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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.406 7点 公園には誰もいない- 結城昌治 2010/05/31 21:05
私立探偵・真木シリーズの第2作。
失踪した売出中の女性シャンソン歌手探しが発端で、殺人事件の発見者になり、関係者への聞き込み調査と続く物語はハードボイルド小説の定番のプロットで、このマンネリ感が逆に心地いい。
本家のロス・マクと同様に意外な結末を設定しているのも高評価の一因ですが、全篇にわたって「公園には誰もいない」のメロディが流れているような暗い雰囲気創りがよかったです。

No.405 5点 繭の密室- 今邑彩 2010/05/31 20:42
密室状態のマンション7階からの転落死の謎と女性誘拐事件が絡む本格ミステリ。
短めの長編で、あまりにも真っ当な本格編のため味気ない印象を受けました。シリーズ探偵の貴島刑事も個性に欠けます。
密室トリックは少々意外でしたが、現実的ではないですね。

No.404 6点 - 仁木悦子 2010/05/31 18:56
ミステリ短編集(講談社文庫版)。
表題作のほかに、「明るい闇」「山のふところに」「幽霊と月夜」「誘拐者たち」「うさぎと豚と人間と」の6編収録されています。
子供や社会的弱者を主人公にした陰惨な事件を描いた作品が多いですが、不思議と読後感はよかったです。
養護施設内の殺人事件に知恵遅れの子供たちが重要な役割を果たす「うさぎと豚と人間と」が一番の力作だと思います。

No.403 6点 21時間02分の密室- 池田雄一 2010/05/31 18:37
大阪-札幌間を走る豪華寝台特急内を「舞台」に、個室での密室殺人に始まり謎の集団による列車ジャック、列車内の私的裁判というふうに次々と物語が展開します。
探偵役は劇団の女性脚本家とツアー添乗員ですが、登場人物の多視点で描かれた物語は全体像が見えにくくなっていて、最後に大仕掛けが炸裂するという構成です。
B級のトラベルミステリという先入観で読んでいたので、××ネタには不意を突かれました。同じ年に同じトクマノベルスから出版された超流行作家の某作とネタが被っていますが、本書のほうが少し早く出版されているようです。

No.402 5点 高すぎた代償- 佐野洋 2010/05/30 22:23
長編ミステリ第2作。
連れ込み旅館経営者の未亡人とヒモ的同居人の新米私立探偵が、客室の録音テープから不審な心中事件を追っていくと・・・というストーリー。
半世紀前の作品で時代性を感じさせる情景もあり、通俗的で2時間ドラマ風ですが、これは終盤のある仕掛けに驚きました。おそらくこの手の仕掛けでは先駆的な作品といえると思います。
なお、後に同じ設定の「密会の宿」シリーズを書いていますが、主人公名など若干本書と異なるようです。

No.401 5点 初陣- 今野敏 2010/05/30 21:45
隠蔽捜査シリーズ初の短編集。
「隠蔽捜査3.5」というサブタイトルからして苦笑ものですが、主人公の大森署長・竜崎という特異なキャラクターを友人の刑事部長伊丹の視点で軽妙に掘り下げていて、お笑い警察小説として充分に楽しめました。
前作「疑心」の裏話である「試練」ほか、各編とも軽めの語り口のためスラスラ読めます。

No.400 8点 あした天気にしておくれ- 岡嶋二人 2010/05/30 19:07
倒叙形式で描く競走馬の狂言誘拐から、謎の介入者による身代金略取計画に変わる物語のツイストが非常に巧妙です。このような面白いプロットを書かせたら、この時代では著者が抜群のナンバーワンでしょう。
身代金略取のトリックに関して、夏樹静子の某短編との類似性とか現実的に実現不可能とかイチャモンがはいったようですが、本書の肝は倒叙ミステリとフーダニットを両立させたプロットの妙にあると思います。

No.399 5点 51番目の密室- アンソロジー(出版社編) 2010/05/30 18:17
”世界ミステリ全集・37の短編”からのセレクト第2弾。
第1弾の「天外消失」が好評だったのか、続けて出版されましたが、今回は他のアンソロジーなどで読める作品がほとんどでした。この企画が20年ほど早ければもう少し高評価でしたが。
マクロイ「燕京綺譚」やヴィカーズ「百万に一つの偶然」をはじめ、カー、ブランド、ライス、ホックなどをいまさら選定する編集方針は大いに疑問です。

No.398 6点 天外消失- アンソロジー(出版社編) 2010/05/30 18:00
伝説の選集”世界ミステリ全集第18巻・37の短編”からセレクトした傑作選。
元本の中から他のアンソロジーでも読めない作品を中心に選定したと解説にありますが、リドル・ストーリーの代名詞「女か虎か」とかF・ブラウン「後ろを見るな」なんかは、いまさら感があります。
ロースン「天外消失」は不可能トリックものが多い作者の代表作で、マジックのネタを見るよう。
エリック・アンブラー唯一の本格ミステリ「エメラルド色の空」とかバロウズ「ジャングル探偵ターザン」なんかの珍品が読めたのは収穫でした。

No.397 7点 開幕ベルは華やかに- 有吉佐和子 2010/05/29 22:47
帝劇を舞台に大物女優の殺害脅迫事件を描いた劇場ミステリ。
こういったミステリは役者同士の人間関係のアヤが読みどころのひとつですが、この小説の場合は脅迫対象の女優の存在感に尽きると思います。共演男優との陰湿な駆け引きとか、2億円の要求額が少なすぎると怒りだすシーンなどで引き込まれます。
犯人の設定は、女優の人物造形からある意味分かりやすくなっていますが、サスペンスに溢れたなかなか面白いミステリに仕上がっていると思います。

No.396 3点 狐の密室- 高木彬光 2010/05/29 22:13
ともにシリーズ探偵である神津恭介と大前田英策の共演作。
新興宗教の教祖の雪の密室殺人を描いていますが、密室トリックが情けないほどしょぼい上に、物語自体に斬新さがなく、まったく面白くありませんでした。
如実に筆力の衰えが表れている作品です。

No.395 5点 禁じられた手綱- 佐野洋 2010/05/29 22:02
競馬騎手の義姉の誘拐事件に複数の殺人が絡む本格ミステリ。
登場人物が多く人間関係が複雑な上に、義父の事故死や心中事件など次々と物語が展開していくのは、週刊誌連載小説ゆえの弊害だと思います。
小額の身代金の理由など誘拐事件の謎に焦点を絞ったプロットにしていれば、スッキリしたミステリになっていたと思いますが。

No.394 6点 白夜街道- 今野敏 2010/05/29 17:35
公安部・倉島警部補を主人公にしたハード・アクション小説、シリーズ第2弾。
著者の主要ジャンルである警察小説と格闘小説を合体させたようなシリーズで、倉島の公安部職員としての成長物語であるとともに壮絶な活劇・銃撃シーンに溢れています。
裏の主人公・元KGBの殺し屋ヴィクトルの人物造形に非凡なものがあり、むしろ彼のシリーズともいえますが、第3作に登場しないのは残念です。

No.393 5点 踊り子殺人事件- 嵯峨島昭 2010/05/29 17:15
女性二人組の旅芸人が全国各地を巡行する中で遭遇する殺人事件を、ひょうんなことから同行者となった普通の会社員の視点で描いています。
後の作品でシリーズ探偵役となる酒島章(さかしましょう)警部は人妻とゴルフばかりして、なぜか最後にちゃかり解決する。
ミステリの趣向として面白いのは、”人物に関するトリック”が4種類も入っているところで、通俗小説として読んでいるとまんまと騙されます。

No.392 4点 天皇賞レース殺人事件- 草野唯雄 2010/05/29 16:54
天皇賞レースの不正騎乗と査問委員の殺人容疑を受けた騎手を主人公にしたサスペンス風ミステリ。
ディック・フランシスの競馬シリーズを暗くしたムードが漂う前半は読ませますが、意外な犯人は心情的にムリ筋で、物語の雰囲気を壊しているように思います。

No.391 6点 バルーン・タウンの殺人- 松尾由美 2010/05/29 16:34
妊婦だけが住む街を舞台にしたSFミステリの連作短編集第1弾。
いくつかの作品で、有名古典ミステリの趣向をパロっているのが面白い。「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」はクリステイで、創元推理文庫版のみ収録の「バルーン・タウンの裏窓」はアイリッシュの名作のパロデイ。
「亀腹同盟」はホームズづくしで、赤髪連盟、六つのナポレオン像、踊る人形の趣向をうまく取り入れていて、結末に意外性もあり、これが私的ベスト。

No.390 5点 謀略の大地- 海渡英祐 2010/05/29 14:41
日中戦争を時代背景にした謀略ものの連作短編集。
特務機関の憲兵・殿村を主人公にした、各話とも満州国建国、盧溝橋事件、二二六事件、南京事件など歴史的事件が絡むミステリになっていて、歴史の勉強をしながらスパイ戦を楽しめます。
乱歩賞受賞以前に書いていたスパイ謀略ものの系統で、意外な結末に重点をおかない「ジョーカー・ゲーム」という感じで、ミステリとしては薄味でした。

No.389 6点 花塵- 連城三紀彦 2010/05/28 20:50
いわゆる<平成悪女もの三部作>の一作ですが、目を見張るほどのドンデン返しが仕掛けられているわけではないので、そういうミステリ趣向を期待をして読むと満足を得られない作品かもしれません。
大正時代の画壇を舞台に一人の奔放な女性を主人公とした恋愛小説風のミステリで、主人公が男性遍歴を繰り返す理由が謎でミステリとしての肝ですが、伝記風に綴られる女性主人公と画家たちの駆け引きが楽しめるかどうかで評価が別れると思います。

No.388 6点 心では重すぎる- 大沢在昌 2010/05/28 20:24
舞台が新宿なら警察ハードサスペンス、六本木なら軽ハードボイルドという一応の棲み分けが出来ている著者の小説。ということで正統派ハードボイルド佐久間公シリーズ第6作の舞台は渋谷です。
単行本で750ページの大作で、出版時はおそらく「読むには重すぎる」なんて言われたことでしょうね。
漫画界を中心に若者サブカルチャーの話題が満載されていて、ちょっといままでと勝手が違いますが、読み進めればいつもの大沢節が味わえます。主人公は作者の分身のようで、その主張はオジサン臭い感じも受ける。佐久間公もそれだけ年齢を重ねたということでしょうか。

No.387 6点 島崎警部のアリバイ事件簿- 天城一 2010/05/28 18:58
ミステリ傑作選集の第2巻。
作品集のタイトルからは著者のもう一人の探偵役である島崎警部もののアリバイ崩しが中心のように思えますが、不可能犯罪ものも多く収録されています。
第1巻と比べて読みやすい文体になっていますが、トリック的にはやや劣る内容だと思います。
なかでは、不可能トリックものの名作「朽木教授の幽霊」がダントツの私的ベスト作品。

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