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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.388 7点 ドローン探偵と世界の終わりの館- 早坂吝 2017/09/01 09:26
 種明かしの1ページ前で叙述トリックに気付いてしまった。他には、彼等はみな何かの病気で一定時間ごとに薬(=アレ)を飲まないと命に関わる、なんて案もあったが……余計なことには気付かないほうがより驚けたんじゃないかと思うとちょっと残念。ところでこの真相だと、零が“壺を振り下ろして”ドローンを破壊しようとするのは苦しいのでは。

No.387 4点 罪の声- 塩田武士 2017/08/31 07:17
 31年前の未解決事件を新聞社と俊也が同じタイミングで調べ始める、という偶然はアリか?今になってここまで辿れた線を、当時何故警察は逃したのか?
 実在の事件をネタにしたという以上のプラス・アルファはあまり感じられず、“出落ち”のような印象。この作品自体が広義での“便乗商品”であって、作中のマスコミ・社会批判はそのまま自身に返って来るのである。あまり私の好みではなかった。

No.386 8点 ここから先は何もない- 山田正紀 2017/08/29 09:10
 予備知識無しで粗筋も知らずに読んだので(これが良かった)、ミステリのリアリティの枠内に留まって説明を付けるのか、SFの領域に踏み込むのか、ラスト直前まで判らずページを繰る手が止まらなかった。ここまで話を大きくするかと驚くやら呆れるやら。『謀殺のチェス・ゲーム』と『神狩り』をいいとこ取りして混ぜたよう。作者あとがきによれば『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン)への不満を解消する為に書いたとの由。

No.385 6点 密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク- 三雲岳斗 2017/08/21 11:22
 第一次世界大戦後の日本軍部と防諜機関の揉め事アレコレをラノベ的マナーに上手く落とし込んだ冒険活劇。意外な展開と言う程ではないし、キャラもさほど立ってはいないし、それなりの筆力を有するひとがそのつもりで書けばこのくらいのものは出来るだろうという気はする。ただ、どこがどうと言うわけではないが、なにがしかのプラス・アルファが含まれているような好感を持ったことは認める。

No.384 6点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2017/08/09 10:19
 ネタバレ大いにアリで書くけれども。
 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。
 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。
 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 

No.383 6点 鏡の殺意- 山田正紀 2017/08/02 10:52
 事態の進展に伴い足許から世界が崩れて行って、しかし再構築はされず、真相らしきものが一応明らかになったあとも摑みどころの無い場所にポツンと残されていることに気付く……というのはミステリ系に限らず山田正紀作品によく見られる構造。ストーリーが直線的で細かな目配りに欠けるし、“真実の確定”が中心ではないし、厳しく見るなら、曖昧な“雰囲気”を核に据えた舌先三寸とも言える。しかし再読したところ以前よりも面白く感じたのは、私がミステリに求めるものが変わってきたからか。

No.382 3点 レタス・フライ- 森博嗣 2017/07/31 10:28
 殆ど内容が無いような話を文章の個性だけでどこまで引っ張れるか実験した、が概ね失敗した、という感じ。辛うじて「砂の街」は面白いが、この本に収録してしまうと、基本的に同類である他の短編に埋もれて、その良さが際立たない気がする。

No.381 6点 τになるまで待って- 森博嗣 2017/07/27 11:56
 ドアの溶接をセメントでカモフラージュした、と言うのは誰に対するカモフラージュなのか?密室状況を作った理由が時間稼ぎならトリックがあとで露見しても問題は無いわけで、そんな作業をしている時間こそが勿体無いのでは。
 トリックは肩透かしだしストーリーもたいしたこと無い。しかしどこがどうと言うわけではないが、この時期の森博嗣作品としては比較的面白く感じるほうの一冊。

No.380 8点 忍物語- 西尾維新 2017/07/24 10:15
 まだ続く〈物語〉シリーズ。女子高生が吸血鬼に襲われて木乃伊になる事件を追うのだが、謎のメッセージやミッシング・リンクといったミステリ風展開。ミステリとしてはごく古典的なネタも基盤がファンタジーの論理なのでそれなりに上手くリサイクル出来ている。本筋とは関係ない会話劇の方が面白いのはまぁいつものことだ。

No.379 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2017/07/20 15:32
 額縁部分の妙にダークな雰囲気があまり有効に機能していないせいで、せっかくの叙述トリックも味わいが損なわれている。この“作者の苦悩”は作品の一部として昇華され切っていないように思う。

No.378 5点 ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 2017/07/18 10:58
 これは有栖川有栖作品である、というどうしようもなく多大な先入観のもとで読むせいだが、シリーズ・キャラクターがいないだけでこうも会話から軽妙さが失われるものか。

No.377 6点 フォークロアの鍵- 川瀬七緒 2017/07/18 10:57
 この作者は、フェアプレイの謎解きと言うよりは、集めた様々なネタを開示して読者を引っ張るタイプであって、その前提で読めば認知症と口頭伝承を組み合わせた本作も相応に楽しめる。事象のつながりは多少強引だが許容範囲内。
 但し、人物造形をストーリーに都合良く合わせ過ぎ。地の文での心理描写過多が興を削ぐ。作者の狙いをわざとらしく感じさせない文章力がもっと欲しい。

No.376 5点 ヴィラ・マグノリアの殺人- 若竹七海 2017/07/03 11:34
 こういうスタイルのミステリもあるということは知っているし巧みな筆致ではあるけれど、行く先の判っている道を辿り直しているような感覚が否めず、物凄く面白かったとは言い難い。登場人物多過ぎ。死体の顔をつぶすという行為は結構ハードルが高いと思うので、心情的なフォローが欲しい。

No.375 4点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2017/06/16 12:35
 中盤、二つ目の死体の死因が実は……とか、被害者の目論見とか、面白味を感じる部分もあったが、全体としてはそれほどでもない。
 ポアロが、冷酷で邪悪な性格は親子で遺伝する、みたいなこと言ってるのは嫌だな~。

No.374 8点 幻想運河- 有栖川有栖 2017/06/16 12:33
 法的にどうあれ、私はドラッグを試したいとは思わないな~。ところで、詩人が自殺するエピソードはなんなの?

No.373 5点 上海殺人人形 - 獅子宮敏彦 2017/06/13 12:08
 馬鹿馬鹿しいトリックを大時代的な冒険活劇仕立てで有効に。という意図が前面に出過ぎちゃって大味な出来。面白いネタも多々あって悪くは無いが、もう少し筆力が欲しい。
 と言いつつ、そのぎこちなさによる嘘っぽい雰囲気がそれなりにプラスに働いている気もする。紙芝居には紙芝居の良さがあるんだ、みたいな。(ところで初版、誤植が多い!)

No.372 6点 悪魔のいる天国- 星新一 2017/06/01 13:51
 ショート・ショート作家は半ば必然的に作品数が多くなるわけで、その全部が名作とはやはり行かない。一編ずつ単独で読めばそれぞれ面白くてもこうしてまとまると玉石混交に見えるのは星新一に限った話ではない。
 私の場合、本書では「ゆきとどいた生活」がベスト。或る種の叙述トリック?
 一方で、誰かの掌の上で完結するタイプの話(おかしな何かがあるが、それは某がとある目的で作ったニセモノであった、とか)は物足りない。ネタは良くても結末が説明的だと気分が殺がれて勿体無い。あと、最後のセンテンスが三点リーダーで曖昧に終わるものもあまり好きでは……。

No.371 7点 掟上今日子の裏表紙- 西尾維新 2017/05/30 08:42
 実は真相の核だけ取り上げれば世界シリーズで使ったネタの焼き直し。勿論諸々の細部はきちんと詰めてあるし、今日子さんのキャラクターを生かした設定で面白く読める。何を書くかではなく如何に書くかが大事。
 ではあるけれど、割と強気な純度の高いミステリとして始まった忘却探偵シリーズが、巻を重ねるに従いネタの見せ方のヴァリエーション重視にシフトしているのは正直不満。そっち系は美少年シリーズに任せて、こっちはもっとミステリ度強く真ん中にドン!と行ってくれないかな~。つまり“ミステリを読んだ!”という満腹感が希薄なのである。

No.370 6点 星読島に星は流れた- 久住四季 2017/05/25 12:07
 設定が工夫されていて、事件が起こるまでの前半部分もそれなりに楽しめた。語り手が無色透明で、彼の過去の出来事が取って付けたようなエピソードに感じられた。アレを運ぶのは女性には体力的に無理、とかソレにそのひとがひとりで気付けたとは思えない、というのは根拠薄弱だと思う。
 孤島モノはそもそもこういうものだ、と割り切って、既視感があるとかパターン通りとかは極力考慮せずに読もうと思った。

No.369 8点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 2017/05/24 14:45
 自爆覚悟のデビュー作って感じだ。とはいえ読み返してみると、記憶に残っている印象よりは随分スッキリしたミステリ。初読時よりロシア云々の知識が多少増えていたので結末は納得し易かった、か?
 『隻眼の少女』はいわば本作のオルタナティヴ版なんですね。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1848件
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