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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1460 6点 死の蒸発- ジョー・ゴアズ 2011/03/01 18:09
ダン・カーニー探偵事務所シリーズの長編第1作。
私立探偵といっても、”卑しき街を往く孤高の騎士”的な私立探偵小説ではなく、ローン滞納自動車の回収を専業とする探偵事務所の調査員による集団探偵ものです。再読していないのでメイン・ストーリーは忘れましたが、ゴアズがウエストレイク(リチャード・スターク)と協調した”お遊び”が話題になり、そのエピソードだけ憶えている。
本書の脇筋で、スタークの生み出した悪党パーカーがワンシーンだけ特別出演しているのですが、スタークが書いた「悪党パーカー/掠奪軍団」にも同じシーンを登場させ、今度はパーカー視点でダン・カーニーを描いている。つまり、二人の作家が同じシーンを使って、其々の主人公視点で相手の主人公を描いたエールの交換というわけです。
悪党パーカー・ファンとしては、もう少し物語に絡んでカーニーと共演としてほしかったですが。

No.1459 4点 アガサ・クリスティ殺人事件- 河野典生 2011/02/28 17:47
かつてのハードボイルド作家が、探偵小説専門誌「幻影城」で本格ミステリの連載を始めたと、当時ちょっと話題になった作品。
クリスティの「オリエント急行」が、45年前のインドで発生した実話に基づくものという設定で、ポワロのモデルとなった老人と日本人作家が事件の再現を試みて別の意外な真相に至るというストーリー。
西村京太郎の名探偵シリーズ4部作などが念頭にあると期待を裏切られます。作者の初期ハードボイルドと同じ作家の主人公や硬質な文体は、パスティーシュ小説と合っていなくてチグハグ感があります。物語も題材の割に平板で盛り上がりに欠けた。

No.1458 7点 火曜クラブ- アガサ・クリスティー 2011/02/27 18:00
ミス・マープルものの連作短編集。
怪奇趣向と不可能トリックの「アシタルテの祠」や、金庫からの遺言状の消失「動機対機会」など、前半の作品はトリック重視のものが多く、これはこれで楽しめますが、会のメンバーが入れ替った後半の作品が本来のマープル物の味わいがあるように思います。登場人物の性格を見抜き、過去の類似した村の事件を参考に真相を言い当てるというマープルの推理法がマッチしています。
なかでは、最後の2編が過去の事件を謎解くこれまでの定型を外していて面白い。最終話の「溺死」は、現在の事件ということで番外編ですが、それ以上に「バンガロー事件」のパターン破りの真相が一番気に入ってます。語り手の女優ジェーンのキャラもいい。

No.1457 6点 死者におくる花束はない- 結城昌治 2011/02/27 17:25
私立探偵・佐久&久里十八所長による軽ハードボイルド長編の第1作。
主人公の佐久を正統派ハードボイルドの私立探偵ぽく描きながら、常に俗物の久里との絡みでユーモア・ミステリになってしまうところが面白い。佐久が何者かに頭を殴られて意識を失うシーンを何度も繰返すのは、本場ハードボイルドのパロデイでしょう。
トリックにご都合主義的なところがありますが、人間関係が複雑な考えられたプロットの本格ミステリでもあります。

No.1456 6点 漂う提督- リレー長編 2011/02/26 15:40
英国ディテクション・クラブ創設期に13名の会員によって書かれた初のリレー本格ミステリ。
プロローグを担当した会長チェスタトンを始め、最終章の解決編担当のバークリーほか、クリスティ、セイヤーズ、クロフツなど黄金期の巨匠がそろい踏みで、内容はともかく(笑)、執筆陣の名前を見ているだけで楽しい。分量を見る限り、セイヤーズとバークリーが主導的役割だと思う。
受持ちの一章だけでなく、それぞれが予想解決編を別に用意していて、それにも作家の性格が現れている気がする。中ではロナルド・ノックスの、「私は以前に、探偵小説に中国人を登場させてはならないとルールを定めたが、本書で提督を始め何人かの中国在住経験者がいるのは同じように遺憾である」というような冗談か本気かわからない言い分が笑える。

No.1455 5点 白の恐怖- 鮎川哲也 2011/02/26 15:03
雪の軽井沢・白樺荘で遺産相続人が次々殺されていく事件を、弁護士の日記で語られるコード型の本格ミステリ。最後の解決編でいきなり登場するだけですが、いちおう星影竜三シリーズの第2弾です。
人物に関するトリックにインパクトがありますが、梗概に近い第一稿をそのまま出版してしまったような内容の薄さがあるので、作者ならずとも再販を躊躇するのは分かる気がします。
マニアにとっては、読むことよりも所持することに意義があるようなコレクターズ・アイテムの一冊。

No.1454 6点 木曜の男- G・K・チェスタトン 2011/02/25 22:29
中学生の時にブラウン神父の流れで読んで途方に暮れた作品。今回うん十年ぶりに「木曜日だった男」(光文社古典新訳文庫)で再読しました。
二人の詩人による思想小説のような序盤の問答と、不条理文学的な幕切れの部分は、凡庸な読書人の身には今回も理解不能な訳ですが、その間に挟まれた、詩人ガブリエル・サイムの無政府主義最高評議会への潜入捜査のくだりが滅法面白い。七曜会メンバーの次々と暴かれる正体は、お馴染みのチェスタトン的逆説に溢れています。スパイ冒険小説のパロディですな、これは。
冒頭にある、幼馴染で親友のE・C・ベントリーに捧げられた序詩のなかの一節、
「これは今は昔語りとなった恐怖の物語、(中略)それが語る真実を君以外の誰も理解するまい」
・・・・なるほど、凡人には読解できないなと納得。

No.1453 5点 江戸川乱歩の推理試験- アンソロジー(ミステリー文学資料館編) 2011/02/25 18:33
「推理教室」に続く昭和30年代の犯人当てミステリ・アンソロジー第2弾。
飛鳥高、鮎川哲也、楠田匡介など、期待した作家の作品はいずれもイマイチ。総体的に収録作の出来は前作には及ばない中、宮原龍雄「湯壺の中の死体」や、乱歩の小林少年が探偵役の犯人当てジュヴナイルが読めたので良としよう。

解説の「犯人当て小説の系譜」が充実した内容でよかった。乱歩のデビュー作「二銭銅貨」が掲載された「新青年」の同じ号に、ドゥーセの「夜の冒険」が犯人当て小説として載っているとか、「スミルノ博士の日記」が懸賞金付き犯人当て小説のハシリであるなどのトリビア・ネタが興味深かった。

No.1452 5点 落馬- ジョン・L・ブリーン 2011/02/24 18:12
競馬シリーズ。といっても、こちらは競馬レースアナウンサー・ジェリーを探偵役に据えた米国製のコージー風ミステリです。
第1作になる本書の主役は、大邸宅に住むジェリーの叔母オリビア。古き良きミステリをこよなく愛する未亡人のオリビア叔母さんが、邸宅の庭で死体で見つかった騎手の事件を、あくまで古典ミステリのフォーマットにこだわり謎解いていく様子が可笑しい。
ただ、叔母さんが雇い入れた偽名探偵コンビがあまり物語に絡んでこないのと、関係者18名を邸宅に集めたわりに大団円の謎解きがあっさりぎみなのが少々物足りない。

No.1451 5点 致死海流- 森村誠一 2011/02/23 18:18
作者のこの時期の作品にしては珍しく社会派寄りではなく、密室&アリバイ・トリックを核とした本格ミステリでした。
犯人の工作に予想外の事態が発生して事件が複雑になっている点が面白かったですが、その反面、プロットがごちゃごちゃしていて整理しきってない感じを受けます。読後すぐに内容を思いだせなくなるようなタイプのミステリです。
アリバイ・トリックに関する犯人側のこのような設定も好きになれない。

No.1450 6点 スティーム・ピッグ- ジェイムズ・マクルーア 2011/02/22 18:16
南アフリカ共和国を舞台にした警察小説、クレイマー警部補シリーズの第1作。
被害者女性とその家族の境遇には悲惨なものがある。「ローマ帽子の秘密」の時代ならともかく、70年代にこのテーマが書けるのは、人種隔離政策の南アぐらいでしょう。題材は重たいですが、かといって物語は徒にシリアスになっていなく、事件発覚の場面をはじめコミカルなシーンが多くまぶされています。
色つきコンタクトレンズから事件の様相が急展開するプロットなど、この時代の捜査小説としては秀逸な出来だと思う。
ただ、”スティーム・ピッグ”という謎の言葉の真相や、犯人側の設定などのミステリ的な趣向は肩透かしの感もあった。

No.1449 6点 折鶴の殺意- 佐野洋 2011/02/21 18:17
連作ミステリ、折鶴刑事シリーズの第1弾。
記憶では佐野洋版「退職刑事」だと思っていたのですが、主人公の「わたし」は現職の部長刑事だったんですね。続編の「喪服の折鶴」が退職後の話で、元部下が持ち込む事件を扱っているらしい。
いづれも折鶴が関係する謎解きながら、其々工夫されていてマンネリを感じさせません。最近の作品と比べると本格度が高く、なかでも「折鶴の血」がよかった。準ベストは「折鶴の便り」。

No.1448 7点 フロスト始末- R・D・ウィングフィールド 2011/02/20 15:33
フロスト警部シリーズの6作目。
出てくる死体の数ではシリーズ最多でしょう。デントンの森で発見されたバラバラ死体を発端に、例によって同時並行で発生する複数の事件の捜査で”殺人的”多忙を極めるフロスト。基本的にこれまでの作品とほぼ同じパターンなので、原書でもクリスティ並みにそれほど苦労せずに読み通せます(ただ、フロストが連発する下品なジョークは、絶対クリスティの小説には出てこない単語でしょうが)。
最後は初登場の女性鑑識医キャロルといい関係になって、次作に含みを持たせていながら、結果的に本書が最終作になってしまったのは残念至極です。
Amazonを見てみると、洋書にもかかわらず9名もレヴュアーがいて、翻訳を待ちきれなく原書に挑戦という方が多いようですね。現在の翻訳ペースだと、シリーズ第5作の"Winter Frost"はともかく、本書の邦訳版を読めるのはいつのことになるのやら。

No.1447 5点 暗殺者の森- 逢坂剛 2011/02/19 13:22
スペインを中心に第二次大戦時の欧州を背景にした大河冒険小説、通称イベリア・シリーズの6巻目。
フランコ総統暗殺計画、北アフリカ上陸作戦、Dデイ情報を巡る情報戦など、これまで各巻とも題材は興味深いのだけど盛り上がりに欠けた。そのうち面白くなるだろうと読み進めてきましたが、ヒトラー暗殺未遂事件を背景にした今回も同様でした。
主人公の情報将校・北都と英国女性情報部員・ヴァジニアは狂言回しの役割で、欧州戦線の秘話・ドキュメンタリーを読むような味気なさがあった。もう少し人間ドラマ的な物語性を重視してほしいものです。

No.1446 6点 ショパンの手稿譜- リレー長編 2011/02/18 17:40
ジェフリー・ディーヴァーほか15名の作家によるリレー・ミステリ長編。
黄金時代の英国ディテクションクラブ・メンバーによる「漂う提督」を始めとして、このような企画は本格ミステリが定番で、本書のように国際謀略サスペンスというのは珍しい。
もともと小説としての完成度を期待するのは野暮で、リレー・ミステリの楽しみは、前段担当の作家がばらまいた伏線を、後ろを受けもつ作家がうまく回収できるか、という点にあると思う。各自が自身の思惑でプロットを発展させるため、ある人物の造形が作家によって善悪にぶれたり、主役級で登場させた人物を後ろの作家が簡単に「殺して」しまったりで、図らずも先が読めない意外な展開になっているのが面白い。
終盤になるほど担当する作家は大変だと思うが、なんとかまとめ上げたうえに、ラストに二度のどんでん返しを持ってくるなど、やはりディーヴァーの技量が抜きんでている。

No.1445 5点 瀬戸内海殺人事件- 草野唯雄 2011/02/17 17:50
章題がすべて「奇妙な・・」で統一されている如く、どこか奇妙な構成の初期本格ミステリ。
アリバイ崩しを主題とした探偵役・男女コンビによるユーモア風味の旅情ミステリの展開から、終盤いきなり”読者への挑戦”が挿入され、あれ?そんなミステリだっけ、と戸惑うこと必至です。
文章や語り口のセンスがいまいちですが、この仕掛け自体は面白いと思った。

No.1444 6点 午前零時のフーガ- レジナルド・ヒル 2011/02/16 17:51
ダルジール警視シリーズ、40年以上続いているシリーズの最新22作目。
本格的に職場復帰することになったダルジール。出勤途上に曜日を勘違いしていることに気づいてからの長~い日曜日の一日が始まります。
今回のテーマは”生れ変り”。まさに遁走曲のごとく、同一場面が多視点で繰り返し描写され、物語がなかなか進行しないのでじりじりさせる側面がありますが、各章の始めに挿入された何者かのモノローグが意味深で、それが最終章で判明するもう一つの”生れ変り”につながる構成が秀逸でした。

No.1443 6点 花の棺- 山村美紗 2011/02/15 17:54
米国副大統領の令嬢、名探偵キャサリン・ターナー初登場作品。
メイン・トリックは、雪中の鍵のかかった和室で華道の家元が殺される二重の密室なわけですが、”日本人には密室でも外国人にとっては密室ではない”みたいなハッタリが面白かった記憶があります。外国人を探偵役に据える必然性も感じさせます。今考えてみれば、警察の現場鑑識を舐めきってますが(笑)。
パズル的なキャンピング・カーのアリバイも、ここらでもう一つ見せ場が必要という必然性しかありませんが、リアリズムや必然性を犠牲にしても、トリックに拘った本書はやはり面白かった。

No.1442 7点 イリーガル・エイリアン- ロバート・J・ソウヤー 2011/02/14 17:53
異星人を殺人事件の被告としたSF法廷ミステリ。
”未知との遭遇”風の異星人との友好的なファースト・コンタクトの場面、ウェルカム・レセプションにスピルバーグが出席してたりで妙に可笑しい。そのため、法廷場面になってもあまり緊迫感を感じないが、詳しく描写されるトソク族の生態が真相に繋がる伏線になっているなど、ミステリとしてもよく出来ていると思う。

No.1441 6点 怪奇小説という題名の怪奇小説- 都筑道夫 2011/02/13 18:55
推薦・解説の「道尾秀介」という文字が著者名より何倍も大きく帯に刷られた復刊文庫本が、先月まで書店の平台に山積みだったという幻想的な怪奇ミステリ。
短編では相当数のホラーを書いていますが、長編は意外と少ない。本書はいかにも作者らしいトリッキーでメタな構成で、「三重露出」の怪奇小説版のような感じを受けた。ちょっと理屈っぽい語り口は、最初はあまり恐怖感を煽る感じではなかったですが、主人公の作家・都筑道夫の幼い頃のエピソードあたりから迷宮に引き込まれた。

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