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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1774件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.94 8点 ラットマン- 道尾秀介 2010/07/31 23:44
これが道尾氏の実力かと思わせるに十分な力作。
途中までは作者のミスリードにまんまと乗せられて、見事に騙された。
その先に更なる驚愕の真相が待っていようとは・・・。
ただ、過去の事件も含めて、伏線が少ないような気がする、その為真相を看破するのは難しいのではないかと思う。
アンフェアとまではいかないが、その点だけがやや不満。

No.93 7点 バイバイ、エンジェル- 笠井潔 2010/07/28 23:29
哲学部分を取り除いてみれば、スッキリとした本格ミステリに様変わりする。
しかし、本作においてはその哲学が肝要であり、どちらかと言えば作者が描きたかったのは、こちらにあるのではないかとも思える。
それでも、メイントリックはまさに本格と呼べるものであり、それだけでも絶賛に値する。

No.92 3点 ヴィラ・マグノリアの殺人- 若竹七海 2010/07/27 21:43
長すぎる、この内容なら短編で十分。
登場人物が多すぎて、誰が誰だか分からないし。
全体の2/3以上を占める容疑者同士の退屈な世間話を延々と読まされて、まるで拷問、挙句あの結末では・・・。
これがコージー・ミステリと呼ばれるものなら、二度と読みたくない。
しかし、姉妹編も同時購入してしまった為読まぬわけにはいかない、これには大後悔。

No.91 6点 巷説百物語- 京極夏彦 2010/07/25 23:30
読み始めた時は「おおっ、これは」と確かな手応えを感じたのだが、そのワクワク感は第一話に留まってしまった。
時代小説風の文体には違和感を覚える事はなかったが、どうも何か物足りなさを感じた。
これも期待の裏返しなのかも。

No.90 8点 ハサミ男- 殊能将之 2010/07/22 23:35
ネットで本作を検索していたら、いきなり見てはいけないネタバレが目に飛び込んできたという、苦い思い出のある作品。
叙述トリックの目玉を分かっていて敢えて読んだ訳だが、やはり予備知識なしで読みたかった。
そうすればもっと高得点になったはず。
でも、その他にも驚愕があったので許せた。
尚、最後の結び方はなかなか味のある結末だと思う。

No.89 5点 粘膜兄弟- 飴村行 2010/07/21 23:33
「粘膜シリーズ」前二作と比較すると、冗長な感は否めない。
本作のほうが一章から三章まで有機的な繋がりははっきりしているのだが、不用と思われるエピソードが羅列されており、やや退屈である。
最終的に作者が何を伝えたかったのか、私には理解できなかった。
根底に「愛」が流れているのは間違いないが、その愛の深みも今ひとつ感じられなかったのは残念である。

No.88 6点 未明の悪夢- 谺健二 2010/07/19 23:26
阪神淡路大震災直後の生々しい描写など、半端ではないポテンシャルを保持する貴重な作品ではある。
トリックは震災を実際に体験した者でなくては思いつかないものかも知れないが、ミステリをある程度読んでいる読者なら、苦もなく見破れてしまうのが残念。

No.87 6点 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 2010/07/18 23:40
本格物の短編集としては水準を超えていると思う。
ただ、木更津の扱いはちょっと可哀想な気がする。
香月は相変わらず性格が悪いな、というのが実際の感想。
ワトソン役の新型としては成功しているかもしれないが、個人的にはあまり印象が良くなかったのでこの点数。

No.86 8点 迷路館の殺人- 綾辻行人 2010/07/17 23:42
これ程作中作を見事に昇華させた小説も珍しい。
叙述トリックはややアンフェアな部分もあるが、私にとっては驚愕と言えるものではあった。
鹿谷門美の「迷路館の殺人」でも十分面白かったが、さらにそれを巡っての攻防は読者サービスの精神に溢れていると思う。

No.85 7点 ひらけ!勝鬨橋- 島田荘司 2010/07/16 23:52
これぞユーモアミステリの傑作ではないかと。
まあ、ミステリではないかもしれないし、どちらかと言うと私の苦手なハードボイルド風味だが、老人達の生き生きした姿をユーモアたっぷりに描かれており、とても楽しく読ませてもらった。
青春に歳は関係ないのだと教示し、改めて島田氏の作風の幅広さを見せつけられた力作である。
ゲートボールの試合のシーンでは思わず手に汗握る事請け合い。

No.84 5点 館という名の楽園で- 歌野晶午 2010/07/15 23:41
ガチガチの館ものを期待すると肩透かしを喰らう。
限られたページ数で、本格的な館ものを描ききるのはやはり難しいのだろう。しかし、アイデアは評価できるし、推理作家ならではのオマージュは好感が持てる。
読後感が切ない。

No.83 6点 水銀虫- 朱川湊人 2010/07/14 23:56
朱川湊人氏らしからぬ、ダークで後味の悪いホラー短編集。
どの物語も、「水銀虫」に蝕まれた(罪を犯した)者達の末路が容赦なく描きこまれている。
いわゆる因果応報が根底に存在しているのだが、結末がはっきりとした形で示されていない為、読者は不安定な状況に置き去りにされる。
その辺りが後味の悪さに繋がっている、鬱小説である。

No.82 3点 殺人ピエロの孤島同窓会- 水田美意子 2010/07/11 23:49
小学生の女の子が描いたにしてはよく出来ているのではないだろうか。
しかし、内容的にはやはり高得点はあげられない。
ミステリというよりは、ホラーに近い作品なのだが、トリックやプロットといった肝心要の部分がすっぽりと抜け落ちている気がしてならない。
出版する側ももう少し考えて欲しいものである。

No.81 7点 夜市- 恒川光太郎 2010/07/10 23:54
非常に新人離れしたストーリーテラーぶりを発揮している。
叙情溢れる、しかも無駄のない筆致は作者の生まれ持った才能ではないかとすら感じる。
この文体は真似しようと思っても出来るものではない、とにかく透明感のある筆運びはいかにもファンタジーらしい本作にとてもマッチしている。
同時収録の『風の古道』も作風は変わらず、どちらもちょっぴり不思議で、そこはかとなく切ない、心に響く秀作である。

No.80 5点 館島- 東川篤哉 2010/07/08 23:38
相変わらず文体がまったりしているし、ギャグも結構寒い。
せっかくの逸材をユーモアタッチで描いている為、緊迫感の欠片もなく、いわゆる孤島ものとしての雰囲気をぶち壊しているのは勿体無い限りである。
トリックとしてはよく練られていると思うが、個人的には「そうですか」くらいにしか感じられなかった。
驚愕の結末には程遠かった。
それにしても、刑事の相馬の情けなさは何とかならなかったものか、少々腹立たしい思いすら残る。

No.79 6点 しゃぼん玉- 乃南アサ 2010/07/08 00:00
ミステリではないが、万人受けする文芸作品であろう。
ひったくりを繰り返し、人を傷つけても何とも思わない主人公をある老婆との出会いが変えていく。
老人達とのふれあいの中で、忘れかけていた本来の自分の心根を呼び覚まされる主人公、翔人。
人間同士の交流が、じんわりと心に染み渡るような佳作である。

No.78 6点 狂骨の夢- 京極夏彦 2010/07/06 23:38
百鬼夜行シリーズの中でも幻想色の濃い一作。
宗教に対するアプローチは、「鉄鼠の檻」よりも私には難解に感じられた。
それだけ読み難い印象なのである。
文体が私にはあまり合っていなかったせいもあるが、世間の評価が高いのはやや意外だった気もする。

No.77 5点 骸の爪- 道尾秀介 2010/07/05 23:41
まず登場人物に魅力と個性が感じられないのは残念な限りである。
仏像の謎に関してはほとんど予想通りだし、そもそもそれほど興味をそそられるほどの謎でもない。
巷ではたいそう持て囃されている作家のようだが、私にとっては逆になぜそんなに人気が高いのかが不思議である。
一作だけで評価するのは早計かもしれないが。

No.76 7点 狐闇- 北森鴻 2010/07/04 23:52
骨董の世界に身を置く、旗師・陶子の激闘を描く壮大なスケールの歴史ミステリ。
前半の競り市で魔鏡を手に入れるまでの入念な描写は、思わずのめり込んでしまう。
スピード感もあって読者をグイグイ引っ張っていく。
後半は一転、スケールが大きくなりすぎて、私はややついていけない部分もあったりしたが、概ね高評価。
他シリーズの主役級が友情出演しているのもファンには嬉しい。

No.75 8点 眩暈- 島田荘司 2010/07/03 23:45
冒頭の一見荒唐無稽な手記を、現実の出来事として解釈し、実証してみせる豪腕は相変わらず見事と言ってよいだろう。
しかし、マンションとエレベーターのトリックや、手記の両性具有者のくだりは疑問視せざるを得ない。
まあ、そんなことを差し引いても傑作だとは思うし、御手洗シリーズらしい雰囲気は十分楽しめる。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1774件
採点の多い作家(TOP10)
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