皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1812件 |
No.152 | 4点 | 行方不明者- 折原一 | 2009/12/05 23:11 |
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「~者」シリーズ。
よく続いてます。本シリーズ。 ですが、前作「沈黙者」くらいから明らかにパワーダウン気味なのが否めません。 ラスト前で「僕」の正体が明かされますが、それまでに何の材料も与えられてなかった名前であり、「だれ?」という感じです。 氏の作品は、「狂気」とか「訳のわからなさ」という”味”が強ければこそだと思いますが、ちょっと今回は薄味すぎです。 オチもとってつけた感が残りました。 |
No.151 | 4点 | 軽井沢殺人事件- 内田康夫 | 2009/12/05 22:59 |
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浅見光彦と信濃のコロンボ「竹村警部」の競演が”ウリ”の作品。
ですが、読み所はそれだけという印象。 あくまでも主役は浅見であって、竹村警部が完全に脇役扱いなのが”竹村好き”にとっては不満が残ります。 作者自身が軽井沢在住のせいか、軽井沢の歴史や名所関連の話はなかなか面白いのですが、肝心のミステリー部分はどうもいけません。 ラストも消化不良気味・・・ |
No.150 | 8点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2009/12/05 22:49 |
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150冊目の書評は本作で。
今回、改訂完全版で久々に再読しました。 「あとがき」で島田氏も書いてますが、まさに本作が「大作家・島田荘司」の原点とも言える作品なんでしょう。 改訂版のため、文章的なアラはなくなってますが、その分ちょっと若々しさには欠けるような印象は残りました。 本作は、ピュアな「ラブストーリー」ですね。ミステリー的な技巧云々というのとは全然別物で、恋愛にも人生にも不器用な男の心の動きが哀愁を誘います。 しかし、これは本当にあの石岡君と同一人物なんでしょうか。ラストで御手洗の前で号泣する場面では、こちらの心も震えました。 この後の作品に登場する何とも小市民的な石岡君とはどうしてもイメージが一致しない感じです。 |
No.149 | 7点 | 龍神池の殺人- 篠田秀幸 | 2009/12/01 23:09 |
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弥生原探偵譚の第8作目。
氏の作品は必ず既作品のオマージュとなっていますが、本作はヴァン・ダインの「ドラゴン殺人事件」と横溝「迷路荘の惨劇」、そして松谷みよ子の「龍の子太郎」の3つが下敷きになっています・・・(すごいですね) 例によって、本格物の要素を詰め込みすぎるほど詰め込んでいますが、今回は久々に水準以上の出来といった印象。 アリバイトリックはよくできているものと、甚だ怪しいものが混在していますが、まぁ許容範囲でしょう。 あまりにも人が殺されていくため、「読者への挑戦」の段階ではおおよそ犯人は推定されますし、現実的な動機を持つ者があまりにも明確なのはいかがなものかとは思いました。 |
No.148 | 6点 | 悪魔のラビリンス- 二階堂黎人 | 2009/12/01 22:54 |
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二階堂蘭子と「ラビリンス」の対決シリーズ第1弾。
本作は中編2作と、次回作へのつなぎ的な最終章の3部構成です。 最初の「寝台特急『あさかぜ』の神秘」は、氏得意の奇術的演出を利かせたトリックが光ります。密室からの犯人脱出&密室への被害者出現方法が図解付きで解説されていて、たいへん分かりやすい配慮振りです。 2つめの「ガラスの家の秘密」は本筋の事件よりは、むしろ「府中市内の西洋館の地下室」が今後の本シリーズにとってのキーになり重要でしょう。 本作中では、蘭子とラビリンスの直接対面はなく、ラビリンスという存在についても謎のまま終わってしまいます。 その後、「魔術王事件」→「双面獣事件」と進展するとともに徐々にラビリンスの謎は明らかになりますが、逆に作品の質はやや下降気味に・・・ |
No.147 | 4点 | 最後のディナー- 島田荘司 | 2009/12/01 22:27 |
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石岡和己と犬坊里美を主役に据えた短編集。
正直なところ、本作はミステリーではなく「ちょっといい話」的な”読み物”というだけの印象。 「龍臥亭事件」からの流れを知っている読者にとっては、2人のその後的な競演は楽しい演出かもしれませんが、それだけと言ってしまえばそれまででしょう。 ただ、これからのクリスマスシーズンにはぴったりかもしれません。心が温まります。 「大根奇聞」はよく分かりません。面白くないことはないですけど・・・ |
No.146 | 7点 | 朱の絶筆- 鮎川哲也 | 2009/11/28 22:41 |
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星影龍三シリーズ。
ちょっと軽いタッチですが、典型的な「犯人当て=フーダニット」物という印象。 やっぱり、第1の殺人の「○○」を使った仕掛け=偽装アリバイが秀逸でしょうね。ちょっとした盲点というか、思い込みを突いたトリックで、鮎川氏らしさがよく出てます。 第2~4の殺人はどうですかねぇ。ちょっと必然性が弱いような感じですが・・・まぁ、あくまでも最初の事件あっての、という意味合いで、特に珈琲による毒殺は蛇足のような気はしました。 タイトルがいいですね。気が利いています。 |
No.145 | 6点 | 蒼茫の大地、滅ぶ- 西村寿行 | 2009/11/28 22:19 |
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寿行氏お得意の動物&パニック物の1つ。
名作「滅びの笛」は”鼠”が東京をパニックに陥れますが、本作の主役は”バッタ”。空を覆いつくすほどの大群の”バッタ”・・・ バッタの大群のおかげで、東北地方の穀倉地帯は全滅させられ、東北地方は青森県知事のリーダーシップのもと、独立を決意する・・・という粗筋です。 ストーリー的にはかなりハチャメチャな感じはしますが、全盛期の作者の力というか、読ませるパワーというものを味わえる一作でしょう。 |
No.144 | 8点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2009/11/28 21:58 |
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「・・・の悲劇」第2弾。
ある意味名作ではないかと思います。 真相が三層構造になっていると言ったらいいのか、ラストで2度ほどひっくり返されます。 何といっても途中の「日記」部分が秀逸です。かなりのページ数を割いているとおり、この「日記」の謎にどれだけ気付けるかという部分で読み手の力量も試されてる気がしました。 ただ、「2人称」に関する仕掛けは反則ギリギリでしょうね。まぁ伏線は確かに張られてますが・・・ ユーミンの「卒業写真」の歌詞もいいスパイスになってます。 |
No.143 | 5点 | Yの構図- 島田荘司 | 2009/11/23 14:47 |
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吉敷刑事シリーズ。
出版当時、社会的事件であった「いじめ」問題が取り上げられ、事件の重要なエッセンスになっています。 真犯人はやや意外性を感じますが(まぁ、「Yの…」とくれば、おのずと分かりますけど)、驚くような「仕掛け」もなく、島田氏としてはかなり地味な作品といっていいでしょう。 当時の大人が「いじめ事件」に対して受けた感想というのが、まさに吉敷の台詞や心情に表れていて興味深いです。 余談ですが、本作発表のきっかけとなった「中野○○○中学校」の近くに住んでいた時期があり、校舎を見て「ここがあの中学校かぁ・・・」と感慨に耽ったことがあります。 |
No.142 | 6点 | 模倣の殺意- 中町信 | 2009/11/23 14:24 |
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旧作名「新人賞殺人事件」を創元推理文庫にて復刻させた作品。
いわゆる「叙述トリックもの」です。 まずは構成が面白いですね。冒頭1つの事件(殺人または自殺)が起こり、それを被害者の関係者である2人が別々に捜査していき真相に近づいていきますが、導かれる結論はなぜか食い違う・・・という展開。 当然そこに「仕掛け」があります。 ただ、この「仕掛け」はどうですかねぇ・・・一応伏線は張られていて、読み手が気づくことも可能ですし、確かに被害者に対する形容詞が引っ掛かり続けるんですけど・・・ 叙述トリックに慣れた身にとっては、どうしてもサプライズは小さめですね。 |
No.141 | 7点 | フレンチ警部最大の事件- F・W・クロフツ | 2009/11/23 14:01 |
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フレンチ警部が初登場する記念すべき作品。
タイトルは「最大の…」となっていますが、作者も当初はフレンチ警部を本作だけの探偵役と考えていたためで、「最大」というほどのインパクトはありません。 ただ、クロフツらしい一作なのは間違いなく、細かな手掛かりや考えをもとに、フレンチ警部が丹念に捜査を進めていきます。 特に、真犯人を指摘するラストの場面がいいですね。フレンチ警部を翻弄した犯人とその理由が気持ちよく頭に入ってきます。 ちょっと途中がモタモタしますが、それはそれでクロフツの特徴ですから・・・ |
No.140 | 8点 | 走らなあかん夜明けまで- 大沢在昌 | 2009/11/22 00:24 |
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ちょっとヘタレの普通のサラリーマン坂田を主人公にした、作者としては珍しいシリーズ。
「新宿鮫シリーズ」のような震えるような緊張感こそありません。が、逆に言えば、主人公が単なる一市民になったことで、読者がスムーズに感情移入できるようになっています。 追い詰められて、弱気な自分を奮い立たせて頑張る主人公の姿に、いつの間にか自身を重ね合わせてる自分がいます。 舞台が「大阪」というのも本作に何ともいえない”味わい”をプラスしてますね。憎むべき敵である「や○ざ」もやっぱり大阪だとなんか雰囲気が和らぐというか・・・ やっぱりうまい作家です。 |
No.139 | 6点 | 金融探偵- 池井戸潤 | 2009/11/21 23:50 |
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こちらも作者の十八番(おはこ)「連作短編集」。
講談社でのシリーズとは若干趣が変わっていますが、主人公はリストラされた元銀行員という設定や経済・金融関連が背景に潜む事件を解決する・・・という部分は変わりありません。 金融ミステリーというニッチな分野では、他に追随を許さない作者ですが、やっぱり「金」という犯罪や事件に付き物の存在をリアリティー十分に書けている・・・のがいいですね(やっぱり、元銀行員ですから) ただ、他の短編集よりはやや落ちる印象なので、評価はこの程度です。 |
No.138 | 5点 | QED 竹取伝説- 高田崇史 | 2009/11/21 23:36 |
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QEDシリーズ。
まぁ、本シリーズの特徴かもしれませんが、ストーリーの半分以上は「竹取物語」に関する歴史的考察と薀蓄で占められています。 本編の殺人事件の方は、作者の得意分野である薬学関係のトリックが使われていますが、ほとんど付録的な印象。 読者の側も、殺人事件の解決云々よりは、「竹取物語」の真相究明の方が面白く感じるんじゃないでしょうか。 作者の狙いとしては、歴史ミステリーと本格ミステリーの融合なのかもしれませんが、結果としてはどちらも中途半端になっている感は拭えません。 |
No.137 | 7点 | マークスの山- 高村薫 | 2009/11/15 17:57 |
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直木賞受賞作。
作者の代表作でしょう。 精神疾患を持つ犯人が起こす猟奇的殺人事件と、そもそもの背景である過去の南アルプスでの殺人事件・・・この2つがどのようにつながっているか、というのが本筋です。 ただ、それよりも主人公の合田刑事を含む警視庁の捜査員たちのセリフや動きが実に生き生きして、なるほど警察官というのはこういう人種なのかというのがよく理解できます。(どこまで本当か分かりませんが・・・) トリックや凝ったプロットが出てくるという訳ではないですが、読み応えのある大作という評価で良いでしょう。 ただ、長い・・・ |
No.136 | 7点 | ゼロ計画を阻止せよ- 西村京太郎 | 2009/11/15 17:47 |
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左門字探偵シリーズの秀作。
あまり知られていない本シリーズですが、特に「誘拐物」のバリエーションの広さは秀逸モノです。 本作では、最初「ゼロ計画(プラン)=総理大臣の誘拐」をメインに事件は進んでいきますが、時間の経過とともに事件の本当の背景・意図が見えてくる・・・という展開です。 左門字と犯人グループの知恵比べはチェスや将棋にも似て、どちらが相手を読み切り、先手を打てるかという緊張感ある面白さ・・・ ラストは完全解決ではなく、含みを残した終わり方になっているあたりも、野心的だった初期の作者の心意気でしょうか。 |
No.135 | 7点 | ケンネル殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2009/11/15 17:38 |
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ファイロ・ヴァンス探偵譚の6作目。
作者のヴァン・ダインが、「一人の推理小説家が生涯で書ける優秀なミステリーは6作が限界」という言葉を残したのは有名ですが、本作がちょうどその6作目で、確かに本作以降は明らかに作品の質が落ちていきます。 ただ、本作はなかなかの出来。他の方の書評どおり、「グリーン家」や「僧正」に比肩すると言ってもいいでしょう。 第一の殺人は密室がメインになりますが、本筋の機械仕掛けのトリックよりも、「被害者が、自身の傷がたいしたことはない、と思い込んで自分で部屋に入って鍵を閉めた後に死んだ・・・」という捨て筋の方がなんか印象に残ってます。 |
No.134 | 7点 | 消えたタンカー- 西村京太郎 | 2009/11/11 22:37 |
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氏、初期の海洋ミステリー。
トラベルミステリーでブレイクする前の十津川警部が主人公です。 本作、結構面白いです。特に謎の呈示と、それを追跡する十津川の推理がうまい具合に絡み合い、意外な真相にたどりつきます。 海洋上でのタンカー事故と事故で生き残った乗組員の殺人事件・・・この2つの事件がまさに意外な方向へ進み、最後は世界的な事件に・・・という具合。 初期の氏の作品はなんとも奥行きのある味わい深い良作も多いんです。 |
No.133 | 5点 | 沈黙者- 折原一 | 2009/11/11 22:29 |
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「~者」シリーズ。
しかし、このシリーズもよく続いてますね。 ただ、やはりシリーズも重ねるごとにパワーダウンしている感は否めません。 本作での叙述トリックは、まさにラストに明かされる一点のみです。たしかにうまい具合にミスリードはしていると思いますが、これだけのことに前半の長い「手記(日記?)」部分は果たして必要なのか?と感じざるを得ません。 あとは、何か緊張感が足りないような・・・氏の良作は、やはり独特の緊張感を維持して「驚きのラスト」という展開でないとダメでしょう。 |