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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1226 4点 プラチナデータ- 東野圭吾 2010/10/16 20:37
登録されたDNAデータによって殺人捜査が容易になった近未来を舞台にしたサスペンス小説。
主人公である男性研究員の特異な病症など、扱われているネタがいずれも陳腐で、中盤以降のあまり意味のないような逃亡劇も単なる水増しのためのエピソードとしか思えなかった。
人気作家ゆえのやっつけ仕事という感じを受けました。

No.1225 5点 怪盗ゴダールの冒険- フレデリック・アーヴィング・アンダースン 2010/10/16 20:23
「百発百中のゴダール」ほか、怪盗ゴダールシリーズ6編収録の連作短編集。
アンソロジーで1編を読んで興味がわいたシリーズですが、1914年刊ということもあって、新訳のわりに状況が分かりずらい描写があり、とっつきにくい感じがする。ただ、第1話から順に並べて読むと、ゴダールの存在が語り手の作家アーミストンの想像上の人物ともとれるメタ構成になっているところは面白い。

No.1224 7点 粘膜蜥蜴- 飴村行 2010/10/15 18:35
エログロ・ホラーという評判もあって若干及び腰ぎみに読み始めましたが、滅法面白いジャンルミックス小説でした。
たしかに、地下の死体処理場のシーンとか退いてしまう描写もありますが、主人公の大病院の御曹司・雪麻呂少年の比類ないエゴ、爬虫人・富蔵のとぼけた造形、東南アジア某国での秘境冒険譚など思わず引き込まれ、リーダビリティは抜群。鬼畜系のエピソードが博愛の物語になってしまうというエンディングも予想外でした。

No.1223 6点 氷の天使- キャロル・オコンネル 2010/10/15 18:03
NY市警のクールな女刑事マロリーシリーズの第1作。
だいぶ前に竹書房というマイナーな版元から文庫で出た「マロリーの神託」の改題・新訳版。「クリスマスに少女は還る」の評判がよくて、急遽再販されたのでしょう。
元ストリート・キッドが養父母に引き取られ、刑事である養父同様に刑事(探偵)になるという経緯は、ニール・ケアリーの女性版という感じですが、クールでストイックな美貌の天才ハッカーという造形はニールとだいぶ異なります。
正直、本筋の事件の真相はあまり憶えていないが、マロリーと彼女を見守る周辺の人々との交情(特に養父の旧友3人組がいい味)が読み心地のいい物語にしています。

No.1222 7点 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 2010/10/14 18:27
因習が支配する人里離れた寒村を舞台に、村の現人神の後継者候補である娘たちが次々と首切り死体となっていく連続殺人事件に、隻眼の少女探偵が対峙するというフーダニット・ミステリ、という横溝正史(最近では三津田信三)ワールドの構図自体をミスディレクションにしてしまった異端の本格編。
次々と繰り出される犯人特定のロジックや、二転三転する真相などオーソドックスなパズラーとしてもそこそこ面白い。事件の構図がひっくり返る最後の仕掛けには驚いたが、腹話術と影武者には唐突な感じも受けました。

No.1221 5点 快盗タナーは眠らない- ローレンス・ブロック 2010/10/14 18:02
主人公は頭部に銃弾を受け眠りを必要としなくなった語学の天才という設定、スカダーや泥棒バーニィよりも10年以上前に書かれた初期シリーズの第1作です。
巻き込まれ型のスパイ冒険小説で、舞台のヨーロッパ各地をめまぐるしく変転させながら、テンポよく読ませます。これ1作だけでは判断が難しいですが、後の作品群と比べると、しゃれた会話や文章にブロックらしさが見られなかったのは残念。

No.1220 7点 恋の通し矢 人形佐七捕物帳- 横溝正史 2010/10/11 22:35
神田お玉が池の岡っ引き・人形佐七捕物帳、14編収録。
本書は傑作選で、佐七ファミリーの面々がそれぞれ初登場する作品を時系列を追って収録しており、入門書に最適です。
以前読んだ角川文庫の自選傑作集3冊からは、探偵小説作家が書いた捕物帳らしくトリッキィな作品が多い印象を受けましたが、本書はキャラ立ちの人情ものも多く含まれていました。
二人の子分・辰五郎と豆六の漫才風のやり取りが楽しい「双葉将棋」や、プロットが錯綜した力作でパズラーながら伝奇風味もある「ほおずき大尽」が印象に残りました。

No.1219 7点 天使と罪の街- マイクル・コナリー 2010/10/11 22:16
ハリー・ボッシュシリーズの10作目は、まず発端から驚かす。
「わが心臓の痛み」の元FBI心理分析官マッケレイブの死、「ザ・ポエット」の連続殺人鬼”詩人”の再登場という、過去のノンシリーズ2編の登場人物を全てボッシュの世界に合流させる荒業をやっています。
本筋は「ザ・ポエット」の続編という感じで、サスペンス重視のため、本格パズラーの側面がやや弱いかなと思いますが、それでも読者の予想を裏切る終盤の展開は健在で、やはりコナリーに凡作なし。

No.1218 6点 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 2010/10/10 16:21
富豪で社長令嬢の女刑事と執事のコンビを探偵役にした連作ミステリ。
短編でも持ち味のシュールなギャグは健在で、令嬢刑事に対して毎回ていねいな言葉で暴言を吐きながら、結局最後に真相を披露する毒舌執事がいい味を出しています。
ミステリ的には、各編とも伏線と気付きのオーソドックスなフーダニットで、最終話は、「Yの悲劇」のマンドリンのロジックを借用したような推理でニヤリとさせてくれます。

No.1217 5点 探偵は絹のトランクスをはく- ピーター・ラヴゼイ 2010/10/10 16:02
ヴィクトリア朝ミステリ、クリッブ巡査部長シリーズの2作目。
前作の競歩もどきに続き、今回は賭博対象の素手の拳闘競技という当時の風俗を取り入れて、首なし死体事件に取り組みます。
クリッブとサッカレイ巡査のやり取りも適度なユーモアがあり面白いのですが、並行して描かれる若い巡査の潜入捜査の模様が楽しめた。本格度は高くないけれど、さりげない伏線が光るまずまずの作品だと思います。

No.1216 6点 闇の喇叭- 有栖川有栖 2010/10/09 18:37
戦後に北海道が独立し現在でも徴兵制度が継続している”もう一つの日本”を舞台にした青春ミステリ。
私的探偵行為が禁じられた世界で、隠れキリシタンの如く田舎で隠棲する探偵父娘がシリーズの主人公となる。本作は娘の高校生が級友とともに殺人事件に対峙する本格ミステリの側面が強いですが、余韻の残るラストといい青春ミステリとしても良く出来ていると思います。
版元があんなことになってしまいましたが、ミステリーYA!で出す必要もない作風なので、続けて第2弾を出してほしいものです。

No.1215 7点 森を抜ける道- コリン・デクスター 2010/10/09 18:16
モース主任警部シリーズもややマンネリぎみか、と思っていた時期に出た中期の佳作。
女性失踪の謎が事件の中心なのは初期作を思わせますが、新聞社への事件を暗示するような詩の投稿を発端に、モースの推理のころがしではなく、複数の読者が紙上で謎に挑戦するというプロットが捻っていて面白い。
最後の、”名探偵の役割”に関する仕掛けには、作者の会心の笑みが目に浮かぶようです。

No.1214 6点 キッド・ピストルズの醜態- 山口雅也 2010/10/08 17:54
パラレル英国を舞台にしたパンク刑事コンビ連作シリーズの第6弾。中編3作収録。
シリーズの「慢心」や復帰作「最低の帰還」の出来がいまいちだったので、不安と期待半々で読みましたが、「だらしない男の密室」と「革服の男が多過ぎる」がパズラーの水準を軽くクリアしていて楽しめました。
前向性健忘症や多重人格症などの、ミステリ的に便利な使い古された病症ネタを使いながら、予想外の捻りが施されている点はさすがと思わせます。

No.1213 4点 二巻の殺人- エリザベス・デイリー 2010/10/08 17:31
古書研究家の素人探偵ヘンリー・ガーマジが登場するシリーズ第3作。
発端の、100年前の伝説と同じようにバイロン詩集第2巻を持つ女性の出現という”つかみ”の謎の部分が、物語に有機的に活かされていないので拍子抜けの感がありました。
この時期のポケミス共通の、訳文が古いというハンデもありますが、探偵役を始めとして登場人物の描き分けも不十分で、退屈な読書になってしまいました。
第1作の「予期せぬ夜」は小粒ながら面白かった憶えがあるので、やはり翻訳技術のせいでしょう。シリーズは1940年代に16冊も書かれているようなので、新訳が出れば手を出すと思います。

No.1212 6点 バカミスの世界 史上空前のミステリガイド- 事典・ガイド 2010/10/07 18:35
「このミス」の人気コーナー?からスピン・オフしたような企画本。
思いついても誰も書こうとしない”おバカ”なアイデアや珍トリックを使った古今東西のミステリガイドで、その歴史から始まり、北村薫×若竹七海の対談、折原一の分析評論、山口雅也のインタビュー、さらにはバカミス・ベスト100のレビューと盛りだくさん。あのマルツバーグや霞流一のバカミス短編も収録されていますが、これはイマイチ。
バカミスにも2タイプあって、もとからおバカを狙っているもの(たぶん、霞流一、鯨統一郎ら)と、作者はまじめに書いているのにトリックがおバカ(たぶん、ディクスン・カー、島田荘司ら)という折原一の分析は肯ける。
しかし、意外と既読本が多いのには驚いた。知らず知らずのうちに、この世界に嵌っていたようだ。

No.1211 7点 サイモンは誰か?- パトリシア・モイーズ 2010/10/07 18:11
ヘンリー・ティベット主任警視シリーズの第14作目。
これは著者久々の出来のいいパズラーだと思いました。遺産相続人である甥と名乗り出た二人の男性の真贋を巡る謎とやがて発生する殺人、というありがちなプロットですが、ひとひねりした真相が面白い。
妻のエミーの果たした役割を考えると、このシリーズは警察ものではなく、コンビ探偵ものであることが再認識できます。

No.1210 7点 冒険小説の時代- 評論・エッセイ 2010/10/06 18:59
「本の雑誌」の目黒孝二氏が北上次郎名義で出した冒険小説の初の書評集。
書かれたのが80年代の初頭、国内の冒険小説界の黎明期であるだけに、当初は、西村寿行など若干ジャンル的に違和感のある作家が含まれるが、志水辰夫、船戸与一らが出てきて俄然熱気を帯びた書評になっています。冒険小説に対する捉え方が作者自身不安定であるところを隠さず、徐々に”活劇小説”に収斂していく過程など興味深く読めました。

No.1209 7点 闇に浮かぶ絵- ロバート・ゴダード 2010/10/06 18:39
19世紀の英国を舞台にした准男爵家の家督相続を巡る歴史ミステリ。
人物関係が幾重にも交錯していますが、「千尋の闇」ほど重層的で複雑なプロットではない分、物語世界にどっぷりとはまることが出来ました。
失踪していた長男らしき男の出現と、その真贋を中心の謎として、ロマンスと陰謀が万華鏡のように物語を彩っています。
ゴシック・ミステリの王道を往く騙り部ゴダードの傑作だと思います。

No.1208 5点 課外授業- 評論・エッセイ 2010/10/05 18:09
副題に「ミステリにおける男と女の研究」とある通り、海外ミステリの”ミステリ以外の部分”を取り上げた評論(エッセイ)集。
このミステリのトリックが凄いとか、プロットが独創的だという話は一切なし。だから、「課外授業」なのだろうけれど、ごく普通のミステリ読みである身には食い足りない。
「小説『スカイジャック』における離婚の研究」あるいは「小説『ながい眠り』における職業の研究」と掲げられてもねえ。メジャーな作品をあまり題材に挙げていないのも興味が湧かなかった理由かもしれません。

No.1207 6点 ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女- スティーグ・ラーソン 2010/10/05 17:42
”世界的ベストセラー”の惹句を掲げた小説を読んで満足できた憶えがないので、ハードルを下げて挑んだのがよかった。なんとか最後まで読み通すことができました。
ジャーナリスト出身作家らしく、スウェーデン社会の暗部も描かれていて興味深いが、この物語にはその大部分が不要のような気がする。大実業家一族の隠された過去とか、密室状況下の島からの人間消失というミステリ部分だけで充分。色々な要素を詰め込みすぎで、徒に長大になっているように思った。
女性主人公の造形も劇画チックなありがちスーパーヒロインで、感情移入はむずかしい。第2部以降は、彼女を中心に物語が構築されているようで、読まなくてもおおよそ内容が察せられます。

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kanamoriさん
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