皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.33点 | 書評数: 1208件 |
| No.708 | 8点 | 天地明察- 冲方丁 | 2020/05/24 16:20 |
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| 「12人の…」を書評したら、こちらも作品で上がっていたので書きます。
読んだのはずいぶん前で、詳細な内容は実はあまり覚えていないが、非常に興味深く楽しく読んだ印象は残っている。 時代物を読むとき面白いのは、いつの時代であっても卓越した頭脳をもった人間は当然のことながらいたと気づかされることだ。考えてみれば当たり前のことなんだけど、どこかで、時代の文明度をそのまま当時の人たちの知的水準にあてはめて想像してしまっているところがあって、ちょんまげを結って刀を差している時代の人たちが高度な科学的論議をしているところをあまり想像できない。けれども、その時その時に常に「最新」はあって、それをリードしている人たちは当然現代であれば最新科学をリードする人だったのだろうと察せられる。 時代がかったアナログな手法で、高度な科学議論が交わされている様相が純粋に面白かった(覚えがある)。 |
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| No.707 | 6点 | 十二人の死にたい子どもたち- 冲方丁 | 2020/05/24 16:08 |
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| 自死願望を持つ12人の若者たちが、発起人の企画に乗って廃病院に集まる。集まってすぐに実行に移せばそれで話は終わったのだが、部屋になぜか「13人目」の既に死んでいると思われる人間が横たわっていたことで、そうはいかなくなる。
カタカナのキャラが12人、そして4階建ての建物内での動向、さらに敷地に来た順序や入室した順序のことにまで話がおよび、内容を理解するために巻頭の見取り図を何度も見返したりした。12人それぞれの事情や、キャラクターの違いによる揉めようはそれなりに面白く、読み進めるのに飽きることはなかった。 ラストはミステリを読み慣れている人にとっては予想の範疇ではあるが、物語としてはこういう終わり方でよかったのだとも感じるところがあり、読後感はよいのではないだろうか。 私は、「アンリ」が好きだったなぁ。 |
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| No.706 | 8点 | 耳をすます壁- マーガレット・ミラー | 2020/05/17 15:43 |
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| メキシコに旅行に来ていた親友、エイミーとウィルマ。情緒不安定なウィルマは激しやすく、旅行中も口論が絶えなかった。そしてある晩、ウィルマはホテルのバルコニーから落ちて死んでしまう。ショックで倒れたエイミーのもとに駆け付ける夫のルパート。医者がエイミーにしばらくの入院を勧めるのも聞かず、2人はすぐに帰路へ発つ。ところがサンフランシスコに帰ってすぐ、エイミーは家を出て行ってしまう。いったい何が起きているのか?ホテルで何があったのか?エイミーの兄、ギルは疑念を抱いて私立探偵・ドッドを雇って探らせようとする―
ルパートは白なのか黒なのか?分からないまま展開されていく構成と、巧みな心理描写、人間描写が読者を惹きつけて話さない。ラスト、ルパートと一緒にいる女の正体が分かってから、その裏にある真相が解き明かされるまでも、息をつかせぬ展開で非常に面白い。 そして、最後の最後の一行・・・!うーん!スゴい。 |
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| No.705 | 7点 | 地獄の湖- ルース・レンデル | 2020/05/17 15:28 |
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| マーティン・アーバンは友人のティムの勧めで買ったサッカーくじで10万4千ポンドをあてた。ティムの言うがままに勝敗予想をしたところ、大当たりをしたのだ。そのことをティムに伝え、いくばくかの分け前を渡すべきか?…悩んだ末言いそびれてしまうマーティン。マーティンは、当選金の半分は私財にせず、困っている人たちに寄付することにしようと考えた。
一方、電気工のフィンは、カイアファスの婉曲的な依頼を受けて邪魔な存在を消す「殺し屋」を裏の稼業としている。母親にバレないように、事故に見せかけてカイアファスの依頼に応じ、毎回多額の報酬を受け取っていた。 まったく違う二つのストーリーが終末に重なり合い、悲劇を生む。これは著者のパターンの一つでもあるが、本作はその前のマーティンの恋物語にも仕掛けがあって面白かった。人妻であるフランチェスカに夢中になるマーティンの純朴さというか愚かさに、呆れたり同情したりしてしまう。特にハメられていることがはっきりした後半からは、可哀想に思いつつ、興趣も乗って来てしまう。 典型的なレンデルの作風が表れている作品ではないだろうか。 |
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| No.704 | 6点 | 身代りの樹- ルース・レンデル | 2020/05/10 14:22 |
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| 処女作が大ベストセラーとなった女流作家ベネットはシングルマザー。だが、最愛の2歳の息子を病気で亡くしてしまった。絶望にくれていた折、精神に病のある彼女の母・モプサは、なんと同じくらいの歳の子を誘拐してきた。始めはモプサの行動に怒り、何とかその子をもとに返さなければと思うベネットだったが、事件が世の中で大きく取り沙汰されている状況に尻込みしているうち、次第に心境が変化してしまう。
狂った母の所業により子どもを攫った側になってしまったベネット、子供を攫われた側のキャロルと恋人バリー、そして未亡人の財産をかすめ取ることを目論む小心者のテレンス。三者の物語がそれぞれに進行するうち次第に重なり合い、絡み合っていく様相はさすがといったところ。それぞれに描かれる登場人物の心情描写が巧みで、レンデルの魅力が横溢した作品と言える。 ただ、 婉曲的な描き方の行間を読むようなところが多かったため、理解力の乏しい小生は疑問として残ってしまう部分もあった。例えば、ジェイソンを虐待していたのは結局誰だったのか?キャロルとエドワードを射殺したのは誰?デニス・ゴードン?読みようによっては”ヤツガシラ”とも読めるのだが…。仮にデニスだとして、それはなぜ? 最後の訳者の言葉では、本作はレンデルの作品の中でも「最後に救いがある」と書いていたが、この結末をそう感じるかどうかも、読者によるような気がする。 |
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| No.703 | 7点 | いまさら翼といわれても- 米澤穂信 | 2020/05/10 13:51 |
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| シリーズ6作目となる本作は、短編集でありながら単なるいつものメンバーのエピソード集ではなく、古典部の面々のそれぞれの物語が進行していて通して読んでいるものとしては非常に興趣をそそられた。
特に本作では伊原摩耶花が主役となっている「鑑には映らない」「わたしたちの伝説の一冊」が面白かった。どちらも、これまで距離のあった摩耶花とホータロー、麻耶花と河内先輩の間柄が変化した様子が、シリーズ読者としては何となくうれしかった。 古典部の面々の物語が進んだという点ではタイトル作が一番なのだろうが、その行く末は本作以降に委ねられていくのだろう。ある意味、本シリーズがまだ続くことが分かり安心である。 (「小市民」シリーズの方はいっこうに動きがないが…) |
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| No.702 | 7点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2020/05/05 17:38 |
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| 12年前に起きた殺人の真相を探るという1点だけで書き上げられた長編なのだが、作りがシンプルだからか、間延びする感もなくテンポよく楽しんで読めた。12年前の事実を子細に再現し検証するというエラリイの再捜査は地道だが、可能性を一つずつ潰していくその過程は、クイーン作品本来の魅力であるロジックが前面に出ており、退屈さを感じさせなかった。
次々に殺人事件が起こるでもなく、「12年前の1件の殺人事件」1本で興味を尽きさせないのは、本作がパズラー一辺倒ではなく、ライツヴイルの人間模様やフォックス家の家族関係という面にも物語の興趣を割いている点にある。それが「ミステリだけでは味気ないから、プラスアルファの味付けとして」上乗せしたものではなく、事件の背景として、物語の一部として分かつことができないものとして描かれているところが、トータルとして読後の満足感を非常に高めてくれた。 うーん…、私はライツヴィルシリーズでは「災厄の町」よりもこっちのほうが好きかな…。 |
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| No.701 | 6点 | 真珠郎- 横溝正史 | 2020/05/05 17:06 |
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| 由利麟太郎を探偵役とした初期作品。
だが、「謎の老婆」「妖艶な美男美女」「由緒ある旧家」「洞窟」…などなど、のちに爆発的人気となった金田一シリーズのテンプレートのような作りである。 後半に突如、隠されていた係累が明らかになるのも氏の作品ではよく見られるパターン。それを予期せずとも、真珠郎の正体は中盤以降で分かった。物語から読み解いたの半分、あと半分は横溝作品をいくらか読んでいることによる推察。 とはいえ、時代を感じさせる持って回った登場人物の言動や妖しさのあふれる筆致、凄惨な事件の様相など、分かっていはいてもやはり楽しませてくれた。 併せて収録されている短編の「孔雀屏風」も小粒ながら非常に秀逸で、報われぬ恋に落ちた女性の切ないまでの企みには唸るものがあった。 金田一シリーズほどの量感がなく、だからこそ横溝正史の世界をまず味わうには非常に適している作品ではないかと思った。 |
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| No.700 | 9点 | 殺す風- マーガレット・ミラー | 2020/05/02 19:14 |
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| 杉江松恋の「読み出したら止まらない!海外ミステリーマストリード100」の巻末で「紹介すべきなのに、絶版になっているためできなかった作家」の筆頭にマーガレット・ミラーが挙げられていたため、興味をもって読み出した。
面白い! 展開は非常にゆっくり、平坦(丁寧?)で、特に起伏に富んだものではないのに、食い入るように読み進めてしまう。それは一重に、誰しもが日常の中で既視感のあるような心理を巧みに描写している点にあるのではないかと思う。疾走したロン、妻のエスター、冷静な立ち位置で事態の収拾を図るチュリー、ハリーとセルマ夫妻、それぞれにキャラクターがしっかり描かれていて、右往左往する中での心理描写が素晴らしい。 ロン失踪後の展開も、全て周りが予想したとおりであり、目を見張るような急展開は(ラスト以外)ないのだが、全く不満は感じない。閉じた人間関係の中での人間模様の妙が描かれた傑作だと思う。 ちなみにミラーの作品も、今では創元推理文庫の復刊フェアでいくらか読めるようになったらしい。ウレシイ。 |
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| No.699 | 7点 | 店長がバカすぎて- 早見和真 | 2020/04/29 16:24 |
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| 〈武蔵野書店〉契約社員の谷原京子は、本をこよなく愛する書店員だが、常々「ここを辞めよう」と考えている。その主な原因は店長の山本猛。毎朝、店員たちのイライラを尻目に無意味な訓示を垂れ流し、人の名前も間違えるほどの「バカ店長」。実家である料理屋に行っては、同僚の前でそのグチを吐き散らす毎日、来る日も来る日もバカな店長、バカな客、バカな作家の相手をさせられ、トラブルに巻き込まれ―
正直言って最大の胆となる謎は、ミステリ慣れしている皆さんなら第一話で早々に看破できてしまう。面白いのは「書店」の実情(?)を描いている様で、書店員の評価が高いのも同業種で共感を得ているからだと推察される。(本当にこんな風なんだろうか?特に年末の「報奨金」獲得のための購入ノルマとか…) とはいえ部外者の我々が読んでもそれは面白いし、ある意味「謎の一つ」である店長の本性は最後まで分からなかった。 コミカルでありながら時折心を打ち、読み物としてかなり楽しめる作品。「イノセント・デイズ」とはまったく作風が違い、作者の振れ幅を感じることができた。 |
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| No.698 | 5点 | 犯人選挙- 深水黎一郎 | 2020/04/29 15:59 |
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| 「大泰荘」で共同生活を送る8人の大学生。芸術家のタマゴや体育会系男子など、それぞれのめざすものに向かって生活する若者たちはそれなりに良好な関係でせいかつしていた。ところがある朝、住人の一人、マッチョ系男子が鍵のかかった自室において遺体で発見される。主人公の加藤大祐は、同じ大学の先輩・洸一と推理を巡らせるが…。
そののち「7つの真相候補」が選択肢として示される。選択肢から読者が真相を選び」、犯人を決める、という試み。 この作者は最近、ミステリの残された試みにチャレンジする姿勢が目立つなぁ。そうするとどうしても「謎の質」より仕掛け方自体が重視され、必然ミステリとしての評価は上がらない気がする。本作もそう。後半に行くにつれてシリアスさは失われ、バラエティ番組のようなノリになっていく。選択肢を増やすためなのか、一つ一つの「真相案」もチープさが目立つものが多く、やはり小説全体の仕組み重視の感は否めない。 密室であり、基本的にパズラーの体であるところは好まれるが、「企画もの」の域は脱せていない感じ。 |
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| No.697 | 7点 | ハムレット狂詩曲- 服部まゆみ | 2020/04/29 15:44 |
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| ネット上の各レビューが非常に良いので読んだ。
日本随一の劇団が、自らが建てる新劇場のこけら落としとしてシェイクスピアのハムレットを上演することになった。その演出を要請したのは、世界的に大成功を収めている日本生まれ、イギリス国籍の演出家 ケン・ベニング。しかしケンは実は、出演者の一人である歌舞伎役者の片桐清右衛門の私生児として生まれ、幼い頃に母と友の捨てられた身だった。依頼を受けつつ、これを機会とばかりに清右衛門の殺害を目論むケン。そんな動機で受けた仕事だったが、劇の制作になると芸術家本来の欲求を抑えられない。 この作品のウケがいいのは結末のよさなのかな。正直ミステリとして特別卓越した作品だとは思わなかった。劇団を舞台にした複雑で微妙な人間模様や、ケンの芸術家としての天賦の才能の描写は確かに面白い。シェイクスピア作品には全く精通していないし、正直ハムレットも有名なセリフぐらいしか知らないが、読むことの障害には全くならず楽しめた。 |
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| No.696 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2020/04/19 18:51 |
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| 前半部分はあまり自分の中で評価が上がらなかったが、後半から一気に来た。要は、H.M卿が登場してから。初登場作品だからか、登場が遅いね。
フーダニット、ハウダニット両者に十分力が割かれているのだが、後から背景が明らかになったり、時代性もあって現代の我々があまり分からなかったりして、H.M卿の洞察で明かされるのを待つしかないという感じ(読者に推理の余地はない)。それでも明かされた真実は、オカルティズムと現実的トリックが見事に絡み合っていてうならされるものがあり、満足した。 特に前半部の展開が、様相が頭の中に描きにくくて非常に読みづらい。精緻に理解しながら読み進めようと思わない方がよいと思う。 |
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| No.695 | 7点 | 欺す衆生- 月村了衛 | 2020/04/12 17:26 |
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| 高齢者を騙し莫大な利益を得ていた詐欺グループ「横田商事」は、その悪質な商法が社会問題化し、マスコミの眼前で会長が刺殺されるという衝撃的な形で壊滅した。元社員の隠岐はその過去を隠して文具会社で働くものの、うだつの上がらぬ日々。そんな折、元・横田商事の同僚、因幡が隠岐に接触してきた。「また一緒に詐欺をやろう」—強く拒否をする隠岐だったが、心のどこかでは込み上げてくる高揚感があった—
「もう二度と汚い真似はしたくない」と口では言いながら、策略を練って人を嵌める快感を忘れられない主人公。始めは「因幡に脅されているから仕方なく」の体だったが、罪を重ねていくうちに泥沼にはまり、どんどん主体的に詐欺を働くようになる過程が色濃く描かれている。因幡やヤクザらに引きずられるようであったのが、最後には彼らをも裏切り、詐欺師として孤高の存在になっていく。 複線として描かれている家庭の確執も物語に幅を持たせ、面白さを後押ししている。最後に「救い」に向かうようなことも一切ない、徹して「悪」を描いている点が小気味よい。 |
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| No.694 | 9点 | Blue- 葉真中顕 | 2020/03/29 11:53 |
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| 平成という時代が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ一人の男がいた。彼の名は「青」、母親は彼を「ブルー」と呼んだ。
平成15年のクリスマスに起きた、教員一家惨殺事件。事件は一家の次女・夏希の犯行として幕を引いたが、事件以来夏希の息子「ブルー」は行方が分からなくなっていた。それから15年の時を経た東京、ある殺害事件の捜査で再び「ブルー」の存在が浮かび上がる―。 チーマー、アムラー、ゲームボーイ、ヒット歌謡曲などの平成の風俗文化をふんだんに散りばめながら、格差、貧困、外国人労働者といった時代の暗部も巧みに織り込み、「平成」を絶妙に描いている。 平成最後の年に刊行された、時代を総括するかのような傑作。 |
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| No.693 | 8点 | 狙った獣- マーガレット・ミラー | 2020/03/29 10:53 |
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| 遺産を受け継いだヘレン・クラーヴォーのもとに、「エヴリン」と名乗る女から謎めいた電話がかかってきた。身の危険を感じたヘレンは、亡き父の相談役だった投資コンサルタント、ブラックシアに助けを求める。依頼を受けて調査を進めるうち、クラーヴォー家の暗部が次第に明らかになっていく。
こういうオチだったのか、と純粋に驚かされた。出版された時代を鑑みると、非常に先駆的な仕掛けだったのではないかと想像させる。もちろん今読んでも十分に面白い。 仕掛けだけでなく、病んだ一家や主人公の様相を非常に巧みに描いている。ヘレンが病んだ女性になってしまった経緯、その原因を作った母親の姿、次第に壊れていった家庭。 時代を超えたサイコスリラーの傑作に出会えた。 |
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| No.692 | 4点 | 私が失敗した理由は- 真梨幸子 | 2020/03/29 10:34 |
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| スーパーにパートで勤務する落合美緒は、ある晩コンビニで勤務先の同僚とばったり出会うが、翌々日出勤するとその同僚は、隣人一家四人を殺害したという容疑で連行されていた。 美緒はこのことを機に、人生の失敗の事例を集めた本を出版しようと考え、出版社に勤める元彼に働きかける。
伏線をそこかしこに仕込み、それらを最後に結び付けて回収するということのみに力を注いでいる印象で、非常に急ぎ足で安っぽい場面展開。牢屋に入ったり、選挙に出たり、ホームレスに転落したり、急に大金持ちになったり…と、近しい人が次々と簡単に人生を大転回する。そんなバカな。 緻密に仕組まれているというより、弾を乱射して煙に巻いているカンジ。 |
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| No.691 | 7点 | リボルバー・リリー- 長浦京 | 2020/03/21 22:50 |
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| 小曽根百合。実業家・水野寛蔵の下、幣原機関で訓練を受け、16歳で実地任務に投入。東アジアを中心に3年間で57人の殺害に関与し、各国から「最も排除すべき日本人」と呼ばれた美しき諜報員は、20歳で突然活動をやめ、今は東京の色街を仕切る姐さんとして暮らしていた。
ある日、恩人である男からある少年を匿い、守ることを頼まれた百合。陸軍を相手取った少年との命がけの逃避行が始まる。 ハリウッド映画さながらのドンパチと裏のかきあい。工作員としては天才の百合が、強大な陸軍組織を相手に奮闘する。陸軍と政府の権力争いという政治事情も絡まって、壮大なトーリーが展開される。 誰が本当の味方なのか?善意の民間人は敵なのか?といった要素が諸所に織り込まれているとはいえ、基本的にはバイオレンスなクライム小説。小曽根百合の天才的戦術と、ハラハラする臨場感が作品の魅力の幹である。 |
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| No.690 | 5点 | ブルーバード、ブルーバード- アッティカ・ロック | 2020/03/21 22:16 |
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| アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞作。
アメリカに根強く残る黒人に対する差別思想などの社会的な暗部をえぐったという点で評価が高いのだろうか。だとしたら、そうしたことに強く共感するような感覚はこちらにはないので、ミステリとしてそこまで卓越しているとは感じなかった。 そのうえ、(それこそ田舎の閉鎖的な人間関係なのか)血縁関係がややこしくて、子どもを「ジュニア」とか「リトル」とかを付けて同じ名前で表記したりするからややこしく、登場人物一覧を随時確かめながら読む煩わしさがあった。 謎や仕掛けといったミステリの要素からすると特段卓越した作品とは感じなかった。 |
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| No.689 | 6点 | 死刑台のエレベーター- ノエル・カレフ | 2020/03/21 21:56 |
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| 着想・発想が面白い。けど裏を返すと、その一点勝負、かな。
普通の倒叙物と思わせておいて、まったく意外な展開になっていくスリルはあり、ライブ感のある面白さだった。最後に冤罪として主人公に降りかかるもう一つの犯罪の方のカップルのバカさ加減も面白く、そういう意味では一粒で二度おいしい小説とも感じる。 冤罪と本当の罪との間でせめぎ合うところからをむしろ中心的に描いてくれるとさらに面白かったかもしれない。 |
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