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HORNETさん
平均点: 6.32点 書評数: 1121件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.17 6点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2020/02/29 16:26
 2015年新訳版。かなり読み易くなっているのか、厚みの割にはスラスラと読めた。
 ニューヨークを震撼させている連続殺人事件。解決が見いだせない難事件に対して、市長はエラリイを特別捜査官に任命する。だがエラリイが依頼を受けて以降も連続する事件を止めることができず、手がかりもつかめない。エラリイは「被害者の共通点」が事件を解くカギと考えるが、それがなかなか見えてこない・・・
 トリック中心のパズラーを脱皮し、作風の幅を広げていったとされるいわゆる後期クイーンの代表作。確かに、現場をじっくりと検分し捜査する前期の作品とずいぶん雰囲気が違い、特に本作は劇場的な色が強い。疾走感もあり読み易いのだが、ミステリとしては普通の出来ではないかと思う。解き明かされるミッシング・リンクも真犯人も、悪くはないが、スタンダードなレベル。
 クイーン作品の中で特に高い評価にはならないが、標準程度に面白いと評価する。

No.16 10点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2019/07/07 20:33
 ロジカル・ミステリの「うまみ」を短編として凝縮したような作品集。
 意味深な伏線を仕込みながらじわじわと結末に向かう長編もそれはそれで楽しい。短編はロジックに特化して、削ぎ落された純粋なパズラーぶりがたのしい。堪らない。
 短い尺でありながらも、現場の状況や情報から考えられる可能性を挙げ、不可のものを一つずつ潰していく丁寧さには揺るぎがない。他の人は気にならない犯行の瑕疵に気を留め、そこから真相にたどり着く様は期待通り。私としては「三人の足の悪い男の冒険」「見えない恋人の冒険」「チーク煙草入れの冒険」「七匹の黒猫の冒険」が、エラリーが何をどう切り崩すのか見当がつかなくて、その分後半を嘆息しながら読んだ。
 新本格の作家たちがこぞって崇拝するクイーンの魅力が凝縮された贅沢な一冊だと言いたい。

No.15 6点 最後の女- エラリイ・クイーン 2019/03/23 13:47
 親の遺産を継いだ放蕩息子が、3人の前妻を呼んで離婚契約の変更を諮っている過程で殺された。息子はエラリイの知り合いで、事前に遺言書の書き換えの証人になってもらっていたのだが、死後にそれを開封すると、前妻たちにほとんど遺産は残らないことに。殺したのは誰か?背後に潜んでいる人間関係は?

・・・と、ある意味非常にオーソドックスなオールドスタイルミステリで、出来栄えも標準的。ダイイングメッセージの論理は面白く(死ぬ間際にそこまで考えを巡らせられるか!という無粋な指摘はこの際置いといて)、それがメインで作られた話なのだろう。
 少なくとも不可はなく楽しめる長編と感じた。

No.14 5点 アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン 2016/12/04 22:42
 国名シリーズの中でも小粒という世間の評価を耳にしていたため、読むのが後回しになっていて、ほとんど「シリーズ読破目的」で読んだ。そういう構えがいけなかったのだろう、読んでいてもイマイチ興が乗らず、えらく時間がかかってしまった。(古本で購入したのがかなり昔の版で、狭い行間でびっしり書いてある体裁だったのも手伝った)
 犯人の意外性はなかなかのもので、悪くはなかった。が、それを看破するための手がかりの文章中のちりばめかたが、よく言えば巧妙、悪く言えば意地悪な紛れ込ませ方、と感じた。事件現場や捜査中の言動の描写を、そこまで注意してくまなく読んではいられない性分なので、解決編を読みながら前の部分を何度も繰り直した。
 それに、時代のこともあるので一概にはわからないが、それにしても警察がきちんと捜査しているような案件で被害者の確認はこんなものなのだろうか?とも思った。一方で、銃弾の弾道痕の解析までする科学的な捜査がされているのに…。あまりにアンバランスな感じがどうしてもしてしまう。

No.13 6点 中途の家- エラリイ・クイーン 2015/01/17 20:48
 国名シリーズ以外の作品では最も有名(?)なカンジだから国名シリーズ制覇を待てずに読んだ。不可解性満点の事件の発生からクイーンワールド全開で、もちろん大いに楽しめた。
 がしかし、自分が真相を看破したからそう思うのか、クイーン作品の中でも評価の高い作品、という期待に見合う「そういうことだったのか!」はなかった。いわくありげな部分をやたら量産して読者を煙に巻くようなことをせず、無駄のない展開でありながらきちんと伏線が隠されているのがクイーンのうまさ。だが、今回は真相に結び付く場面ではすぐにピンときてしまった。それがわかればそのことから直接示される人物は一人しかいないので、犯人はすぐにわかってしまった。
 まぁ、ロジカルな仕掛けが最大の魅力のように言われるクイーンだが、私はそれだけでなく作品世界自体が好きなので、期待外れとかは全く思わなかったが。

No.12 5点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2014/01/04 01:08
うーーーーーーーん……ビミョーな読後感……。
 まず、リーダビリティは高い。この四部作、作が進むごとに読みやすくなっている気がする。これは一気に読めた。他の翻訳物に比べて、登場人物が多くないのが要因として大きい。あと、一本の筋を追い続けるシンプルな展開なのもその理由かな。
 ただ、読み終えて全てが分かると、推理が足踏みしている部分が不要に長い。まぁ事件も進行しているわけだから時制的には適当なのかもしれないけど……引っ張った結果、後出しの(今さら)〇子とか(しかも推理や捜査からでなく、サム警視の指示による当局捜査の結果)、失踪していた警備員がただ発見されただけとか、その長さに応え得るような伏線の回収には感じられなかった。
(ここからは勘のいい方にはネタバレになります)
 そして肝心の犯人ははっきり言って全く意外でなかった。むしろ予想通りでしかも嫌。ペイシェンスが目覚まし時計のおかしさに気づいたのに、周囲にそれを明かさず胸にしまった時点で何となく分かってきたし、彼女が不安定になって失踪したことでほぼ確信に変わった。だいたい、本の帯に「前3作はこのために書かれた」なんて謳っているのもよくないよ。この無責任な宣伝文句、四部作の中で一つだけテイストが違う題名、「意外な犯人」というキーワードで予測できてしまうし。
 そしてその終わり方が、「嫌」。読み進めるのは面白かったし、四部作としてよく構成されたと思うけど、結末が悲しいというより「嫌」だった。

No.11 8点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2014/01/01 13:02
前評判や序文から、「若かりし日のエラリイの失敗談」ということはわかって読んでいたが、にしても面白かった。廃案になる第一の推理にしてもそれ単体でよく仕組まれていて面白いし、二転三転する以降はさらにクオリティが増す感じ。長編とはいえ、そういった意味では何本ものストーリーが味わえているようで、なんか得した気分だった。
 タイプライターの論理はさすがに我々には分からないし、空さん、miniさんご指摘のように色盲の論理は根本的に間違っているなど、気になる点もあるが、その筋書きというか組み立てが精緻で「さすが」。クイーンが最も脂ののっていた時期の力作というのを実感する。
 これを読むまでは「エジプト十字架」が一番好きだったが、大きくそれを越えた感じがした。

No.10 7点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2013/06/30 09:39
 犯人の見当は早々についた。が、全裸の謎、マントの謎など、死体の状況の不審な点を論理的に解明していくことで犯人にたどり着くエラリーのロジックは相変わらずさすが。事件の背景となった人間模様も単純だが面白く、全体的に無駄のないシンプルな謎解きで、国名シリーズの中でも非常に分かりやすい作品ではないかと感じた。

No.9 5点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2012/12/01 18:11
 被害者の衣服の向きから部屋の家具の向きまで、すべてが反対にされた謎の「あべこべ殺人」。謎の魅力としては十分だったのだが・・・。その後の展開は、その謎から少なくとも私が期待した展開ではなかった。何がそう感じさせるのだろう・・・と考えた末行き着いた、本作品での一番のネックはおそらく「文化や感覚の相違」だと思う。
 まず、「全てがあべこべ」という状況が「中国を示唆している」というとらえ?論理?が全く分からない。これは私が同じアジア人だからか?とも思ったが、私たちが欧米を見たときに「全てがあべこべ」という感覚はない。まぁ、当時はノックスの十戒からも分かるように、東洋に対する理解がかなり偏っていたというか、歪んでいた感じもあるから、少なくとも向こうの読者はすんなり共感できたのかもしれないが・・・。
 もう一つは、「あべこべにした」動機にかかわる文化。これについてはそんなこと知らないから(私が浅学なだけなのだが)、「読者への挑戦」を受けていくらうなっても、真相を見たときに「そりゃ分からんわ」と思わざるを得ない。というか、真相を聞いても結局あまりイメージできない。あべこべにした理由ついての論理はわりと納得したが。
 トリックについては、文章の説明で理解するのが非常に難しかったというか、わずらわしかった。一応丁寧に読んだが、本当に理解しているか自分でも自信がない。しかも、分かったところで感嘆する気は起こらない。
 変な話、一番面白かったのは、「読者への挑戦」を挿入し忘れたという話だった。

No.8 4点 シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン 2012/10/09 22:08
 私の好きなクイーンの国名シリーズだったが、他作品とは色が違う。この色の違いをよしとする人もあれば、そうでない人もいると思うが、私は後者である。要はクイーンに何を求めるか、だと思うが。
さらにきっとクイーン自身も新たな境地に挑む意欲作だったのではないかと推察するが。
 怪奇的な要素も盛り込まれ、いつも以上に特殊な状況下での展開は、確かにリーダビリティが高い。が、ダイイングメッセージの解釈の二転三転が中心となったこの話は、それにしては冗長すぎる。その埋め合わせとして、怪奇的な要素や、山火事の進行という要素を盛り込んだという感じがする。そう思うと、このタイトルもどうかと思う。
 唯一、「クイーン国名シリーズ」の特異性という点で印象に残った。

No.7 7点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2012/01/16 22:09
 首なし死体、T字十字架への張り付け、連続殺人という、小説でしかありえない、陰惨で劇場的な展開は基本的に好き。エラリイの国名シリーズを読むのは4作目だがこれだけ事件が間断なく連続するのは、(「悲劇4部作」を除いて)珍しいのではないか。一事件を追う過程がじっくりと描かれているのもそれはそれでよいのだが、こういう、間断なく事件が続くことで謎が深まる(=逆説的だが、逆に真相が見えてくる)展開も停滞感がなくてよい。そういう意味で、飽きることなくページを捲ることができた。
 ただし、真相解明への決定打の提示については、うーん・・・だし、何よりもこれだけの大掛かりで劇場的な犯罪を仕組むにしては動機が抽象的&大衆的過ぎる気がするのが難点(もっとはっきり言えば薄弱)。ツヴァール家とクロサック家の対立という、それらしい背景が用意されていただけに、それなりのものを期待していた。

No.6 5点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2011/09/18 21:34
 国名シリーズ第2作。百貨店社長サイラス・フレンチの妻、ウィニフレッドが,衆人注視のデパートのウィンドウで死体となって出てきた。事件当日から姿を消しているウィにフレッドの娘・カーモディ,明らかになるその素行,アパートに残された統一性のない書籍,ブックエンドの白い粉・・・さまざまな要素をつないで推理を組み立てるエラリイ―。
 劇場型的な事件の幕開けに本格志向の期待が高まったが、その後の展開は正直そこそこ。些細な異変に目を向け、そこから推理を組み立てるエラリイの知見には圧巻だが、物証から人物の限定へと進む過程に大味さを感じる(つまり「このことができるのはこの人しか・・・」の部分が完全に物理的ではない気がする)が、時代を考えればいたしかたないかも。
 少なくとも本格黄金期を飾った作者の名には恥じない、よく組み立てられた話であったことは間違いない。

No.5 6点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2011/01/30 13:15
 処女作らしく,一つの謎を解き明かしていく過程を純粋に丁寧に描いてあります。犯人へとたどり着く手がかりは,まさにタイトルの「ローマ帽子」一本で,現在読むと、物足りなさを感じるところもあります。ミスリードの役割も果たす捜査の各段階の描写は,読むのがもどかしく感じる部分もありますが,古典作品らしいよさだとも感じます。
 犯人特定にいたる決め手も,「そんなこと書いてあった?」と思うぐらい描写に埋もれていた感がありましたが,何にせよ氏の記念すべきデビュー作を読んだという満足感はありました。

No.4 7点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2011/01/09 18:16
 ドルリイ・レーン四部作の中では世間的に評価が低いらしい作品ですが,自分としては気に入りました。特に,最後に犯人と断定するレーンの論理的推察は読み応えがあり,また納得のいくものでした。

No.3 6点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2011/01/09 18:15
犯人の意外性はありました。ロジックもなかなかですが,新たな手がかりが作中で小出しにされるのがちょっと・・・とは思いました。日本では一番人気のクイーン作品のため,過剰に期待していたかもしれません。

No.2 7点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2011/01/08 21:19
 個人的には「Y」よりもこちらのほうが好きかな,とも思いました。コルクに付けた毒針という古典的な(?)殺人方法は,それだけで面白く感じました。しかし,結末はちょっとズルイかな・・・と,思う人はいるかもしれません。

No.1 7点 オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン 2011/01/08 20:54
 ドルリイ・レーンシリーズからエラリイに入り,国名シリーズで初めてこれを読みました。昔の作品ということもあって,完全無欠にロジカルではなく,例えば「女には無理」というような概念的な論理も入ってきます。しかし科学的な面まで含めて全て検証しなくてはならないロジックよりも読者に近く,謎解きを一読者として楽しめました。

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好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.32点   採点数: 1121件
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