皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.20点 | 書評数: 2075件 |
No.835 | 7点 | 恐怖の研究- エラリイ・クイーン | 2020/11/18 11:04 |
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ホームズは殆ど偶然で犯人に辿り着いているように思える。もしかして、あの人がホームズを誘導した、と言う操りテーマなのか?
“EQが描くホームズ”との前提で読むと、私は斯様にあちこちから批評性を勝手に読み取ってしまう。“容疑者が四人”なんて言うから、すわホームズが消去法推理を? と期待してしまったぜ。 |
No.834 | 7点 | ホック氏の異郷の冒険- 加納一朗 | 2020/11/18 11:03 |
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冒険活劇としては、複数の敵役それぞれの絡み方が中途半端に思えて、少々物足りない。しかし明治期東京の活写と、端役に至るまで血の通った人物造形の巧みさに引き込まれた。
若干時代がかった語り口も語彙が増えて誠に重畳。①烏鷺を戦わす②靉靆として③肯綮にあたる――意味判る? それにしても、このサミュエル・ホック氏なる人物は一体何者なのだろうか。判りそうで判らないもどかしさに、頬がムズムズする。 |
No.833 | 3点 | 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 | 2020/11/11 11:00 |
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何か変だ。
そもそも被害者が身許不明なら犯人は疑われない。しかし一応アリバイ工作をしておく。するとアリバイ工作のせいで(大豆と麦)被害者の身許が割れた。 恣意的に要約すればそういう話だ。非常に不自然な犯行計画だ。余計なことしなければ良かったんじゃない? 動機が怨恨なので、“死体に穀物を添える” とか “路線図でヤマタノオロチを描く” とかはその恨みの象徴であり犯人はどうしてもそれをやりたかった、みたいな雰囲気だが、そんなことはどこにも書かれていない。これは重要なことなので “文脈から読み取れ” では通らない。ことミステリの場合、きちんと記述してあることが重要(な事柄もある)と私は思う。 死体のばら撒きは身の安全の為の手段だった筈が、いつのまにか目的みたいになっていないか。 犯人にたった一言 “それをやりたかったんです” と言わせてくれれば、強引にでも納得したのになぁ。 |
No.832 | 6点 | タイムマシンのつくり方- 広瀬正 | 2020/11/05 11:46 |
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「つくり方」との表題は伊達ではない(そういう題の短編があるわけじゃないんだよ)。これだけタイムマシンものに傾注した作家がいた、と言う事実が怖い。
と言いつつ特に印象的だったのは、異界訪問譚(?)「化石の街」。頭の体操(?)「記憶消失薬」。サイコ・スリラー(?)「鷹の子」。 こういった品の良い文体のSFショート・ショートはどうしても星新一を連想してしまって、それは彼の存在感を思えば仕方ないけど不公平だな~。 |
No.831 | 8点 | 嘘でもいいから殺人事件- 島田荘司 | 2020/11/05 11:42 |
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あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。 |
No.830 | 5点 | シャーロック・ホームズの冒険- アーサー・コナン・ドイル | 2020/11/05 11:41 |
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収録作品のうち、有名作は、面白い、のだろうが、知名度と引き換えに其処彼処でネタバレしているわけで、私が、今、改めて読み返して、その面白さを享受出来るかと言うと難しい。
有名でない作品は、それぞれに有名にならなかった理由があるのだなぁと言う感じ。概ね的確に淘汰されていると思った。それはつまり、隠れた逸品を見出すことは叶わなかった、と言うことだ。 |
No.829 | 5点 | 空想クラブ- 逸木裕 | 2020/11/03 11:46 |
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どうも駿クンは、“自分がこうしたい”ってことばかりで、他者にもそれぞれ気持や事情があると言うことを判っていないようだ。それが判らないのが青春かもしれないしストーリーの原動力になってはいるしギリギリセーフだけど、あまり好感の持てる主人公ではない。まぁ思い返せば逸木裕の作品はそんなのばかりで今更文句を言うのも変か。今回は特に合わなかったってことで。
“駿が郷原に弟のことを密告した”とレナが疑う論理が良く判らなかった。“警察に”ならともかく。 |
No.828 | 7点 | 未来からの脱出- 小林泰三 | 2020/11/03 11:42 |
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枠組みとしてはSFだが、なかなかミステリ味も濃い一冊。嫌がらせのように使われるロジック、記憶の錯綜による混乱、グロテスクな変形と、正直いつものネタが満載ではある。ただそもそもが特殊な作風だから、それをマンネリズムだと批判するのは違う気がする。寧ろ作者はこのスタイルをどこまでも研ぎ澄ます職人の道を極めようとしているのだな。 |
No.827 | 5点 | 三角形の第四辺- エラリイ・クイーン | 2020/11/03 11:38 |
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物語中盤の構成要素を思い返すと、もっと展開を楽しめそうな気がするが、何故か凡作。最後のどんでん返しは不要じゃないかなぁ。恋人を探す意外な手掛かりは面白いんだから、そこで止めておいたほうが良かったのでは。どっちにせよ凡作だけど。
ところで、271ページの食品の名称は多分、ニッシュ → クニッシュ(knish、例外的に k も発音する)、トーチラ → トルティーヤ(tortilla)、ですね(修正されてる?)。 |
No.826 | 7点 | 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 | 2020/11/03 11:34 |
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母親はあれっぽっちの追加情報で事件の裏事情をどのように推察したのか。関係者を直接知っているが故の思い込みが、たまたま正解だった、って感じ。
結末で吉敷が殺意の理由について語るが、“感情のもつれのケースAは納得出来ないがケースBなら判る”と言う言説は説得力に欠ける。 |
No.825 | 5点 | 山伏地蔵坊の放浪- 有栖川有栖 | 2020/10/30 17:19 |
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良くない意味で、普通。
「ローカル線とシンデレラ」……終電(午後九時台)に乗っていた車掌が翌朝八時に勤務している。凄いハード・ワークに思えるけどアリ? 「崖の教祖」……まともな教団かインチキか、はっきりしないところが味噌、と私などは思う。 「毒の晩餐会」……“多過ぎた”と言うのはどのような状態なのか。味見したわけでもなかろうに。そしてジョッキ。その状況では、たとえ洗ってあっても私なら怖くて呑めない。 「割れたガラス窓」……作中では触れられていないが、ガラスの破片が落ちた位置にズレがあり手掛かりになる筈。 |
No.824 | 8点 | ナイルに死す- アガサ・クリスティー | 2020/10/30 17:13 |
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犯人がこういうポジションで、自分の疑われ易さを踏まえた上で、非常に能動的に騙しに来る、と言った感じの似た印象の作品は過去作に幾つかあって、“また?” との思いが否めなかった。中近東が舞台だからどう、ってことは特に無かった。とは言え良く出来ていて、代表作という評価に異議は無い。
作家のオッターボーン夫人がイチ推しキャラ。“血文字のJ” は、犯行に於いて全く必然性が無いし、犯人の稚気を表すにも中途半端だし、不要だったのでは。 |
No.823 | 8点 | 扇物語- 西尾維新 | 2020/10/30 17:10 |
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“謝罪”に関する考察の物語。これは面白かった、物語ではなくて考察のほうが。“このシリーズまだダラダラ続くんだ”とか思ってごめんなさい。このトリックはアニメ化出来ないね(それを敢えて狙ったんじゃないかと邪推します)。
“夜這い”と言う単語の使い方に違和感。そこまでDV的なニュアンスを含む語ではないと思うのだが……? |
No.822 | 8点 | 第八の日- エラリイ・クイーン | 2020/10/30 17:02 |
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不可解な宗教の話は好きだなぁ。ミステリの宿命で悲しい展開なのが悲しい。共同体の裏側にもっと驚きの真実が隠されていて欲しかったけど、それは望み過ぎか。
EQが多用した“偽の手掛かり”ネタの作品としては説得力が強く、著作リストの中での存在意義も高い一冊だと思う。 |
No.821 | 5点 | 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル | 2020/10/30 17:00 |
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事件にこれと言ったポイントが見出せず、冒頭の薬物依存エピソードのほうが強く印象に残ったりして。最終章で語られる過去の因縁を、『緋色の研究』方式で時間を遡っての三人称記述にすべきだった、と強く思う。 |
No.820 | 7点 | マイナス・ゼロ- 広瀬正 | 2020/10/27 15:15 |
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戦前戦後の東京をノスタルジックに活写して読者に疑似体験させる逸品。ではあるのだが、同作者の他の長編と雰囲気やネタが重複する為に、若干の“またか”と言う思いも否めず。
タイム・パラドックスの着地点は不条理なもので、前半の作風を考えると意表を突かれた。ニクシャン、シャリコケ、アプレゲール。死語萌えってコレか! |
No.819 | 7点 | 宇宙の眼- フィリップ・K・ディック | 2020/10/27 14:58 |
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これは素直に楽しめた。強引に譬えれば、西澤保彦の特殊設定に小林泰三のスラップスティックな狂気を乗っけたようなもの。神林長平に通じるような難解さは未だ無い。自分は不可解な宗教の話が好きだなぁと改めて実感。
この基本設定だと結末の方向が限られてしまうのが難点か。ちょっとした仄めかしもあって、一種のリドル・ストーリーになってはいるけれど。 |
No.818 | 6点 | もの言えぬ証人- アガサ・クリスティー | 2020/10/27 14:53 |
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ボブがなんともチャーミング。“彼” と訳されているが原文も “ he ” なのだろうか。とはいえ犬が “変な音をたてて失礼。しかしこれが僕の仕事なんだよ” とか話すわけないのであって、それはみなヘイスティングズおいちゃんの脳内変換であって、ならば真にチャーミングなのはこっちか。依頼者の “何も言ってない手紙” も可笑しい。 |
No.817 | 7点 | 盤面の敵- エラリイ・クイーン | 2020/10/27 14:51 |
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EQは、“フェア・プレイのパズラー”を規定するだけでなく、それをこじらせるところまで自ら体現した点が素敵だ。
本作はその精神性が上手く形になっているような気がする。もっとも本邦の新本格勢のほうが、数々の前例を踏まえて臨めた分、この手の捻り方に関しては一枚上手。相対的に少々物足りないか。 舞台となるヨーク・スクエアが描写不足でイメージしづらい(あまりそれが必要な話でもないけど)。事件が続けば手掛かりが増えるとばかりに、捜査陣が手を束ねて第二第三の犯行を待っていたように見える。作品前半ではアレがファースト・ネームに思えるような書き方を意図しているのだから、登場人物表は無神経だ。思わせぶりなカードについて、犯人側の内的必然が充分存在した点は、『最後の一撃』での反省が生きている(のか?)。 代作? まぁそもそも、その人がその小説を書いた、と完全に証明するのは不可能だしね……。 |
No.816 | 5点 | 刺青白書- 樋口有介 | 2020/10/27 14:49 |
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事件に自ら関わって行く鈴女の行動は、関係者に波風を立てるだけの迷惑な自己満足になりかねないものだったと思う。好奇心と呼ぶにも足りない根拠不明の衝動でそういう動きを取る彼女は、非常に思慮の足りない、どうも信頼しきれない視点人物だな~と思いつつ読んだところ、結局何の伏線にもなっていなかった。鈴女の過去が事件の遠因でそれが行動の理由だった、みたいなのを期待したんだけど。
メタ的な視点で見て、鈴女は最後まで作品世界の中で浮いたままだ。それが作者の意図……ってわけじゃないだろうなぁ。 |