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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1275 7点 最高の悪運- ドナルド・E・ウェストレイク 2010/11/21 20:10
不運な泥棒ドートマンダー、シリーズ第9作はオールキャストのお祭り騒ぎで爆笑を誘います。
大邸宅の主人に奪われた記念の指輪を奪還するため、仲間を集めて何度も忍び込むのですが、肝心の指輪ではなく、仲間が次々と邸宅の金品を手に入れていきます。回を重ねる毎に仲間がどんどん増えていく様が繰り返しギャグ風で無性に面白い。
準レギュラーが揃う構成はひょとして「悪党パーカー/殺戮の月」のパロデイかもしれません。

No.1274 5点 新・新本格もどき- 霧舎巧 2010/11/20 18:54
パスティーシュ連作短編集の第2弾。今回は新本格第二世代の作家・作品をもどいています。
最初の数作は、いきなり前作を踏まえたシチュエーション、人物設定になっていて若干不親切な創り。前作の状況を憶えてないと判りずらい。
最後のオチが綺麗に決まった「すべてがXになる」と、ノックスの十戒を悉く破っていく趣向の「覆面作家は二人もいらない」が印象に残りましたが、パロデイとしての出来は前作よりだいぶ落ちる感じがしました。

No.1273 6点 漂う殺人鬼- ピーター・ラヴゼイ 2010/11/20 18:35
ダイヤモンド警視シリーズの8作目は、シリアルキラーもの。
海水浴場で殺された女性の職業が判明し、残された手記が出て来るところから一気に面白くなる。ミッシング・リングの真相は目新しいものとは言えないけれど、現代風にアレンジされていて、ミステリとしては上出来でしょう。
意外だったのは、前作のステラの事件の翳が控えめなこと。そのかわり、ヘン・マリン主任警部という後にスピンオフし主役を務めることになる強烈女性キャラが出てきますが。

No.1272 4点 最後の証人- 柚月裕子 2010/11/19 18:08
法廷ミステリ。
タイトルから、クリスティや小泉喜美子の有名作品を連想せざるをえないこともありますが、小説技巧があまり上手でないため仕掛けが早々に判ってしまいました。それだけがこの小説の読みどころではありませんが、登場人物がいずれも類型的に思えて、二時間ドラマの脚本を読むようでした。どうも、「このミス大賞」出身作家の作品とはどれも相性が良くないようです。

No.1271 6点 探偵の帰郷- スティーヴン・グリーンリーフ 2010/11/19 17:39
遺産である農場の処分のため、兄弟が住むアイオワ州の故郷に30年ぶりに帰ってきたジョン・タナー。
私立探偵タナーのハードボイルドは、プロット重視でロスマクの亜流という評価がついてまわるようですが、4作目の本書は自前の作品という感じがします。
文字どおり「探偵の帰郷もの」テーマらしく、甥の殺害事件を柱にしながら、自身の過去、肉親との関係などタナーの揺れ動く心情を絡めた内省的ハードボイルドで完成度は高いと思います。

No.1270 5点 災園- 三津田信三 2010/11/18 18:09
こども視点のホラーミステリ、<家>シリーズの3作目。
引っ越し先の家で過去に纏わる怪異に遭遇するというのがシリーズのパターンですが、今回は同じ施設で生活する少年少女のちびっこ探偵団的様相もあり、どちらかというとミステリ寄りの作品でした。
序盤で語られる主人公の6歳の女の子が持つ特殊能力が、物語上活かされていないのは拍子抜けの感。

No.1269 8点 縞模様の霊柩車- ロス・マクドナルド 2010/11/17 18:08
”家庭の悲劇”をテーマにしているのは同じですが、円熟期の傑作といわれる3作の中では、徒に複雑な人間関係を設定していないぶん、本書のプロットが一番すっきりしているように思います。強引なドンデン狙いのトリックがないのも好印象。ただ、若者たちが乗りまわす霊柩車のエピソードを挿入した意味と、それをタイトルにした理由がいまいち判らないのですが。
メキシコの地を効果的に使っているのは、マーガレット・ミラーの作品を連想せます。メキシコの教会でのラストシーンは作者の作品の中でも印象に残る名場面でしょう。

No.1268 4点 新世界崩壊- 倉阪鬼一郎 2010/11/16 18:00
バカミス。「この館の正体は何でしょう?」シリーズの第3弾。
さすがに、同じような趣向を続けられるとインパクトは落ちますね。泡坂風の活字のお遊びも、作者の労力の割に面白味に欠けるのは前作同様でした。
ニューヨークからロンドンへの瞬間移動のメタな仕掛けが、小森健太朗のあれに匹敵するおバカさで、これは笑撃的でした。

No.1267 5点 燃える接吻- ミッキー・スピレイン 2010/11/15 18:23
私立探偵マイク・ハマー登場の第6作。
初っ端から、女性に対するサディスティックな拷問シーンで幕が開き、例によって暴力と銃声にあふれ、最後はやはり「裁くのは俺だ!」になっています。シリーズ第一期の集大成というか、過去の作品で読んだようなシーンが続くのは気のせい?
本書の後、しばらくハマーは姿を消すが、10年後に帰ってきた彼はまるで別人。そういう意味では、本書がタフガイ探偵の最後の雄姿かもしれません。

No.1266 5点 砂漠の悪魔- 近藤史恵 2010/11/14 22:02
ちょっとした悪意から友人を自殺に追い込んでしまった日本人大学生の流浪の旅。中国の西の果て・ウイグル自治区へ行きつくまでのロード・ノベルであるとともに、主人公・広太の心の旅でもある。
海外の僻地を舞台にした少数民族が絡む小説といえば、胡桃沢耕史や船戸与一の冒険小説が思い浮かびますが、前者のような冒険ロマンの味わいはなく、後者ほど過激なノワールが前面に出てこない。主人公の心情の変転を丁寧に描写する作者らしい作品ですが、広太たちが終盤に遭遇する”タクラマカン砂漠の悪魔”の扱いについては賛否が分かれそう。

No.1265 7点 イマベルへの愛- チェスター・ハイムズ 2010/11/13 17:26
ハーレム(黒人街)の黒人刑事コンビ、墓掘りジョーンズ&棺桶エドが登場するシリーズ第1弾。
主人公は葬儀屋に務めるお人好しで真面目なクリスチャンの黒人青年ジャクソン。詐欺師3人組に騙され、内妻イマベルの裏切りに気付かず、愚直にイマベルへの愛のためハーレム中を霊柩車で暴走する。猥雑な黒人街のリアルな日常描写とともに、修道女に変装し小銭を稼ぐジャクソンの双子の兄、罪を告解するジャクソンに対し警察へ行けと逃げる牧師などの脇役キャラも立っています。とくに、死体が増えて商売繁盛だとジャクソンの復職を許す葬儀屋の主人が最高(笑)。かえって、本作では墓掘り&棺桶があまり目立たないのですが。
ハイムズは、当初フランスで評価されベストセラーとなった作家ですが、確かにフランス人好みのノワールとシュールな雰囲気が横溢する作品で大いに楽しめました。

No.1264 5点 北陸トンネル殺人事件- 斎藤栄 2010/11/12 18:21
量産作家というレッテルとベタなタイトルで手を出すのを躊躇させますが、構成に趣向を凝らせたまずまずの意欲作だと思います。
脱獄犯2名の逃亡潜入、スーパー食料品売場で見つかった瓶詰めの指、子供の誘拐事件など、南洋台ニュータウン団地近くの駐在所巡査・西原のまわりで次々と事件が発生しますが、この小説の中心の謎が不明のまま、終盤まで引っ張る展開がスリリングです。惜しいのは、タイトル名で動機の推測が容易になっていることと、テーマの割に文章が叙情性に欠けることでしょうか。

No.1263 6点 エアーズ家の没落- サラ・ウォーターズ 2010/11/11 18:45
18世紀以来の村の名家で、戦後も古びれた領主館に住み続けるエアーズ家に続発する災厄を描いたゴシック・ロマン風の物語。
子供の頃から領主館に憧れを持つ冴えない村医者・ファラデーの視点で語られる一家の斜陽の現実と、かつてのお嬢様で不器量な容姿のキャロラインとの恋愛など、読者を物語に引き込む牽引力はさすがですが、”ミステリ=謎解き小説”という定義であれば本書はミステリとはいえないと思った。
ネタバレになるが、唯一の謎である館で発生する怪異現象の真相は、結局読者にゆだねられている。
作者にしてみれば、原題”The Little Stranger”に全てを込めているのかもしれないが、解釈に迷う終り方でどうもすっきりしない読後感でした。

No.1262 5点 毛皮コートの死体-ストリッパー探偵物語- 梶龍雄 2010/11/10 22:26
浅草のストリッパー・チエカが探偵役を務める連作短編集。
同じお色気探偵ものでいえば、都筑道夫の泡姫シルビアとだいたい同時期の作品ですが、こちらはB級感というか通俗風味が漂っています。
といっても、表題作や「アパッシュの女」はミステリ趣向としては一定水準以上の出来だと思います。ただ後半になるほど、哀切感のある人情物語になっていきますが。

No.1261 6点 レイチェル・ウォレスを捜せ- ロバート・B・パーカー 2010/11/09 22:21
スペンサーシリーズの6作目。
瀬戸川猛資責任編集で、80年から90年代初めの傑作翻訳ミステリを紹介したベスト本「ミステリ・ベスト201」には、代表作といわれる「初秋」ではなく本書が選ばれている。書評担当は温水ゆかり氏だが、”本書にかすかな不快感”とか”レイチェルという女性が全く描けていない”など、ベスト本の書評としては異例の辛口だった。
読んで納得。確かに、男根主義とも言われかねないような内容で、スペンサーの男らしさを際立たせるために、女性が道具になっているような感じを受けますね。一部の女性読者には受け入れがたいプロットかもしれません。

No.1260 5点 泡姫シルビアの華麗な推理- 都筑道夫 2010/11/08 21:33
吉原のソープランド「仮面舞踏会」の泡姫シルビアが安楽椅子探偵を務める連作短編集の第1弾。
旧タイトルは「トルコ嬢シルビア~」だが、さすがにこれは今ではマズイので改題となったのでしょう。
文字どうり個室でのベット・ディテクティヴ(マット・ディテクティヴか?)で、密室の謎、ダイイング・メッセージ、隠し場所トリックなどに挑んでいます。初登場の「仮面をぬぐシルビア」と「密室をひらくシルビア」がよかった。

No.1259 7点 名門- ディック・フランシス 2010/11/07 20:28
曾祖父の設立した銀行の融資部で働く主人公が、融資した競走馬生産牧場での奇形馬出産に絡む殺人事件に巻き込まれるというストーリー。
原題は、Banker(銀行員)とそっけないが、物語も終盤近くまでは地味で、いかにも英国スリラーという感じです。
サブストーリーのプラトニックな恋愛と、苦難の数々による主人公の成長の物語によって、ラストに深い感銘を与えるいつものフランシス節が堪能できました。

No.1258 5点 セカンド・ラブ- 乾くるみ 2010/11/07 20:06
どうしても姉妹編の「イニ・ラブ」を意識したものになりますが、全てのエピソードが伏線になっていた前作とちがって完成度はちょっと落ちますね。
そもそも女性主人公の行為が納得いきませんし、町田工場のある人物のエピソードは物語上全く意味がありません。終盤近くの男女の会話は、読者のための解説になってしまっています。

No.1257 7点 聖なる酒場の挽歌- ローレンス・ブロック 2010/11/06 20:46
無免許の私立探偵マット・スカダーシリーズの6作目。
酒場で常連たちとバーボンを飲んでいるスカダー。前作の結末からすれば、アレ?という発端ですが、本書は10年前の事件をスカダーが回想するという構成です。
酒場店主に対する脅迫事件と、飲み仲間の妻が殺害された事件を同時に依頼されます。従来作と比べてプロットが重視されていて、真相にミステリ趣向が工夫されていました。
全編を覆うノスタルジーと、最終章で語られる其々の登場人物たちの10年後の行く末、そしてスカダーの「今は一滴も飲んでいない」のひと言で余韻の残る作品でした。

No.1256 7点 新 顎十郎捕物帳- 都筑道夫 2010/11/06 20:13
久生十蘭の傑作捕物帖シリーズのパスティーシュ連作短編集。
もともと、発端の不可解な謎の提示など、氏の「なめくじ長屋」は本家「顎十郎」の影響を受けていると思うので、雰囲気創りは手慣れた感じです。脇役キャラのライバル藤波友衛とか全く違和感を感じません。
ロジカルさに関しては本家を上回っていて、「からくり土左衛門」や「幽霊旗本」などが作者らしい佳品。

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