くと感じられたのかもしれないが。
 しかし「髑髏」をキーワードとした不可思議な現象の連続、現実と過去とが倒錯する不安定な磁場のような展開は「らしさ」を存分に発揮しており、ワールドは十分堪能できると感じる。トリック・結末も読者の範疇の度を越えているものではなく、そういう意味では本格ミステリとしても楽しめる作品だった。

No.249 6点 耳をふさいで夜を走る- 石持浅海 2013/05/06 18:47
「覚醒」という作品内で定義されている現象が重要な設定。それにのっかって読んでしまえば読みやすいし、スリリングで飽きさせないし、なかなかよかった。
 氏の作品は初めて読んだ。ブ○○クオ○で格安で文芸書として買えたので買ってみたが、損はなかった。

No.248 4点 生ける屍の死- 山口雅也 2013/03/24 17:22
 「死者の蘇り」がアリと設定された特殊舞台での本格ミステリ。その状況だからこその動機やトリックがあり、世間的評価が高いのも確かにうなずける。米澤穂信の「折れた竜骨」なども同じようなことが言え、そう考えるとこうしたスタイルの先駆的な役目を果たしたといえる。仕掛けも、解明過程もよくできたミステリだと思うのだが・・・・
 なぜか読後感は「疲れた」が正直なところ。まず第一に宗教や葬送に関する薀蓄が多い。これはまだ本筋に関わる所だからよいとしても、アメリカの国民気質とか、建築様式や生活様式とかの薀蓄は少々読むのが面倒臭かった。第二に、「死者の蘇り」に関してのルールというか、条件というか、そういったものが曖昧で、最後のほうは何となく「何でもアリ」感が漂ってしまった・・・かな?
 優れた発想と巧みな展開だと頭では分かるのだが・・・何となくしっくりこなかった作品。

No.247 8点 魍魎の匣- 京極夏彦 2013/03/24 17:04
 百鬼夜行シリーズ長編第2弾。作品世界・雰囲気の魅力が強かった第1作に比べて、本作はミステリとしても申し分ない魅力が加算され、さらに一段上がった傑作となっている。
 女子高生のホーム転落事件、首都圏に起こる少女連続バラバラ殺人、「魍魎を祓う」といっては私財を巻き上げる新興宗教・・・各複線でおなじみの四人がそれぞれ個性を発揮し、最後には見事なまでに一つに収斂されていく。多少の行き過ぎた偶然、ご都合主義はあるかもしれないが、そこは目を瞑り、それぞれのピースが順に全体像に嵌っていく圧巻の過程を楽しみたい。氏の卓越したプロット、構成力が真に発揮された作品といえるのではないかと思う。

<余談>映画のほうも観たが、小説を読んでいない人が果たして内容を理解できるのだろうか・・・?と思うような追いつけない、忙しい展開だった。設定や内容もガラリと変えてあるし(榎木津のキャラとか、小説では結構重要な場面がごっそりカットとか)。1000p超の内容を2時間そこそこの映像にまとめるのにはやはり無理がある?どちらかというと、ホラーテイストを描くことに目的があるような感じで、小説との根本的な趣旨の違いを感じた・・・・

No.246 5点 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 2013/03/24 16:16
 妖怪が絡んでくる印象が強い氏の作品は、ロジック重視、現実的な純然たる謎解き重視の本格ミステリファンには敬遠されがち(?)。このサイトの書評にも「読まず嫌い」という言葉が散見される。本格黄金期の海外古典や、国内新本格作品が好みの私もこれまで手を出さずに来たが、前々から興味はあり、今回思い切って手を出した。
 結果・・・面白いじゃないですか!何といっても京極堂、関口、榎木津、木場の四者四様のキャラクターと、作品特有の雰囲気にやられた。京極堂の薀蓄も、全く苦にならないどころかむしろそれ単体で面白い。はっきり言ってファイロ・ヴァンスやドルリイ・レーンのペダントリーは読み飛ばすが、こっちは全然読める。結局西洋の薀蓄は煩わしいが、東洋だと面白く思えるということか・・・いや、ちょっと違うかな。やたら広範囲にわたる知識をひけらかすのでなく、妖怪や人間心理といったことに関してのみの考察が展開されるから面白く読めるのかも。
 ただミステリとしての評価となると、「そりゃないっしょ」という感じも強い、特に本作品は。だから最初に書いたようなこと「だけ」を期待する人にはハズレと感じるかも。だから点数はこんな感じでとどめておいた。京極夏彦が、好みが別れる作家(というか百鬼夜行シリーズが)だということはよく分かった。私はとても好きになった!

No.245 6点 パラダイス・ロスト- 柳広司 2013/03/24 15:55
 D機関の工作員達のあまりに卓越した、人間離れした能力・技量は小説という虚構ならでは。それだからこそ面白い。読んでいる間、現実から離れた別世界を堪能できる。短編で無駄なくまとまっているのもよい。虚飾のない武骨な筆致が作品世界に合っていて心地よい。
 シリーズを通して読んでいるので、作品を重ねるごとにこちらが慣れてきてしまっている感はあるが、質的には変わらず高いものを保っていると思う。

No.244 4点 今出川ルヴォワール- 円居挽 2013/02/16 13:37
 前2作の「双龍会」から今回は舞台を変え、「権々会」というギャンブルの大会(?)が物語のメイン舞台に。作者としては趣向を変えてシリーズの幅を広げたのであろうが、正直複雑で分かりにくく、今までのほうがよかった。
 龍師達の独特の世界や背景、御堂達也の来歴や家族関係も、シリーズを重ねるごとに複雑になっていき、正直整理して理解するのが面倒になってくる。ある意味精緻なプロットなのかもしれないが、最後のほうは惰性で読んでいた。
 こういうのが好きな人にとっては、逆に高評価になるかもしれない。好みが分かれるのではないかと思う。

No.243 7点 犬神家の一族- 横溝正史 2013/02/16 13:29
 新版「東西ミステりーベスト100」に触発されて再読。
 遺産相続にまつわる親族同士の泥仕合が、見立て殺人、顔に大やけどを負ったデスマスクの青年、という映像的インパクトの強い描写によって彩られている作品。そうしたインパクトがあまりに強いのと、角川が版元として初めて映画製作に乗り出した、いわゆる最初の「角川映画」であることとで、世ではもっとも有名な横溝作品とも言える。
 トリックでは、ちょっと無理なのではないか、偶然がすぎやしないか・・・と思えるような離れ業・ご都合主義もあったり、真犯人もさほどインパクトを感じなかったり、といった感もある。が、この作品の魅力はその雰囲気であり、それでいいと思えた。
 しかし、どう考えても「もめごとを引き起こすため」としか思えない、佐兵衛翁の遺言状は・・・・。

No.242 5点 赤い指- 東野圭吾 2013/02/16 13:08
 切迫した妻の電話で家に帰ると、見知らぬ幼女の死体が。中3の長男に幼女趣味があり、殺してしまったらしい、と物語が始まる、いわば倒叙法で描かれた作品だが―やられた。
 設定、構成、仕掛けどれも秀逸。であることは間違いない。が、あまりにも気分が悪い。言葉は悪いが、胸糞悪い。救われない話だった。 

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HORNETさん
ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
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平均点: 6.32点   採点数: 1121件
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