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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1701件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.701 4点 英国庭園の謎- 有栖川有栖 2020/03/27 14:04
 「竜胆紅一の疑惑」以外はどれもいただけない。基本は私の好きな有栖川ブシなんだけど、大切な部分が妙に奥の方に引っ込んでいて、そのせいで物語でなく雑学ばかりが目立つ印象。

No.700 7点 Iの悲劇- 米澤穂信 2020/03/24 11:26
 悪辣なユーモア小説としては好編。

No.699 7点 掟上今日子の設計図- 西尾維新 2020/03/20 12:12
 ふわっとしたコアを小ネタの配置とキャラクターで上手に膨らませる、いつもの作風は、爆破予告と言う題材に合わなかったかも。イメージ的に現場はもっと大騒ぎなのに、そのザワザワした感じがあまり無いような。今日子さんと犯人にフォーカスを絞った結果、必要以上にゲーム的な印象になってしまったと思う。犯人の動きは好みなんだけど。
 邪推すると、作者は美少年シリーズ完結に当たって、視覚障害について色々と考える機会があったのかもしれない。眉美ちゃんを健気に描き過ぎたとの反省があり、この話はその副産物なのかもしれない。

No.698 4点 分かれ道ノストラダムス- 深緑野分 2020/03/20 12:07
 主人公=視点人物があまりにも浅薄。もっとぶっ飛んだキャラクターなら視点人物ごと俯瞰して読めるんだけど、この子の場合ベースの部分は判りつつ要所要所で“何故?”と思うその“共感出来なさ”が絶妙にイヤ。もしやその不快感によってこそ何か新しい地平に至れるかとイライラしつつも頑張ったが、そこまでのものではなかった。

No.697 8点 密室殺人ゲーム王手飛車取り- 歌野晶午 2020/03/20 12:06
 江戸川乱歩「赤い部屋」を読んだ時はちょっとがっかりした。赤い部屋と言う“場”はあまりフィーチュアされておらず、新入会員が長々と喋るだけ。あの設定なら、百物語よろしく交互に各自の体験を披露し合って、丁々発止の殺人談義に興じるほうが絶対に面白いと思うのだ。
 それがこれ。
 偶然の類似、ではない。作者は元ネタを示すためにわざわざ刻印を残している。ラストが何故あんななのか判らない方、是非「赤い部屋」御一読を。

 物語に組み込むとトリックの為のトリックになってしまうトリックも、こうすれば使えるんだと感心しきり。「生首に聞いてみる?」の“花瓶と生首”は素晴らしい。『なめくじに聞いてみろ』(都筑道夫)→『生首に聞いてみろ』(法月綸太郎)→「生首に聞いてみる?」伝言ゲームみたい。
 しかし、全編通して会話の言葉遣いが醜悪で閉口した。

No.696 5点 グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/03/13 12:03
 なんとも大胆な伏線だ。
 “そりゃ、出て行ったんでしょうね、いま、あそこにいないとすれば”
 ロジックとしても正しい。そこでもっと追求していれば死ななかったのに。
 つまり、犯人は良く考えれば気付ける穴に目をつぶって犯行を強行した、捜査陣は誰もその矛盾に気付かなかった、と。まぁ、“手掛かりが無い”と言う手掛かりは悪魔の証明だから止むを得ないのか。

 と言うか――ネタを踏まえて読み返すと、本作は、リスクを承知の上で、分の悪い勝負(殺人に成功するほど容疑者が限られてしまうから)に人生を懸ける、妄執の物語なのである。心情的には犯人の味方になってしまうのである。おいおいそんな証言したら却って怪しまれるって。知ったかぶり野郎の引っ掛けに乗っちゃ駄目だぁぁぁ!

No.695 8点 間宵の母- 歌野晶午 2020/03/06 10:45
 いやぁびっくりした。思い返せば同じ作者の旧作に似たような構造のものがあるけれど、見せ方によってちゃんと違った読み味に仕上がっているので、私はその点肯定的だ。Dの使い方があまりにオールマイティに過ぎるか? まぁあくまで補助的な小道具だからね……。

No.694 5点 八つ墓村- 横溝正史 2020/03/06 10:43
 冒頭で語られる過去の因縁は凄まじい。いきなり頂点。
 ところが、そのイメージで読み進めてしまうと、はぐらかされた感じ。刀を振りかざした殺人鬼がバッサバッサと斬りまくる話じゃないの? 出番最初だけ?
 現在の殺人の場面は淡白でインパクトが弱い。また、語り手が無味無臭で、何故(警察に止められてはいたが)さっさと村から逃げ出さないのか疑問だったし、財産が魅力だと告白されても、この人そういうキャラクターだっけ? と首を捻らずにはいられなかった。秘密のある離れをわざわざ彼にあてがう理由は? 単なる展開上の都合だよね。 鍾乳洞の場面はスリリングで良い。

No.693 7点 女王はかえらない- 降田天 2020/03/06 10:41
 トリックは見当が付くけれど、それを上手く使いこなせている、と言う意味で楽しめた。群像劇のキャラクターの書き分けや、諸々の状況変化の描き方も堂に入ったものだ。なまじリーダビリティが高いせいで軽めの作品に見てしまうのは不公平かなぁと自戒。
 タイトルを使った駄洒落は蛇足。ちょっと余韻が殺がれた。

No.692 7点 ダークナンバー- 長沢樹 2020/03/06 10:39
 “こんな危険で大がかりなことをする価値があるのか”――本命を隠す為にダミーの事件を幾つも起こしたのではないか、との意見に対し作中ではこう疑問が呈される。常々私も、このパターンの場合それが重要な問題だと思っているのだが、本作ではそれに対する解答がきちんと設定されており膝を打った。
 その他諸々も上手く出来ていて、なかなか読ませる力作。転機となった手掛かり(シェルターの場所)が少々わざとらしいのは残念。

No.691 8点 神狩り2 リッパー- 山田正紀 2020/03/02 10:34
 作者は、神によって着せられた濡れ衣を晴らすべく、既存の言葉で形容しようのないものを何とか表す為にこれほどの言葉を費やした。しかしまだそれは、並べられた言葉の向こう、語られたエピソードの向こう、脳が認識する五感の向こうにしかない。本を閉じてやっと物語が始まる。今も私は、世界の境界部がぱらりと捲れてメタ的な外部が顔を覗かせる不安に苛まれている。

No.690 7点 アリス・ザ・ワンダーキラー- 早坂吝 2020/03/02 10:30
 面白かった。
 イチャモンを付けるなら、アリスの二次創作は食傷気味、と言うこと。原典を有機的に謎に結び付ける手腕は認めるに吝かでないが、あと一歩だけ乗り切れない気分が残った。しかし、このパズル世界をすんなり許容出来たのは元ネタを作者と読者が共有しているおかげであって、そこは良し悪しだと考えるべきか。

No.689 7点 ゲームの王国- 小川哲 2020/02/29 11:25
 アジアを舞台にしたこういう感じの話はあまり読んだことがないので新鮮だった。どの程度虚実が入り混じっているのか知識が無いので判断出来ず。
 媚びていないのに読み易い文章で、神経衰弱のようにばら撒かれたそれぞれのパーツがまず面白い。更に、大きな物語としてどっちに向かっているのか、どこまで読んでもさっぱり摑めないところが素晴らしい。登場人物の関係性がごちゃごちゃしていてそれなりの障壁だけど、頑張る甲斐はあった。

No.688 7点 ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 2020/02/25 10:55
 藤木稟も麒麟。

 “エラリー・クイーンのひそみに倣った国名シリーズ”と紹介されるが、可笑しなダイイング・メッセージが繰り返し登場する点にこそ“EQの後継者だなぁ”と私は頬が緩む。「屋根裏の散歩者」のラストには良い意味で唖然。しかし江戸川乱歩作品の概要をあんなに明かす必要は無かろうに。

 ところで、ロシア紅茶ってジャムと砂糖、両方入れる?

No.687 5点 シタフォードの秘密- アガサ・クリスティー 2020/02/25 10:54
 冒頭の降霊会は魅力的な謎だが、作中では殆どフィーチュアされていないので、もしやシレッと“本物の心霊現象”として片付けるのか、と心配(期待?)してしまった。
 まぁ冷静に見れば犯人が最も怪しい行動を取っている。しかし心情の描写に少々アンフェアな記述があるような。だから見破れなかったのだ、と強弁はしないけど。
 トリックは良いし、動機の設定も上手い。高評価出来ないのは、中盤の地道な調査行が退屈だから。それにその成果のうち犯人究明に直接役立った手掛かりって最後のアレだけ……?

No.686 5点 大江戸ミッション・インポッシブル 幽霊船を奪え- 山田正紀 2020/02/25 10:53
 前巻の順当な続きであって、それ以上の物凄いものでは、まぁない。どくろ大名のキャラクターはナイス。時代物ならではのトリックには苦笑。少し端折って1冊にまとめた方がスピード感も出て良かったのでは。ビジネスのことは言うな!

No.685 6点 カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/02/20 13:45
 なにしろ有名な“アンフェアな手掛かり”のネタバレ作品であるからして、答え合わせ程度のつもりで読み始めたが、それだけでは解釈しきれない矛盾が色々あるし、警察は無能だし、かなりやきもきさせられ予想以上に楽しめた。
 ところで、当時は四階建て程度の規模のアパートメントで専属の“電話交換手”と言う職業が成立したんだ? いつの世もテクノロジーは職を奪うね……。

No.684 7点 流氷民族- 山田正紀 2020/02/20 13:43
 SFサスペンス、なんだけど思い返してみるとSF要素つまり亜人類に関する魅力的な設定は殆どが又聞き情報。美少女が写真と同一人物だときっちり確認されたわけではないし、眠る人々もスケールの大きなカルト集団に見えなくもない。あり得ない場面が読者の前に直接提示されることはなかったので、全てが壮大な勘違いとの解釈もアリ?
 それはそうと、終盤の船上の場面はカタルシスに満ちていた。峰くん見直したぜ。その後のミステリ的解説が結構ぐだぐだなのには参ったけどね。

No.683 5点 二度のお別れ- 黒川博行 2020/02/15 12:19
 あまり好みのタイプではない。が、その割に面白く読めた。が、真相は“やっぱりそうか”である。
 逃げ切った犯人がしかし全然幸せになっていない、と言う部分をサラッと流していて勿体無い。そこはもっとじっくり読みたかった。構成上難しいか。

No.682 7点 悪魔の手毬唄- 横溝正史 2020/02/15 12:18
 文章が良い。美文名文ではないが、読者を作品に踏み込んで行く気持にさせる力がある。刀自が手毬唄を聴かせる場面はゾクゾクした。歌詞自体はプロローグで既に提示されているのに改めてそんな気分になるのは凄いことだ。
 真相解明によって全てがピタリと嵌った感じは正直あまり無いが、本作に於いてはさほどマイナス要素ではない。
 登場人物が多くて混乱するので、フルネームでの表記をもっと多くして欲しかった。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1701件
採点の多い作家(TOP10)
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アガサ・クリスティー(64)
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森博嗣(48)
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