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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.348 5点 θは遊んでくれたよ- 森博嗣 2017/01/11 14:22
 こんな時間、こんな場所に、二人だけで立ったとき、相手が自分を殺そうとしてるか、それとも、そんな気持ちはこれっぽっちもないか、それくらい、わかるんじゃないか?
 というラヴちゃんの意見は、あまり論理的ではないが、非常に説得力を感じた。しかし(あくまで仮説とはいえ)事件の真相でほぼその通りのことが行われているんだよなぁ。なにそれ。
 思わせ振りなだけで回収する気のない伏線の存在感が大き過ぎて、相対的に事件の核がしょぼく見える。

No.347 4点 Φは壊れたね- 森博嗣 2017/01/04 11:04
 この密室トリックは意味が無い。室内にもうひとりいるなら、そいつが刺せば良かったじゃないか。犯人は何がしたかったのか、この行為が何故それをしたことになるのか。作者は“人間の内面は読めない”という言い訳に頼り過ぎである。

No.346 6点 月と太陽の盤- 宮内悠介 2017/01/03 11:16
 『盤上の夜』応用編のような、但しSF要素は皆無の連作。表題作で殺人事件を扱ってミステリ度が上がったのにそのあと人情話みたいな2編で幕、と煮え切らない。というか作者のミステリに対するこだわりはあまり感じられず、囲碁の周囲の人の営みを描くのにミステリの枠組みを利用した感じ(悪いことではない)。文章は巧みだし味わいはあるが、同じ作者のSF作品ほど凄くはない。

No.345 7点 潮騒のアニマ- 川瀬七緒 2016/12/27 09:18
 保険契約についての説明に疑問が残る。
 トシゾーのキャラがナイス。やはり動物には勝てないか。
 果歩が自殺者の最後の一人なら、犯人は遺体をそのまま海に捨てればいいのでは?馬鹿正直に洞窟に運ぶ必然的な理由が欲しかった。
 あとラストがバタバタッと進み過ぎで、死者達が惹かれていたカルトなイメージが掘り下げられていないのが残念。

No.344 7点 四季- 森博嗣 2016/12/09 16:01
 厳密を期すなら、原理的に作家は自らより賢い登場人物を創造することは出来ないはずである。しかしだからといって天才キャラは不可、としてしまってはつまらないわけで、真賀田四季の天才っぷりもそういう“設定”ということでまぁ良い。
 ただあまりに突き抜けた設定にし過ぎたせいで、四季を記述する言葉が的確である担保が失われてしまった感がある。例えばイエスと言った場合にそれが同時にノーも意味しておりしかもそれがどちらであっても特に変わりはない、みたいな(作中にも“天才の思考に存在する一般化されていない概念には対応する言葉がないかもしれない”といった台詞がある)。小説を読んでいてこういう感覚になることはなかなか無いことで、それは確かにこのトゥー・マッチなキャラクターの価値として充分なものだと思う。

No.343 7点 裁く眼- 我孫子武丸 2016/11/30 19:24
 問題の絵の“特性”は、個人的には(リアリティの有無は別として)許容範囲内。審議される案件があからさまに現実の事件を下敷きにしているのは不満だが、本作の本筋は裁判の中身ではないわけで、もしや作者は話のポイントが分散しないよう意図的にオリジナリティの無い事件を選んだのだろうか?
 因みに“腐った斧”とは“爛柯”。厳密には囲碁そのものではなく、“囲碁にふけって時を忘れる”の意。どのみちこの漢字は(現在は)名前には使えない。

No.342 6点 カムパネルラ- 山田正紀 2016/11/28 10:57
 呪師霊太郎シリーズでも題材とした宮沢賢治にSF側からアプローチした作品。SF設定の中で殺人が発生、中盤までその謎解きで進むものの、ミステリ的決着が中途半端なままSF的カタストロフで押し流してしまった。こういう結末なら全体のSF度がもっと高くて良いと思う。

No.341 6点 掟上今日子の旅行記- 西尾維新 2016/11/21 12:24
 取材旅行がしたくて立てた企画じゃないのか、と思われることも込みでネタに仕立てたような。切り口やストーリーは面白かったが落とし所はちょっと物足りないかも。

No.340 7点 屍人の時代- 山田正紀 2016/11/21 12:21
 ミステリの形を借りて時間の無常を描いた風情は好き。
 しかし、第二話の“毒ガスの用心のため口だけで息をする”と、第四話の“貨車を燃やして石灰粉を消してしまわないと、農場に搬送できない”の理屈が判らない。苦労して辻褄を合わせたという印象が残る。このひとのミステリは多少破綻しててもアリなんだけど……。

No.339 8点 人ノ町- 詠坂雄二 2016/11/14 11:34
 『女王の百年密室』(森博嗣)や『叫びと祈り』(梓崎優)を想起した。或る種の静謐さに満ちた謎めく物語。実は後半、ネタが割れてしまえばありがちな設定ではあるが、アプローチが上手ければ充分魅力的な世界を構築出来るのだ。外来語を排した文体も乾いた無国籍旅情に的確に寄与している。面白かった。

No.338 7点 カオスコープ- 山田正紀 2016/11/11 11:28
 認識論、存在論、脳地図といった“山田正紀用語”は“確立された個性”か“ネタの使い回し”か微妙なところだが、一応の整合性を維持してミステリに着地しているのは立派。複数の殺人事件が些細な枝葉に思える遠近感の狂ったヴィジョンに呑み込まれる快感。
 でも正直に言えば、冒頭の「大鴉」談義が一番面白かった。

No.337 9点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2016/11/08 10:08
 敢て文句をつけるなら「椛山訪雪図」。その絵のイメージが私の心の中に、浮かび上がっては来なかった。あーそういう設定なんですね、としか思えず、犯人が見間違えたと言われても“架空の薬物の特殊な作用を利用したトリック”を読んだような気分。まぁ私の読み方が下手ってことで。 
 「歯と胴」の最後の行にはクラッと来た。収録順だが、コミカル度の高い「開橋式次第」は最後ではないほうが良い。読み返すときはシャッフルしよう。

No.336 6点 ロシアン・ルーレット- 山田正紀 2016/11/08 09:58
 作者御得意の虚構性を生かしたミステリアスなストーリー集(短編集のような長編)。どのエピソードもやりきれなくて面白い。しかしこれの何処がロシアン・ルーレット?

No.335 6点 火神を盗め- 山田正紀 2016/10/31 10:53
 ところどころにさぁ感動的に盛り上がれと促すような文章があるが、それに乗っかるにはキャラクターの掘り下げが甘い気がした。工藤はなんであんなに強気なの。フツーの会社員があんな風に会社を脅すなんて、フィクションとしてのリアリティに欠ける。かつて過激派だったとかの過去がなくちゃ。

No.334 6点 虹果て村の秘密- 有栖川有栖 2016/10/31 10:51
 有栖川有栖らしい、そしてジュヴナイルらしい、丁寧で好感の持てる作品。綺麗なロジックが披露されている。
 ただ、足跡の件はやむにやまれず発生した状況であるのに対して、喧嘩の件は余計なアリバイ工作を試みてそこから足が付いてしまった形なわけで、“綺麗に解いて見せるために作者が付け加えたネタ”というわざとらしさが否めない。犯人が殺害現場で望遠鏡を(午後9時過ぎに!)覗いた理由にもう少し必然性が欲しかった。

No.333 8点 パノラマ島美談- 西尾維新 2016/10/24 10:15
 文体や世界設定のせいもあってミステリとしては薄味なシリーズだが、本作は5つの謎を用意した物量作戦で満腹感高め。

No.332 5点 虚空の逆マトリクス- 森博嗣 2016/10/18 09:04
 「ゲームの国」のリリおばさんの作品“白雪の屋根やお屋根や軒揺らし”は、“屋根や”という短い回文が重複していわば水増ししているわけで、五七五に整っていることを考慮してもあまりいただけない。例えば“白雪の山に谷間や軒揺らし”等とするほうが美しいと思う。
 越路刑事は“吹雪さん?”なんて既に百万回言われている筈で、“意味が通じません”みたいな反応は不自然。本書の中で一番不自然に感じた。
 「話好きのタクシードライバ」。自動運転車が視野に入ってきた昨今。'02年初出のこの話は真っ先に風化するかも。

No.331 8点 零崎双識の人間試験- 西尾維新 2016/10/11 08:48
 何度読み返しても、最後の“「助太刀するぜ」”で泣いちゃうんですよ。

No.330 5点 挑戦者たち- 法月綸太郎 2016/10/07 10:36
 (誤字だらけ)

 続者への桃戦

 古くからの伝銃に側り、柞者は比処で宜言する。
 継の解朋に心要な毛がかりは概に金て堤示された。
 徒って、腎明なる緒君は綸理的に犯入の正休を脂摘出未るはずだ。
 しばし立ち上まり、老えをまとめてから蟹抉篇を丑解くよう強く頤うものである。
 それでは建闘を折る。

No.329 7点 赤緑黒白- 森博嗣 2016/10/07 10:35
 森博嗣作品に顕著な“良く判らない動機”の中では、本作のそれは比較的説得力を感じる判らなさだと思った。4件目の遠隔殺人などは本来ミステリで使ったら興醒めだが、現在のテクノロジー的には可能だと言う割り切りでアリに出来るのはこの作者ならでは。
 しかし、黒白は名前だけで適当に被害者を選定し人違いもやむなしとする一方、赤は犯人と関係のある人物でそのせいで犯人は最初から警察に注目されている。極論、その段階で尾行が付けば2件目で現行犯逮捕だったわけで、なんだか一貫性に欠ける計画は犯人像と矛盾する。その他諸々、ストーリー展開上の都合で場当たり的に広げた風呂敷をきちんと畳んでいない印象である。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
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