皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.21点 | 書評数: 2040件 |
No.580 | 5点 | 君待秋ラは透きとおる- 詠坂雄二 | 2019/08/14 12:54 |
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SF。特殊能力者を束ねる組織があれやこれや。
超常現象の理屈付け方とか、細かなガジェットは悪くないが、全体としては凡作。前半ののほほんとしたムードと緊迫する後半とどちらも中途半端だし、何よりキャラが立っていない。秋ラと言う命名は徒に読みづらい。 この作者には、もっと読者に対して挑戦的なものを書いて欲しいなぁ。 |
No.579 | 7点 | 誘拐作戦- 都筑道夫 | 2019/08/14 12:51 |
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九歩目まではトリッキーな展開と文体を楽しめたのだが、最後の一歩で明かされる真相がどうもいけない。
以下ネタバレ気味:犯人Xの目的の為には多少の人手が必要だが、犯人Yの目的についてはそうでもない。手を組んでこんな芝居じみた計画を企む必然性が、犯人Yにとっては乏しいように思う。せいぜい“相手方が計画に気を取られて油断する”と言ったファジィで心理的なメリットしか見当たらない。それならそれでいいので、作中でそういうことを明言して欲しい。 |
No.578 | 6点 | 日本庭園の秘密- エラリイ・クイーン | 2019/08/14 12:49 |
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作者は何故わざわざ婚約者の名前をリチャードにしたのか。おかげで警視は一度もフルネームで呼ばれていない。ありふれた名だから偶然重複するのもリアリティだとか考えたのだろうか。いや待て、そもそもEQシリーズ全体の設定として、リチャード・クイーンと言うのは仮名だっけ? |
No.577 | 5点 | 不老虫- 石持浅海 | 2019/07/31 11:46 |
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せっかくのアイデアを上手く広げられなかった感じで勿体無い。“不老虫”という特質がストーリーにあまり絡んで来ない。日本に密輸されたのが単なる危険生物でも概ね同じような話になりそう。 |
No.576 | 8点 | 宿借りの星- 酉島伝法 | 2019/07/31 11:44 |
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日本語を1度融解して固め直しましたという趣の文体はなかなか読みにくく牛の歩みの如き読み方を余儀なくされたが、それが逆に功を奏して拒絶反応を抑えつつゆっくり茹で上げられる蛙よろしく頭が作品世界に侵食される羽目になり、最終的に四つの眼や尻尾を持つずぶずぶぴぎゃくぱぁといった感じの生き物に感情移入して落涙するに至った経験は怪挙と呼んで差し支えないだろう。 |
No.575 | 7点 | 46番目の密室- 有栖川有栖 | 2019/07/30 11:55 |
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揚げ足取り。
煙突の中の暗号は、出鱈目を書いておいても(いや、何も書かなくとも)犯行に於いて問題は無い。それなのにわざわざちゃんとした暗号を作って使っている。作中で突っ込んで“ミステリ好きの矜持です”とか言わせればいいのに。 火村が小さな声で歌ったザ・ローリング・ストーンズ「Paint It, Black」。実は作中の表記に該当する適切なフレーズは存在しない。 |
No.574 | 5点 | もういちどベートーヴェン- 中山七里 | 2019/07/30 11:54 |
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シリーズ読者なら先刻承知な岬洋介の情報を殊更秘密めかして書く意義はあるのか。刑事事件についても表層的だし、推理の根拠は乏しいし、秘匿したい事情を持つものが日常的にサインを示すのは矛盾している。なんだか色々中途半端だ。寧ろ新聞記事にあった死体遺棄事件が興味深い。 |
No.573 | 8点 | Ank: a mirroring ape- 佐藤究 | 2019/07/26 11:37 |
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前半・何が起きているのか?:9割方見えている正解に向かって、残り1割の疑問だけを餌に読み進め、と言う感じで少々苛々。情報開示の手順にもっとやりようがあったのでは。
後半・どう収束するのか?:期待したほど主題が広がらず。話の3分の2を過ぎてから偶然、有力な人物が絡んでくるのも御都合主義的だ。ところで、障害のある人は暴徒化しないように思うが、その点については殆ど触れていないね。 総体としてのネタ/ストーリー/キャラクターは充分面白いが、それらをベストの形で展開し切れてはいないと思う。藤田和日郎の某漫画を髣髴させるのはまぁ偶然かな。 |
No.572 | 7点 | 刑事のはらわた- 首藤瓜於 | 2019/07/26 11:33 |
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警察小説の皮をかぶった新本格? 登場人物の気持の推移が緻密な描写ではなく、どんよりした一時期を経ていつの間にか変な方を向いている、と言うのが却ってリアル。サンドイッチのエピソードもその空気感を効果的に表現している。『刑事の墓場』と同系統だと誤認されそうなタイトルはそれ自体がミスディレクション? 変なものを書こうと言う志を買いたい。 |
No.571 | 6点 | 星空の16進数- 逸木裕 | 2019/07/23 11:21 |
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作中の“色彩”に関する繊細な美意識は、与太話とまでは言わないが、文学表現によるデフォルメがあってこそ成立する或る種架空のものであって、興味深いものの限界が見える。一方、共感出来ない登場人物の一人称で描き切った力技には、読んでいて居心地の悪さを感じたが、それはそれでアリだと評価したい。最終的に明かされる諸々にはスッキリしない部分もあり、“2010年代の探偵業事情”みたいな要素が一番面白かった。 |
No.570 | 8点 | DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件- 西尾維新 | 2019/07/23 11:20 |
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『DEATH NOTE』は熟読したので、名前を見ればキャラクターの顔が浮かぶ。そんなファンの性質を逆手に取って一本取られた。
原典には“2年前にLの下で働いたことがある”と言う南空ナオミの台詞があるので、それがつまりコレなのだろう。人がポコポコ死ぬ『DEATH NOTE』の中でも、南空ナオミの死は理不尽かつ無念の最たるもので、多大な傷痕を読者(私)に残したものだが、その彼女に再登板の機会を用意するとは粋な真似をしてくれる。 |
No.569 | 7点 | 指名手配作家- 藤崎翔 | 2019/07/16 16:09 |
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のっけからあからさまなB級臭に、それならそのつもりで行こうと思ったら、確かに安っぽいのだが存外にその要素は有効に働いていた。禍福は糾える縄の如しと言うが、善悪とか清濁とかをごっちゃにした展開には、なんじゃそりゃと突っ込みつつ楽しく読めた。設定上必然的に主人公には好感を持てないけれど、不覚にも幾度か涙したちょろい私。 |
No.568 | 7点 | 大幽霊烏賊 名探偵 面鏡真澄- 首藤瓜於 | 2019/07/16 16:08 |
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最初の数章を読んだ時点で否応無しに想起させられるのは『ドグラ・マグラ』。衒学趣味は嫌いじゃないし、伏線回収など期待してはいなかったが、あっけなく不時着して四散したのは残念。作者は物分かりが良過ぎだ。ここまで飛び上がったのだから、狂人の論理を駆使して、もう少し踏ん張って欲しかった。 |
No.567 | 8点 | 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 | 2019/07/16 16:07 |
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ネタを重ね合わせてレッド・ヘリングにする今回のトリックはかなり好み。みごとに騙され歓喜の白旗を掲げた。ただ、軽い文章なりにもう少しプラス・アルファが欲しいかも。もっと多くの子供達が現地にいる筈だが、その雰囲気が感じられない。いちいちモブに名前を付けて必要以上に読者を混乱させない親心、ってことでいいのかね。 |
No.566 | 8点 | ヒト夜の永い夢- 柴田勝家 | 2019/07/09 10:49 |
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『ドグラ・マグラ』を筆頭に先行する同系統(?)類似(?)作品は幾つも思い付くが、全然負けていない。内容が似ていると言う意味にあらず。博覧強記で広げる風呂敷は縦横無尽。さりとてきちんと着地を目指すでもなく、夢と現の間で右往左往するは奇天烈なエログロナンセンス。脱線した部分の方が楽しそうな筆致であることもこの手の奇書の共通点だ。 |
No.565 | 6点 | リラと戦禍の風- 上田早夕里 | 2019/07/09 10:47 |
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文章の力強さで読まされてしまうが、戦争を題材にすると或る程度はこうなるという定番みたいな部分もあって、ファンタジーを混ぜた割には地に足の着いた話に終始しており、力作であるがゆえの息苦しさが少々感じられた。後半で時間が2年飛んじゃうのは如何なものか。 |
No.564 | 8点 | 夫の骨- 矢樹純 | 2019/07/09 10:44 |
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短編集としての欠点は、作風が一貫し過ぎていること。“家族”が主題。事件を探偵が解くのではなく、情報を制限し“読者に対して”謎を演出する形式。手堅く普遍的な文体や人物設定(“嫌な感じ”の匙加減が絶妙)……ゆえに非一気読み推奨、一話ずつばらして賞味するが吉。
収録作品はどれもレヴェルが高くて正直びっくりした。一編選ぶなら「柔らかな背」(人殺しの場面が愉快)。 因みにかなり毛色は違うが漫画原作者としての仕事もなかなか面白い。 |
No.563 | 5点 | 中野のお父さんは謎を解くか- 北村薫 | 2019/06/24 11:01 |
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三択クイズの出来があまり良くない事が、凄く気になった。
“『広辞苑』に載っている” は定義が曖昧。“夢野久作” の項を見ると『ドグラ・マグラ』に言及しているので、広義で “載っている” と言えなくもないのでは。厳密に “見出し語として採用されている” とすべき。 “存在しないものはどれでしょう” は悪魔の証明であって、存在を自分が知らない、探しても見付からない、からと言って “存在しない” とは限らない。海賊版があるかもしれないし。翻訳の存在を確実に否定出来る立場の人っているのだろうか? |
No.562 | 6点 | こうして誰もいなくなった- 有栖川有栖 | 2019/06/24 10:58 |
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文章が良いので読まされてしまうが、それほど決定的な短編は見当たらない。
結局、表題作が最も面白いが、作者がこういう形の本歌取りを試みた意図はいまひとつ判らなかった。それと犯人が何か変な行動をしているが、少々アンフェアでは。何故そこで被害者を制止する? 何故せっかくの好機にさっさと殺さずお喋りしている? |
No.561 | 5点 | 事故係 生稲昇太の多感- 首藤瓜於 | 2019/06/24 10:56 |
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なにせ『脳男』の作者だからどんな大技を見せてくれるかと期待したら、そういうドカ~ンとした部分の全然無い地味な警察小説。何より主人公に殆ど共感出来なかったのは痛い。
第四章に挿み込まれたレッカー業者のエピソードは良かった。 |