皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.881 | 7点 | 同志少女よ、敵を撃て- 逢坂冬馬 | 2022/02/23 13:02 |
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時は世界大戦のころ。独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマは、急襲したドイツ軍によって、母親や村人を殺された。射殺直前、赤軍の女性兵士イリーナに救われたセラフィマは、「戦いたいか、死にたいか」――問われ、イリーナの訓練学校で狙撃兵になることを決意する。
訓練後、従軍するセラフィマは、各戦地で同志に出会い、ともに時を過ごし、死によって別れていく。激動の時代に命がけで生き抜いた狙撃手少女の、悲しくも凛々しい生き様。 戦争映画を観ているような臨場感のなか、極限状況をたくましく生き抜く少女たちの同志としての絆が心を打つ。誰が本当の同志で、誰が裏切り者なのか―。悲しく疑念に満ちた世界の中でも、確かな信頼関係を育んでいく少女たちの姿は、胸を打たれるものがあった。 何年も続く戦況と、地上戦の様子が延々と描かれる中盤はやや冗長で、少し長すぎる感もあったが、ラストでは読破してよかったと思える結末があり、受賞作の名に恥じない快作だった。 |
No.880 | 7点 | 捜査線上の夕映え- 有栖川有栖 | 2022/02/06 19:55 |
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大阪の場末のマンションの一室で、男が鈍器で殴り殺された。男の遺体はトランクに詰められ、クローゼットの中に。金銭の貸し借りや交友関係上から、容疑者が浮上するも、それぞれに決め手に欠け、単純と思われた事件の捜査は一向に進展しない。コロナ禍で蟄居を決め込んでいた火村に、久しぶりに要請がかかるが、一筋縄にはいかない事件の様相に、火村は「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」と漏らす――。
久しぶりの火村シリーズの長編、それだけで心が躍る。取り立てて奇抜な仕組みや設定があるということのない、正道の本格ミステリで、それが何よりよい。現場となったマンションには監視カメラがあり、出入りは全て記録されている中、その記録によれば容疑者たちは全て圏外になる。どの容疑者も等しく疑わしい状況の中、正攻法の捜査過程がずっと描かれていくのだが、それがよい。結末も、特に色めいた異彩さがあるようなものではないが、正道の本格ミステリを十分に堪能できた。 大雪の家籠り(2/6)を、大いに楽しめた! |
No.879 | 5点 | 作家の人たち- 倉知淳 | 2022/02/06 19:42 |
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同じ幻冬舎から出ている、中山七里の「作家刑事毒島」とかぶるなぁ~…
出版業界、作家志望者を取り巻く諸事情を面白おかしく、毒をもって描いている連作短編集。「作家刑事…」は一応ミステリだったが、こちらはそうとも言い切れない。 倉知淳らしいユーモラスな筆致でまぁ楽しめた。 |
No.878 | 7点 | まだ人を殺していません- 小林由香 | 2022/01/23 22:56 |
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葉月翔子の亡くなった姉の夫・勝矢が、自宅に人の遺体を隠していたことで逮捕された。逮捕された勝矢には10歳になる息子・良世がおり、翔子が引き取って預かることに。世間は「殺人者の息子」と良世を糾弾する。娘を亡くし、子育てに失敗したと自責の念を抱いている翔子に、罪を犯した男の息子を育てられるのか、守っていけるのか。恐れと悩みを抱きながらも、良世と向き合おうとする翔子―
犯罪加害者の息子を預かることになった翔子の不安。感情を表に出そうとしない良世への接し方に戸惑い、悩む。「悪魔の子」との世評に負けまいとしながらも、奇異な行動をとる良世を信じてよいかどうか悩み、葛藤する。異常な環境で育ち、心を閉ざした少年と、その少年の前で苦悩する女性の様相を非常に興味深く描いている。 勝矢は本当に殺人を犯したのか、良世は何かを隠しているのではないか?そうしたミステリ要素も盛り込みつつ、複雑なヒューマンドラマが力強く描かれており、非常に好感の持てる作品だった。 |
No.877 | 7点 | 廃遊園地の殺人- 斜線堂有紀 | 2022/01/23 22:39 |
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廃墟マニアの眞上永太郎は、廃遊園地「イリュジオンランド」の特別開放に招待された。イリュジオンランドは20年前、プレオープンの日に園内で銃乱射事件が起き、4人の死亡者を出してオープンすることなく廃園になった幻の遊園地だった。呼ばれた面々は園の所有者から、園内での「宝探し」を指示される。ところがその中で、次々と参加者が殺されていく…
絵に描いたような設定のクローズドサークルもの。廃遊園地という設定といい、申し分ない。20年前の遊園地設立の裏にある、地元住民と開発企業との確執を下敷きにして、参加者の裏事情が次第に明らかになっていく展開もベタではあるが目が離せない。 非常に良く仕組まれた展開ではあるのだが、それゆえに思わせぶりな記述で投げかけられる伏線がちょっと多くて、全体像がだんだん分からなくなりがちだった。廃遊園地という舞台設定とそれを生かした道具立てで、文句なく王道の本格ミステリとしてかなり楽しむことはできた。 |
No.876 | 5点 | 騒がしい楽園- 中山七里 | 2022/01/23 22:19 |
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幼稚園教諭の神尾舞子は、世田谷にある若葉幼稚園へ転任してきた。転任早々、園児の声に対する騒音苦情や待機児童問題など様々な問題に直面することとなったが、そんな中、幼稚園で飼っている動物たちが次々に殺されるという不穏な事件が起こる。大事になることを心配していたその矢先、舞子が担任していた女児が殺害される事件が起きた―
保育に関わる昨今の世相を映し出しながら、今の幼稚園教諭を取り巻く厳しい環境を描き出す。保護者やマスコミの愚かさをズームアップした描きかたは読んでいてかなりストレスがたまる。ただ、この事件に関しては実際に起こっても、「園」の責任はこんなふうに糾弾されるだろうか…?とも思った。(夜中に園児が殺された事件なので) わりと上に書いたような社会様相を描くことがメインになっている印象で、ミステリとしては、手がかりをもとに推理を組み立てていく線は薄い。いちおう真犯人が最後に明かされるフーダニットではあるが。 |
No.875 | 8点 | ブラックサマーの殺人- M・W・クレイヴン | 2022/01/16 19:27 |
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6年前、三ツ星レストランのカリスマシェフとして名声を誇るジャレド・キートンの娘殺しの罪を暴き、投獄に追い込んだポー部長刑事。ところが殺されたはずの娘が生きて帰ってきた。冤罪を生んだ刑事として、一気に批判の的となったポー。しかしポーは自身の捜査に絶対の自信を持っていた。追われる身となったポーだが、ポーを助けるべく、親友のブラッドショーとフリン警視が立ち上がる。巧妙に仕組まれた、警察を出し抜くキートンの手口とは―?
600ページを超える力作だが、止まることなく進展する展開にどんどん読み進めてしまう。息つく間もなく繰り出される新情報から、「それによってどうなるのか?」という興味が尽きない。上手い。 捜査過程で何気なく出てきたワードが偶然アンテナに引っ掛かり、そこから一足飛びに前進する、という展開は、多少映画的なご都合主義を感じるところもあるが、逆に不要なミスディレクションがないとも言え、長さの割に無駄を感じない。最大の謎である、「生還したキートンの娘が、血液のDNA検査によって間違いなく本人と確かめられた」ことに対するトリックは一般人には推理しようがないレベルではあったが、事件を覆う様相を解き明かしていく過程には無理な飛びはなく、丁寧に描かれている。 本シリーズは今後もチェックしていきたい。 |
No.874 | 6点 | アフター・サイレンス- 本多孝好 | 2022/01/16 19:00 |
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事件被害者やその家族のケアをする警察専門のカウンセラー・唯子。夫を殺された被害者なのに、自身を罰しようとする妻。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。姉を殺された復讐を企図する少年……しかし実は唯子自身が、父が殺人を犯して刑務所に服役している「加害者家族」だった。
犯罪被害者やその家族のカウンセラーという特異な職業を題材とした連作短編。対象者の妙な反応から事件の真相や内情が明らかになるという仕組みは、目新しいものではないがよく練られていて面白い。後半は、唯子が人知れず抱えている、父親が殺人犯という事情に迫っていく内容に少しずつシフトしていくのだが、そこでの唯子の態度はやや頑なに過ぎる感があり、あまり好感はもてなかった。ただ本当の加害者家族の内実は知る由もないので、簡単なことは言えないが…。 |
No.873 | 7点 | ガラスの村- エラリイ・クイーン | 2022/01/04 16:43 |
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数少ない、シリーズ(クイーン親子)外の作品。
時代の変遷についていけず、寂れつつある閉鎖的な地域で、村の誇りとも言える有名な老婦人画家が殺害された。すると、直前に婦人画家の家を訪れていた、怪しいよそ者の男が居たことが分かり、住民たちでとらえられた。地元の判事・ルイス・シンは、すぐにも州警察に知らせ、公正な裁判に掛けるよう申し出るが、住民たちは「自分たちで裁く。この男は町から出さない」と非常識な態度をとる。男が犯人だと決めてかかり、自分たちで死刑を下そうとする住民たちを前に、シン判事は、あえて無効になる裁判を自分たちで行い、そのまま州警察へ引き渡そうと画策する— 巻末の訳者のあとがきによると、当時のクイーンが、マッカーシズムに対する義憤を込めて描いた作品であるらしい。そうした政治事情は分からないが、田舎町の歪んだ団結意識と偏見に凝り固まった住民たちと対峙する理性、という構図の物語はなかなか面白かった。 手作りの法廷で行われる裁判は、終始アリバイ確認の様相で、それが長く続くのは少し退屈ではあったが、被害者が最後に描いていた絵画から真相へと向かっていくくだりはクイーンらしいロジカルな展開で、物語ラストの住民たちの意外な態度も気持ちよく、読後感もよかった。 |
No.872 | 5点 | 帝王死す- エラリイ・クイーン | 2022/01/04 16:23 |
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世界的大富豪である軍事企業の主、キング・ベンディゴに殺害予告が寄せられる。内容を細切れにして送られてくる脅迫状は、最終的に殺害日時を明確に指定したもの。捜査を依頼され呼ばれたクイーン親子だったが、脅迫状の出所を突き止めるのはいかにも簡単で、脅迫者はキングの弟であるジュダと判明。本人もあっさりそれを認め、しかも予告通り殺害を決行するという。そして衆人環視の中起きたのは、壁を隔てた別室で撃った拳銃によって、向かいの部屋のキングが撃たれるという不可能犯罪。犯人は明白(?)、しかし犯行方法は不可能。そんな状況の中、キング兄弟の出身がエラリイに縁深いあの場所だと分かり―
あまりにも奇妙な犯行様態だが、常識的に考えればそれしか方法はないだろう、というのがそのまま真相ではある。犯罪が仕組まれた背景と真の犯人像も、まぁ思い描いていた通りと言える。真相を看破する手がかりは確かに面白かったが、長編に耐えうる仕掛けとは言い難い。 現在の、「起こった犯罪」に対する推理よりも、その背景を読み解くことに多くが割かれるタイプの作品で、しかもそれが大戦時という歴史的背景も重なるため、読む意欲を維持するのがなかなか難しい作品だった。 |
No.871 | 5点 | 罪の余白- 芦沢央 | 2021/12/31 15:38 |
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安藤の娘、加奈が学校で転落死した。自死であることを示すようなものや事実は特になかったことから、事故として一応の帰結を見る。が、実は加奈は、同級生の咲たちから陰湿な嫌がらせを受けており、その「罰ゲーム」の際に誤って転落したのだった。虚脱状態から少しずつ抜け出した安藤は、加奈の「日記」に何か残っているのではないかとその在りかを探し出そうとする。一方、咲たちは真実が明るみに出はしないかと危惧し、彼女らは彼女らで探りに出ようとするのだった―
読み易く、一気に読み進められるのだが、昨今ありがちな設定・内容で新味はなく、肩透かしを食ったよう。この作者のことだから、何か大きな展開やひっくり返しがあるのかと思いきや、いたってフツーの「このテの話」だった。 唯一、安藤の力になる大学の女性助教授のキャラクターと、その変容の物語が伏線として面白かったが。 |
No.870 | 6点 | 蝶々殺人事件- 横溝正史 | 2021/12/31 15:24 |
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表題作は、殺害現場をくらますための手の込んだトリックに加え、「意外な犯人」を演出する描き方もなされており、作者の脂の乗った時期に書かれた力作であることが十分に感じられた。
コントラバスケースという道具立てを生かした、トリック重視の本格であり、動機などはかなり抽象的。だが作中の「殺人事件の場合、いつもその動機を具体的な事実に求めようとすることは、間違っていると思う」という由利麟太郎の言葉が、そのまま正史のスタンスを表しているのではないかと思うし、確かにそんなものかもしれないな、とも思えてくる。 他2編は、怪奇趣味を前面に出した小粒の短編。総じて、隆盛期の横溝正史の魅力が堪能できる一冊だと思われる。 |
No.869 | 6点 | 怪物の木こり- 倉井眉介 | 2021/12/25 22:47 |
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被害者が斧で頭を割られ、脳を持ち去られているという猟奇的殺人事件で、舞台設定の魅力は抜群。サイコパスを題材にしたストーリー展開、「脳チップ」というSF要素も上手くまとめられ、よく練られた一作だった。
真犯人もなかなか意外なうえ、その動機が物語のテーマ(?)と上手く絡められていた。素直に面白かった。 後続作を耳にしないが、ストーリーテーリングの上手い作者だと思った。 |
No.868 | 6点 | 砂に埋もれる犬- 桐野夏生 | 2021/12/25 22:36 |
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男に溺れるネグレクトの毒母から逃れた少年は、コンビニで慈悲を施してくれた夫婦のもとに引き取られることになった。だが、学校にも通えていなかった少年は、人との順序立てた関係作りが分からない。そのいらだちは、仄暗い怒りや欲望に変わっていき、貧困から抜け出せたはずの少年の生活を道に外れたものにしていってしまう―
虐待を物語の端緒としながらも、少年をただ「無垢で無害な被害者」として描いていないところに、物語の深みを感じる。だからといって、それを間違いとして描くのではなく、正解のない人間世界の複雑さ、人の心の在り様の不安定さをただ率直に表現している。 分かりやすい勧善懲悪の物語や、一定の着地点を見出す物語とは一線を画しているのが桐野夏生の魅力であると改めて感じさせる作品。 |
No.867 | 5点 | グロテスク- 桐野夏生 | 2021/12/25 22:24 |
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飛びぬけた美貌を持った妹への嫉妬に囚われ、学歴とキャリアで自分を保とうとする女。美貌だけが自身の存在意義のその妹。それらの俗的な世界を高みから見る才女。才女に憧れ、必死の努力で追いつこうとする女。
それぞれの数奇で悲惨な運命を、手記という形でグロテスクに描く。 良くも悪くも、典型的な筆者の作品。興味深く読み進められるが、結末らしい結末はない。それこそが一番筆者らしいのだが。 |
No.866 | 7点 | 匣の人- 松嶋智左 | 2021/12/12 20:43 |
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生活安全課巡査部長の浦貴衣子は今は交番勤務。そこに一報変わった新人、澤田里志が配属されてきた。人との関わりを避け、仕事と割り切って警官業務をする新人に、課は頭を悩ませていた。そんな新人を受け持つことになり、戸惑う貴衣子だったが、そんな折に連続するひったくり事件、そして技能実習生の殺人事件と、事件が立て続けに起こる―。交番は、住民の“救いの匣"になれるのかー。
作品登録で「警察小説」としたが、本部ではなく交番勤務を舞台にしたものなので、ちょっとイメージは違うかも。しかし、地元住民に密着する実直な勤務の中で、有能な女性警察官が活躍する様、そして変り者の後輩と絆をつくっていく様は読み応えが十分にあって面白かった。 外国人実習生や在住者、徘徊老人、ネットカフェを根城にする女子高生など、さまざまな問題を一つに結びながら仕組まれたストーリーは巧みなうえに、心温まる読後感もあり、かなりの良作であると感じた。 |
No.865 | 5点 | #拡散忌望- 最東対地 | 2021/12/12 20:29 |
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LINEに“ドロリンチョ@MW779”というアカウントからのツイート。それが届いてしばらくすると、顔がみるみる赤く染まり、目・鼻・口からドロドロになったピンク色の内臓が噴出する—。つるんでいた高校の友達の惨劇を目の当たりにした菊池あきなと二ノ宮尚は恐れおののくが、続けて同級生に次々と送られてくる“ドロリンチョ@MW779”からのツイート、悲劇。不可思議な“呪い”は誰からのもの?
相変わらず文達者を気取ったような安っぽい描写ではあるが、ホラーらしいホラーでけっこう面白い。過去に起きた学校でのイジメと、それを覆い隠して過ごす学生たち、という設定ももはやテンプレートの感があるが、スタンダードに忠実という目で見ればそれもよし。 救いようのないラストだが、これもホラーのスタンダードと見れば…まぁ。 |
No.864 | 5点 | メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 | 2021/12/12 20:10 |
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本格ミステリとメタミステリとお遊び的趣向とを行き来しているような、作者らしいシリーズ短編集。
事件の様相を描く段から真相推理までが一足飛びで(まぁそれがメルの天才ぶりを描いているのだが)、「水曜日と金曜日が嫌い」なんかはちょっと安っぽく感じてしまった。 よかったのはラスト2作「天女の五衰」と「メルカトル式操作法」。前者は本格的な短編、後者は一番メルカトル鮎らしい一作。 |
No.863 | 4点 | 母と死体を埋めに行く- 大石圭 | 2021/12/08 21:56 |
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女子高生リラの母親・れい子はとても美しく、授業参観でもいつも褒められる。そんな母親を自慢に思いつつも、服従させられているような違和感も感じているリラだったが、ある日帰宅したれい子から「手伝って」と言われ車に乗せられる。すると車内には見知らぬ男の死体が。リラは驚き拒否するが、結局母に逆らえず、一緒にその死体を山奥に埋める。それが悲劇の始まりになるとも知らずに――。
タイトルに惹かれ読み始め、非日常的な展開とれい子の「毒親」ぶりに圧倒され、一気に読み進められた。が、リラの人生があまりにも簡単に右に左に転回し、仕掛けも「いかにも」過ぎて、B級感を感じてしまう内容だった。 最近角川ホラー文庫をちょくちょく読んでいるのだが、帯の惹句が行き過ぎてないか?(といってもちょくちょく読むのだから結局好きなのだが(笑)) |
No.862 | 5点 | アウトサイダー- スティーヴン・キング | 2021/12/08 21:43 |
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少年が凌辱された上に惨殺された凄惨な事件。容疑者とされたのは、地元でスポーツクラブのコーチをしていて人望の厚い男。数々の物的証拠に、警察は彼を犯人と決めて派手な逮捕劇を披露する。ところがその男には、絶対に間違いのないアリバイがあり、犯行は不可能だった。全く同じ時間に、確実に二つの違う場所にいた男。科学的にはあり得ない現象に、ファインダーズ・キーパー社のホリー・ギブニーが立ち向かう―
全く予備知識なく読み始めたので「ホッジズ」シリーズの続きとは知らず、純粋な不可能犯罪ミステリかと思っていたら…上巻のラストにホリーが出て来て「ああそうだったの」と知り、そして物語は非現実的なホラー(?)へ… シリーズのホリーにまた会えたのは嬉しかったが、上記のとおり「この不可能状況がどう解き明かされるのか?」と勘違いして期待していたこともあって、気持ち的には途中からちょっと冷めてしまった。 (今、自分の過去書評を見ると、キングのこのシリーズは自分はずっと「5」をつけているなぁ。それなのに出ると読んでしまう…ううん) |