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HORNETさん
平均点: 6.32点 書評数: 1148件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.348 3点 !!- 二宮敦人 2015/11/08 21:12
 ラノベテイストのホラーだが、特に「アナタライフ」は自己満足哲学を延々と読まされて苦痛だったうえに、たいしたオチでもなく、全体的にクオリティの低さを感じた。大して深みのない話なので、前作「!」ぐらいの1話のボリュームで十分。

No.347 7点 越境捜査- 笹本稜平 2015/11/08 21:05
 14年前迷宮入りとなった、12億円を騙し取った男の殺人事件。捜査一課の鷺沼が捜査を進めるうちに、背後には暗躍する警察官僚の薄汚い実態が見えてきた。その真相を暴くことは巨大な警察組織に刃を向けることになる。青臭い正義感でも規範意識でもなく、かけがえのない尊敬する先輩刑事のために、あえて戦いを挑む鷺沼。組織から外れた不良刑事、ヤクザまでも仲間に取り込み、命がけの捜査が始まる。
 警察小説らしいスピード感のある展開や、武骨で小気味よい登場人物同士のやりとりに乗せられ、一気に読めてしまう。決して清廉潔白ではない主人公鷺沼をはじめとして、登場人物のキャラが立っていて物語に味を出している。尊敬する先輩刑事・韮沢の真意を、信頼と疑念がないまぜになりながら推し量り、その解明のために奔走する後半の展開は痛快。著者の作品は初めて読んだが、まずはこのシリーズは手を付けてみようと思える作品だった。
(前出の江守森江さんの書評が、言い得て妙で笑えます)

No.346 6点 嗤う淑女- 中山七里 2015/11/08 18:11
 最近一番気に入っている作家、中山七里。
 類稀なる美貌と、卓越した人心掌握術で人の人生を狂わす希代の悪女、蒲生美智留を描いた連作短編集。
 蒲生美智留の知能的な悪女ぶりを効果的に描くことが主であるのはわかるが、ちょっとご都合主義が過ぎるきらいはある。昨今巷に蔓延っている各種詐欺もこんな感じなのかもしれないが、それにしてもこうも思い通りに人の心を操れるものか…疑問。結構衝動的な犯行なのに、こんなにバレないものか…?というところもある。
 最後の章は面白かった。一番作者らしさが表れていた。

No.345 6点 ペトロ- 今野敏 2015/11/08 17:28
 妻と二番弟子が相次いで殺され、現場にはそれぞれ「ペトログリフ」が刻まれていた。ペトログリフとは古代の神代文字。犯人によって残されたと思われるこの記号の意味は?警視庁捜査一課の碓氷弘一は、その道の専門家であり論理的思考の持ち主、アルトマン教授に協力を仰いで捜査を進める。

 リーダビリティの点では相変わらずの安定感。ただ今回は(もとが新聞連載のため?)やや冗長で無駄な展開があった感じもした。

 現場に残されたペトログリフという、意味深な始まりでつかみはOK。そこに考古学の学派の争いが絡んできて、「フムフム」と思いながらなかなか興味深く読み進められる。捜査一課の刑事と考古学教授という異色のコンビも面白みがあり、やや冗長な展開もあったがまぁさくさくと読めた。

 真相については、動機がミソかなと思う。「そういうことか」と肯定的に受け止める読者もいれば「なんだそりゃ」と感じる読者もいるだろう。肝心のペトログリフの意味についても同様。私は…うーん…微妙かな。

No.344 9点 ヒポクラテスの誓い- 中山七里 2015/10/12 08:32
 法医学教室を舞台とした連作短編。
単位不足のため、法医学教室に入ることになった医大研修医の真琴。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎は、懇意の古手川刑事に「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。警察が単純な事故で処理しようとする、何の事件性もない遺体を強引に司法解剖に回す光崎に、周りからの反発は強い。だが、解剖のたびに老法医学者は隠れた真実を導き出す。
 天才法医学者によって、事件の真相が明らかになっていくという設定は、横山秀夫の「臨場」を思い出させる(こちらは検視官だったが)。一匹狼的な雰囲気で他を寄せ付けないが、有無を言わせぬ実力で他を黙らせてしまう光崎のキャラクターが痛快。警察や検視官の誤った診断、そこにある不遜や怠慢を一刀両断する、勧善懲悪のような要素が読んでいて小気味よい。被害者、加害者が絡むヒューマニズム的要素も各話に感じられ、さすが中山七里、読ませる筆力である。

No.343 8点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2015/10/12 08:22
アバネシー家の当主リチャードの、病気療養中であったとはいえ、あっけない突然の死。その葬儀の席で、末の妹のコーラが無邪気に口にした一言―「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」・・・すると次はそのコーラが惨殺される。不信を抱いたリチャードの親友でもある弁護士は、ポアロに真相の究明を依頼する—

 物語が進むにつれて輪郭が明らかになっていくリチャードの親族の人物像が、さらに謎を深くしていくとともに、一方で次第に真相に近づいていく予感でゾクゾクする。ヘレンが葬儀の場で感じた「違和感」に気付いた場面は読んでいて背筋が寒くなった。

 見事にしてやられた。やはりクリスティは天才だ。

No.342 4点 道徳の時間- 呉勝浩 2015/09/27 17:35
ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、地元の名士である青柳家の陶芸家、青柳南房が不審な死を遂げた。自殺として淡々と処理されていくが、以前からよくない噂が絶えなかった南房の死にはさまざまな憶測が飛ぶ。そんな中、現場に異様なメッセージが残されていたことから事件の様相は急変する—「道徳の時間です。殺したのは誰?」
 一方、鳴川市で昔起きた殺人事件。既に逮捕され、犯行も認めて服役している向晴人。そのドキュメンタリー映画を作成するという越智冬菜という女性に、映画のカメラマンとして依頼を受ける伏見。有能なことは間違いないが、何か含むところがありそうな越智に疑念を抱きながらも、依頼を受ける伏見だったが―。

 意味ありげにさまざまな謎が提示される前半、その謎の立て方は確かに魅力的で、引き込まれるものがあった。だが、だからこそ高まった期待を受け止めるだけの結末を読者は求める。その点で完全に期待を裏切られた。「……なんだそりゃ」が正直な感想。
 巻末の、池井戸潤の選評が全て。まったくもってその通りだと非常にうなずける。

No.341 4点 謝罪代行社- ゾラン・ドヴェンカー 2015/09/27 16:50
 よくできているし、読み進めるのがそれなりに楽しいのは間違いないのだが、この手のサスペンスが昨今世にあふれている気がして、突出してよいとは感じない。
 何よりも、この「謝罪代行社」というタイトルに惹かれて手に取ったのに、結局その謝罪代行業は事件に巻き込まれるきっかけになっているだけで、本筋とはあまり関係がない。そこが一番期待外れだった。話の中で謝罪代行業が出てくるところなどほとんどないし、その業種や業務形態が本筋に関わってくることはほぼ皆無(ゼロではないけれど)。
 別のタイトルにしてほしかった。

No.340 6点 化石少女- 麻耶雄嵩 2015/09/20 22:31
 学内で次々と起こる殺人事件について、化石オタクの女子高生がそのお守り役の男子高生に自分の推理を開陳する。「あり得ない」とスルーされ、現実では別の解決がされていくのだか、どうやら主人公の推理の方があたりらしい…という、いかにも麻耶作品らしい短編集。
 そうした設定による面白さがむしろメインで、各章の事件でのトリックは小粒なカンジ。偶然要素により成り立ったトリックも多い。
 というわけで、麻耶作品としても小粒な出来という感じが強かった。

No.339 7点 三角館の恐怖- 江戸川乱歩 2015/09/20 22:24
 お酒を飲みながらこのサイトをフラフラするのが至福の時なのだが、そんな中で書評が目に留まり、急に読みたくなって読んだ。
 子供のころ「少年探偵団シリーズ」のものを読んだ記憶があり(ということはそちらは明智小五郎だったか?)、エレベーター内の殺人だけ妙に記憶があった。
 創元推理文庫で読んだのだが、内容もさることながら、連載当時のそのままの体裁で、挿絵などが施されていることがすごくよかった。
 2015年の現代では昔以上に現実との隔たりが大きく、逆にそれがよくて妙に懐かしさを感じて読んだ。
 海外作品の翻案ということだが、その本家を知らないので単純に面白かった。トリックは今となってはチープだが、もともとそれよりも愛憎劇、動機の方が作品の魅力ということで納得。
 読んでよかった。

No.338 7点 致死量未満の殺人- 三沢陽一 2015/09/20 22:16
 トリックは、「よくぞそこに着目した!」と思う秀逸な着眼点。その点では満足。過去の焼き増しや、諸要素の複合ではない、一点モノという感じがした。
 鼻についたのは、青臭い心理描写や人物描写。今後磨きをかけていただきたい。
 また、トリックが秀逸なだけに、下手な偶然要素でここまでかさを増す必要はなかったのではにかとも思う。「これが最終の真相ではなくて、実は…」の仕掛けは、やっても花帆まででよかった。最後は自分としてはくどかった。
 ミステリとしての出来はかなり上々だと思う。

No.337 8点 死のドレスを花婿に- ピエール・ルメートル 2015/08/30 19:47
 第2章の冒頭を読んだ時に、仕掛けはわかる。このサイトの投稿者ならおそらくみなそうだろう。
 しかし真相解明が主のストーリーではないのでそこからがむしろ面白い。終わり方はちょっとあっけなかったが、痛快な締め方なので〇。
 「アレックス」と似たような、物語全体に仕掛けられているスタイルだが、その発想や構成は斬新な感じがして、こういうネタがいくつもあるのならこの作家はすごいと思う。
 とても楽しめた。

No.336 6点 後妻業- 黒川博行 2015/08/30 19:32
 老い先短い資産家の男を籠絡して財産をかすめ取る「後妻業」。稼業としてやっていないだけで、実情はそう、というケースは芸能界の年の差婚とかで実際あるんじゃない?(笑)
 裏稼業の世界で生きるギラギラした人間性、悪趣味なブランド志向、金への執着がよく描かれている(知ってるわけじゃないけど・笑)。後妻業者・小夜子と、仲介役の柏木の悪行が暴かれていくのが本筋だが、暴いて追及していく側もクリーンな人間ではなく、「らしい」感じがして作品に雰囲気をもたせている。
 ただ、ラストはえらく尻切れトンボな感じがしてしまったなぁ。もうちょっと丁寧に決着つけてほしかった。

No.335 5点 ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 2015/08/20 17:20
 「ナミヤ」という名前を「ナヤミ」とからかったことから始まった雑貨店の悩み相談所。店主もとうにこの世を去り、今や廃屋と化した雑貨店に逃げ込んだ空き巣3人組に起こる、不思議な出来事。ハートウォーミングなファンタジーもの。
 児童養護施設に纏わる人間関係で、全体を通して次々につながっていく構成はさすがだが、ちょっとミエミエ感があったかな。後半になると登場した瞬間、「きっとあのときのあの人だ」とわかる。
 第2章の「魚屋ミュージシャン」の話が一番よかった。父親の生き様にもグッと来た。

No.334 8点 ミザリー- スティーヴン・キング 2015/08/20 16:54
人気作家ポール・シェルダンが自動車事故に遭い、偶然その現場から彼を助け出したのは彼の「ミザリーもの」作品に心酔しているファン、アニー・ウィルクス。ただアニーは「異常な」ファンだった―。
 ポールを幽閉し、「自分の為だけに」ミザリー作品を執筆させようとするアニー。精神にも異常を来し、実は過去にも罪を犯しているアニーに、身も心もずたずたにされていくポールの苦しみ、痛み、恐怖。登場人物はほとんどこの2人しかいない展開でありながら、臨場感ある場面描写、リアルな心情描写に引き込まれる。
 そして、徹底的な悪役であり、ポールにとっては憎悪の対象でしかないはずのアニーなのに、なぜかそれだけでは割り切れないような感情が描かれている。それは、生殺与奪の実権は完全にアニーが握っていながら、アニーが心から求めている「ミザリー作品」の実権はポールが握っているところに起因するのであろうが、要はアニーはイカれているけれども馬鹿ではなく、「ミザリー作品はポールが書く」というところを弁えているところが話に深みをもたせている。ポールだけでなく読んでいるこちらも、いつの間にかアニーに憐憫というか、可愛さというか、一方的に唾棄すべき存在ではなくなっていくのは私だけだろうか。
 単なるサイコホラーではなく、そのあたりの2人の微妙な立場というか位置関係が、作品を秀逸ならしめている。

No.333 6点 魔女は甦る- 中山七里 2015/08/20 15:37
原形をとどめないほどにバラバラ、ミンチ状にされた死体から始まる序盤から、一気に読みたくなるほど読ませる筆力はこの頃から健在。殺された青年、桐生隆の経歴、背後関係を明らかにしていくにつれ事件の背景が見えていくあたりはミステリなのだが、真相が明らかになってからの後半は完全にパニック映画の様相。
 さらに結末があまり好きになれない。
 そんな感じでいろいろと思いはあるが、読んでいるときはのめりこんでいたので、一応「楽しめた」で。

No.332 7点 夢幻花- 東野圭吾 2015/08/14 16:46
アサガオがどういう意味合いを持つものなのかは読んでいくうちに大体見当がついた。最終的にはなんだか救いのない話って感じ…だけど、主人公と兄、家族についての複線の結末はよかった。
 相変わらずの緻密な筋立てとリーダビリティ。よくもまぁ次から次へといろんなネタが…と感心してしまう。

No.331 5点 貘の檻- 道尾秀介 2015/08/14 12:06
 電車のホームで、主人公の目の前でホームに落ちて死んだ女性。それは、亡き父が「殺した」とされていた女性だった。父親を殺人犯とされ、故郷を追われて暮らしていた主人公。自身の結婚生活もうまくいかず心が病み、たびたび湧き起る妄想・夢想に、薬を服用して逃げながら生活していた。そんな主人公が女性の死を機に故郷に戻り、過去と向き合う決意をする―。
 村を拓いた偉人を祭る祭事、水を引く穴堰、地元で崇めれられている名家など、土着的な旧村を舞台とした本格ミステリ。関わる人物の言動や残された写真などから、気付かれなかった真実が徐々に明らかになっていく展開は読みごたえがあり、ミステリの魅力は十分にあるといえる。
 ただ、まさむねさんが書いている主人公の夢(妄想?)の部分は、私は「難」のほうの評価。随時挟まれているが読むのが煩わしく、一番の難点は真相解明に不要であったこと。京極夏彦の同じような構成だと苦に感じないのに、なぜだろう・・・。

No.330 7点 女王はかえらない- 降田天 2015/08/14 11:51
 小学校女子のスクール・カーストを題材にした学園ミステリ。何だったか忘れたけど、前にもこういう類を読んだ覚えがある。最近ちょくちょく見られますね、こういうの。子どもの残酷さと、歯止めの利かない怖さがうまく描かれている。
(ネタバレあり)
 物語は子ども側からと、教師側から描かれた章で構成されているが、子どもたちがお互いをニックネームで呼び合っていることから仕掛けには薄々気づいていた。まぁ叙述トリックなのだが、それと分かっていても読んでいてストーリー自体が面白かった。このコンビ作家の今後の作品に期待。

No.329 8点 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 2015/08/14 11:34
 少年期に殺人を犯した前科者という異色の経歴を持つ弁護士、御子柴礼司。先に「追憶の夜想曲」を読んでいたので、御子柴の少年刑務所時代が描かれている本作は、ルーツがわかるという点でも非常に面白かった。
 中山七里は非常に描写が優れた作家だと思う。場面や心情の描写が特徴的で、かといってレトリックを駆使しすぎてうるさすぎる感もなく、非常に引き込まれる。
 悪役でありながら、実は徹した悪漢ではなく、奥底に人間的魅力を備えた御子柴礼司はとても惹きつけられるキャラクター。このシリーズいっぱい書いてほしい。

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ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.32点   採点数: 1148件
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