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[ 警察小説 ] ペトロフカ、38 |
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ユリアン・セミョーノフ | 出版月: 1965年01月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1965年01月 |
早川書房 1972年01月 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | 2019/09/18 23:15 |
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旧ソビエト警察小説である。ハヤカワの世界ミステリ全集にも収録されていたな。で....大変トッツキの悪い話である。会話と行動中心の文章だが、ハードボイルド、というものでもない。結構スカスカな文体で、児童向けを読んでいるような....それでも刑事や関係者の心理描写も結構入ってるが、昔風の神視点で、あたかも19世紀の小説を読んでいるかのよう。と「こりゃ、参ったなあ」と我慢して読んでいると、慣れてくるのか何となくの愛着も湧いてくる。キャラが立ってる、という感覚でもないんだが、生暖かい目で見守っていると、ふいにモスクワの街に犇めく無名の市民たちの肖像が浮かび上がってくるようにも感じられて、やはり警察小説とは「都市」がテーマである。だから今の小説とはポイントがズレているだけで、決して成功していないわけでない。6点は甘目だがついつい...
警官のピストルを奪って強盗する二人組とその黒幕を追う刑事たちの活動と私生活を、手堅くリアルに追った作品である。政治的背景はなくて、不良青年物に近いかなあ。登場人物は多くて、しかも長ったらしいロシア名前である(当たり前だ)。パズラー的な興味はほぼないが、事件に巻き込まれる詩人志望の少年を刑事たちが気遣ったり、強盗たちのターゲットが判明して救助が間に合うか?のスリルがあったり、これはこれでお国は違えど「大衆小説」の面白味が徐々に立ち上がってくるものである。 モスクワは涙を信じない、と小説の中でも繰り返し口にのぼる言い回しがあるんだが、それが言い得て妙な都市小説である(このタイトルの映画があったなあ。ちなみにアチラでは国民的名画で、主題歌も名曲)。 |
No.1 | 5点 | kanamori | 2013/08/23 11:50 |
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巡査を殺害し拳銃を奪った二人組による強盗が続発する。モスクワ警察は特別捜査班を立ち上げ、三人の刑事が犯人グループを追うことになるが-------。
ロシア人作家による’60年代のソ連を舞台にした警察小説。タイトルはペトロフカ街38番地、モスクワ警察(民警)本部の所在地を表す。 粗筋からは緊迫の捜査小説のような感じを受けたが、それほどサスペンス性はない。特捜班の三人の刑事の私生活と、犯行に加担した少年との人間味あふれるやり取りなど、メグレものに似たテイストを感じた。犯人グループ側の行動を同時並行で描いているので犯罪小説的な面白さはあるが、そのぶん謎解きの妙味はない。 「ゴーリキー・パーク」や「チャイルド44」などの英米作家が書くような、KGBの暗躍とか共産主義体制の恐怖政治的な味付けがないのは当然と言えば当然のことながら、やはり物足りない感じがする。 |