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まさむねさん
平均点: 5.87点 書評数: 1228件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.928 8点 揺籠のアディポクル- 市川憂人 2020/12/21 21:33
 グイグイ読まされました。ミステリとしては様々な評価があり得そうですが、そういった視点では語れない部分が大きいような気がします。敢えて多くは書きませんが、何よりも最終盤が印象的。何とも言えない切なさ。
 ちなみに、この作者さんは「閉鎖空間モノ」で強みを発揮しますねぇ。

No.927 5点 探偵は友人ではない- 川澄浩平 2020/12/18 23:51
 鮎川哲也賞受賞作「探偵は教室にいない」の続編らしい。「らしい」と表現しましたのは、確かに前作は読んだものの、細かな内容はもとより、人物の設定も一切印象に残っていなかったから。「最近の鮎川哲也賞にしては、珍しいタイプの作品だなぁ」という感想しか残っていなかったのです。すみません。
 で、この作品。バスケ部の女子中学生と、その幼なじみの引きこもり少年のコンビによる学園モノの連作短編。伏線の配置も含めて手堅いし、筆致も軽やかで決して悪くはないのだけれども、個人的にはあまりフィットしなかった。若手が書いたのか中堅の作家が書いたのか分からない・・・といった感じ。斬新さという面では弱い。いわゆる青春ミステリとして響く方もいらっしゃると思うのですけれどもね。採点はギリギリこの点数で。

No.926 5点 合理的にあり得ない- 柚月裕子 2020/12/12 13:08
 謀られて弁護士資格を剥奪された「上水流涼子」と、IQ140を誇る助手「貴山伸彦」で運営される探偵エージェンシー。このコンビで依頼を解決していく過程は、なかなかに痛快です。予測しやすい短編も複数あって、ヤラレタ感は少ないのですが、サクサク読み進められる短編集で、軽い気分で読む分にはいいのではないでしょうか。ちなみに、過去に謀られた人物への「仕返し」としては、ちょっと弱すぎるのでは、とも感じましたね。

No.925 5点 水の肌- 松本清張 2020/12/10 18:29
 5編が収録された短編集。
 「留守宅の事件」のみ、別の短編集(証明)で読んでいて再読となりましたが、結果としては、この短編がベストの印象。いわゆる「アリバイ物」なのですが、「だんだん近づけていく」動きや、想定外の証言者などの工夫に作者らしさを感じます。
 「小説 3億円事件」は、この作品に込められた作者の推理自体が有名であるので、むしろその内容を淡々と確認させていただいたといった印象。
 表題作は、急いでラストに持っていきましたといったイメージで、主人公の身勝手さだけが印象に残りそうです。

No.924 5点 谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題- 東川篤哉 2020/12/05 21:14
 谷根千エリアにある、鰯料理をメインにした居酒屋「鰯の吾郎」。店主は「岩篠なめ郎(いわしのなめろう)」。その妹は近所の大学に通う「岩篠つみれ(いわしのつみれ)」。ネーミングからして作者らしいですねぇ。
 同エリアで開運グッズを扱う「怪運堂」の店主・竹田津優介が探偵役となり、女子大生・つみれが持ち込む謎をユルっと解き明かす…という新シリーズ(なのだと思います)。いずれの短編も、ミステリとしては正直弱いです。小粒です。舞台設定が効果的なのかも疑問。
 ちなみに、居酒屋「鰯の吾郎」自体は魅力的ですね。ビールとイワシのなめろう&つみれ。いいなぁ、行ってみたいなぁ。

No.923 6点 立待岬の鷗が見ていた- 平石貴樹 2020/11/29 22:09
 岬シリーズ(と勝手に呼んでいる)の第2弾。前作「潮首岬~」と比べて地味です。と、いうか一般論としても地味でしょう。作中作の内容や、その使い方も含めて地味でしたね。
 でも、個人的には嫌いではないタイプの作品。方言や情景の描写など、函館の雰囲気を感じられたからなのか、何というか、安心して読めたのですよね。丁寧な地味さの心地よさ。

No.922 7点 安達ヶ原の鬼密室- 歌野晶午 2020/11/28 11:05
 時期も舞台も異なる4つの事件?を一つの紐で結びつけた作品。見せ方を変えたり、他の要素も組み合わせることで、なるほど、面白く仕上るものですね。ある意味で、贅沢な作品と言えるのかも。(逆の評価もあり得るか。)マトリョーシカ的な構成も良かった。
 ちなみに、本編とも言うべき戦時中の事件については、最も大がかりではあるのだけれども、大人の登場人物にとっては、痕跡から分かる、少なくとも不信感は抱くような気がしますね。何かは残っていたはず。見過ごすかな?

No.921 5点 病弱探偵 謎は彼女の特効薬- 岡崎琢磨 2020/11/22 21:54
 病弱で学校を休みがちな高校生・貫地谷マイ(患者+病)が、幼馴染の同級生・山名井ゲンキ(病まない+元気)が持ち込んできた、校内の謎を解き明かすという短編集。探偵役がいつもベッドに臥せっているので、「安楽椅子探偵」というよりも「寝台探偵」とでも言うべきか。
 ネーミングを含め、突っ込みたいココロが疼きます。でも、このキャラ設定とラブコメ感からして、実はアレなんでしょ、心の準備はしてますよ、で、最後にどんな反転が…って思っていたら、そのままかい!…というのが個人的な最大の突っ込みどころでしたね。個々の短編のネタとしても軽め。好き嫌いは分かれそう。採点はギリギリこの辺りか。

No.920 6点 バック・ステージ- 芦沢央 2020/11/14 22:39
 連作短編集。本筋のストーリーがあり、その合間に4つの短編が挟み込まれているといった構成です。
 4つの短編の中では、第二幕の「始まるまで、あと五分」がベストかな。本筋のストーリーについては、痛快ではあったけれども、あっさり纏めすぎのような気もしましたね。「へぇ、芦沢さんって、こういうタイプの作品も書くんだなぁ」というのも、率直な感想。読後感は良いです。

No.919 5点 猫色ケミストリー- 喜多喜久 2020/11/08 16:03
 「化学+ラブコメ+ミステリー」といったところ。男子→女子→猫と人格(?)が移転するから、SFも入るのか。
 私が化学に疎いせいなのか、中盤は多少冗長に感じた面も。ミステリーとしても弱い。一方で、軽快に読ませる力は評価したいと思います。

No.918 7点 強欲な羊- 美輪和音 2020/11/03 23:47
 連作短編集。グイグイ読ませた上での反転。巧いです。①と④が特に印象に残りそうかな。
①強欲な羊:浅はかな私の想定を軽々と超える結末。ジワッと怖い。
②背徳の羊:これも私の想定を超えていった。女性って怖い。
③眠れぬ夜の羊:この作品集の中では目立たないかもしれないが、複数のネタ配置など、心憎い。
④ストックホルムの羊:あまり多くは語りますまい。反転がお見事。
⑤生贄の羊:これまでの4作と繋がるお話。ホラー感は最も強いけど、この短編に限っては消極的な評価。

No.917 6点 名探偵なんか怖くない- 西村京太郎 2020/10/25 18:28
 国内外の名探偵4人が登場。それはそれとして、「3億円事件の類似事件を起こさせる」という出発点は、なかなか面白かったですね。スイスイと読まされました。西村御大の初期作品群は、バラエティに富んでいるし結構好きなんです。
 ちなみに、講談社文庫の新版で読んだのですが、収録されていた綾辻行人との特別対談も興味深かったですね。

No.916 5点 化学探偵Mrキュリー5- 喜多喜久 2020/10/22 22:27
 シリーズ第5弾。
 個人的には、忙しくて疲れているときに便利な?シリーズとなっています。ガツンとはこない辺りが丁度よかったりします。
 第一話「化学探偵と無上の甘味」のネタは楽しかったのだけれど、登場人物が専門家だけに即刻気付くのではないかな。最終話「化学探偵と冷暗の密室」は、何やら新しい展開になりそう。続編は果たしてどうなるのだろう。出版社と作者の思惑に嵌ってる?

No.915 5点 黄色館の秘密- 折原一 2020/10/13 22:59
 黒星警部シリーズ第3弾。
 結論としては、かなり馬鹿馬鹿しい。でも嫌いじゃない・・・ってことになるかな。本格ド直球の設定でこの結末。これがシリーズの持ち味なのだと割り切って、楽しむことにしましょうか。
 ちなみに、竹内刑事のご紹介のシーンはどうなのだろう。これ、必要?
 それと、2つ目の密室の真相についてはどうなのだろう。雑すぎない?
 いずれも「まぁ、いいか」って思わせられていることが、「嫌いじゃない」という所感に繋がっているということで、ご理解ください。

No.914 5点 君に読ませたいミステリがあるんだ- 東川篤哉 2020/10/04 23:22
 「鯉ヶ窪学園シリーズ」ということで、懐かしさとともに手にしたのですが、まぁ、舞台が同じということだけで、少し残念。逆に、シリーズ作を読んでいなくても支障はないということになりますね。
 各短編は小粒。特筆するとすれば「作者が作中作を用いることは珍しいなぁ、初めてかもなぁ…」というくらいか。連作短編としての仕掛けについても、「ああ、そう」といった印象に留まりました。使い方も中途半端で、作品全体に効果的に作用しているとは言い難いかな。とは言え、楽しくは読ませてもらいました。

No.913 5点 その旅お供します 日本の名所で謎めぐり - 綾見洋介 2020/09/27 22:13
 「旅・謎・酒・人好きなら読まなきゃ損!」という帯に魅かれ、手にした次第です。デビュー作(前作)「小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件録」が個人的に悪くなかったことも影響したかな。
 ちなみに、帯にあった「旅・謎・酒・人」。私は全部好きなのだけれども、登場するお酒はカクテルのみでした…。自分は日本酒・焼酎派で、旅すれば地元のいずれかの酒を嗜むことにしているので、カクテルではちょっと…いや本筋とは関係ないか。
 内容としては、神楽坂のバー「トラベラー」の常連たる歴史学者が、バーで知り合った客の旅に同行し、客が抱えていた謎を解決する…という流れの連作短編。ベストは二話目(舞台:奈良)で、伏線を含めて嫌いじゃない。でも、ミステリとしては総じて軽めなので、肩透かしに感じる方も多いかも。

No.912 5点 こうして誰もいなくなった- 有栖川有栖 2020/09/22 21:47
 掌編から中編まで、ノンシリーズの14作品を収録。「有栖川小説の見本市」との謳い文句については、そういった面を否定するつもりはないのだけれども、有栖川ファンとしては、いやいや、本物(これまでの発表作品)と比べて「見本」が見劣り過ぎでは…という気もいたします。
 ベストは表題作の中編だと思うのですが、好き嫌いは分かれそう。そもそもラジオ朗読用として書かれた複数の短編については、活字となってどうかは措いておくとして、確かにラジオで聴いたとすれば、雰囲気も倍増して楽しめそうでしたね。

No.911 6点 静かな炎天- 若竹七海 2020/09/21 11:04
 6編から成る、葉村晶シリーズの短編集。それぞれの短編で葉村の活躍が楽しめます。メインの事件(?)の調査の進展、広がり、転換など、安定的な面白さがありますね。
 一方で、短編の途中で2~3日空いてしまうと、登場人物名や人間関係が分からなくなっちゃたりも。まぁ、自分のせいなのだけれども、本作の収録短編については、通しで一気に読んだ方がより楽しめると思います。それだけ、各短編が「濃い」ということなのかな。

No.910 6点 さよならの手口- 若竹七海 2020/09/12 21:40
 葉村晶シリーズの長編。前作「悪いうさぎ」から13年ぶりで、彼女も40代という設定。何か親近感が湧きます。
 ミステリ専門古書店でのバイト生活の中、白骨死体を発見。そして負傷のため入院。退院後に探偵稼業を復活することに。探偵小説の定番である「失踪人捜し」がメインの流れとはいえ、これと並走するストーリーや謎も次々に絡んで、なかなかに贅沢。結果的には、暗澹とした内容なのですが、軽快かつユーモラスな葉村の語り口もあって、グイグイ引っ張られましたね。葉村は今回もたくさん怪我をして、可哀想だけど。

No.909 6点 きみのために青く光る- 似鳥鶏 2020/08/31 22:30
 心の不安に根ざして発症する「青藍病」。能力が発動すると身体が青く光る(ただし他人には見えない)から名付けられたのでしょうが、その具体の能力は人によって様々。生物を殺せる能力とか、死期が近い方を判別する能力、これらは一定想定しやすいのだけども、個人的には、動物から攻撃されてしまう能力がツボでしたね。それは能力と言えるのだろうか、というか、迷惑で嫌すぎる。一方で、年収が分かる能力は何気に欲しかったりして。
 全体としては嫌いではない内容でした。ラブストーリーとしての色が濃く、結果として「いかにも」といった展開ではあるのだけれども、伏線も含めて、そこに至る過程は楽しく読ませていただきました。文庫化に際して「青藍病治療マニュアル」から改題。確かに、改題後の方がしっくりきますね。
 ちなみに、青藍病を研究している「静先生」が各短編に共通して登場するものの、各短編の繋がりが強い訳ではありません。先生の詳細も謎のままだし、続編があってもよい流れのような気がするのですが・・・。続編はないのかな?

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.87点   採点数: 1228件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(44)
東川篤哉(43)
森博嗣(37)
島田荘司(27)
道尾秀介(27)
伊坂幸太郎(26)
米澤穂信(23)
西村京太郎(22)
歌野晶午(21)