皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.21点 | 書評数: 2040件 |
No.560 | 6点 | 怪物の木こり- 倉井眉介 | 2019/06/17 12:19 |
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第17回このミス大賞受賞作。
漫画ならもっと楽しめたかも。ストーリーは面白いが文章がスカスカ。と感じるのは“小説は深みのある文章で書かれるべき”との固定観念に縛られているせいか。“あくまでも虚構性の強い世界だからこそ成立する物語”との選評には同意するが、それがネガティヴな要素だとは思わない。それはそうと、乾が名刑事には全然見えないのは大問題だ。 |
No.559 | 4点 | 不見の月- 菅浩江 | 2019/06/17 12:17 |
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新人警備員が右往左往する連作集。どの話も“謎とその解明”が軸で、SFミステリという形態をかなり明確に意図しているようだ。しかし、アートにまつわる諸々の心情がやけに説明的に説明されており、どうにも硬い。菅浩江の作品はひととおり読んでいるが、もう少し繊細な筆致じゃなかったかなぁと首を傾げざるを得なかった。 |
No.558 | 5点 | 本と鍵の季節- 米澤穂信 | 2019/05/28 11:25 |
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高校生が推理合戦に興じる状況設定に苦心している印象で、素直に読めたのは最後の“宝探し”くらい。また、私の読み方が浅いのか、二人の資質の差異があまり感じられなかった。
“人気がない図書室”の読み方はどっちだ? (とわざわざ書くのも大人気ないが……) |
No.557 | 6点 | 霧越邸殺人事件- 綾辻行人 | 2019/05/28 11:23 |
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綾辻行人の一連の館ものは、どれも割と(叙述)トリックのコンセプトが明確でしかもそれらが上手く分散している為、個々の存在感が際立ったシリーズになっていると思う。
それに対して本書の要素“ホラー”は物足りない。構成上の必然は判るし、本格との絡め方もこれはこれで上手い。しかし意地悪く言えば“暗号クイズがオマケとして付いている”に過ぎない。単独で読むならともかく、綾辻行人作品リスト中の一冊として見ると“良作だが地味”との印象。 西條八十の自鳴琴は“読者には知り得ない手掛かり”と言うことでS.S.V.D. へのオマージュと言うかジョーク? “ウォークマン”と言う語を解説無しで使っているがいつまで通じるだろうか? |
No.556 | 5点 | 刀と傘 明治京洛推理帖- 伊吹亜門 | 2019/05/22 11:33 |
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第19回本格ミステリ大賞受賞作。
舞台は明治維新前後の激動期。人々の行動原理も命の軽重も現代とは異なる時代設定を上手く謎に絡めている。ネタの見せ方を心得ている人だと思う。手堅い文章力で歴史小説としての読み応えも、多分あるのだろう。 しかしそこが却って、ぶっ飛んだ部分の無さ、と言うことで私の嗜好とは食い違う原因にもなってしまった。 |
No.555 | 5点 | 泡坂妻夫引退公演- 泡坂妻夫 | 2019/05/20 10:35 |
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私は泡坂妻夫の現代ミステリのみ愛しているので、否応なしに氏の全ジャンルを縦断して読まされるこの本は有難迷惑なのである。ファンらしからぬことを言うなら"コスト・パフォーマンスの悪い本”。
ミステリ度低めな短編が多く話そのものにはあまり乗れなかった分、泡坂妻夫の文章の心地良さを再確認は出来たけれど、だからと言って今まで避けて来た時代物や職人物の本に手を伸ばそうと言う気にはならなかった。幾つかの現代ミステリの中では、『煙の殺意』あたりに収録されてもおかしくない「荼吉尼天」が収穫か。 |
No.554 | 5点 | 赤い館の秘密- A・A・ミルン | 2019/05/07 11:28 |
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好感の持てる筆致でテンポ良く進む、のだが何だか薄味でいまひとつ乗り切れなかった。しかし真相には膝を打った。館の部屋の配置はしっかりイメージして読むべきだったか……。 |
No.553 | 7点 | 指し手の顔- 首藤瓜於 | 2019/05/07 11:27 |
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もっと情報を整理して上手く刈り込む余地はあった気がする。しかし一方、ごちゃごちゃしたジャンク的な要素があってこそ作品世界の猥雑な空気感がこれだけ立ち上がるのだとも思う。まぁ読み易い文章なので、この長さもギリギリOKか。鈴木一郎って(表面上は)出来過ぎで意外と使いづらいキャラクターなのかも。 |
No.552 | 6点 | 大聖堂の殺人 ~The Books~- 周木律 | 2019/05/01 12:51 |
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何故この人達は殺される危険性を承知の上で従容と成り行きに従うのか? の答として、登場人物(百合子も含む)の “狂信” がそれなりに感じられて良かった。
しかし、ネタバレするが、トリックは不充分だ。温度が上下すれば水も影響を受けるわけで、大量の水蒸気が発生し体積の膨張により建物が壊れる? 注水口が凍りつく? といった問題が生じる筈だがそれについて言及されていない。 |
No.551 | 6点 | 鏡面堂の殺人~Theory of Relativity~- 周木律 | 2019/05/01 12:50 |
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森博嗣の某作と某作と某作を混ぜたようなトリックで、驚きつつもがっかり。一方で、館モノは展開がパターン化しがち、という点を差し引けば、シリーズ初期に比べると小説の書き方がなかなか上達したように思う。登場人物の行動原理が矢鱈と形而上的で共感しづらい点は、慣れると面白くなってきた。 |
No.550 | 3点 | 秘密機関- アガサ・クリスティー | 2019/05/01 12:49 |
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作品としてのポテンシャルが低いので本気で読むとアラが目立ってしまうような。トミーとタペンスは若気の至り全開で意外に軽佻浮薄なキャラクター。場当たり的に感じられるストーリー展開がメタ的に面白くはあった。 |
No.549 | 7点 | 余物語- 西尾維新 | 2019/04/23 13:56 |
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怪異アリの世界観に於けるそれなりにロジカルなミステリ2編。『少女不十分』にも通じる結構ヘヴィなネタを、しかし本格ホラーの文法ではなく軽妙なキャラクター小説にまとめている(勿体無い?)。斧乃木ちゃんの罵倒も3割増。チラチラ見えるだけの食飼命日子というキャラの使い方は、じらしプレイ? |
No.548 | 6点 | 刑事の墓場- 首藤瓜於 | 2019/04/19 11:34 |
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正統的警察小説はあまり肌に合わないが、こういう“落ちこぼれ系”は割とアリだ。
気になった点。CGによる写実的過ぎる似顔絵は、本来大雑把な人間の映像記憶に対して逆にイメージを限定してしまうので、犯罪捜査には有効ではない――という話も読んだことがあるのだが……? |
No.547 | 8点 | 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 | 2019/04/16 11:54 |
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正直、『屍人荘の殺人』は単発の打ち上げ花火だと思っていた。変な話を思い付いた人が偶然それなりの筆力も有していたという印象で、一作品としては面白かったものの、それが次回作の品質や作家としての存在意義を保証するとまでは評価出来なかったのだ。その点、作者に謝らなくては。超常現象アリの世界観によるロジックは見事。文章が無難、ではあるが、そういう部分で引っ張る読ませ方は意図していないのだろう。
ヒルコという名をついエビスと読んでしまうのが困ったところ。 |
No.546 | 3点 | 人形はなぜ殺される- 高木彬光 | 2019/04/09 13:15 |
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何か変だ。
ネタバレしつつ書くが、人形を使ったアリバイ工作をする必要なんてあったのか? アリバイ工作とは、その人を殺せば自分が疑われる前提で、でもアリバイがあるから無理ですよ、というものだろう。第一幕に於いて、この犯人はほとんど表舞台に出ていないのだから、そのポジションを維持したほうが得策なのに、わざわざ事件の渦中にしゃしゃり出て関係者リストに名を連ねる心情は如何に。 しかもその行為、最悪の場合は列車を転覆させるから犯人も命懸けだ。割に合うのか? そういう不自然さを補えるほどのドラマ性も無く、上手く肉付けし損ねた骨をそっと出された気分。 |
No.545 | 8点 | 脳男- 首藤瓜於 | 2019/04/03 11:38 |
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これは面白いキャラクター小説だ。難しそうなテーマを現代医学の視点でもっともらしく血肉化することに成功していると思う。医師も警部もちょっと鈍いんじゃないのと感じたところはあるが、読者に解説をする方便としてそういう会話は必要なのだろう。
どうしても宣伝文句では鈴木一郎の特性が売りになってしまうから、ネタバレの上で読む羽目になるのが痛し痒し。それだけならまだしも、ストーリー後半過ぎの事柄まで粗筋で明かすのはあんまりだ。 |
No.544 | 4点 | RPGスクール- 早坂吝 | 2019/04/02 11:25 |
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こういう軽めの作風でも上手下手というのは確かにあって、本書はあまり流れが頭に入って来なかった。それともRPGをやったことがないので反応すべきネタを素通りしちゃったのだろうか。とはいえ結末でいきなりミステリ化して繰り出されるロジックは悪くない。あのひとが殺されるのは結構意外な展開だから粗筋でバラさないほうがいいなぁ。ところで制服のまま空中浮遊させたら下から丸見えですよん。 |
No.543 | 7点 | ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 | 2019/04/01 11:07 |
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「妄想日記」。アレが結局ダミーだなんてがっかり。期待してたのにぃ。
「人喰いの滝」。随分と手間暇のかかりそうなトリック。何故死体を滝に喰わせなかったのか。行方不明扱いで済みそうな気がするけど。 国の名を冠した短編がひとつしか収められていないのに本そのものを〈国名シリーズ〉と銘打つのは誇大広告では? そもそも、どんなモノであれどこかの国で生まれてはいるわけで、タイトルの共通性だけでそう呼ぶのは恣意的というか、かなり実体の無いシリーズだと思う。特別に描写が克明だと言うことでもないし。 |
No.542 | 5点 | 千年図書館- 北山猛邦 | 2019/03/28 12:54 |
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“全てはラストで覆る”と予告されると意識的にも無意識的にもそういう読み方をしてしまうから、どんでん返しはもはやどんでん返しではなくなってしまうのである。ラストへ読み急がせるその手の謳い文句はそもそも如何なものかと思うのだが、のみならず本書に収録された作品群が必ずしもそのように結末に向けて収斂して行くタイプのものだとは思えない。表題作や「終末硝子」の世界設定、「今夜の月はしましま模様?」のキャラクター等、非常に魅力的で、読み終えたくない、少しでも長くその場に留まりたいと願ってしまった。かねがね各出版社にはそうやって結末を強調するような売り方は控えるよう要請しているのだが……。
最後の話のラスト、いまひとつ筋が通っていないと私も思います。 |
No.541 | 7点 | 毒よりもなお- 森晶麿 | 2019/03/26 12:20 |
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首絞めヒロのキャラクター設定も良いが、何よりも、語り手が周囲の心情を顧みず手前勝手に詮索して何の反省もしない様子について、傍迷惑な奴だな~と思いつつ共感出来ないまま読み進められる痛い書きっぷりが見事。
で、八合目までは文句無しだったのだが……結末で示される“意外な設定”は要らなかったんじゃないか。期待通りの形でしっかり締めれば充分なのに蛇足を付けちゃった感じ。 パクりだという意味ではないが、Y氏の某作と設定に共通点があり、雰囲気としても似通った印象を受けた。 |