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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1340 6点 クイーンの定員Ⅱ- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/03 12:07
各務三郎氏による「クイーンの定員」からのセレクト・アンソロジーの第2集は、1900年から30年黄金時代前期の作品。
フットレル、フリーマン、オルツイ、チェスタトン、ポースト、セイヤーズ、クリスティなど、選ばれるべき作家が洩れなく揃っています。逆にいえば他でも読めるので書誌的目新しさはないですね。
ストリブリング、F・アンダースンなどその後に元本の連作短編集が出るとは思わなかったですが、このあたり日本の翻訳状況は世界一マニアックじゃあないでしょうか。

No.1339 6点 クイーンの定員Ⅰ- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/03 11:23
「クイーンの定員」(Queen's Quorum)とは、エラリー・クイーンが選定した歴史的に重要なミステリの個人短編集のリストです。
その125冊に及ぶ短編集の中からのダイジェスト版が、本書以下4冊にまとめたアンソロジーです。年代順に収録されていますが、”歴史的に重要な作品イコール面白い作品”でないのは止むを得ないところでしょうか。
第1集では、ポオ"Tales"から「盗まれた手紙」、ドイル「赤毛連盟」などの有名作のほか、ポオより100年以上前に書かれたヴォルテールの珍品などが楽しめます。

No.1338 8点 ボトムズ- ジョー・R・ランズデール 2011/01/02 22:06
まだ黒人差別が色濃い1930年代のアメリカ南部”ボトムズ(湿地帯)”と呼ばれた地域を舞台に、黒人娼婦の連続殺害事件を扱った小説。
ジャンル的にはモダン・ホラーとかサイコ・サスペンスの範疇ですが、ミステリ的な興味より、主人公の11歳の少年ハリーの成長物語の趣きが強い。父親との関係、黒人差別問題、街の人々の当時のリアルな生活ぶりなど、文芸的香気に溢れた筆致で描かれていて、ランズデールの多才ぶりを再認識させられた。
キングの「スタンド・バイ・ミー」や、マキャモン「少年時代」と同様のノスタルジーに浸れる傑作です。

No.1337 5点 世界短編傑作集5- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/02 20:40
海外古典短編ミステリのアンソロジー。最終巻の本書は、戦後1950年までの作品が収録されています。
カーター・ディクスン、アイリッシュ、クェンティン、レックス・スタウト、フレドリック・ブラウンなど、馴染みの作家が多いぶん書誌的な興味がわかず、叢書のなかでは一番読んでいて楽しめなかった。
なかでは、ベイリーの「黄色いなめくじ」が読み応えのある力作中編。

No.1336 6点 世界短編傑作集4- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/02 20:40
乱歩が選んだ海外古典短編ミステリのアンソロジー。
この第4巻は、30年代前半の作品が対象で、本格ミステリ黄金時代の真っただ中ですが、収録作のジャンルは意外と多岐にわたっています。どうもラインナップは「クイーンの定員」を参考にしているように思われます。
ハードボイルド=ダシール・ハメット、奇妙な味=ウォルポール「銀の仮面」、怪盗サイモン・テンプラー=チャータリス、サスペンス=セイヤーズ「疑惑」など。
印象に残ったのは、トマス・バーグ「オッターモール氏の手」とアーヴィン・コップ「信・望・愛」。

No.1335 7点 世界短編傑作集3- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/01 17:47
海外古典短編ミステリ・アンソロジーの第3巻。
収録作は、1920年代の後半いわゆる”黄金時代”の幕開けの時期の作品群で、先にこうさんが書かれているように、叢書の中で一番の名作ぞろいです。
有名なところでは、バークリー”毒チョコ”の原型「偶然の審判」、ダンセイニ”奇妙な味”の代名詞「二壜のソース」、アリンガム「ボーダー・ライン事件」、クリスティの傑作サスペンス「夜鶯荘」など。
しかし、個人的ベストは、なんといってもおバカなトリックのノックス「密室の行者」ですけども。

No.1334 6点 世界短編傑作集2 - アンソロジー(国内編集者) 2011/01/01 17:47
乱歩が選出した海外古典短編ミステリのアンソロジー。
第2巻は、1910年代から20年代前半の作品で、ホームズのライヴァルといえるシリーズ探偵ものが多く収録されていました。
ルブラン=アルセーヌ・ルパン、ポースト=アブナー伯父、フリーマン=ソーンダイク博士、ブラマ=盲目探偵マックス・カラドス、クロフツ=フレンチ警部など、錚々たるメンバーが揃っていて楽しめます(多くが有名作品のため、他の作品集で読める作品が多いですが)。

No.1333 6点 世界短編傑作集1- アンソロジー(国内編集者) 2011/01/01 17:47
日本で編まれた海外古典短編ミステリの路傍標的アンソロジー、全5巻の1作目。
本書には、19世紀後半から20世紀始め”ホームズ時代”の作品を中心に編集されています。

編中では、”思考機械”こと伴道全教授、もといヴァン・ドゥーゼン教授初登場の名作・フットレル「十三号独房の問題」と、昨年シリーズ連作が邦訳されたロバート・バー「放心家組合」の2作が双璧でしょう。
ウィルキー・コリンズやアントン・チェホフの作品は、さすがに歴史的意義しか感じませんでした。

No.1332 5点 猿の惑星- ピエール・ブール 2010/12/31 12:24
映画であまりにも有名なSF小説。特殊メイクに冒険活劇と、衝撃のラストシーンが印象に残る映画版に比べて、原作はあまり読まれていないのではないかと思います。
風刺が入ったSFには違いありませんが、ラストの処理が映画版と全く異なります。視覚的サプライズ・エンディングの映画版に対して、原作は映像化できないドンデン返しで終っていて、この一種の叙述トリックはミステリに通じるものがあります。
余談ですが、
以前、日本を舞台にした映画版のパロディ・コントを見た記憶があり、ラストシーンはたしか奈良の大仏でした(笑)。

No.1331 7点 折れた竜骨- 米澤穂信 2010/12/30 22:55
中世イングランドの北海に浮かぶ島を舞台にした、歴史冒険ファンタジー風の本格ミステリ。
いままでの日常の謎タイプとは対極に位置するような、騎士と魔術師が跋扈する、”非日常の謎”を扱った意欲作なので、評価が分かれそうです。物語の視点人物が殺された領主の娘で、ラノベ風の語り口は異国の歴史ものにしては読みやすいと思います。
魔術という特殊設定はあるものの、終盤、関係者が集まった場面の消去法による真犯人の絞り込みは、フーダニット・パズラーの王道を行っています。

No.1330 6点 雷鳴の館- ディーン・クーンツ 2010/12/30 13:02
交通事故で記憶喪失になった女性が、ある病院で遭遇する悪夢のような体験を描いたホラー小説。
という感じで、終盤までは不条理なゴースト・ストーリーと思い読んでいると、最後にトンデモないカラクリが......。
小山正編「バカミスの世界」の中で、ホラーなのにバカミス・ベスト100に選ばれたというおバカ・ホラー。ホラーファンより本格ミステリ愛好者にお薦め。(本当か?)

No.1329 8点 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 2010/12/30 12:41
騙し絵を見るようなミステリ6作品収録の短編集(新潮文庫版)。
ありえない不可能な状況を叙述の技巧で可能にする「二つの顔」と「化石の鍵」、手紙形式で過去の誘拐事件の構図が反転する「過去からの声」、逆説的で異様な殺人動機の表題作など、いずれも叙述による騙しの限界に挑んだような逸品が揃っています。
叙情的な文芸ミステリという点で、個人的好みでは「戻り川心中」に一歩譲りますが、それに並ぶ傑作短編集でしょう。

No.1328 6点 反逆者に死を- スチュアート・カミンスキー 2010/12/29 12:11
80年代の旧ソ連を舞台にした警察小説、ロストニコフ捜査官シリーズの第1作。
本書の段階では、主人公はまだ民警ではなく検察局の主任捜査官で、KGBとの関係も悪化していない。反体制学者の惨殺事件の捜査を命じられるが、政治がらみの事件にKGBではなく何故彼が担当となるのかが物語の肝です。
真面目な語り口の中に、時々軽めのくすぐりを入れているのが当シリーズの特徴。ロストニコフの趣味は重量挙げと米国の警察小説を読むことで、闇で手に入れたチェスター・ハイムズを隠れて読みながら米国社会の腐敗を嘆く描写などたまりません。

No.1327 4点 妻に捧げる犯罪- 土屋隆夫 2010/12/29 11:43
これはストレートな本格ミステリではなく、悪戯電話を楽しむ助教授が巻き込まれる犯罪という、軽犯罪者を主人公(探偵役)に据えた変化球のサスペンスでした。
悪戯電話の些細な手掛かりから相手を推理していくところに多少の面白味がありますが、自身の短編を長編化した小粒なネタなので、初期の本格編ほどの満足感を得られなかった。

No.1326 5点 ねじれた家- アガサ・クリスティー 2010/12/28 18:11
本書も、作者自身の評価と一般的な人気に乖離があると思われる作品。
Amazonのネタバレ書評を見ると、プロットと犯人の設定が某名作に類似しているとの指摘が多く、それも一因かと思いますが、同じ”ねじれた家族”の遺産相続ものというだけで雰囲気やメインのアイデアは全然異なります。
むしろ、このノン・シリーズ作品では、一応の探偵役となる青年に魅力がなく、感情移入できる人物が見当たらないのが要因ではと思います。

No.1325 5点 白銀ジャック- 東野圭吾 2010/12/28 18:00
ご都合主義で予定調和の感もありますが、サクサク読めるのがなにより。
このジャンルの定型の仕掛けに、さらにヒネリを入れて真相を判りずらくしたところは流石です。
なによりも、新刊を文庫で出すという姿勢にプラス1点。

No.1324 6点 クロエへの挽歌- マージェリー・アリンガム 2010/12/27 18:28
人気ミュージカル男優の館での、中年女優・クロエの不審死の謎を中核とした”館ミステリ”の様相から、中盤以降思わぬ派手な展開を見せるプロットは女史の作品の中では面白く読めました。
素人探偵キャンピオンは、同時代の名探偵と比べ個性に欠けるきらいがありますが、今回、当初傍観者を決め込む理由がミスディレクションになっている点はよかった。邦訳タイトルになったクロエの造形は、現代作家ならもっと書き込んだものになっていたと思えるのがちょっと惜しい。

No.1323 6点 裏切りの明日- 結城昌治 2010/12/27 18:00
”悪徳警官もの”と明示すること自体がネタバレになるもう一つの作品と違って、本書の主人公・沢井は最初から悪徳警官として登場します。そのため、ミステリとしての意外性はあまりないですが、それを犠牲にしてでも、作者はこのテーマをさらに深く掘り下げたかったのかもしれません。
経済犯罪小説とも読める部分は、さすがに時代性ゆえの古臭さを感じるものの、このような人物を主人公とした小説は当時珍しかったでしょうから、国産ノワールものの先駆的作品といえるでしょう。

No.1322 5点 死の笑話集- レジナルド・ヒル 2010/12/26 12:52
ダルジール警視シリーズの18作目。
巻頭に編集部から”「死者との対話」の続編”との注釈が付いています。
今作、聖三位一体のレギュラー3名は、それぞれ別々の事件に関わっていて、いつもにも増して物語の流れが把握しずらかった。ワードマン事件の後始末をするダルジールのパートはともかく、パスコーの”やっかい事”は、40年近く前にでたシリーズ第2作とも関わるとあってフォローできません。
結局、弁当箱のような正続あわせて1200ページを読んだという変な達成感だけが残りました。

No.1321 7点 アルバトロスは羽ばたかない- 七河迦南 2010/12/26 12:14
児童養護施設”七海学園”を舞台にした連作ミステリ・シリーズ第2弾。
高校の校舎屋上からの墜落事件の謎を本筋に、その事件のヒントとなるような4つの日常の謎系のエピソードを間に挿入した構成になっています。
評判どおり、終盤で主要登場人物たちの立ち位置が劇的に反転する仕掛けが素晴らしい。前作を読んでいれば驚きが倍増するでしょう。シリーズ2作目でこれをやられるとは思わなかった。
痛ましい過去をもつ子供が多数登場し、重たいエピソードが続くので、好みが分かれる作風かもしれませんが。

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