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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1154件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.55 7点 マスカレード・ゲーム- 東野圭吾 2023/01/10 21:19
 ホテル・コルテシア東京を舞台としたシリーズ第4弾。警部となった新田浩介は、またまたホテルマンを装い、潜入捜査を開始します。ロサンゼルスから呼び寄せられた山岸尚美とのコンビも復活。
 まぁ、巧い。論理的に犯人を突き止めるという構成ではないため、好き嫌いはあろうかと思うのですが、物語を紡ぐ作者の力量は流石で、次々にページをめくらされました。最後の最後まで楽しめましたね。
 シリーズを通じての新田&山岸の人間的な成熟も好ましく読んだのですが、さてさてこのシリーズの今後は?

No.54 6点 クスノキの番人- 東野圭吾 2022/08/02 22:27
 不思議なクスノキを巡る人間ドラマ。
 次々とページをめくらされた辺りは、さすが東野さん。安心して読めるイイ話で、特段の不満がある訳ではないのですが、最後の方は少し書き急いでいる感じも受けたかな。皆の「その後」も気になったのだけれども、読者として欲張り過ぎかな。

No.53 7点 白鳥とコウモリ- 東野圭吾 2022/03/24 22:17
 竹芝桟橋近くの路上に違法駐車されていたセダンの後部座席から、男性の遺体が発見された。ほどなく、被害者は弁護士であることが判明。警察は、生前に弁護士事務所に電話をかけてきた愛知県三河安城在住の男に注目するが、ある日突然自供を始めた。「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
 東野圭吾版「罪と罰」という触れ込み。被害者と加害者の家族の心情も含めて読ませます。中盤、冗長に感じた部分もあったのですが、終盤はほぼ一気読み。作者の力量を感じます。ちなみに、読中に横山秀夫氏を想起しました。これって私だけ?

No.52 6点 香子の夢−コンパニオン殺人事件- 東野圭吾 2022/03/04 23:36
 昭和63年出版の作者初期のノンシリーズ長編。バブル全盛期のコンパニオンが主人公を務める物語を、コロナ禍の令和時代に読む感慨深さ。いや、どちらの時代も「空虚感」という意味では共通しているのかも。
 内容として特筆すべき点があるかと問われると辛いのだけれども、逆に?基本に忠実でリーダビリティも高く、個人的には好みのタイプでしたね。ちなみに「カセットテープ」って、今の中高生にとっては「何それ?」って感じなのでしょうねぇ。様々に懐かしさを感じる作品だったな。

No.51 6点 ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人- 東野圭吾 2022/02/12 23:20
 人望のある元国語教師が自宅で殺害された。警察から捜査状況を聞き出せない中で、娘と元マジシャンの弟(娘からしたら叔父)が独自の捜査を進める。犯人は教え子の中にいるのか。教え子たちの行動にも謎が多く…という展開。
 本格度云々とは関係なく、グイグイと読まされましたねぇ。複数のサイドストーリーも効いています。作者のストーリーテラーぶりを堪能できました。ちなみに、真相自体は何とも微妙で、色々と可哀想。

No.50 6点 ゲームの名は誘拐- 東野圭吾 2018/09/26 23:19
 「はい、ここ伏線ですよ~」と言わんばかりのネタが多数あり、結末には一定の予測がつきます(作者が敢えてそうしている可能性も高いのですが)。さらに、犯人は極めて頭が回る設定であるはずなのに、何故にこんな分かりやすい罠(?)をスルーしてしまうのだろう…といったチグハグ感も、確かにございます。
 とは言え、リーダビリティの高さは流石でして、グイグイ読まされたことも事実です。「一定の予測がつく」と書いてしまいましたが、正直に言えば、その想定の上をいく真相でもありました。完全に身を委ねて読む場合でも、「こういう真相なんでしょ?違うの?早く教えてよ」と予測しながら読む場合でも、それなりに楽しめるのではないかと思います。

No.49 5点 マスカレード・ナイト- 東野圭吾 2018/03/11 21:25
 若い女性の殺害事件に関する密告状が警視庁に届きます。犯人は、ホテル・コルテシア東京で行われる年越しカウントダウンパーティ(通称:マスカレード・ナイト)に姿を現すという…。
 コンシェルジュの山岸尚美と刑事の新田浩介のコンビ、それを取り巻く同僚たち、怪しげな客たち等々、それぞれ興味深く、次々ページをめくらされました。流石に達者ですよねぇ。なお、後半の怒涛の展開は、なるほどと思わせる部分もあるにはあったのですが、全体の構造としては少なからず唐突感がありましたねぇ。これは気付けないよなぁ…。
 ちなみに、高級ホテルって、客の我が儘にそんなに対応してくれるものなの?何か嫌みに感じたなぁ。もちろん、単なる僻みなのだけれども。

No.48 6点 素敵な日本人- 東野圭吾 2017/11/18 11:45
 9編から成るノンシリーズの短編集。そつがないよなぁ、というのが率直な感想ですね。1編30ページ程度の分量の中で、スッと物語に入らされて、ストンと落とされる感じ。
 落され方が印象的な「レンタルベビー」と、グッときた「水晶の数珠」が良かったですかね。逆に、倒叙形式の2編はそうでもなかったかな。
 全短編に独創的な仕掛けが施されている訳ではないので、どのような期待感をもって読まれたかによって評価は分かれるような気がしますが、個人的には、こういう安心して読める短編集って嫌いじゃないです。

No.47 6点 歪笑小説- 東野圭吾 2017/10/17 22:32
 ~笑小説シリーズ第4弾。今回は、出版社・編集者・作家の関係に特化した短編集です。連作短編と言ってもいいかな。業界ネタというか楽屋ネタという捉え方もできるのでしょうが、ソコも含めて面白い。シリーズの他作品と比して表面的な”毒”は弱いものの、底流に流れている”毒” 自体に結構ハマりました。
 この作品は、東野圭吾だからこそ書けるのだろうし、読者としても笑えるのだろうなぁ、そんな気がしました。

No.46 6点 恋のゴンドラ- 東野圭吾 2017/07/07 23:15
 ゲレンデを舞台とした、恋愛がらみの連作短編集。スノーボードかスキーがお好きな方はより楽しめると思いますが、全くやらない方が楽しめないわけではございません。
 ゲレンデ+恋愛モノということで、チープなのではと問われますと、否定できない面もございます。確かに、80年代の「私をスキーに連れてって」に代表されるホイチョイ的な雰囲気も多分にございます。
 しかし、そこは流石に東野先生でして、多少のスリルも織り交ぜながら、スラスラとページをめくらされます。そつがないなぁ、そして裾野が広いよなぁ…と改めて感じ入った次第。
 ちなみに、日田クンはいつか必ず幸せになってほしいし、桃実サンには今後素晴らしい幸せを掴む権利がある、と思いましたね。

No.45 7点 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 2017/04/29 21:01
 東野先生の初期ド本格作品。私は好きです。結構「てんこ盛り」な内容を非常に巧くまとめていると思います。ピエロ視点も効果を発揮したのではないでしょうか。
 今の東野先生であれば、更に巧みにストーリーを運べそうな気もするのですが、逆に現時点では決して書かないであろう分野でもあります。そういう意味では貴重かな。

No.44 6点 人魚の眠る家- 東野圭吾 2017/03/20 23:39
 脳死と臓器移植という、非常に重く、難しい問題と真正面から対峙した作品です。
 読者によって読後の感想に相当の幅があるであろうな、というのが率直な印象。個人的には、両親の行動に相当の違和感を抱きつつも、これを自分らに置き換えて考えてみると、実際にどう判断するのか全く判らないという、何とも情けない状態にあります。かなり考えさせられましたね。
 ちなみに、ミステリの手法を使っている部分も一部ございますが、全体とすればミステリとは言い難いでしょう。無論、この作品は「ミステリか否か」などとは無関係に読まれるべき作品であると思うので、この段落は蛇足以外の何物でもないのですが。

No.43 5点 ラプラスの魔女- 東野圭吾 2016/05/08 11:45
 「脳」を題材とした、作者らしい作品。ストーリーテラーぶりは相変わらずで、どんどん読まされます。その辺りはさすが。
 一方で、伏線もなく、読まされているうちに「へぇ~」と真相がわかって…というスタイルには、様々な評価があり得ると思いますね。それと、これは言いっこなしなのでしょうが、現実味が…。

No.42 6点 マスカレード・イブ- 東野圭吾 2015/05/17 22:43
 マスカレード・ホテルで出会う前の、山岸尚美と新田浩介それぞれの物語。ニアミスはあるものの、二人が直接接することはありません。個人的には、山岸尚美の人物設定に好感を抱きましたね。
 ガツンとした衝撃を受けるような展開でないだけに印象が薄くなる可能性もあるのですが、人間性を織り込み、ストレスなく読み進められる作品を次々に繰り出せる東野氏の筆達者ぶりは、やっぱりスゴイと思いますね。

No.41 5点 浪花少年探偵団2- 東野圭吾 2015/05/03 21:14
 しのぶセンセシリーズの続編。安心して(?)軽快に読み進められますし、大阪出身の作者らしい、テンポの良い会話も心地よいです。本格度は決して高いとは言えないですが、まぁ、不満はなかったですね。
 このシリーズは2冊で打ち止めとなりましたが、その理由について、作者は「作者自身が、この世界に留まっていられなくなったから」と語っております。その後の縦横無尽の活躍を知った後にそのコメントを読めば、なるほどと納得せざるを得ないのですが、こういうタッチの作品を再び読んでみたいな…と思うのは、私だけでしょうか?

No.40 7点 魔球- 東野圭吾 2014/11/11 22:01
 作者の初期の長編作品。
 心に訴えかける結末です。「悲しい」という一言では言い表すことのできない余韻があります。野球部員の殺人事件のみならず,一見無関係にも見える他の事件を絡ませることで,ストーリーの厚みが格段に増しています。その事件の真相の一つとして明かされる,とある人物たちの墓前でのやりとり,そしてその両者の心情については,特に記憶に残りそうです。
 読者が犯人を論理的に特定できるような構成ではありませんが,作者の構成力,ストーリーテラーぶりが,当時から十分に発揮されていたことを認識できる作品と言えましょう。

No.39 5点 虚ろな十字架- 東野圭吾 2014/09/13 22:36
 学生時代から死刑制度について考えることがあり,その点では,なかなか興味深かったですね。
 一方で,ミステリーとしては何とも…。展開がわかり易いですし,意外性も…。
 登場人物ひとりひとりの人生ドラマとして,さらに,死刑制度を含めた刑罰のあり方を考える作品として捉えるべきでしょう。

No.38 6点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2014/06/01 18:39
 ページをめくらせる力はさすがです。終盤前に真相の大枠(あくまでも「大枠」ですよ)を予測できてしまう方も多いと思いますが,既にそういう方向では読ませていないのですよねぇ。登場人物たちの人生の見せ方が何とも心憎く,巧いです。
 これまでの加賀シリーズの設定に加え,「白夜行」の雰囲気,「容疑者X~」の切なさ,「天空の蜂」から続く作者の主張などなど,目一杯に盛り込まれています。(だからこそ東野ファンには真相の「大枠」が見えやすいかもしれませんね。)
 加賀恭一郎の家族の過去が描かれていますし,今後の展開が楽しみな締めにもなっているので,加賀シリーズファンには必読と言えましょう。

No.37 8点 天空の蜂- 東野圭吾 2014/05/05 23:01
 東日本大震災後だからこそ,広く読んでいただきたい作品。
 震災前に読んだのであれば,自分ならおそらく「薀蓄が多い…」とか「とは言っても…」などと感じてしまったと思うのです。
 しかし,今となっては,一つ一つの言葉がズシリと心にのしかかってきます。「沈黙する群衆に,原子炉のことを忘れさせてはならない」,「子供は刺されて初めて蜂の恐ろしさを知る」…。クライシス・サスペンスとしても秀逸ですが,作者の言わんとしているコトが突き刺さってきて,非常に読みごたえがあります。
 今一度申し上げます。今こそ広く読んでいただきたい作品です。

No.36 8点 夢幻花- 東野圭吾 2014/01/15 22:28
 犯人を含めた事件の構図について,読者が合理的に推理できるような構成ではありません。
 しかし,どんどん深まる数々の謎の行方が気になって,ページをめくる手が止まりませんでした。久方ぶりの一気読み。伏線が綺麗に収束していくラストも見事です。
 この作品は,約10年前のとある月刊誌の連載をもとに書き下ろしたもの。とはいえ,「黄色いアサガオ」というキーワードだけを残し,全面的に書き直したそうです。作者自身が「書き直したことで,十年前ではなく,今の時代に出す意味が生じたのではないか」と述べていますが,まさにその通り。ラストに深みが出ています。(こじつけ感が強いというご批判もあり得ますでしょうが…)
 作者のストーリーテラーぶりを満喫させていただきました。素直に面白かったですね。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1154件
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