皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.88点 | 書評数: 2474件 |
| No.2054 | 7点 | ヘッドハンターズ- ジョー・ネスボ | 2014/02/24 21:16 |
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| やり手のヘッドハンターとして人材紹介会社に勤めるロジャーは、美しい妻の画廊経営などで多額の赤字を抱えていたため、裏で絵画の窃盗という副業に手を染めていた。そこに現れたのが、完ぺきな転職条件を備えたエリート男で、しかも彼はルーベンスの幻の名画を所持しているという-------。
オスロ警察のハリー・ホーレ警部シリーズで知られるノルウェーの人気作家、ジョー・ネスボの(現在のところ)唯一の単発作品。 名画を巡るクライム・ノヴェル風の序盤から、エリート男の正体が明らかになってからは、予想外の展開が怒涛のごとく続く「巻き込まれ型のサスペンス」になっている。主人公が最初は自信家のイヤな男として描かれているので、感情移入は難しく、逆にロジャーが”ドツボにはまる”場面は、ブラック・ユーモアさえ漂っている。 窮地を脱するためのロジャーの数々のアイデアが面白いし、最後にはディーヴァーもどきのどんでん返しまで仕掛けられていたのには驚いた。ただ、確かにその部分を読み直してみても虚偽の記述はないように思えるものの、ちょっとあざとい感じを受けます。 |
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| No.2053 | 6点 | 殺人リハーサル- 梶龍雄 | 2014/02/22 18:28 |
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| 雑誌記者で人気芸能レポーターの栗田は、演歌歌手の川村鳥江から、過去に捏造記事でネタにした因縁のある前科者の男から脅迫されていると相談を受ける。そして、鳥江は自宅とナイトクラブの楽屋で二度にわたって不可解な状況で襲撃され、三度目はついに死体で発見される-------。
最初期の青春ミステリとはガラリと趣を変えた、芸能界を背景とした本格ミステリで、やや通俗的な雰囲気はあるものの、そこは梶龍雄のこと、細かに張られた伏線と二段構えの解決で、最後には見事に構図の逆転を見せてくれる。 確かに、いくつかのトリックは実行可能性という点で疑問符がつくものの、それを逆手にとって、想定外の偶発的事由が事件をより複雑化・混迷させているところが巧妙で、皮肉な真相につながっています。 傑作とはいえないですが、作者の現代もののなかでは佳作と言えるのではと思います。 |
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| No.2052 | 5点 | 友情ある殺人- ロバート・L・フィッシュ | 2014/02/20 20:33 |
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| 人類愛財団から高額の賞金を受け取った老ミステリ作家三人組が楽しい船旅を終えイギリスに帰ってくる-----そんな新聞記事を読んだ小悪党コンビは、その一人を誘拐する計画を立てる。老作家たちが株の暴落で一文無しになっていることを知らずに。
”殺人同盟”シリーズの3作目。法廷ミステリ、船上ミステリに続いて、今回は誘拐をテーマにしたクライム・コメディになっている。 誘拐された側が逆に主導権を握ったり、立場を逆転させることでスラップスティックな笑いを誘うのが、このタイプの定番の趣向で、誘拐犯の片割れでお人好しのハロルドを利用した他愛無い策略が可笑しい。例によって弁護士のパーシヴァル卿が絡んでくる後半は一種のコンゲーム的な面白さが加わる。ただ、言葉のパロディ部分など非英語圏の読者にはいまいち面白さが伝わりにくい側面もありますが(この難点は、シュロック・ホームズものと共通する)。 なお解説に、同趣向の誘拐コメディ作品として、「リリアンと悪党ども」「ジミー・ザ・キッド」「赤ちゃんはプロフェッショナル」「ドーヴァー⑧人質」「大誘拐」が挙げられているが、本書を含め出版がほとんど70年代後半に集中しているのが興味深かった。 |
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| No.2051 | 6点 | 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 | 2014/02/18 22:56 |
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| 多額の報酬を要求することで悪名高い弁護士・御子柴は、ある保険金殺人事件の上告審を引き継いだが、過去を知られたフリーライターに強請られ、深夜にライターの死体を入間川に遺棄する-------。
中学生の時に理由なく幼女を惨殺し、医療少年院に収監されていた過去を持つ、御子柴の特異な人物造形が一つの読ませどころ。名前を変え弁護士となり、保険金殺人を巡る法廷劇では主人公として事件の隠された構図を暴くという構成がユニークで、いわばダーク・ヒーローもののリーガル・サスペンスとなっている。 また、強請屋のライター殺しを担当し、御子柴に容疑をかけるのが、「カエル男」事件以来の再登場である埼玉県警の渡瀬&小手川の刑事コンビで、切れ者の渡瀬警部と御子柴の対決もスリリングです。 ただ、贖罪というテーマは明確に伝わってくるものの、二つの事件を並行して描きつつ、かなり色々な要素を詰め込み過ぎている感があるので、焦点がややボヤケてしまっているようにも思う。 |
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| No.2050 | 9点 | 裏切りの街- ポール・ケイン | 2014/02/16 22:33 |
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| 東部からロサンジェルスにやってきた流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスから賭博船の用心棒にと頼まれる。しかし一匹狼を貫くケルズは断り、やがて政界とつながる組織間の陰謀と抗争劇に巻き込まれることになる-------。
レイモンド・チャンドラーが”超ハードボイルド”と評した幻の古典クライム・ノヴェル。ダシール・ハメットのブレイクに少し遅れて同じ「ブラックマスク」誌に掲載された作者のデヴュー作品で、唯一の長編でもある。 ”ギャング・エイジ”と呼ばれる不況と混乱の’30年代のロスを舞台に、主人公ケルズが複数のシンジケートを相手に、ハードかつしたたかに戦い、翻弄する様を描く。 本書でまず一番に感心したのはプロットの完成度の高さ。物語が進むにつれ次々と新しい人物が登場するが、混乱せずストーリーを楽しめる。賭博船やボクシングの試合会場、離島にある大組織のボスの隠れ家など、印象に残るシーンも多く、ストーリーが起伏に富んで面白く読めた。ラストも冷徹ながら感動的。 書かれた時代を考慮にいれれば、ハードボイルド小説の隠れた名作といえるのではないかと思う。 |
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| No.2049 | 6点 | 前夜祭- 連城三紀彦 | 2014/02/14 18:45 |
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| 浮気(不倫)という共通したモチーフを用いて、夫婦、親子、嫁姑、本妻と愛人、上司と部下など、様々な人間模様を描く短編集。内容紹介文には正面切って”ミステリ”とは謳っていませんが、8編いずれもが表面上の人間模様が、結末でガラリと別の模様に変転する騙し絵ミステリです。
本妻と夫の愛人の心理劇と、入院中の母と娘の会話という2組4人の女性の物語が、ラストで思わぬ結合を見せる「それぞれの女が....」は、騙りの技巧という点では編中のベスト。また、本作ではカットバックでめまぐるしく視点を変える手法に、ちょっとした実験的な試みがなされています。 ほかにも、息子の結婚を反対する父親の秘密「薄紅の糸」、浮気がばれ妻に去られた主人公が知る意外な事実「普通の女」など、いずれも強引ともいえる仕掛けで構図が反転するという連城マジックは健在です。 |
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| No.2048 | 6点 | パッチワーク・ガール- ラリー・ニーヴン | 2014/02/12 18:39 |
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| 地球・月・小惑星帯の政府代表者が会議で集まる月面都市内の部屋で、代表の一人が展望窓の外からレーザー光線で狙撃される。国連警察のハミルトンが捜査に乗り出すが、現場は密室状況で、唯一の容疑者は彼の昔の恋人だった--------。
「リングワールド」などで知られる人類の未来史を描いた”ノウンスペース”シリーズの一編。本来このシリーズはハードSFですが、ギル・ハミルトン捜査官が登場する本書と中編集「不完全な死体」は、不可能犯罪などハウダニットを主軸としたSFミステリになっているようです。シリーズもの特有の名称が説明なしに出てくるので最初は戸惑いましたが、慣れれば問題ないです。 近未来SFのわりには、不可能トリックは古典的なものですが、月面という設定が小道具をより効果的なものにしているのが巧いです。また、ダイイングメッセージはアルファベットながら、日本人読者でもある程度見当がつけられる内容で、なかなかよく出来ていると思います。難点は、犯人を特定する手がかりが決定的なものではなく、フーダニットとしては不十分なところです。 |
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| No.2047 | 6点 | 黒いヒマラヤ- 陳舜臣 | 2014/02/10 18:56 |
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| ヒマラヤ学術調査団の一員でカメラマンの長谷川は、死期を迎えたチベットの高僧からある物を委託されるが、車で崖から転落死する。カルカッタから帰国途上で現地に寄った毛利は、旧友の死に疑問を抱き調査を始めるが、彼も何者かに襲われる--------。
インド最北東部、チベットとの国境の町を舞台に、ダライ・ラマの側近の高僧が遺した秘宝を巡る連続殺人を扱った異色の本格ミステリになっています。 この架空の町”カムドン”の情景描写が現実感に溢れていて秀逸。インド人、ネパール、中国系、日本人医師など雑多な人種の吹き溜まりのような辺境の地で、複数の欲望が交錯する人間ドラマは作者の真骨頂です。題材から通俗冒険スリラーのような展開になっていますが、いくつものさりげない伏線が終盤に次々と回収される構成は緻密で、アリバイを巡る重層的な推理過程もよく考えられていると思います。 ただ、真犯人の設定に意外性があるものの、最後は犯罪小説のような結末になっているのがやや不満な点です。 |
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| No.2046 | 6点 | これ誘拐だよね?- カール・ハイアセン | 2014/02/08 22:20 |
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| アイドル歌手のチェリー・パイはドラッグとセックスまみれのお騒がせセレブ。そのスキャンダルをマスコミから隠すため、チェリーの替え玉として雇われていたアンだが、熱狂的なパパラッチに人違いで拉致されてしまう--------。
トニー・ケンリックやウェストレイク亡きあと、スラップスティックなお笑いクライム小説の書き手としてカルト的人気のハイアセンの”怪人スキンク”シリーズ最新作。 ハイアセンの作品の特徴は、登場人物たちの濃すぎるキャラで、奇人変人怪人が入り乱れてドタバタ騒動を演出する。 本書では、もとフロリダ州知事の世捨て人で、マングローブが生え茂る湿地帯に暮らすシリーズキャラクターの”スキンク”と、「顔を返せ」で登場した元殺し屋でチェリー・パイのボディガード”ケモ”という、2人の怪人の初顔合わせが見どころかな。 悪徳不動産屋のパンツの中にウニを入れ睾丸をフットボール大にしてしまうスキンクもたいがいだけど、前作で片腕を失くし義手の代わりに電動草刈り機を装着しているケモのぶっ飛び振りもすごい。とくにチェリーのギャル語を矯正する手段が爆笑もの。 かなりクセがあり読者を選ぶ作風ですが、ハマればシリーズを通読したくなること間違いなしの面白さです。 |
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| No.2045 | 6点 | 不必要な犯罪- 狩久 | 2014/02/04 18:48 |
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| 美術大学講師で画家の中杉が女子学生・杏子をモデルに描いた裸婦画がアトリエから消える。一週間後、戻されたその絵画には精密な恥部が書き加えられていた。やがて、海辺のボート小屋で杏子の変死体が発見され、姉の葉子も何者かに襲われる-------。
狩久の生前出版された唯一の長編ミステリ。 ”肉体の貪婪”葉子と”精神の貪婪”杏子。容貌は似ているものの対照的な二人の姉妹をめぐる愛憎劇が、妖しく官能的な描写で綴られています。動機はやや観念的なのですが、この作品世界ならアリかなと思います。 メイントリックも逆説的なロジックが効果的で作者らしいです。ただ、取り巻きの男たちの何人かはいかにも脇役という感じがするので、事件の秘められた構図はなんとなく途中で分かってしまうのではと思います。 泡坂妻夫のからくり本「生者と死者」が復刊でちょっと話題になっていますが、それで連想したのが幻影城ノベルスの本書でした。こちらは単にアンカット・フランス装というだけで、カラクリがあるわけではないですが、アンカット本を裸婦画もしくは女性になぞらえると本書のテーマとダブってくるような気もw |
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| No.2044 | 6点 | すばらしき罠- ウイリアム・ピアスン | 2014/02/02 20:24 |
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| フリー雑誌記者の”私”ヴァンスは、30日間姿を消し逃げ延びるという企画を雑誌社に出し自ら実行する。しかし、成功報酬をもらうため街に戻ってきたヴァンスを待っていたのは、銀行の大金横領と殺人の容疑だった-------。
ポケミスの裏表紙の内容紹介には、”ウールリッチ風の趣向とムード”とありますが、アリバイを証明できず殺人の容疑者になるというプロットは確かに「幻の女」などを思わせるものの、抒情的な雰囲気や強烈なサスペンスはなく、軽妙でテンポのいい「私」の語りや、美女と簡単にいい関係になる展開は軽ハードボイルド風です。 多少都合がよすぎるところもありますが、絶体絶命の状態から、次々と機転を利かせて事件の黒幕を追い詰めていくヴァンスの手際が面白いです。主人公の行動描写が先で、その行動理由が遅れて説明されるので、後付けでナルホドとなりますが。 |
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| No.2043 | 6点 | 日本推理小説論争史- 評論・エッセイ | 2014/02/01 23:53 |
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| 本書は、2011年〜12年にかけて「小説推理」に連載されていた推理文壇における過去の文学論争史を逆編年体(新しい順)に編成し考察したもので、著者は郷原宏氏。
佐野洋×都筑道夫の「名探偵論争」、乱歩、甲賀三郎×木々高太郎の「探偵小説芸術論争」、松本清張×高木彬光の「邪馬台国論争」などの有名どころが並んでいるが、野次馬的な見地で面白かったのは、やはり「匿名座談会論争」ということになる。 「間違いだらけの笠井潔」と題した”このミス”匿名座談会メンバーによるヨタ話が地雷を踏む結果となる。都筑道夫の評論に対する笠井氏との解釈論争から、「匿名による批評の是非」の方に論点が移ってしまい、覆面を剥がす泥試合になった。 匿名B(茶木)、S(関口)、O(大森)は自ら名乗り出たものの、A(新保?)とD(西上?)の対応が益々笠井氏の逆鱗に触れる。お互いに大人げないのだけれど、背景には”新本格派(探偵小説研究会)”VS匿名座談会メンバーの確執があったらしい。さらに勘ぐれば「本ミス」VS「このミス」ということかもしれないが。 高木彬光の「邪馬台国の秘密」を巡る論争も興味深い。発端は佐野洋の「推理日記」における事実誤認の指摘で、それは何とか改稿で問題が収まるかと思いきや、古代史は専門と自負する松本清張が参入し、”学説無断借用”の疑惑も出てきて雲行きが怪しくなる。”本格派の総師と社会派の巨匠の一騎打ち”は大袈裟だが、奇抜なロジック(詭弁?)で窮地を脱しようとする高木、地道に資料を揃え追い詰める清張という、自身の小説作法さながらwの対決は読みごたえがあった。(さらに、他人の学説の無断借用疑惑があり、どうみても高木に歩はないのだけど)。 著者は、最近このような論戦が見られないと嘆いているが、数年前の「容疑者Xの献身」を巡る”本格”論争について詳しく取り上げていないのは残念だった。 |
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| No.2042 | 6点 | 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 | 2014/01/31 20:46 |
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| 不妊に悩む紗英、子育てをしながら彼女を気遣う奈津子。お互いをかけがえのない存在と思い、”共依存”の関係にある二人の女性のあいだに”悪いもの”が現れる-------。
年末のランキング本などではほとんど話題に上がらなかったようですが、Amazonのレビューでは何故か絶賛の嵐というちょっと気になっていたサスペンスです。 二人の女性の独白のような文章が交互に綴られ、合間合間に関係者への取材インタビューが挿入される構成で、不妊、子育て、夫の浮気、母親との確執など、重くて辛い現実が語られているが、ぎこちないというか、なんか変------と思いながら読んでいたら、おおっ、そういうことか!と、まんまと騙されておりました。テーマと仕掛けもリンクしており、そのあたりも良。 湊かなえを軽くしたような”イヤミス”テイストは好みが分かれそうな感じで、どちらかというと女性好みのミステリかなと思う。 |
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| No.2041 | 8点 | 11/22/63- スティーヴン・キング | 2014/01/29 23:16 |
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| 英語教師の”ぼく”ジェイクは、死期が迫った友人のアルから秘密を打ち明けられる。それは、50年前の過去に通じるタイムトンネル”兎の穴”の存在だった。そしてアルは、自分に代わってケネディ大統領の暗殺を阻止してほしいとジェイクに告げる-------。
1963年11月22日に発生した歴史的事件、ジョン・F・ケネディ暗殺の阻止を題材にした歴史改変もののSF冒険小説にして、哀切感ただよう恋愛小説。 本書が邦訳出版された昨年は暗殺からちょうど50周年にあたり、また長女キャロラインの駐日大使赴任も重なったこともあって、ちょっとしたJFKブームだった。JFKネタの謀略冒険小説もいくつか出版されたが本書はその決定版といえます。 いやあ凄い、でも長かった。上下巻2段組みで1000ページを超える分量もそうですが、兎の穴が通じているのは”Xディ”の5年も前という設定のため、クライマックスの年に到着するまでの物語が長い。別の事件での予行演習や、最愛の女性セイディーとの出会い、実行犯オズワルドの監視など、ジェイクの過去の世界での行動が手記形式で延々と続くので、正直冗長に感じるところもあった。しかし、それらダラスやジョーディの町でのエピソードは最後に生きてきます。そしてエピローグはなかなかの感涙もの。 「過去は改変されることを望まない」------たびたび出てくるこのフレーズが印象に残ります。 |
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| No.2040 | 5点 | 金糸雀の唄殺人事件- 斎藤栄 | 2014/01/23 20:23 |
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| 高校時代に仲間を生き埋めにして逃げた過去を持つ男女5人のもとに、湖畔の保養所へ呼び出す手紙が届く。事件の発覚を恐れるメンバーは現地に赴くが、ひとりが姿を消し二人目は密室状況下で殺される-------。
湖畔の保養所を舞台にしたCCものという記憶があったのだけど、ちょっと違いました。それでも、新本格世代の作家が書くようなゲーム性の強いフーダニットで、密室殺人にアリバイ工作、ダイイングメッセージに〇〇トリック、おまけに「カナリアの唄」の童謡殺人?と、本格ミステリのガシェットがてんこ盛りで読者サービスは満点です。また、真の探偵役が最後になるまで分からない構成はフーダニット趣向をより効果的にしていると思います。 とはいっても、作者は斎藤栄なのでw トリックに無理があったりコント・レベルのものもありますが。そういった細かい粗に目を瞑ればそこそこ楽しめる作品です。 |
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| No.2039 | 6点 | 恐怖のブロードウェイ- デイヴィッド・アリグザンダー | 2014/01/21 18:26 |
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| しばらく鳴りを潜めていた連続切り裂き魔”ウォルドウ”から地元新聞社に犯行予告の手紙が届き、マンションで女性の変死体が発見される。新聞社の主筆ハーディンは、ロマノ警部の捜査とは別に謎の殺人鬼を追うが------。
芸能スポーツ専門の新聞社「ブロードウェイ・タイムズ」の編集長バート・ハーディンを主人公とするシリーズ第1作。 設定は、ニューヨークのブロードウェイを舞台にした「シリアル・キラーVS新聞記者」という構図のサイコサスペンスですが、あるトリックとともに、犯人を特定する手掛かりもキッチリと用意されたフーダニットもので、本格ミステリ志向の強い作品です。ネタバレぎみですが、全体の構図自体をミスディレクションにしているところは感心しました。もっとも、現代の観点ではアンフェア認定される描写があるのですが、’50年代という発表時期を考慮すればギリギリセーフでしょうか。 また、登場人物の脇役の多くが過去に生き、酒や賭博に溺れる人生の落伍者や娼婦・ショウガールらで、ブロードウェイの華やかさではなく、ラストの苦い結末を頂点にして全編にただよう哀愁感がいいです。 |
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| No.2038 | 5点 | 亡霊ふたり- 詠坂雄二 | 2014/01/19 17:49 |
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| 遠海市の高校に通う高橋は、かつての大量殺人鬼・佐藤誠に影響を受け、いつか殺人を実行することを夢想する。ある日、所属するボクシング部の練習中に奇矯なふるまいをする女子高生に出会い、彼女の探偵活動に関わることになるが--------。
いわば”ボーイ・ミーツ・ガール”ものの青春ミステリですが、そのガールが名探偵志願の女子高生で、ボーイは殺人者志願の男子高校生。しかも、彼は卒業までに彼女を殺そうと計画するという、なんともシュールな設定です。 しかしながら、女子高生・若月が出合うのは謎ともいえない日常の謎で、真相もカタルシスを感じないものばかりなので、ミステリ要素を期待すると大いに肩透かしを食らう。高橋の行動原理もいまいち理解が及ばないところがあった。 作者のこのところの作品は個人的に消化不良なものが続く。そろそろ初期作のような騙りにみちたミステリを読みたい。 |
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| No.2037 | 7点 | 不吉な休暇- ジェニファー・ロウ | 2014/01/18 16:09 |
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| シドニー近郊のアリス伯母さんの果樹園に今年もリンゴ摘みに集まった親類のテンダー家の一族とその友人たち。ところが血縁関係や男女関係の軋轢から不穏な雰囲気が漂いだし、翌朝、果樹園である男の変死体が見つかる-------。
素人女性探偵ヴェリティ・バードウッド(通称バーディ)シリーズの第1作。 小柄でメガネ、冴えない風貌のテレビ局のリサーチ担当職ながら、実は大富豪の娘で弁護士資格を持つ頭脳明晰の女性というバーディの属性がユニーク。二転三転の末、終盤の80ページにわたり繰り出されるバーディの推理の開陳シーンがまことに圧巻のひとことです。クイーン流のロジックというより、人間観察による洞察力はミス・マープル風で、舞台設定とともにこの推理法からも”豪州のアガサ・クリスティ”と呼べるでしょう。 難点は、登場人物が多くひとりひとりの造形を丁寧に描いているために、かなりの長尺になっている点。トリック中心ではなく、人物のちょっとした仕草や言動のなかに、伏線や手掛かりを仕込むタイプのミステリなだけに止むを得ないところもありますが、一気に読み通せないので前段に張られた伏線を憶えていないところがあった。 |
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| No.2036 | 7点 | アルモニカ・ディアボリカ- 皆川博子 | 2014/01/14 22:50 |
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| オックスフォード郊外の逓信大臣の所領地で天使のような死体が見つかった。いまは盲目の治安判事サー・ジョンのもとで犯罪防止新聞の編集をしている元解剖教室の弟子たちは、失意のダニエル医師を伴って発見現場に赴くが、現在の事件に14年前の謎の事件とアルモニカ・ディアボリカ(悪魔のハーモニー)と呼ばれる楽器が絡んで来て--------。
18世紀英国を舞台にした歴史ミステリ、「開かせていただき光栄です」の続編。 前回の事件から5年、ダニエル先生の私的解剖教室の5人の愛弟子のうち、例の2人は行方知れず、残りのアルたち3人は、判事と彼の姪で助手のアンの手助けをしているという設定です。盲目の治安判事ジョン・フィールディング卿の推理を中心に、彼らが判事の手足や眼となって行動するプロットは集団探偵モノの趣があります。 一方で、行方不明のナイジェルとエドも重要な役割を担っており、特にナイジェルの過去に触れたパートは、この時代の闇の部分や残酷さを峻烈に描いていて胸に迫るものがありました。 英国人作家が書いたかと思わせる緻密な時代考証と豊かな物語性は今作も健在で、主人公たちのキャラクター造形は前作を踏まえて、より魅力を増してきました。Twitter情報によると第3作も構想中とのこと。ぜひ次作はサー・ジョンと(不仲といわれていたらしい)サム・ジョンソン博士との共演を期待したいw |
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| No.2035 | 6点 | ミステリ絶対名作201- 事典・ガイド | 2014/01/13 13:56 |
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| 瀬戸川猛資氏ほか7名の精鋭書評家による討議を経て選定した海外古典名作ミステリのガイドブック。前年に出版された「ミステリ・ベスト201」と同じ執筆陣で、いわば姉妹編となるが、現代編の「ミステリ・ベスト201」に対して、本書は70年代以前の古典名作を対象としてる。
”絶対名作”とは、時の流れに左右されない今読んでも面白い作品という意味ですが、収録作品の多くが絶版という状況が何とも皮肉的です。出版状況のほうが時の流れに左右されてしまいました。ただ、個人的には絶版本蒐集が大好き人間なので、これはこれで問題ないのですがw 今回、久々に目を通し未読本を数えてみると68冊もありました。本格はほとんど読んでいる一方で、ハードボイルド・警察、サスペンス編には、まだまだ読んでみたい”名作”がいくつもある。またもや探求本が増える結果となりました。 ちなみに、海外ミステリ総合データベース・サイトとして有名な「ミスダス(MISDAS)」には、アメリカ探偵作家クラブ主催や文春の「東西ミステリーベスト100」(旧版)など、諸々のオールタイムベスト表が掲載されていますが、この「ミステリ絶対名作201」も載っていますので、選定作品に興味のある方は覗いてみてください。 |
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