皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.1306 | 6点 | 天使の帰郷- キャロル・オコンネル | 2010/12/17 20:41 |
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“氷の天使”キャシー・マロリー刑事シリーズの4作目。
今作は「探偵の帰郷」テーマ。NY市を離れ、幼いころ住んだルイジアナ州の町を舞台にして、17年前の母親惨殺事件の謎とマロリーの過去がストーリーの核になっています。カルト教団をはじめ個性的な田舎町の人々が多数登場するところは、女史のノン・シリーズ作品に近いテイストもあります。 復讐譚ながら、NYから追いかけてきた友人チャールズが、重い雰囲気を中和させる役割をしているように思います。 |
No.1305 | 5点 | このミステリーがすごい!2011年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/12/16 18:41 |
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今年もこの時期がきましたか。
最近は、ネットで情報が氾濫しているので、ランキングに関しては以前と比べて興味が薄れてきましたが、それでも未読で読んでみたい作品が見つかるのでありがたいです。正月休みは、とりあえずジョン・ハートを遡って3冊かな。 しかし、今年の話題作よりも、興味の中心は来年の「我が社の隠し玉」ですね。 miniさんの丁寧なレヴューとダブりますが、やはりウィンズロウが大注目。「シブミ」の前日譚を書いたことも驚きですが、サーファー探偵の新シリーズが楽しみ。 あと、忘れたころのデニス・レヘイン。パトリック&アンジー・シリーズの最終?第6作が今頃出るとは思わなかった。 クラシック・マニア部門だと、チェスタトンの連作短編集(ブラウン神父付き)、クリスピンのフェン教授ものの短編集、パトリック・クェンティンなどに期待したい。 それにしても今年の裏表紙はいやに分厚いですね。100ページ分ぐらいの分量があります(笑)。 |
No.1304 | 7点 | 追悼者- 折原一 | 2010/12/16 18:00 |
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今回の三面記事シリーズの元ネタは「東電OL殺人事件」。
元ネタの事件同様に、真犯人の追及よりも、昼は有能なOLで夜は娼婦だったという被害者女性に焦点をあて、ノンフィクション作家らが、被害者の幼少から殺害直前までの過去を関係者から取材する構成になっています。 これはなかなかの傑作。インタビュー形式特有のある制限や、タイトルに通じる巧妙な仕掛けによって、折原作品の相当の通読者でもミスリードされるのではないかと思います。作者の近年の作品の中では出色の出来でしょう。 |
No.1303 | 6点 | 死の相続- セオドア・ロスコー | 2010/12/15 20:11 |
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西インド諸島・ハイチを舞台にした館ミステリ。
外では原住民の暴動が発生している最中、館では相続人が次々と奇怪な手段で殺され、ヴードゥー教やゾンビ登場という怪奇趣向が飛び出すというとんでもない展開で楽しめた。プロットが異常すぎて、オーソドックスな密室トリックが霞んでしまうほどです。 普通のクラシック・パズラーに飽き足らない方にお薦めの怪作。 |
No.1302 | 6点 | 今日を忘れた明日の僕へ- 黒田研二 | 2010/12/14 20:55 |
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事故によって記憶の蓄積ができない”前向性健忘症”になった主人公を巡る迷宮ミステリ。
タイトルは連城三紀彦風で、設定は北川歩実風。そして結末はやはり連城ばりの騙りで構図の反転を見せてくれます。一日たつと記憶がなくなるため主人公はある工夫をするわけですが、その小道具の使い方がうまいと思った。 |
No.1301 | 8点 | 墓場への切符- ローレンス・ブロック | 2010/12/13 20:26 |
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無免許の私立探偵マット・スカダーシリーズの第8作。
「スカダーとその女たちに死を!」というキャッチ・コピー通り、ハードボイルド小説の枠内にシリアルキラーを登場させた”倒錯三部作”の1作目です。 謎解きの要素はなく、刑事時代に逮捕した鬼畜系男モットリーがスカダーと関係者に復讐を企てるというサイコサスペンスの色合いが強いですが、スカダーの飲酒への衝動との戦いを交えながら、殺人鬼モットリーの標的で後に終生の伴侶となる娼婦エレインとのやり取り、凄腕の酒場店主ミック・バルーとの男の友情など、魅力的な人物が登場します。 本書がなければ、シリーズがこれほど長期に渡って書かれていなかったであろうと思われる重要な作品だと思います。 |
No.1300 | 6点 | 流星航路- 田中芳樹 | 2010/12/12 18:02 |
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"李家豊”名義で探偵小説専門誌「幻影城」に発表された初期作品8編を収めた短編集。
なかでは、幻影城新人賞のSFミステリ「緑の草原に....」が出色の内容。地球に似た惑星へ降り立った調査隊全滅の謎、先住生物の正体の意外性、主人公のA級捜査官の正体の意外性など、伏線も充分でミステリ趣向が光っています。 その他、タイムマシンによる追跡劇で、駆け落ち男女の究極の逃亡手段が印象に残る「いつの日か、ふたたび」、後のSF冒険小説の原型ともいえる「懸賞金稼ぎ」「深紅の寒流」などバラエティに富む作品が揃っています。 なお、解説は幻影城新人賞同時受賞の連城三紀彦氏。 |
No.1299 | 6点 | 暗闇の薔薇- クリスチアナ・ブランド | 2010/12/12 18:02 |
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ブランド最後の長編ミステリ。
嵐の夜、正体不明の男との車の交換場面やトランクの中からの死体出現など、なかなか魅力的な発端で期待を抱かせましたが、中盤以降は曖昧な状況が継続し少々退屈でした。 お得意の多重解決も、今作はあまりキレと説得力がないように感じましたが、女性主人公の周りから次々と友人がいなくなっていく終盤は一種異様な哀切感を醸し出していてよかった。 |
No.1298 | 5点 | 白い華燭- 嵯峨島昭 | 2010/12/12 18:01 |
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同じ酒島警視シリーズでも、後のおふざけミステリのテイストはなく、また官能シーンもない真っ当な?恋愛ミステリ。ただ、時代性ゆえの昼メロのような中盤の展開は少々痛い。
トリックは現代の法医学的に無理がある様に思いますが、真相は意表を突くもので、作者のミステリの中では最良作かもしれません。 |
No.1297 | 7点 | フランキー・マシーンの冬- ドン・ウィンズロウ | 2010/12/11 16:06 |
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元マフィアの凄腕殺し屋、隠退した62歳の”釣り餌屋のフランク”を主人公にしたクライム・ストーリー。
何者かに命を狙われ逃亡を重ねながら、首謀者を特定するため40年以上に渡るマフィア時代の過去を回想するという構成を取っています。 殺戮と裏切りの物語でありながら、現在形を多用した独特の軽快なリズムの文章はノワール性を感じさせず、一気に最後まで読み通させる牽引力がありました。遊び心や娯楽性に溢れているという点では、前作「犬の力」より本書のほうがウィンズロウらしい作品だと思った。 |
No.1296 | 6点 | 空白の研究- 逢坂剛 | 2010/12/10 18:34 |
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最初期のミステリ短編集。
精神分析鑑定を小道具にして、最後にサプライズを仕込んだ内容のものが多いが、出来不出来の作品が混在しているように思います。 個人的ベストは「美醜の探究」。醜男ばかりを狙う女性殺人鬼を扱ったサスペンスで、予想外の真相に驚く。叙述の仕掛けや伏線の張り方は本格ミステリそのもの。「真実の証明」も終盤のどんでん返しの連続技が楽しめました。 |
No.1295 | 6点 | ロビン・フッドに鉛の玉を- スチュアート・カミンスキー | 2010/12/09 20:24 |
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私立探偵トビー・ピーターズ、シリーズの第1作。
1940年代のハリウッド映画界を背景にして、実在の映画スターが巻き込まれた”やっかい事”を解決するというのがシリーズのパターン。表紙イラストだけでなく翻訳まで和田誠氏が手掛けていて、これは正に適役でしょう。 本書は、冒険活劇俳優のエロール・フリンが依頼人で、日本ではややマイナーな俳優かもしれませんが、以降の作品では、ジュディ・ガーランド、マルクス兄弟、ゲーリー・クーパー、ジョン・ウェイン、クラーク・ゲーブル、チャプリンなどの俳優から、レイモンド・チャンドラーやイアン・フレミングなどの作家まで出演しています。 ところが、シリーズ全24冊のうち邦訳は初期の5冊でストップのまま。カミンスキーも昨年亡くなっていて、どうも邦訳の続きが出そうにない状況です。「お楽しみはこれからだ」と思っていたのに非常に残念。 |
No.1294 | 5点 | ふしぎの国の犯罪者たち- 山田正紀 | 2010/12/08 20:09 |
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六本木の地下バー「チェシャ・キャット」の常連である3人の男たちが、単調な日常からの逃避のため犯罪ゲームの魅力に引き込まれ....。著者お得意の素人による襲撃ゲーム連作短編集。
コンゲーム風で、ターゲットの誘拐犯と同時に読者をも騙してくれる「誘拐」など、各編トリッキイで面白いが、最終話がなんとも後味が悪い。こういったタイプのミステリは、痛快な幕切れを用意してほしい。 |
No.1293 | 6点 | ツンドラの殺意- スチュアート・カミンスキー | 2010/12/07 20:16 |
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モスクワ民警のロストニコフ主任捜査官シリーズ。
ゴルバチョフ時代のソ連を舞台にした警察小説で、一部モジュラー形式を採用していることから”ソ連の87分署シリーズ”とも称されたらしいが、主人公がエド・マクベインを読んでいるシーンはニヤリとさせられた。シリーズ第5作の本書から邦訳されたのは、MWA賞作品だからでしょうが、小品ながら本格ミステリとしても良く出来た作品ということもあるのでしょう。 シベリア流刑地の僻村、容疑者も限られている中で、意外な犯人とソ連ならではの意外な動機を用意しており、なかなかの佳作といえます。 |
No.1292 | 6点 | 爆発の臨界- 田中光二 | 2010/12/06 22:03 |
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SF海洋冒険小説をメインに書いていた著者ですが、本書はSF要素がない冒険サスペンス小説の傑作。
東京湾内で石油満載のタンカーがテロリストに乗っ取られるというストーリーで、ユニークなアイデアの映像トリックを使ってテロリストを欺瞞するくだりとか、主人公が潜水服で身を包み真黒な石油タンク内に爆弾を回収にいくクライマックスなど、ハリウッド映画に比肩するような壮大でスマートな内容でした。 |
No.1291 | 9点 | ロールスロイスに銀の銃- チェスター・ハイムズ | 2010/12/05 18:42 |
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ハーレムの黒人刑事コンビ、墓掘りジョーンズ&棺桶エド・シリーズの6作目。
<アフリカに帰ろう>運動という偽神父による大掛かりな詐欺から、民衆から騙し取った現金の強奪事件に発展する大騒動。売春宿、賭博屋、安酒場など60年代の黒人街を背景に、消えた現金を巡って、詐欺師グループ、南部軍人、殺し屋、美女たち、そして墓掘り&棺桶コンビがそれぞれの思惑を交錯させて暴走します。 ハードボイルド系の警察小説というより、クライム小説の一級品でしょう。最後に漁夫の利を得るある人物の突拍子もない行動には笑った。葬儀屋青年の”イマベルへの愛”に決着をつけたエピソードが挿入されているのにも思わずニヤリ。 |
No.1290 | 5点 | 記録の中の殺人- 石崎幸二 | 2010/12/05 17:44 |
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会社員・石崎&二人の女子高生が探偵役を務めるユーモア本格第7弾。
恒例になったミス研部室での3人のやり取りが益々快調。ボケとツッコミに、乗りツッコミ、ボケ崩し、繰り返しギャグと、笑いのテクニックが縦横無尽に繰り出されていて楽しめる。 今回も、孤島&DNAネタですが、フーダニットよりもホワイダニットが核。前代未聞でトンデモ系の殺人動機は面白いものの、かなり説得力に欠けるかな。 |
No.1289 | 6点 | レスター・リースの新冒険- E・S・ガードナー | 2010/12/04 20:15 |
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宝石などの金品盗難事件の真犯人を新聞記事で推理し盗品を横取りする義賊レスター・リース、連作短編集の第2弾。
前作に劣らず面白かった。 どのような手段で横取りするかの興味では、「六人の肥った女」と「手中の鳥」が秀逸。従僕スカットルに手配させる小道具や人物にミスディレクションを効かせているため、読者(と、アクリー部長刑事)の意表を突きます。 「リース式探偵法」は、密室トリックを使った宝石盗難が扱われている異色作。 |
No.1288 | 6点 | 都会の狼- 高木彬光 | 2010/12/03 18:00 |
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検事・霧島三郎シリーズの4作目。
仮釈放中のやくざの組員が、死刑となった命の恩人のために真犯人を突きとめようと奔走するが、事件の証人が次々と殺害されていくというストーリー。光文社文庫で500ページの力作。 トリックらしいトリックはないものの、絡み合った人間関係でプロットを錯綜させ、真相を分かりずらくしています。物語性豊かで読み応えがありました。 妻・恭子のなにげないひと言で霧島が真相を察知するというのは、もう作者得意のパターンですが、楊貴妃の刺青に関する伏線はダジャレ・レベルでした。 |
No.1287 | 6点 | 死者との対話- レジナルド・ヒル | 2010/12/02 17:38 |
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ダルジール警視シリーズの17作目。
図書館が企画した短編小説コンクールの応募原稿が、連続殺人事件を予告したものだったというのが発端。いつものメンバーに加わった新人刑事ハットが、ダルジールの毒舌皮肉の餌食になっています。 シリアル・キラーの名前が”ワードマン”というのを始め、アナグラムなどの言葉遊びにあふれ、英文学の素養のない身には置いてけぼりを喰らう内容が多く含まれているのが少々辛い。 久々のフーダニットものということではそこそこ楽しめましたが、このラストの処理にはモヤモヤ感が残りました。 |