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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.440 6点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2010/06/06 16:02
亜愛一郎シリーズの第3短編集。
前2作と比べて、ロジックの切れに物足りない感じを受ける作品が多く、連作物の物語性を楽しむ短編集かもしれません。
それでも、「飯鉢山山腹」や「火事酒屋」の逆説的ロジックは初期作を彷彿とさせる出来だと思います。

No.439 7点 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 2010/06/06 15:48
亜愛一郎シリーズの第2短編集。
続編なので「狼狽」で受けたほどの新鮮な驚きは受けませんでしたが、特異なロジックは健在だと思います。
トリックの豪快さで言えば「砂蛾家の消失」が一番だと思いますが、著者の持ち味が出ているのは、「藁の猫」と「病人に刃物」でしょうか。

No.438 9点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2010/06/06 15:31
30年ほど前の初読時には変わった設定の不可能トリックもの「右腕山上空」や「掌上の黄金仮面」が好みでしたが、再読してみて他の作品の方が著者の持ち味が出ているように思えてきました。
「DL2号機事件」の狂人の論理はいまいちですが、「G線上の鼬」の伏線の見事さは編中随一、「掘出された童話」は暗号の原理のユニークさで記憶に残ります。
発表された時代を考慮し、思い入れもあるのでこの評価です。

No.437 6点 女郎ぐも- パトリック・クェンティン 2010/06/05 18:44
本書はダルース夫妻シリーズの掉尾を飾るサスペンスで、ウェッブ&ホイーラー合作の最終作ですが、内容は後のホイーラー単独作品の持ち味が多分に出ています。
アイリス不在中に世話をした、作家志願の娘を殺害した容疑をかけられた劇作家ピーターが真相を追うといった内容で、死んだ娘ナニーのとんでもない裏の顔が読みどころとなっている。
傑作「わが子は殺人者」には及びませんが、同種の巻き込まれ型サスペンスの先駆的作品といえそうです。

No.436 7点 ウェンズ氏の切り札- S=A・ステーマン 2010/06/05 18:16
ベルギーのエラリイ・クイーンことS=A・ステーマンの本格ミステリ、中編2作収録。
長めの中編「ウェンズ氏の切り札」は単純なトリックながら、大胆かつ巧妙な使い方に感心。伏線もていねいでなかなかの傑作だと思います。
併録の「ゼロ」は占い師の殺人予言ネタで、オカルト趣向とサスペンスに溢れている。真相もヒネリがある逸品でした。

No.435 5点 殺人者はまだ来ない- イザベル・B・マイヤーズ 2010/06/05 17:46
冷酷な大富豪の遺産相続をめぐる典型的な館ミステリ・・・という物語の滑り出しから、中盤になって前近代的な××術という禁じ手のアイテムが重要な役割を果たすようになって、ゴシック・サスペンス風の物語となります。
密室&アリバイ・トリックの解明など本格要素は充分にありましたが、本質的に古いタイプのミステリという感じでした。
クイーンの「ローマ帽子」との因縁とか翻訳が山村美紗という話題性はありますが、現在ではあまり評価できない内容です。

No.434 7点 氷の森- 大沢在昌 2010/06/05 17:07
「新宿鮫」シリーズでブレイクする直前に書かれたハードボイルド小説。
文庫惹句には、”新宿鮫の原点”とありますが、主人公の私立探偵・緒方はあまり個性は見られず、いままでのハードボイルドものと変わらないように思えます。
ちょっと感心したのは、探偵が対峙することになる冷酷な敵の描き方で、ヤクザさえ自在に操り冷酷に殺人を繰り返しながら終盤までその姿を現さない構成です。小説のタイプや犯人像は全く違いますが、「火車」の構成を連想しました。

No.433 6点 同期- 今野敏 2010/06/05 16:41
懲戒免職になった同期の公安部刑事の窮地を救うべく捜査一課の若手刑事がスーパーマン的働きをするという物語。
著者の警察小説の集大成というむきもありますが、このプロットにはちょっと違和感があります。主人公の若手刑事が警察上層部や右翼組織のトップと簡単に対面できる点がご都合主義ですし、同期との心情的繋がりが主人公の行動原理になるほど充分に説得力を持つように描かれてないように思いました。
まあ、あまり細かいことに気にとめていては著者の小説を楽しめないのかもしてませんが。

No.432 5点 バルーン・タウンの手毬唄- 松尾由美 2010/06/05 16:03
妊婦のみが住む街”バルーン・タウン”シリーズ第3弾。
今回も内外古典ミステリをパロッたタイトルでニヤニヤさせてくれます。
「バルーン・タウンの手毬唄」は手毬唄の見立て連続事件で真相もある意味お約束どおり、「幻の妊婦」は唯一のアリバイ証言者である妊婦の真相と叙述トリックが面白い。
「9か月では遅すぎる」は”まして雨の日では”という言葉の意味が見事に伏線となって生きています。

No.431 6点 魔海風雲録- 都筑道夫 2010/06/05 15:40
初期の伝奇時代小説で「かがみ地獄」の改稿・改題版。
戦国時代末期を時代背景にして真田の若さまを主人公に魔鏡の争奪戦を描いたオーソドックスな冒険譚になっています。
忍者の佐助、密偵の才蔵や南蛮人など、取巻きの登場人物も個性豊かで、舞台も木曾の山中から駿河沖の大海原まで、スルリングに展開する物語は手慣れた創りになっていると思います。
ただ、岡本綺堂などの先行の伝奇物の範疇から抜け切ったものでないため、斬新さに欠ける気もしました。

No.430 4点 三幕の殺意- 中町信 2010/06/05 15:19
中町信の久々の長編(といっても初期の中編「湖畔に死す」の長編化)ですが、ちょっとガッカリな出来でした。
尾瀬沼の雪の山荘を舞台にした読者への挑戦付きのオーソドックスな犯人当てで、トリックの絡みで原型と同じ昭和40年を時代背景にせざるを得ないというのは分かりますが、現代では読むに堪えない内容でしょう。
新しい趣向を考える気力が、もはや喪失したということでしょうか。

No.429 4点 最後の自白- 高木彬光 2010/06/04 22:19
近松検事シリーズの第4短編集。
引き続き神戸地検編で6編収録されています。
「影の男」は密室トリックが平凡で、「最後の自白」は容疑者たちが次々と犯行を自白するプロットのみが面白い。
「かまきりの情熱」が倒叙ミステリの力作で編中のベストですが、前作と比べて全体的に出来がよろしくないです。

No.428 5点 偽装工作- 高木彬光 2010/06/04 22:10
近松検事シリーズの第3短編集。
神戸地検編の2作目で、前作に比べてトリック重視の本格ミステリが多い。
「寒帯魚」はクーラーを使ったアリバイトリックに捻りがあり、「完全の限界」は変形倒叙もの。
マイベストは「弾道の迷路」で、オーソドックスな不可能犯罪ものの力作。

No.427 5点 罠のなかの八人- 海渡英祐 2010/06/04 21:51
ミステリ短編集。
表題通り色々な登場人物に思わぬ落し穴や罠が仕掛けられています。
風俗描写に時代性が感じられたり、ほとんど男女関係がらみであったりで痛い点もありますが、罠の標的が反転する意外性が楽しめる各種のヒネリが面白かった。
なかでは、読者の先入観を逆手に取った「見知らぬ恋人」が個人的ベストです。

No.426 5点 海を渡る牙- 佐野洋 2010/06/04 21:18
動物写真家を主人公にした連作ミステリ。
前半の収録作は、壱岐の島や北海道山中など撮影現場での骨のある事件を扱っていて完成度が高いと思います。とくに、表題作の「海を渡る牙」は伏線の張り方やトリックが素晴らしい。
ただ後半の作品は、日常の謎系ミステリになってしまい凡作が並んでいます。

No.425 6点 葬式神士- 結城昌治 2010/06/04 21:09
ミステリ短編集(角川文庫版)。
軽妙でシニカルなオチの作品が多く収録されていて、今でも充分楽しめる。
「葬式神士」「絶対反対」「替玉計画」がとくに面白かった。

No.424 7点 男は旗- 稲見一良 2010/06/04 19:02
男の浪漫あふれる海洋冒険小説。
かつての豪華船で今は海上ホテルとなっている老朽船を宝探しのため大海原に出航させるというストーリー。
子供の心を捨てきれない男たちの冒険物語で、最後はなんとファンタジーに昇華します。
小説としては構成の甘さがあったり、後半は文章もひどいことになっていますが、作者が小説を書き始めた動機や本書執筆時の体調を思うと、物語の男たちと作者が二重写しに見えて、思わず感動を覚えました。

No.423 5点 明日という過去に- 連城三紀彦 2010/06/04 18:33
女性同士で交わされる手紙文のみで構成された長編ミステリ。
お互いに嘘と嘘のせめぎ合いで、告白者と告発者がめまぐるしく入れ替る。物語の人物が騙されるくらいなので、読者が翻弄されるのは当然のことですが、反転が技巧に走り過ぎていて、最後は真相はどうでもいいやという気分になりました。

No.422 7点 蒼ざめた街- 藤田宜永 2010/06/04 18:11
昭和初期の帝都・東京を時代背景にした異色のハードボイルド、モダン東京シリーズ第1作。
主人公のアメリカ帰りの私立探偵・的矢健太郎をはじめ、カフェの女給などの下層階級、男爵などの上流階級の人々が不況で倦怠感あふれる都会の情景に融け合って、ノスタルジックな気分を堪能できる。
ハードボイルドというには甘めですが、物語世界がキッチリ構築された秀作だと思いました。

No.421 6点 燃えつきる日々- 海渡英祐 2010/06/03 21:25
太平洋戦争前夜の日本を時代背景にした長編ミステリ。
77年の第1回週刊文春年末ベストテンの第2位ということでちょっと期待して読みました(当時は内外ミステリ統一で、第1位は「シャドー81」なので国内ものでは第1位)。
端的にいうと謀略系の戦争秘話に恋愛ミステリを加味した構成で、力作ではあるけれど本格ミステリとしては薄味です。当時のベストテン選者の年齢層・嗜好が影響した第2位だと思いました。

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