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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.982 6点 メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 2021/12/19 17:47
 メルカトル鮎の魅力?を味わえる短編集(掌編も含む)。
 個人的なベストは、最も”らしい”作品である「メルカトル式捜査法」。独自すぎる論理をどう捉えるか、ということにはなるのでしょうが。それと、掌編「不要不急」も何気に好き。メルカトル鮎が言うからこその、社会派的なオチがいい。

No.981 5点 居酒屋「一服亭」の四季- 東川篤哉 2021/12/12 22:07
 極端に人見知りなのに居酒屋の女将を務める「安楽椅子(あんらくよりこ)」が、日本酒片手に事件を解き明かす連作短編集。推理の舞台が居酒屋とはいえ、料理ネタで引っ張ろうとしない姿勢は嫌いではない。
 4短編とも死体の一部が切断されている猟奇的事件。でも、ソコは東川さんですから、陰鬱さがあるはずはない。探偵役の「いかにも」設定も含めて作者らしさを楽しみましょう。全体的に小粒だけれど「鯨岩の片脚死体」のホワイがベストか(現実的ではないけれどね)。
 探偵役の毒舌は作者の十八番ですが、本作のベストは「いいえッ、ぶちクソ間違ってますわッ」。和服姿の居酒屋の女将に叫んでいただきたい。

No.980 5点 文豪たちの怪しい宴- 鯨統一郎 2021/12/07 22:57
 作者お得意の新解釈モノ。今回は歴史ではなく、文学作品ですね。夏目漱石「こころ」、太宰治「走れメロス」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、芥川龍之介「藪の中」の4作品がテーマです。
 新たな解釈は確かに面白いのだけれども、いずれの短編にも何らかの「いちゃもん感」や「こじつけ感」を感じてしまいましたねぇ。それと、個人的には、宮田の「ものの言い方」に多少イラッときたりして。嗚呼、私のおじさん化が着実に進行しているのだなぁ、そして、私とこの作者さんとのフィット感はどうなのだろうかなと、あらためて考えさせられました。

No.979 5点 超短編!大どんでん返し- アンソロジー(出版社編) 2021/11/28 20:55
 30人の作家による掌編30連発。それぞれの作者らしさを感じましたが、出来栄えはマチマチ。
 好きな作品を掲載順に挙げれば、骨なし(田丸雅智)、親友交歓(法月綸太郎)、花火の夜に(呉勝浩)、阿蘭陀幽霊(柳広司)、電話が逃げていく(乙一)ですかね。1作品2000字程度なので、ちょっとした隙間に読めます。使い勝手?はいいかもしれません。

No.978 6点 間宵の母- 歌野晶午 2021/11/26 21:23
 何の事前情報もなく手にしたのですが、いやはや、何とも言えない後味を残す作品でした。心が疲れている時に読まなくてよかった。
 連作短編の最終話における伏線回収(と言っていいのか?)は、ストーリー的に複雑な心境になりながらも、なるほどと思わせられた部分もありましたね。
 しかし、全体的には、作者が時折繰り出す、ブラック歌野色に染まっています。人を選ぶ作品ですね。

No.977 6点 ルビンの壺が割れた- 宿野かほる 2021/11/21 20:13
 文庫の帯にあった「日本一の大どんでん返し」との評は、さすがに持ち上げ過ぎとは思いますが、終盤のたたみ掛け具合は良いですね。最後の一文も印象的。メールのやり取りのみで構成したことが、様々な面で効果を上げています。ほぼ一気読みでした。

No.976 6点 雨と短銃- 伊吹亜門 2021/11/20 13:10
 デビュー作「刀と傘 明治京洛推理帖」が好印象でしたので、手にした次第です。
 薩摩藩と長州藩が協約を結ぼうとしていた、慶応元年の京都が舞台。前作(デビュー作)同様に架空の人物・鹿野師光が探偵役を務めます。前作の前日譚の位置づけですね。坂本龍馬や中岡慎太郎、桂小五郎、西郷吉之助(隆盛)に中村半次郎、土方歳三といった人物が、重要な役割をもって登場します。ココがポイント。
 ミステリとして目立った点はないのですが、歴史的な背景とともに読み込むべき作品であり、幕末好きな私としては、ワクワクしながら読ませていただきました。

No.975 7点 蒼海館の殺人- 阿津川辰海 2021/11/14 22:56
 力作です。最後まで感心しながら読ませていただきました。
 一方で、同様の感想を持たれた方もいらっしゃるようですが、ソコまでは操れないと思いますがねぇ。特に、大前提となる最後の一手までは…。その点は結構気になりましたね。あと、前半のとある表記はフェアと言えるのかな?
 とは言え、繰り返しになりますが、熱のこもった力作です。心意気を評価し、次回作にも期待。

No.974 7点 新・新幹線殺人事件- 森村誠一 2021/10/30 18:15
 二本の「ひかり」に絡む謎もいいのだけれど、誘拐事件や詐欺事件と贅沢に?話が広がり、発想の転換を含めて終盤に収束していく構成が印象に残りそう。会社人間とその家族の再生を感じさせる点も好印象。前作以上の評価。

No.973 6点 暗色コメディ- 連城三紀彦 2021/10/24 22:43
 ①もう一人の自分を目撃したという人妻、②消失狂の画家、③「今日はあんたの初七日じゃないの」と妻に言われる葬儀屋、④妻が別人にすり替わっていると悩む外科医…。謎は魅力的だし、精緻に組み立てられているし、筆致も流麗だし、流石だなと思わせてくれます。
 でも何だろう、何かストンと落ちないような複雑な心境。精神的な病を組み合わせると、ご都合主義とまでは言わないけれども、色々とできてしまいますからねぇ。雰囲気も陰鬱になるし。
 ちなみに、上記③は、自分に置き換えて考えてみると相当に怖い状況。旦那さんが可哀想すぎです。

No.972 5点 祈りのカルテ- 知念実希人 2021/10/17 09:27
 研修医を探偵役に据えた連作医療短編集。患者の行動の謎・行動の裏側にある心理が読みどころ、ということなのでしょう。
 確かに、1話目の「彼女が瞳を閉じる理由」の読了後は、なるほどと感じましたし、そのフリが後々の短編にも効いているのだけれど、広い意味で「同パターン」に偏り過ぎた印象はあります。もうワンパンチ、という気もします。現役医師らしい医療描写の安定感やスラスラと読ませる力は、素直に評価します。

No.971 6点 炎舞館の殺人- 月原渉 2021/10/14 21:29
 ツユリ・シズカシリーズ第5弾。
 肝となるトリックの本質的な部分は、多くの方が既視感を抱くものと思われますが、一定の工夫は施されています。変に水増しせず、締まった分量での本格モノは、個人的には嬉しいかな。色々とあり得ないお話だし、突っ込みどころもあるのだけれども。

No.970 6点 石ノ目- 乙一 2021/10/09 18:32
 「平面いぬ。」と改題された文庫版で読了。
 4つの短編で構成されています。いずれも、実際にはあり得ない能力や状況を設定しながら、何気に感情移入させられてしまう辺りは流石と言うべきか。決してハッピーエンドとは言えないのに、温かみのある切なさを醸し出しています。
 ベストは文庫版の表題作でしょうか。やっぱり家族っていいな。そしてイヌがいい味を出しています。当初の?表題作「石ノ目」は、ある方の正体は自明と言っていいのだけれど、一捻りが効いていました。

No.969 6点 あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 2021/10/03 21:16
 確かに麻耶雄嵩らしくないのだけれど、一方で麻耶雄嵩らしいか…という、相反する感想をもった作品です。でも、全体の突き抜け感は他の作品には及ばす。そんな高校はないよね、と現実的に考えちゃったりして。
 最後の捻りは嫌いではなく、若かりし頃の作者の一断面を見られたこともあって、この採点。

No.968 7点 invert 城塚翡翠倒叙集- 相沢沙呼 2021/09/26 16:52
 昨年度の話題作「medium」の続編で、引き続き「城塚翡翠」が登場。今回は倒叙形式の3つの中編で構成されています。
 うち2作品は、上質でオーソドックスな倒叙ミステリ。翡翠の古畑任三郎化?も微笑ましい。その流れでの最終話「信用ならない目撃者」が断トツにおススメ。主人公に語らせておいて、そう来たかという結末で、純粋に楽しめました。なかなか興味深いタイトルだったけれども、最も信用ならないのは作者だったりして。油断ならないなぁ。次作も楽しみに待つとしましょう。

No.967 5点 葛登志岬の雁よ、雁たちよ- 平石貴樹 2021/09/18 21:58
 函館物語(個人的には「岬シリーズ」と呼びたい)の第3弾。読者が推理できる要素は少なく、警察の捜査と、そこで得られた新情報をひたすら追い掛けるスタイル。退屈と感じられる方もいらっしゃると思います。自分としては、時にそういった作品も読みたくなるので、悪くはなかったのですが、2つ目の殺人の動機にはちょっと疑問。現場とトリックの状況も分かりにくかったかな(読解力が不足しているだけかもしれませんが)。
 終盤で探偵役「ジャン・ピエール・プラット」の渡仏の意向が語られたので、このシリーズに幕が下ろされる可能性もあるのかな?シリーズ作品内で描かれる函館の生活感が好きだったのだけれど。ちなみにシリーズの中では第一作の「潮首岬に郭公の鳴く」がベスト。

No.966 6点 新幹線殺人事件- 森村誠一 2021/09/13 21:40
 2つのアリバイトリック。1つ目の新幹線電話の件は、なかなか面白いですね。ある1点だけが判れば、「水平思考アリバイ」とやらは、読者としても気付きやすかったかな。2つ目のトリックは、何というか、最初の捜査で警察が気付いてほしかった。
 トリック以外にも、警察の捜査や芸能界を交えて読ませてくれます。終盤の転換もいいですね。ただ、これを言ってはオシマイかもしれないけれど、2つの殺人とも、そんなリスクの高い手法を採る必要がないのでは…と気になって仕方がありませんでした。

No.965 6点 彼女が追ってくる- 石持浅海 2021/09/05 20:56
 碓氷優佳シリーズ第3弾。個人的には、倒叙形式はそれほど好まず、碓氷優佳のキャラはそれ以上に好まないのですが、カフスボタンの工夫等々もあって楽しく読ませていただきました。最終盤もイイですね。
 一方で、昨晩夕食を共にした知人の刺殺死体を前にしながら、警察への連絡をせずに2時間も推理をする大人たちって、どうなのでしょうねぇ。しかも亡骸のある部屋でねぇ。まぁ、この作者なのだし、読者が慣れるべきなのか。

No.964 7点 さよなら僕らのスツールハウス - 岡崎琢磨 2021/08/31 22:15
 シェアハウス舞台を舞台とした連作短編集。若者たちが人生の一時期を共有している風景、それを少し後にそれぞれが振り返っている描写にグッときましたね。ノスタルジックな気分に浸ってしまう辺り、自分も歳を重ねてきたのものだと、あらためて感じました。読後感もよく、様々に考えさせられます。
 短編の中では「陰の花」が個人的ベスト。短い尺ながら、心情的な二転三転が織り込まれています。作品全体としての構成もなかなか考えられています。多少の「あざとさ」にも、むしろ好感。幅広い年齢層にお勧めできそうな作品ですね。

No.963 7点 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 2021/08/26 22:27
 この作者さんの作品は初読です。いやはや、グイグイ読まされ、最終的にはやられてしまいました。よくよく考えれば、予測がつくような気もするのですが、グイグイと読まされている時点で作者の術中にはまっていますよね。全体構成も巧く、売れる要素が詰まっています。幅広い層に楽しんでいただけるのではないでしょうか。映像化に向いていそうな作品でもあります。
 ちなみに、極めて個人的な意見なのですが、実は冴子の方がフイットするような気がするし、私も冴子の方が好み。こういった意見は好ましくないか。すみません。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
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