皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.2000 | 6点 | セイレーンは死の歌をうたう- サラ・コードウェル | 2013/11/08 20:31 |
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| テイマー教授は、チャネル諸島のジャージー島に出張中の教え子カントリップからのテレックスを読んで驚く。巨額の信託財産を巡る管財人会議にアドバイザーとして出席していたカントリップだが、またひとり管財人が不審死したという内容だった-------。
オックスフォード大学の法学教授(性別不明の)ヒラリー・テイマー教授が探偵役を務めるシリーズの第3作。 テイマー教授や、教え子で若手弁護士の面々の会話が醸し出す英国式知的ユーモアが本書の魅力です。能天気なカントリップと同僚の粗忽娘ジュリアとのやり取りに加え、今作ではカントリップの叔父のドタバタ騒動が抱腹ものです。 ミステリ的には、大掛かりなミスディレクションがあざとい(あれだけ筆を費やしておいて...)ながらも、伏線・手掛かりもちゃんとしており、端正な犯人当てパズラーに仕上がっていると思います。再読ながら完全に真相を忘れており、前回も同じところ(モナコ公国のホテルでのある場面)で欺されたことを読後に思い出しました。 |
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| No.1999 | 4点 | 名探偵の証明- 市川哲也 | 2013/11/06 22:57 |
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| そのめざましい活躍から80年代には”新本格ブーム”まで巻き起こした「おれ」こと名探偵・屋敷啓次郎。時は過ぎ、老いて引退を考える名探偵のもとにかつての相棒が訪ねてくる-------。
今年の鮎川哲也賞受賞作品。(先日の授賞式でのスピーチ冒頭が「こんな名前ですみません」だったが”市川哲也”は本名)。で、タイトルのとおり名探偵の存在意義と再生の物語ですが、率直に言うとやや期待外れでした。 紹介文には受賞作品の枕詞の如く”選考委員絶賛の〜”とありますが、巻末の選評を読んでも各氏条件付きの推挙で、とても絶賛とは受け取れないです。 プロローグの事件と謎解きが新本格第一世代の某2大名作を合体したようなパロディ風なのが面白く、続く本編に期待を抱かせるものでしたが、読み進めて明らかになる作品のテーマは新味に欠け、密室などのトリックも工夫がないように思いました。真犯人の動機の点でも説得力に欠けるように思います。 |
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| No.1998 | 7点 | シャドウ・ストーカー- ジェフリー・ディーヴァー | 2013/11/04 17:58 |
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| 人気女性歌手ケイリーは男性ファンのストーカー行為に悩まされていた。故郷の街でのコンサートの準備を進めるなか、スタッフの一人が惨殺され、さらにケイリーのヒット曲の歌詞をなぞるように第2の殺人が発生する-------。
カリフォルニア州捜査局の”人間嘘発見器”キャサリン・ダンスを主人公とするシリーズの第3弾。地元モンテレーを離れ、休暇中に、友人ケイリーのために捜査に協力するという設定。 次々と事件が起こるものの、正直なところ、中盤過ぎまではやや緊張感に欠け、それほどリーダビリティが高いとは言えない。 どうせ怪しげなストーカー男が実は....というような展開だろうと予想もつく。しかしながら、リンカーン・ライムとアメリアが”友情出演”で登場するあたりから、予想を裏切る展開の連続でぐいぐい読まされる。何度もひっくり返る犯人像が楽しめたし、ラストもなかなか感動的ないいシーンだった。 |
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| No.1997 | 5点 | 名探偵乱歩氏- 黒木曜之助 | 2013/11/01 20:32 |
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| 休筆宣言をして日本各地を放浪していた江戸川乱歩は、ひょんなことから前の年の昭和6年に千駄ヶ谷で発生した”高利貸し殺し”事件に首を突っ込むことになる。元新聞記者の青年を助手に調査を進めるが、この市井の事件が国際的な陰謀を孕む意外な様相を見せ始め、関係者が次々と殺されていく--------。
黒木曜之助は乱歩賞の候補になったこともある推理作家ですが、「津山三十人殺し」など別名義のノンフィクション・ライターとして有名です。本書も昭和6年に実際に起きた事件を端緒に、乱歩のエッセイ風半自叙伝「探偵小説四十年」に書かれたエピソードを巧く挿入しながら語られるので、実録小説を思わせるところがありました。 ところが読み進めるにつれて、共産党の暗躍やロシア・ロマノフ朝の金塊が絡む陰謀など、とんでもない方向に話が進展していきます。登場人物間のつながりや犯人の工作が、偶然に頼ったご都合主義的な側面がかなり目立ち、謎解きミステリとしての出来でいえば不満点が多い作品です。ただ、乱歩の友人で探偵作家&弁護士の浜尾四郎や海野十三、阿部定など、登場する実在人物も多彩で物語自体はそれほど退屈ではなかった。プロローグの黄金仮面をかぶった二人の女性によるレスビアンショーなど、煽情的シーンが多いのは乱歩作品へのオマージュだろうか。 |
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| No.1996 | 6点 | イン・ザ・ブラッド- ジャック・カーリイ | 2013/10/29 20:15 |
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| 「僕」こと、カーソンと相棒のハリーは偶然に漂流するボートの中に赤ん坊を発見し救出するが、その収容先の病院が怪しい男に襲撃される。一方、極右主義者で有名なキリスト教系説教師が倒錯プレイの最中に変死する事件が発生、刑事コンビは両方の事件の背景を捜査することになるが--------。
”百番目の男”カーソン・ライダー刑事シリーズの第5弾。前作で兄ジェレミーの問題に一区切りつけたこともあってか、今回は原点回帰したような、カーソンと黒人刑事ハリーのバディもの警察小説風の趣がありました。 2つの並列する事件を同時に捜査する展開のため、プロットがややごちゃごちゃしている感があるものの、最後は複数の伏線を回収し巧くまとめ上げていると思います。ただ、ジャック・カーリイの得意技である関係者の”裏の顔”によるサプライズ演出が、今回はちょっと過剰かなと思わなくもありません。 |
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| No.1995 | 7点 | アリス殺し- 小林泰三 | 2013/10/27 21:30 |
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| 女子大学院生の栗栖川亜理は、不思議の国に迷い込んだアリスの夢を続けて見る。その幻想世界で、ハンプティ・ダンプティの墜落死を発端に住民たちの不審死が続発するが、現実世界の大学においてもリンクするように同様の事件が起きていることに気が付く--------。
グロテスクなホラーやSFも書く作者の持ち味がうまく盛り込まれた本格ミステリという印象。 帽子屋や三月兎など”不思議の国”という異世界の住民たちのかみ合わない会話のやり取りや、グロテスクな殺人手段の再現描写など、ちょっと勘弁してと思うところもありましたが、異世界と現実世界をリンクさせるルールが明らかになった後の、途方もない構図の反転には驚いた。〇〇トリックの複数活用や名前によるミスディレクションもうまく効いていると思います。 ある人物に対する最後の処遇については、かなりブラックで残虐でありながらも、笑えてしまう自分が恐ろしいw |
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| No.1994 | 6点 | 火の玉イモジェーヌ- シャルル・エクスブライヤ | 2013/10/25 22:14 |
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| イギリス海軍省情報局の古株タイピスト・イモジェーヌは、ある日突然、局長から臨時の諜報部員に抜擢され、故郷スコットランドのハイランド地方へ重要書類を運ぶ任務を命じられる---------。
気性も思い込みも烈しい赤毛の女情報部員・イモジェーヌ・マッカーサリーを主人公としたユーモア・スパイ小説の第1作。 読者には敵側のスパイだと明白な三人の男たちに次々と騙され、逆に味方側を疑うという見当違いの行動を繰り返しながら、収まるところに収まるドタバタ振りが面白い。とくに村の駐在巡査部長とのやり取りには笑いのツボにはまった。 ジャンルはどうみても「ユーモア小説」に分類すべきだと思っていたら、最終章でスパイ小説らしいドンデン返しが待っていた。 エクスブライヤはフランス人作家ながら、訳出されている作品を見る限り、本書の英国をはじめスペイン、イタリアなど、本国フランス以外を舞台に、その国の人物を主人公にしたミステリばかりを書いている。ちょっと不思議な作家だ。 |
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| No.1993 | 4点 | 白戸修の逃亡- 大倉崇裕 | 2013/10/24 22:55 |
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| 中野駅界隈に近寄ると必ずトラブルに巻き込まれる体質?の白戸修を主人公としたシリーズの第3弾。
今回はシリーズ初の長編ということで、短編での軽本格モノとは若干違って、何者かの策略によって、お台場のイベント会場を標的とする爆弾男に擬せられた主人公の逃亡劇がメインとなっている。 謎解きの要素はさらに薄めに感じられ、途中までは作者の嗜好が前面に出ていた「無法地帯」や「警官倶楽部」に似たテイストを感じた。最後にはちょっとした仕掛けが暴かれるのだけど。 前の2作で登場したキャラクターたちが次から次へと”助っ人”として現れるのだが、これがいまいち記憶にない。本書から読んだ人には、なおさら何が何やら訳が分からないのではなかろうか。 |
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| No.1992 | 6点 | 拷問- ロバート・バーナード | 2013/10/21 22:59 |
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| ペリー・トリンワン警部は、タイムズ紙の死亡欄で、不仲で絶縁状態にあった父親の死を知る。しかも父親は趣味の吊り刑具という中世の拷問具にかかって変死していた------。
先月訃報が伝えられたロバート・バーナードのトリンワン警部(のちに警視)シリーズの第1作。 地方の旧家トリンワン一族が暮らす館を舞台にしたフーダニット・ミステリで、芸術家肌で変人ぞろいの伯父や伯母、従兄たちを相手に捜査を行うという、警部の微妙な立ち位置が効いています。警部の一人称で語られる彼らのキャラクターだけでも面白いですが、最終章で関係者を一堂に集めて犯人を指摘する警部のロジックもなかなかのものです。 また、一件落着のあとに警部が陥る”窮地”がシニカルで笑えます。 |
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| No.1991 | 6点 | 松谷警部と目黒の雨- 平石貴樹 | 2013/10/19 21:57 |
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| 目黒のマンションで殺された女性の身辺を探っていくと、大学時代のアメフト部OBがからむ過去の2つの変死事件との関連が浮上する。松谷警部は、所轄の女性巡査とともに過去の事件の再捜査に乗り出すが------。
容疑者候補である元アメフト部の関係者が多くて、現在と過去の事件それぞれのアリバイを頭の中で整理するのが大変だった。フーダニットが主眼なので多少やむを得ない側面もあるが、もう少し単純化できそうな気もする。 「動機は後回し」の更科ニッキ風の女性巡査・白石のキャラクターがいまいち分かりずらいが、現場の状況からアリバイ工作を解き明かし、犯人を絞り込むロジックはまずまずかなと思います。 創元推理文庫は国内ミステリでも翻訳モノに倣って、英語版タイトルを表示しているが、「目黒の雨」という”邦題”も味があるけれど、アメフト用語でもある”Unnecessary Roughness"という英語版タイトルが秀逸。 |
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| No.1990 | 7点 | 刑事たちの三日間- アレックス・グレシアン | 2013/10/17 21:38 |
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| 駅構内でトランク詰めにされた刑事の死体が発見される。地方警察から、創設されたばかりのロンドン警視庁・殺人捜査課に赴任した新米警部補のウォルター・ディは、警視総監からこの同僚刑事惨殺事件の捜査を命じられるが--------。
前年に起きた切り裂きジャック事件の恐怖が残るヴィクトリア朝ロンドンを舞台にした警察小説。 新参者の警部補、若手巡査、法医学検査官という三人の主人公の視点だけでなく、異常殺人者の内面描写を含めた多くの視点を採用しているうえに、複数の事件が絡むモジュラー形式という錯綜した物語になっていますが、語り口がライトなこともあって意外と読み易かった。 猟奇的連続殺人や幼児連れ去り虐待など事件の様相は陰惨ながら、登場人物が脇役にいたるまで活き活きとしていて魅力的、ヒューマニズムに溢れた内容になっている。シリーズ第1作ということもあって前半の展開にモタモタしたところもあるが、最後はうまくまとめていると思います。 |
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| No.1989 | 6点 | 転迷- 今野敏 | 2013/10/12 18:40 |
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| まるで前作「疑心 隠蔽捜査3」のアノ事がなかったかのごとく、原理原則を貫く男、大森署のスーパー警察署長・竜崎が帰ってきた。
今回は、国の縦割り行政なんのその、外務省や厚労省、公安までが絡む複数の事件を、粛々とハンコ押し作業を続けながら一纏めに解決に導く。刑事部長・伊丹の竜崎への対応をはじめ、組織として「ありえねぇ〜」とツッコミを入れながら読むのが楽しい。 また、ラストの竜崎の決意がカッコイイ。 しかし、シリーズ・タイトル”隠蔽捜査”というのは、ほとんど内容に合致しなくなってきている気もするが。 |
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| No.1988 | 7点 | エラリー・クイーンの騎士たち- 評論・エッセイ | 2013/10/10 23:06 |
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| 日本の作家がエラリー・クイーンの”クイーン的要素”のどの部分をどのように取り込み発展させたかを考察した評論集。数年前に出た同じ著者の「エラリー・クイーン論」がかなり面白かったのでこちらも読んでみました。
クイーン的要素とは、フェアプレー精神と読者への挑戦、ミステリ作家の名探偵が事件を小説化する構成、トリックよりロジックの重視、ダイイングメッセージの多用、偽の手掛かりと後期クイーン的問題などになるが、取り上げた各作家毎に異なった要素を補助線にして、その小説技法を分析している点に感心した。それぞれ切り口が違う。 横溝正史、鮎川哲也や新本格以降の作家(〜青崎有吾まで)を取り上げているのは想定していたが、「ローマ帽子」と「砂の器」の動機をネタに、松本清張に一章を割いているのには驚いた。多分に我田引水的なところがあるように思いますが。 とはいえ、それぞれの作家の小説技法の分析は斬新でロジカル、読んでいて非常にスリリングです。とくに後期クイーン的問題などをネタに「隻眼の少女」をテキストにした麻耶雄嵩編は刺激的な内容でした。 取り上げられた日本作家の作品だけでなく、(新訳版が次々出ている)クイーン作品も再読したくなる反作用効果もある。 |
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| No.1987 | 5点 | 刑事コロンボ13の事件簿- ウィリアム・リンク | 2013/10/09 20:37 |
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| TV版「刑事コロンボ」や「エラリー・クイーン」「ジェシカおばさんの事件簿」など、数々のミステリ・ドラマの脚本をリチャード・レビンソン(1987年死去)とのコンビで手掛けてきた作者の、刑事コロンボ・オリジナル作品集。
ジャンル投票は”倒叙”としましたが、7編の倒叙と6編の非倒叙作品が交互に収録されています。ただ、捜査側から描写される非倒叙もののコロンボ警部はごく普通の刑事で、ピーター・フォーク演じるドラマのイメージとは違う感じを受けます。やはり、犯人視点で描写されるコロンボのほうがしっくりきます。 収録作の中では、ロイ・ヴィガーズの迷宮課モノを連想させるプロットの「写真の告発」がよかった。 あとは「黒衣のリハーサル」「暗殺のレクイエム」がまずまずの出来かなと思いますが、全体的にコロンボが犯人を落とす”詰め手”にキレや意外性がないのが物足りないです。 |
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| No.1986 | 7点 | ポーカー・レッスン- ジェフリー・ディーヴァー | 2013/10/07 12:04 |
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| 「クリスマス・プレゼント」(Twisted)に続く第2短編集。
原題が”More Twisted”と自らハードルをあげる挑戦的なタイトルな上、オビの惹句が”どんでん返し16連発”と煽っているので、否が応でも期待せざるを得ない。 実際にかなり身構えて読んでいても、作者の仕掛けた企みに騙されたものがいくつもあった。ただ、続けて読むと感覚が麻痺して多少のことでは驚かなくなるがw 印象に残った作品を挙げていくと、ラストに主人公がとんでもない方向から一撃を喰らう「動機」、法廷ものサスペンスがラストに暗転する「一事不再理」、重層的な騙しあいゲームの「ポーカー・レッスン」。この3作品は、ミスディレクションも伏線の張り具合も絶妙で、編中の個人的ベスト3。 「生まれついての悪人」の連城ミステリを思わせる仕掛けの凄さは編中で一番だと思うが、技巧に走りすぎていて早い段階で構図が分かってしまった。「ウェストファーレンの指輪」は、ヴィクトリア朝時代のロンドンが舞台の歴史ミステリ。この時代にリンカーン・ライムのような捜査法を用いる探偵が登場する楽しい作品だった。 |
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| No.1985 | 5点 | クラヴァートンの謎 - ジョン・ロード | 2013/10/05 14:34 |
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| 数学者プリーストリー博士が”痕跡のない毒殺”の謎に挑む、シリーズの14作目。(翻訳家・渕上痩平氏のブログに訳載された「クラヴァートン事件」で読みました)。
ジュリアン・シモンズから”退屈派”という有難くないレッテルを貼られたジョン・ロード。物語の展開が平板なうえ後期作品はプロットがパターン化し、人物描写にも魅力がない、というのが大方の評価のようです。 初期作品の本書(シリーズは70作以上書かれているので14作目は初期のうちでしょう)は、冒頭からプリーストリーが事件にアクティヴに関るため、延々と捜査状況を聞かされるといった退屈さはありません。クラヴァートン卿の死因や遺言状変更の謎を巡って、博士の思考内容・推理過程が丁寧過ぎるぐらい繰り返し語られる構成がくどすぎる感じがありましたが。 以降の作品で、土曜の夜の例会のレギュラーとなるオールドランド医師の意外なプライベート事情や、終盤のスリリングな降霊術会の場面など読みどころは多いですが、毒殺トリックは(伏線はあるものの)文系読者の身には見破るのは無理です。 |
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| No.1984 | 5点 | 零人 大坪砂男全集4- 大坪砂男 | 2013/09/30 22:14 |
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| 創元推理文庫版全集の最終巻。幻想小説編、コント編、SF編の三部構成に加えて、250ページに及ぶ著者に関する随筆・雑文などの資料が付されている。
伊豆山中の植物幻想にドッペルゲンガーを絡めた初期の幻想譚「零人」が目玉作品ということになるが、後期作品は凡作ばかりという評判どおり、他の作品にはこれといったものがなかったのが残念。 強いて挙げれば、アシモフのロボット工学三原則を前提に不可能状況下の殺人を扱ったSFミステリ「ロボット殺人事件」が大坪作品とは思えない本格モノという点で目を引いた。 むしろ、大坪に関わるありとあらゆる文献を集めた資料編の充実ぶりがすごい。とくに色川武大氏のエッセイは短編小説かと思わせる秀逸さだ。いつもながら、編者・日下三蔵氏の丁寧な仕事ぶりに敬意を表したい。 (「魔法少女まどか☆マギカ」のアニメ脚本家・虚淵玄氏が大坪のお孫さんという情報にはびっくりした)。 |
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| No.1983 | 4点 | 笑う娘道成寺 女子大生桜川東子の推理- 鯨統一郎 | 2013/09/29 20:20 |
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| バー〈森へ抜ける道〉の常連客から話題に出てきた事件の真相を、女子大生・桜川東子がカウンターの片隅で謎解くバー・ミステリの(たぶん)第4弾。
今回のネタは歌舞伎。「女殺油地獄」「曽根崎心中」「白浪五人男」「勧進帳」「忠臣蔵」「娘道成寺」の6つの演目の裏の構図を暴きつつ、相似形のような現在の事件の謎解きに結び付けるという同じパターンの連作短編集になっている。ただ、例によって謎解きミステリとしては論理性に乏しく、あまり見るべき点がないように思う。 各編での前振りで、懐かしの昭和の俳優ネタなどを巡ってのマスターと常連客とで交されるボケとツッコミが笑えるが。 |
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| No.1982 | 7点 | ハヤカワ・ミステリ総解説目録〈1953年‐1998年〉- 事典・ガイド | 2013/09/28 13:57 |
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| ミステリマガジン今月号はポケミス創刊60周年の特大号。企画として楽しみなのは、総勢71名の作家・書評家らによるアンケート「私の好きなポケミス・ベスト3」ですね。
で、この枠をお借りして”ポケミス愛”をぶち捲きたく、自分なりに色々なベスト3を選定してみました。書評でもなんでもないのですがご容赦ください。 ベスト3を選ぶに際して、”文庫化されておらずポケミスでしか読めない”という条件(縛り)が結構キツかった。まあ、いい作品はふつう文庫になっているでしょうからw そんな中、鉄板の極私的ベスト3は、「アデスタを吹く冷たい風」「ママは何でも知っている」「ドーヴァー1」で決まり。オーソドックス過ぎる選定なのでアンケートでも同様に票が集まりそう。 以下部門別にベスト3を選んでみましたが、かなり適当なので、すぐに変更がありそうです。 警察小説部門は、「スティーム・ピッグ」「雨の国の王者」「ガラス箱の蟻」。 サスペンス部門、「これよりさき怪物領域」「一日の悪」「死のようにロマンティック」。 クライム小説部門、「逃走と死と」「イマベルへの愛」「クイーン・メリー号襲撃」。 通俗ハードボイルド部門、「血の味」「第五の墓」「のっぽのドロレス」。 パスティーシュ部門、「シャーロック・ホームズの功績」「贋作展覧会」「殺人混成曲」。 お色気女探偵部門、ハニー・ウエスト、イモジェーヌ、メイヴィス・セドリッツ。作品はどれでもいいw 国内作家部門、「殺人鬼」「黒死館殺人事件」「ドグラ・マグラ」。 (最後のこれは冗談。ポケミスで出た国内作品はこの三作だけなので。他の出版社から出ているし、そっちのほうが読みやすい) こうして挙げてみると、やはりどの作品も文庫化は難しそうだわw |
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| No.1981 | 5点 | 落日のコンドル- 霞流一 | 2013/09/27 12:27 |
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| 暗殺組織”影ジェンシー”に所属する瀬見塚ら殺し屋10人が、豪華客船のオーナーの殺害のため船に密かに潜入するが、標的はすでに何者かによって不可能状況下で殺されていた-------。
本格ミステリと戦闘活劇小説を合体させた”本格パズル・ロワイヤル”、「夕陽はかえる」に続くシリーズの第2弾。 殺し屋メンバーの表の職業(蕎麦職人、バーテンダー、落語家や保母さんなど)の商売道具を使った殺しのテクニックが、都筑道夫の「なめくじに聞いてみろ」風で馬鹿馬鹿しいw 殺し屋の異名のネーミング・センスにも苦笑を禁じえない。 現場が船内の室内ゴルフコースや劇場なので、船上ミステリにする意味合いが希薄だと思っていたら、終盤に大仕掛けが炸裂する。無茶ではあるけれど、足跡のない殺人や敵のコンドル三兄弟の空中殺法の謎が一気に解けるところはすごい。ただ、ある小道具から消去法で犯人を絞り込むラストは正直どうでもいい感じになった。 |
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