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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1966 6点 あの血まみれの男は誰だ?- サイモン・ブレット 2013/08/25 18:40
地方劇場での『マクベス』上演の稽古後の深夜、劇場に併設されたバーの貯蔵室で老優の変死体が発見される。ひさびさに端役の仕事をえて張り切っていた脇役俳優パリスだったが、警察から容疑者として目をつけられることに------。

売れない中年俳優チャールズ・パリスを探偵役としたシリーズの12作目。
作者は演劇界に長く携わっていただけあって、事件背景の演劇界の舞台裏はいかにもありそう。高慢で陰険な被害者の老俳優や、演劇理論にとことんこだわる新進女優、優柔不断な演出家など、クセのあるキャラクターたちのやり取りがシニカルでユーモアたっぷりに描かれています。とくに、パリスがベテランゆえ便利屋の俳優として扱われ、一人二役どころか最終的に10個の役を割り振られるくだりは笑えます。
その分、事件の発生を物語の半ばまで待たなければなりませんし、謎解きミステリとしては小粒な内容と言わざるを得ませんが、動機の隠蔽と伏線は巧妙です。

No.1965 5点 ペトロフカ、38- ユリアン・セミョーノフ 2013/08/23 11:50
巡査を殺害し拳銃を奪った二人組による強盗が続発する。モスクワ警察は特別捜査班を立ち上げ、三人の刑事が犯人グループを追うことになるが-------。

ロシア人作家による’60年代のソ連を舞台にした警察小説。タイトルはペトロフカ街38番地、モスクワ警察(民警)本部の所在地を表す。
粗筋からは緊迫の捜査小説のような感じを受けたが、それほどサスペンス性はない。特捜班の三人の刑事の私生活と、犯行に加担した少年との人間味あふれるやり取りなど、メグレものに似たテイストを感じた。犯人グループ側の行動を同時並行で描いているので犯罪小説的な面白さはあるが、そのぶん謎解きの妙味はない。
「ゴーリキー・パーク」や「チャイルド44」などの英米作家が書くような、KGBの暗躍とか共産主義体制の恐怖政治的な味付けがないのは当然と言えば当然のことながら、やはり物足りない感じがする。

No.1964 8点 冬のフロスト- R・D・ウィングフィールド 2013/08/18 17:49
連続少女失踪事件や連続娼婦惨殺事件など、例によって同時多発事件でモジュラーれ、不眠不休の捜査を強いられるデントン署のフロスト警部、シリーズの第5弾。(

基本プロットは毎度同じながら、訳出が数年おきのためマンネリを感じることがない。
今回は何度もドジを繰り返す部下のダメ刑事モーガンがいいアクセントとなって、フロストの下ネタ・ジョークも冴えわたっている。とくにマレット署長をネタにしたジョークは爆笑必死。
ユーモアだけでなくフロストの人情味溢れる意外な行為でホロリとさせたり、本来の警察小説としての構成も一級品の出来です。
上下巻1000ページを一気読みできる面白さ。

No.1963 4点 Another エピソードS- 綾辻行人 2013/08/18 17:23
あの夜見山北中学の見崎鳴が語るアナザー・ストーリー。

彼女が湖畔の屋敷で出合った、”記憶を失くした幽霊”の自分探しの物語ですが、アニメか何かのシナリオかと思うほどスカスカの内容でがっかりしました。300ページ余りを2時間で読めるし、短編でも充分書ける内容だと思う。
また、このような手法によるサプライズの演出は食傷気味であり、今更どうかと思うところがあります。

No.1962 6点 ムーンズエンド荘の殺人- エリック・キース 2013/08/13 20:04
雪の山荘に集められた探偵学校の卒業生9名が、密室状況で次から次へと殺されていく、”そして誰もいなくなった”型の本格パズラー。
三連発の密室トリックに関していえば、「君たち、探偵学校で”密室講義”を受講しなかったのかよ!」というツッコミを入れたくなるような安直で残念なレベルですが、クリスティの名作に挑戦したプロット上の仕掛けはまずまずかなと思います。(細かいことを言えば、気付かないのは不自然なような気がしますが)。
物語の前半は、多くの登場人物で視点がコロコロ変わるのと、過去の事件の回想&言及がたびたび挿入されるため乗れないところがありますが、残り人数が3名ほどになった終盤の展開がなかなかスリリングです。
ともあれ、現代の米国では絶滅危惧種と認定されるようなパズラーがいまどき書かれたこと自体が驚きであり、今後に期待してプラス1点を献上。

No.1961 5点 キルマスター①/スパイの城- ニック・カーター 2013/08/12 21:50
米国秘密機関”AXE”に所属する工作員ニック・カーターを主人公とするB級のスパイ冒険スリラー。”キルマスター”とは殺人許可書をもつスパイの意味、サブタイトルの①はシリーズの1作目ではなく邦訳の1冊目を表す。本シリーズも60年代に続々と書かれた007シリーズの亜流といえます。
世界征服を目論む狂信的大富豪という敵役がチープな設定ながら、ストーリーは核ミサイル施設を有する北海の孤島への”敵地潜入モノ”で、冒険スリラーのプロットとしてはそれなりに面白いです。ただ、いたずらに煽情的シーンを何度も挿入しているため興醒めの部分がかなりあります。とくに色情狂のペンドラゴン夫人というのが強烈すぎる。読者サービスとしてのサディスティック&エロチックなシーンは当時のスパイものの必須要素なんでしょうかね。

なお、”ニック・カーター”という筆名は19世紀末から何人もの作者によって書き継がれたハウスネームで、この作者名と同じ名前をもつ主人公は最初は名探偵役として登場しており、その短編集は「クイーンの定員」にも選ばれています。

No.1960 6点 わが名はアーチャー- ロス・マクドナルド 2013/08/11 13:35
私立探偵リュウ・アーチャー登場の短編集。デビュー作の「女を探せ」(1946年)をはじめ50年代半ばまでに発表された7作品が収録されています。女性が重要な役割をしている話ばかりなので、邦題全てに「女」が入っていますが、原題とかけ離れたタイトルのものは少し違和感がありました。

タフガイ探偵ぶりを前面に出した普通のハードボイルド風作品もあるものの、中期以降のものは、長編並みに複雑な人間関係と入り組んだプロットになっていて、意外性の追及とともに悲劇的な結末も用意されています。続けて読むと疲れてしまう濃さがありますが。
また、「雲をつかむような女」や「ひげのある女」など、EQMMに掲載された作品は本格ミステリ顔負けのトリックもあります。
ロスマクの短編はそれほど作品数も多くなく、長編に比べてあまり話題にもならないように思いますが、期待以上で満足です。

No.1959 6点 マッターホルンの殺人- グリン・カー 2013/08/06 12:01
シェークスピア劇俳優でアマチュア登山家アバーグロンビー・リューカー・シリーズの5作目。ただし、本名のスタイルズ名義で書かれた初期3作はリューカーが諜報部員を務めるスパイ冒険スリラーらしいので、探偵役としては2作目の登場になる。

本書も、先日読んだ6作目の「黒い壁の秘密」同様に、グリン・カー作品の魅力である登山・山岳描写を背景に、山の麓のホテルに滞在する旅行客内で発生した殺人を描くオーソドックスな本格ミステリになっていて、伯爵夫妻や好奇心旺盛な中年女性など登場人物はまさにクリスティ風で読み心地がいいです。
正直すぎる伏線の張り方で真相が分かりやすいのが残念ですが、雄大な作品舞台に相応した豪快なアリバイトリックが印象的です。

No.1958 5点 カメレオン- ウィリアム・ディール 2013/08/03 11:00
アラスカ沖の北極海に浮かぶ海底油田施設が何者かに襲撃され、世界各地で石油関連企業の重役らが次々と暗殺される。
幼いころ日本で古武術と禅の精神を会得した元CIA職員でジャーナリストのオハラは、事件の背後にある謀略計画と謎の人物”カメレオン”の正体をつかむため、同僚女性記者とともに京都へ飛ぶが-------。

このような粗筋になるが、物語の本筋が見えてくるのが残り80ページを切ったあたりから。場面転換も多く、新しい人物が登場し名前を覚えたところで殺されていくし、中盤までは誰が主人公かも判然とせず、無駄と思えるようなエピソードが頻繁に出てくるので、読み続けるのが苦痛なところがあった。終盤はスリリングな展開で盛り返しているが。
CIAに狙われる元CIA職員の主人公ということで、「グレイマン」+「シブミ」という趣きもあるものの、全体的にB級臭が漂う国際謀略スリラーという読後感でした。

No.1957 6点 骨董屋探偵の事件簿- サックス・ローマー 2013/07/28 20:41
事件現場で眠れば被害者や犯人の残留思念が読み取れるという特殊技能を使ったユニークな探偵、老骨董屋モリス・クロウの探偵譚10編を収録。原題は”The Dream-Detective”で、本書も「クイーンの定員」に入っている短編集です。

古代エジプトのミイラの首が連続して切断される事件や、幽霊屋敷で鳴り渡る哄笑の謎など、オカルト趣向が前面にでている作品が多いが、最終話を除いて合理的に解決される。また、密室状況からの美術品の消失などの不可能犯罪を扱ったものも多く、作風は思考機械シリーズに似ているように思う。
ただトリックは時代性ゆえに無茶なものが目につき、とくに等身大の彫像を密室から消失させた「象牙の彫像」のトリックなど、バカヤロー・レベルだけど思わず笑ってしまった。
枕がわりのクッションを携帯してクロウに同行する娘のイシスや、骨董店に飼われている悪態をつくオウムなど、脇役のキャラクターも印象的で、連作ものとしてはなかなか面白かった。

No.1956 6点 追憶の殺意- 中町信 2013/07/26 19:06
本書は昭和54年に作者通算3度目の江戸川乱歩賞最終候補作になった「教習所殺人事件」を改題しトクマノベルズから「自動車教習所殺人事件」と題して出版されたもので、来月創元推理文庫から「追憶の殺意」のタイトルで復刊される予定の作品。久々に再読してみました。

作者の代名詞である読者を誤誘導する叙述トリックは使われておらず、温泉バスツアーというお決まりのプロットも出てこない、密室+アリバイ崩しをメインにしたオーソドックスな、”ジス・イズ・ザ・昭和の本格ミステリ”といった内容です。
フーダニットを主軸とする通常の中町ミステリと違って、密室の謎が解けた後はアリバイ崩しが中心になっている点や、刑事が探偵役というところがこの作者にしては珍しく、作風としては鮎哲の鬼貫警部モノに似た味わいがありました。
二段構えのアリバイトリックのうち2つめが綱渡り的ですがユニークで、教習所を舞台にした意味が最後に浮かび上がってくるところが巧妙です。

No.1955 6点 ミステリガール- デイヴィッド・ゴードン 2013/07/23 18:58
働いていた古書店が潰れ、妻からは別れ話を切り出された小説家志望の「ぼく」は、探偵助手の仕事をみつけ、巨漢のひきこもり探偵から謎の美女の素行調査を命じられる-------。

「このミス」をはじめ一昨年のミステリランキング海外部門の三冠に輝いた「二流小説家」の作者による第2作。
謎の美女の正体とカルト映画フィルムに絡む殺人事件に巻き込まれる主人公は、前作の主人公とほとんど同じキャラクター。このダメ男・サムの自虐的な語り口が絶妙で、友人の映画オタクやネロ・ウルフもどきの巨漢の探偵など、個性的な脇役陣のキャラクターも面白い。(饒舌なウンチク部分が脱線ぎみなところもあるが)。
ただ、前作では弱いなりにも成功していた謎解き部分が今回は微妙な出来になっている。とくに終盤に入って、次々と真相が明かされる手段が、カギを握る三人の人物によるなが〜い独白という構成には疑問が残る。

ところで、本書も日本で映画化されるとして配役を考えてみた。
主人公のサムは「二流小説家」と同じ上川某、レスビアンの古書店主には剛力で(彼女にはミスキャストという言葉はない)。巨漢の探偵にはマツコデラックスを男装させてはどうか。

No.1954 6点 キリオン・スレイの再訪と直感- 都筑道夫 2013/07/21 18:06
前衛詩人で居候の米国人、キリオン・スレイが探偵役を務めるシリーズの第3短編集。

収録作品のネタは、ミッシングリンク(パターン探し)、ダイイングメッセージ、名探偵の存在を前提とした奸計など、どことなくクイーンを意識したプロットが多い印象をうけた。
ただ冒頭に提示される謎はいずれも不可思議で惹きつけるものがあるものの、真相が腰砕け気味になっている作品が目につく。
また『野生時代』に連載されていたものは、シリーズの従来作品と比べて枚数がやや多めなため、犯人の動機や事件背景などに筆を費やし物語に厚みを感じる反面、その分ロジック展開にキレがないようにも感じる。
そのなかでは、「下足札が死につながる」がホワイ&ハウダニット両面で感心できた作品。

No.1953 5点 震える山- ポール・ソマーズ 2013/07/18 22:04
英国政府の某研究所に勤務する物理学者が何者かに拉致誘拐される。たまたま事件の発端に関わった新聞記者カーティスは、身代金を携え被害者の娘クララとともに、犯人グループが指定した通称”震える山”のふもとに赴くことになるが-------。

アンドリュウ・ガーヴの別名義による冒険スリラー。
物語前半が新聞社を舞台にした事件記者たちによる誘拐事件の真相追及編、後半が一転、洞窟内の冒険活劇を主体としたサスペンス編という構成で、名義が違っていても典型的なガーヴの作品世界でした。
ただポケミスで160ページと短めなので物足りない思いがした。主人公とライバル紙の女性記者とのやり取りなど軽妙で面白く、現代作家であればもう少し絡みの部分を膨らませていたのではと思う。また、(これは作者に責はないけれど)登場人物表で薄らと事件の裏の構図が読み取れてしまったのは残念だった。

No.1952 6点 抹殺の意志- 草野唯雄 2013/07/16 17:46
人気推理作家・城戸の小説を模倣したかのような事件が連続して発生し、状況から作者本人が犯人だと疑われる。友人で担当編集者でもある「わたし」は、城戸のアリバイを求めて奔走するが-------。

江戸川乱歩賞候補作を改稿改題した作者のデビュー長編。
城戸の内面描写を排して、第三者の「わたし」の視点で事件が語られていく構成がミソで、終盤を迎えて犯人像を二転三転させながら、アンフェアぎりぎりの大仕掛けが最後の最後で明らかになる。(現代から見ればそれほどのサプライズ感はないかもしれませんが、まあ新本格以前ということで)。
写真をもとにある女性の所在を探し求めるパートなど、中盤に無駄と思える場面もあるもののサスペンス性も兼ね備え、事件の背景調査のため訪れた四国松山でのシーンの伏線の張り方もなかなか巧みだったと思います。

No.1951 6点 たんぽぽ娘- ロバート・F・ヤング 2013/07/14 11:36
河出書房新社の”奇想コレクション”の最終巻。ずいぶん前から予告されていながら出版が止まっていましたが、ビブリア古書堂ブームの後押しもあってか、本書をもって10年がかりでようやくシリーズ全20巻が完結。

”おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた。”----- という名フレーズですっかり有名になったロマンチック時空SF「たんぽぽ娘」の再読(前回は井上一夫、今回は伊藤典夫訳)が目当てでしたが、”時の流れ”という同じ素材を使い、抒情性豊かで切ない余韻を残す遺作「荒寥の地より」も負けず劣らず素晴らしい作品です。
シリーズの”奇想”というコンセプトという点では「河を下る旅」や「主従問題」が相応していると思いますが、ヤングの持ち味はやはり甘いロマンチックなラブ・ストーリーで、冒険ファンタジーでありながらボーイ・ミーツ・ガールの物語に帰結する「ジャンヌの弓」なども印象に残りました。

No.1950 6点 私刑(リンチ) 大坪砂男全集3- 大坪砂男 2013/07/12 17:41
創元推理文庫版全集の3巻目。いちおう<サスペンス編>という括りがありますが、戦後混乱期を時代背景とした無頼漢小説や昭和人情話風のクライム小説を中心に、ホラー幻想風、犯人当てパズラー、西部劇&スリラー映画のノベライズなど、かなり幅広い様々なジャンルの作品が収録されています。

探偵作家クラブ賞受賞の表題作「私刑」は結末にちょっとしたヒネリがある無頼漢小説ですが、物語そのものよりも一人称形式での叙述の技巧が楽しめる作品。これをトリックとして使用せず単に読者を翻弄するだけのものになっているのがいかにも作者らしい。こういった遊び心は、弟子だった都筑道夫の前衛的な初期長編群に通じるような気がする。
ほかに、”病院横丁の首縊りの家”の大坪ヴァージョン「ある夢見術師の話」、ホラー幻想譚の秀作「男井戸女井戸」、「花売娘」などが印象に残った。

No.1949 6点 火よ燃えろ!- ジョン・ディクスン・カー 2013/07/10 13:28
昨年作家デビューしたディクスン・カーの孫娘シェリ・ディクスン・カーの『Ripped』は、現代娘がヴィクトリア朝時代のロンドンにタイムスリップし切り裂きジャックと対決する歴史ミステリのようで、Amazonのレビューを見る限り評判は上々らしい。

タイムスリップを扱った歴史ミステリといえば祖父の十八番で、本書もそのタイプの一冊。
主人公チェビアト警視が19世紀初めにタイムスリップし、創設間もないロンドン警視庁の一員として活躍するといった内容で、ロマンス&冒険活劇ものの秀作だと思います。チェビアトが乗っていたタクシーが二輪馬車に変わる冒頭のタイムスリップ・シーンなど巧いです。
衆人環視下の謎の銃撃という不可能状況の殺人を扱っているのはカーの歴史モノでは珍しいですが、重要な役割のアイテムに関しての作者のあとがき解説は、やや言い訳じみているように感じた。
タイムスリップという特殊設定を活かした仕掛けと言う点では「ビロードの悪魔」に一歩譲るかな。

No.1948 5点 花ことばは沈黙- 結城昌治 2013/07/08 23:01
「わたし」ことエリート会社員の風間は、雨宿りのために入った喫茶店で偶然出会った謎めいた若い女性の魅力にのめりこむが、ある日、一人の男が風間の前に現れて------。

妻を亡くしたが、親の遺産があり、バーの経営を任せる愛人を囲い悠々と暮らすエリートの会社部長の主人公というのがなんとも羨ましいw 中盤までは。
物語序盤の雰囲気は、連城三紀彦風の技巧的な恋愛ミステリを思わせるのだけど、脅迫者の男が登場してからの展開がテレビの二時間ドラマの原作を読むようで、一気に興味が失せてしまいました。黒幕の正体は物語の流れから容易に想像できてしまう。作者の作品の中では平凡な出来と言わざるを得ない。

No.1947 7点 白雪姫には死んでもらう- ネレ・ノイハウス 2013/07/06 16:18
村祭りの夜に起きた2人の少女失踪事件の秘密を抱える閉鎖的な村に、刑期を終えて犯人と目された男が11年ぶりに帰ってきた。折しも若い女性の白骨死体が発見されたことから、オリヴァー首席警部と女性警部ピアのコンビは過去の事件の真相に迫っていくが-------。

「深い疵」につづくオリヴァー&ピア・シリーズの4作目(邦訳は2作目)。”ドイツ版横溝ミステリ”とか”ドイツ版「八つ墓村」”というコピーもありますが、舞台設定がそういう感じなだけで、おどろおどろしさや伝奇的な雰囲気はそれほどありません。
一人の男の帰郷とある少女の好奇心が触媒となって、多数の村民と関係者たちのおぞましい秘密が少しづつ明らかになっていく。捜査小説としてのスリリングな展開の面白さと、オリヴァー自身を含めた様々な登場人物の人間ドラマが融合した構成が非常に巧みだと思います。
捜査側と村社会側の両サイドとも、最終的に女性が主導的な役割になるのは、いかにも女性作家の作品という感がある。

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