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E-BANKERさん
平均点: 6.02点 書評数: 1782件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.32 5点 確率2/2の死- 島田荘司 2010/07/18 22:52
吉敷刑事シリーズ。
「分数」シリーズでは最後の作品。
奇妙な誘拐事件と、ある主婦が夫の行動に不審を抱くシーンが交互に書かれ、この2つがどう繋がっていくのかが読み手の考え所となります。
ただ、作品の「深み」はあまり感じられませんねぇ・・・
たまたま、いま巷の話題を独占している”野球○○”が本作品のプロットのベースになっていて、読んでいくうちに「○○親方もこんな気持ちだったのか?」なんてことも想像させられて、そっちの方の感想がメインになってしまいました。
ラストもなんだか陳腐ですね。安手の2時間サスペンスみたいです。

No.31 8点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 2010/07/07 21:04
記念すべき、吉敷刑事(当時)シリーズの第1作。
本作品は一見すると、当時大流行のトラベルミステリー的な内容ですが、「不可能状況」という要素を前面に出した本格推理小説です。
御手洗シリーズと比べて「地味」という形容詞で語られることの多いシリーズですが、決してそんなことはありません。
死んでいたはずの時間に寝台特急「はやぶさ」で何人もの人間に見られた被害者・・・この謎を追及する吉敷刑事に天啓が!
「騙し絵のように事件をひっくり返される快感」はやはり島田氏の良作ならではと言えるでしょう。
また、本作品では中村刑事(江戸に詳しい)や牛越刑事といったお馴染みのキャラも登場し、そういう意味でもファン心を満たしてくれる作品です。

No.30 6点 踊る手なが猿- 島田荘司 2010/06/27 22:23
光文社の短編集第3弾。
4編中2編は吉敷刑事(当時)が登場しますが、主役的扱いではありません。
①「踊る手なが猿」=着眼点が光る秀作。確かに当時ならそうだった・・・今は結構変わってますが(何が?)
②「Y字路」=1作目と同じく「結婚したい年頃女性」が事件に巻き込まれます。現場の見取図がさも重要そうに示されてますが、そんなにトリッキーな話ではありません。
③「赤と白の殺意」=記憶の底に眠っていた過去の記憶が蘇って・・・よくある趣向です。
④「暗闇団子」=作者の作品中の随所に出てくる”江戸はよかった”的趣旨の短編。好みではない。
という訳で、なかなか味わいのある4編ではありますが、全体的なレベルは平均点という感じでしょうか。

No.29 3点 都市のトパーズ- 島田荘司 2010/06/20 15:53
これはミステリーというよりは「島田流ブラック・ファンタジー」とでも言ったらいいんでしょうか?
「日本人」という人種がどれだけ低級で、「東京」という都市がどれだけ「ヒドイ」のかが、登場人物を通して延々と語られます。
まぁ、現代日本人の「アイデンティティーの欠如」は多くの日本人が共通して感じていることでしょうし、島田氏の辛らつな書き方というのも、いわば”愛情の裏返し”なのかもしれません。
昨今の政局の混迷も嘆かわしい事態ですが、いつまでたっても第三者的目線でしかそれを見ることのできない我々国民の方により大きな問題があるのでしょう。
そんなことを考えさせてくれる作品ではありますが、やっぱり余りにも作者自身の「イズム」を押し付けられるのは読んでいてツライなぁと感じます。

No.28 5点 サテンのマーメイド- 島田荘司 2010/06/19 00:25
初期のノンシリーズ作品。
作者唯一のハードボイルド作品という触れ込みで、実際はハードボイルドと本格の融合を狙った作品のようです。
内容については「うーん」・・・
ハードボイルドとしてはかなりベタな感じですし、本格物としては謎もトリックも陳腐なレベルとしか言えませんねぇ・・・
この頃は、吉敷物や御手洗物以外にも多種多様な作品を世に出していた時期で、「火刑都市」のようなレベルの高い作品もあれば、本書のように「やっつけ感」のある作品もあるというイメージです。
作品の中にも出てきますけど、人間の生首ってそんなに簡単に取り扱えるものなんですかねぇ?

No.27 5点 天に昇った男- 島田荘司 2010/05/09 17:16
「秋好事件」からの一種のスピンオフ作品。
島田イズムともいえる、「冤罪事件」と「死刑廃止論」をベースに、ミステリーというよりはファンタジー作品でしょう。
冒頭の死刑執行シーンは、他作品でも割合目にするシーンですが、作者の筆力差のせいか、十分にリアリティ・迫力を感じさせます。
「本当にそんなことってあるの?」と思わせますが、ラストシーンでは一応オチが付くようになっています。だからこそ、途中の話が浮いてしまって、意味のないものを読まされた感がどうしても残ってしまいます。(夢オチと一緒ですね)

No.26 8点 Pの密室- 島田荘司 2010/04/16 21:52
御手洗潔の幼年期・少年期の事件を扱った中篇2作で構成されてます。
①「鈴蘭事件」:御手洗が幼稚園児の頃の事件。まさに「驚異の幼稚園児」です。道化役を演じる馬屋川刑事が何とも哀れで切ない感じ。
②「Pの密室」: 御手洗、小学生時代の事件。まさに「驚異の小学生」です。殺人事件の舞台となる被害者の一風変わった家については、平面図がふんだんに挿入してあり、いかにも島田色を感じさせます。
直角三角形が出てきた時点で「・・・の定理」については思いつきますが、事件当初の謎の多さはやはり氏の大きな魅力でしょう。本作は密室トリックこそ陳腐ですが、謎の構成とそれを解き明かす御手洗のロジックに惹かれました。
まぁ、御手洗の神格化やあまりにもキャラクター要素が強くなってしまうのは嫌ですが・・・

No.25 6点 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 2010/04/02 21:45
御手洗潔シリーズの短編集。
①「IgE」:一見して全く関係がないと思われた2つの事件が、御手洗の天才的頭脳によってつながる・・・という筋。本作では一番マシ。ホームズ物っぽい雰囲気。
②「Sivad Selim」:ミステリーではない。石岡の悲しいほどの小市民ぶりが涙を誘う?作品。
③「ボストン幽霊絵画事件」:御手洗のボストン留学時代の事件。まぁ水準級というところ。
④「さらば遠い輝き」:ミステリーではない。御手洗の近況を語る内容。
全体としては、御手洗の超人ぶりを見せ付けられるような作品。あまり感心はしませんが・・・

No.24 10点 占星術殺人事件- 島田荘司 2010/03/12 21:42
御手洗潔シリーズ。
200冊目の書評は是非この作品で。
とにかく、現代の本格ミステリーを語る上では、決してはずすことのできない作品であるのは間違いないでしょう。
狂人が書いたとしか思えない手記のとおりに実際の殺人が起き、そして有名な「アゾート殺人」へ・・・
後の御手洗シリーズを考えれば、御手洗がこれほど迷って、考えさせられるシーン・事件というのはあまり思い浮かびません。それだけ、真犯人のプロットが素晴らしかったということでしょうか。
とにかく、当時、「死者が飲む水」→「本作」→「斜め屋敷」と読み続け、作者のミステリー作家としての資質に大いに驚かされました。
(それ以来、5回も再読するほどハマった・・・)

No.23 6点 消える「水晶特急」- 島田荘司 2010/03/02 20:34
一応、吉敷刑事シリーズ。
ですが、主人公はファッション誌の女性編集者2人という作者には珍しい設定。
島田氏も「主人公にどんな洋服を着せるか、ファッション誌を片手に考えるのが面白かった!」という「あとがき」を書いています。(想像できませんけど・・・)
本筋の列車が消えるトリックについては、氏にしては実に「現実的」なトリックだと思います。
伏線は張ってあるし、巻頭の鉄道地図を見れば気付く人も多いのではないでしょうか。
ただ、メイントリックありきとはいえ、他の設定が非常にムリヤリ感が強いので、レベルの高い作品とは言えないでしょう。

No.22 7点 御手洗潔の挨拶- 島田荘司 2010/02/11 23:02
御手洗潔シリーズの短編集。
4つの短編とも有名作かつ御手洗の魅力を堪能できます。
①「数字錠」:割合地味。トリックは、青梅街道~新宿通り界隈を知っていればすぐに思いつきます。
②「疾走する死者」:御手洗と中村警部、隈能美堂巧の3人が一同に会する豪華版!? 読者への挑戦もありますが、島田氏のある有名作を読んでいれば、あの物理トリックがすぐに思い浮かぶでしょう。
③「紫電改研究保存会」:ホームズ物の名作「赤毛連盟」を彷彿させます。
④「ギリシャの犬」:暗号については、東京の下町方面に詳しければすぐにピンとくるかもしれません。

No.21 9点 網走発遙かなり- 島田荘司 2010/01/11 23:43
シリーズ外の作品。作者には珍しい連作短編集。
「丘の上」「化石の街」「乱歩の幻影」そして表題作の全4作の構成。
久々に再読して、地味ですが味わいのある「名作」だという思いを新たにしました。
それぞれは独立した短編ですが、ある人物とある一家が共通して登場しており、途中まではそれがどういう関係を持っているのかが謎になっています。そして、最終作ですべての関係・謎が明らかになり、感動・・・
全体的には、「都市論」や「徐々に狂気に支配される女性」といった島田氏らしいテイストも盛り込まれており、特に最終作は、名作「奇想、天を動かす」を思い起こさせます。
氏の作品に関しては、派手なものより、本作のような”しみじみ系”の方にむしろ良作が多いと思いますね・・・

No.20 6点 殺人ダイヤルを捜せ- 島田荘司 2009/12/17 18:11
初期のシリーズ外作品。
まだ携帯電話が普及する前の年代を舞台に、島田氏の十八番の1つ、「東京=都市の恐ろしさ」を感じさせる一作になってます。
「電話」に着目した作品は、確か別の短編(短編集「展望塔の殺人」の収録作でしたか?)でも書いてましたが、使いようによってはこういう気の利いたサスペンスになるんですね。
途中ハラハラさせておいて、ラストで「実は・・・でした」というオチは、定番とはいえ初期作らしい切れ味を持っています。
重厚さはありませんが、水準以上の作品でしょう。

No.19 8点 異邦の騎士- 島田荘司 2009/12/05 22:49
150冊目の書評は本作で。
今回、改訂完全版で久々に再読しました。
「あとがき」で島田氏も書いてますが、まさに本作が「大作家・島田荘司」の原点とも言える作品なんでしょう。
改訂版のため、文章的なアラはなくなってますが、その分ちょっと若々しさには欠けるような印象は残りました。
本作は、ピュアな「ラブストーリー」ですね。ミステリー的な技巧云々というのとは全然別物で、恋愛にも人生にも不器用な男の心の動きが哀愁を誘います。
しかし、これは本当にあの石岡君と同一人物なんでしょうか。ラストで御手洗の前で号泣する場面では、こちらの心も震えました。
この後の作品に登場する何とも小市民的な石岡君とはどうしてもイメージが一致しない感じです。

No.18 4点 最後のディナー- 島田荘司 2009/12/01 22:27
石岡和己と犬坊里美を主役に据えた短編集。
正直なところ、本作はミステリーではなく「ちょっといい話」的な”読み物”というだけの印象。
「龍臥亭事件」からの流れを知っている読者にとっては、2人のその後的な競演は楽しい演出かもしれませんが、それだけと言ってしまえばそれまででしょう。
ただ、これからのクリスマスシーズンにはぴったりかもしれません。心が温まります。
「大根奇聞」はよく分かりません。面白くないことはないですけど・・・

No.17 5点 Yの構図- 島田荘司 2009/11/23 14:47
吉敷刑事シリーズ。
出版当時、社会的事件であった「いじめ」問題が取り上げられ、事件の重要なエッセンスになっています。
真犯人はやや意外性を感じますが(まぁ、「Yの…」とくれば、おのずと分かりますけど)、驚くような「仕掛け」もなく、島田氏としてはかなり地味な作品といっていいでしょう。
当時の大人が「いじめ事件」に対して受けた感想というのが、まさに吉敷の台詞や心情に表れていて興味深いです。
余談ですが、本作発表のきっかけとなった「中野○○○中学校」の近くに住んでいた時期があり、校舎を見て「ここがあの中学校かぁ・・・」と感慨に耽ったことがあります。

No.16 9点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2009/11/07 22:43
吉敷シリーズの到達点的作品。
解説とかで書かれているとおり、本格ミステリーと社会派ミステリーが見事に融合した作品でしょう。
何より、吉敷が熱いです!(松岡修造ばりに)
今回、久しぶりに再読しましたが、トリック部分については偶然に偶然が重なって・・・というところが初読時以上に目に付いたり、豪雪の中アレとアレを持って犯人が簡単に移動できる? という部分が気になったりはしました。
そんなことより、島田氏は本作で「日本人の罪深さ」というものを吉敷の名を借りて主張したかったのでしょう。
それにしても、吉敷の台詞は泣かせます。「俺は・・・白は白、黒は黒と言い続けて死んでいきたいんだ!」
かっこいい!

No.15 5点 飛鳥のガラスの靴- 島田荘司 2009/10/18 22:25
吉敷シリーズの1作。
管轄外の未解決事件に吉敷が興味を持ち、またしても主任とのイザコザの末真相解明に乗り出す・・・という展開。
本作では、ある民話に関してある人物が残した手記が問題となるのですが、「飛鳥」についての謎はちょっと読者には解明不可能でしょうね。(そんなのありかよ的です)
本作では氏の作品中によく出てくる、「日本という国の風習、”日本的な考え方、日本人の思考”について、やや批判的な立ち位置からの持論」という部分が目立ち、純粋なミステリーとしてはどうかなぁという印象が残ります。(島田氏らしいと言えばらしいですけど)
「羽衣伝説・・・」後の吉敷と通子についても触れていますので、そっちの方では後の展開が気になりました。(「涙流れるままに」を読んでスッキリしましたが・・・)


No.14 5点 水晶のピラミッド- 島田荘司 2009/10/04 22:10
御手洗潔シリーズがやたら長くなったシリーズ?の2作目。(1作目は「暗闇坂・・・」)
複数の方の書評にもありますが、エジプト云々とタイタニック号云々というサイドストーリーは本当に必要なのか誰か教えてほしいです。読み手にとっては、本題に入る前に挫折しそうになります。
まぁ、これも島田氏の器・スケールの大きさ故なのでしょう。御手洗もレオナとの絡みではやたら格好良く書かれているので、ちょっと好感度下がります。

No.13 6点 龍臥亭幻想- 島田荘司 2009/09/30 22:43
「龍臥亭事件」の続編。本作で初めて、御手洗潔と吉敷警部が競演します。(一緒に登場はしませんが・・・)
それもこれも、龍臥亭で石岡と通子が出会ったからですね。
内容はと言えば、かなり幻想小説的です。特に、森孝魔王伝説に模した部分は甚だ現実感がありませんし、いくら理由があっても自分の体をそこまで痛めつけるなんて・・・想像できませんでした。

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ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1782件
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