皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1900件 |
No.9 | 6点 | 新鮮 THE どんでん返し- アンソロジー(出版社編) | 2018/07/06 22:42 |
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気鋭による「どんでん返し」がウリの短編集。
『密室竜宮城』 青柳碧人 お伽噺の『浦島太郎』そのままの設定。助けた亀に連れられて竜宮城に来てみれば、謎の密室殺人事件が。 『居場所』 天祢涼 前科持ちの八木は、過失致死で殺してしまった少女を想起させる女子高生マナを執拗に追い回すが、それを知った若者にある取引を持ち込まれる。 『事件をめぐる三つの対話』 大山誠一郎 一見普通の殺人事件だが、なぜ死体を移動させたかが焦点に。説明文を排除し、全編会話文で構成されたホワイダニット。 『夜半のちぎり』 岡崎琢磨 奇妙な成り行きで遭遇した、新婚旅行中の二組のカップル。その中の一人茜が殺害される。入り組んだ人間関係が悲惨なラストを呼ぶ。 『筋肉事件/四人目の』 似鳥鶏 これは作品の性質上、内容には触れないほうが無難と判断し、割愛します。 『使い勝手のいい女』 水生大海 私七尾葉月は使い勝手のいい女。昔の男に金を用立てるように泣きつかれ、抱き着いてきた。それを過剰防衛と知りながら凶器を握り・・・。 ミステリ的に最も優れていると思われるのは『事件をめぐる三つの対話』で、前例はあるものの、どんでん返しと言うに最も相応しい作品でしょう。 構成が凝っている『筋肉事件/四人目の』は、これまた過去に似たトリックが存在していますが、二度読み必死の力作かと思います。 他はどんでん返しというよりごく普通のミステリです。若干のエッジや捻りを効かせた程度で、中には拍子抜けなものも混じっており、上記二作以外はこれと言って見るべきものはありません。 |
No.8 | 6点 | 7人の名探偵- アンソロジー(出版社編) | 2017/09/19 22:17 |
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新本格ミステリ誕生30年を記念して編まれたアンソロジー競作。
顔ぶれは新本格第一世代の綾辻、法月、我孫子、歌野の講談社ノベルズ出身作家と第三世代の麻耶に創元社から有栖川、最後は山口雅也となっています。ですが、有栖川と山口は果たして新本格のカテゴリーに入るべきなのかどうか。まあそれだけ生き残りが少ないということでしょうか。なんだかなあ。 それぞれ個性を出していますが、やはり一番面白かったのは本格でもミステリでもないけれど、綾辻でした。ネタバレになりそうなので内容については触れませんが、ほのぼのした感じと不安感を煽るような書きっぷりはさすがだなと思います。群を抜いているとは言いませんが、格の違いを見せつけた感じですかね。 他では個人的に歌野が気に入っています。将来的な名探偵像というんでしょうか、SF仕立てでありながら本格ミステリの精神を忘れていない辺りはらしいなと思います。あとは意外に山口雅也も良かったです。落語のネタを発展させたアイディアはちょっとこれまでになかったものじゃないでしょうか。最も異色な作品です。有栖川は己のスタンスを貫いた、なかなかの逸品ですね。その他はまあそれなりといった感じですか。まあしかし、全体的にそこそこのレベルだとは思いました。下手に肩に力が入らない感じはみなさんもうベテランゆえでしょうかね。 |
No.7 | 5点 | このミステリーがすごい! 三つの迷宮- アンソロジー(出版社編) | 2015/12/04 20:22 |
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『リケジョ探偵の謎解きラボ』 喜多喜久
『ポセイドンの罰』 中山七里 『冬、来たる』 降田天 以上の三作品からなるアンソロジー。とは言え、別にこれと言ったテーマが与えられているわけではなく、勝手気ままに書かれたミステリ。 『リケジョ』と『ポセイドン』は本格物。『冬』は何とも言い難い不思議な作品。敢えて言えば、三姉妹の母が亡くなり葬儀の日に、突然現れた一番下の弟。幼くして失踪した彼は果たして本物なのか、というのがあらすじ。正体不明の人物が登場する辺りは、横溝を彷彿とさせるが、果たしてミステリと言って良いものかどうか判断が難しい。 喜多氏がミステリとしての出来は一番だと思われる。これまでにない密室トリックは、さすが理系の作者だけのことはある。 一方中山氏は船上での殺人を描いており、被害者以外すべて動機ありの容疑者という、いかにもありがちな設定。こちらはこの作者にしては凡作ではないだろうか。 |
No.6 | 6点 | 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー- アンソロジー(出版社編) | 2015/01/06 22:39 |
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再読です。
表紙の猫がかわいいね。黒猫がカメラ目線でじっとこちらを見ているよね。 さて、この犯人当てアンソロジーだが、なかなか良質の短編が並んでいる。いずれ劣らぬパズラーが目白押しと言いたいところだが、出来不出来の差は見られるのはやむを得ないだろう。と言うか、ここまで来ると好みの問題なのかもしれない。個人的には、貫井徳郎の『蝶番の問題』が圧倒的に面白かった。投稿による正解率がわずか1%だというのだから、その難解さは群を抜いている。しかし、その割には実に明快で意外すぎる真相が光る逸品となっている。 他は安孫子武丸、法月綸太郎あたりが良かったかな。 巻末の筆者による座談会も興味深く読ませてもらった。やはり、こうした誌上掲載のキッチリした締め切りの犯人当てという企画ものには、様々な苦労が付きまとうものだということがよく分かる。 それにしても、当時も、そして今でもこのメンバーは豪華すぎる。これだけの執筆陣が揃っているのだから、期待しないほうがどうかしている。多くの読者にとっては、その期待を裏切らないだけのポテンシャルを持った作品集と言えるかもしれない。 |
No.5 | 7点 | 放課後探偵団- アンソロジー(出版社編) | 2014/10/01 22:13 |
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これこそ粒ぞろいと呼ぶにふさわしい学園ミステリ珠玉の短編集。しかし、みなさんタイトルで敬遠されてはいないでしょうか?読んでみればそれが杞憂に終わると思うので、どのジャンルが好みとかに拘わらず、多くの方に読まれることをお勧めしたい。
それぞれが他愛無い、或いは些細な日常の謎を扱っているが、それを端正なロジックで攻めて、スッキリと解決に導いている辺りはとても好感が持てる。似鳥氏のトリックだけはちょっとややこしいが、まあ私の頭脳がついていけなかっただけで、問題ない。 各キャラもふとしたしぐさや言葉に個性が出ていて、よく描かれているので、ライトな読み物としても合格だろう。特に、それぞれの物語に登場する女子は魅力に溢れていて、読んでいてほのぼのとした気分にさせてくれる。 各短編が際立った特徴を持っていて、違った色の光を放っているが、最後の最後で梓崎氏にもっていかれた感が半端ない。掉尾を飾るに相応しい作品だと感じる。途中まではあまり好みではなかったが、見事な反転でやられた、いや本当に参りました。 |
No.4 | 5点 | 5分で読める!ひと駅ストーリー 降車編- アンソロジー(出版社編) | 2014/05/05 22:31 |
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宝島社からデビューした、ミステリー、ライトノベル、恋愛小説の作家たちが、「ひと駅」をテーマに書き下ろした24篇からなるアンソロジー。『このミス』出身作家が最も多く参加しているが、舞台が限定されていることやショートショートという縛りが厳しいため、ミステリ度は低い。
全体的には玉石混交であるが、石のほうが多めだろうか。どれもいまひとつオチがヌルいので、強烈に印象深い作品がない。勿論、これは!というのも中には混在しているので油断はできないが。こうした狭い設定の作品には既視感のあるものが多い気がするが、意外とそういうわけでもなく、各々オリジナリティが見られて、その点では評価されてもいいかもしれない。当然、これだけ並ぶと訳の分からないのや、読者を舐めているのかと思われるものもあるが、全般的にそこそこ面白いのではないだろうか。 一つ確かなのは、水田美意子はデビューからほとんど成長していないということ。相変わらず文章が中学生の作文レベルで、さすがにプロとして食べていくには力量が不足していると思わざるを得ない。私自身も相当酷いが、私は素人だからね。 そして宝島社にも一言いわせてもらうと、なぜ同じようなアンソロジーが、280ページでも360ページでも同じ値段なのよ。普通はページ数によって値段も変わってくるものじゃないのかねえ。それに280ページで税込み700円は高すぎると思うけど。 |
No.3 | 5点 | 競作 五十円玉二十枚の謎- アンソロジー(出版社編) | 2013/01/02 19:39 |
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再読です。
若竹七海女史が学生時代、書店でアルバイトしていた時に実際遭遇したある不思議な出来事が本書の発端となっている。 その出来事とは、毎週土曜日の午後、ある男が50円玉二十枚を千円に両替してくれと頼んで、両替が終わるとそそくさと去っていく、というもの。 男はなぜ土曜日ごとに同じ書店で両替するのか、なぜ毎週50円玉が二十枚も貯まるのか。 その謎に、プロのミステリ作家たちと、一般公募の読者が挑戦する。 正直なるほど、と納得できる解答が提示されている作品はほとんどないが、中には面白いものもあるにはある。 個人的には一般公募の自動販売機ネタが最も良かった。解答としてだけでなく、一篇のミステリとしてよく出来ていると思う。 倉知淳のデビュー作?も公募の中に含まれており、猫丸先輩最初の事件も楽しめる。 |
No.2 | 5点 | Mystery Seller - アンソロジー(出版社編) | 2012/02/16 22:40 |
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島田荘司他8人の豪華執筆陣によるミステリ短編集。
竹本健治、麻耶雄嵩、有栖川有栖など、超有名な作家名が並ぶだけに、かなり期待していたのだが、見事に期待は外された。 どれもこれも凡作ばかりで、これといって特筆すべき作品が見当たらない。 唯一、我孫子武丸が面白かったかなという印象。 名前に惹かれて思わず買ってしまったが、あまり読むに値しないと思われるので、作家名で購入するのはお勧めできない。 |
No.1 | 5点 | 探偵Xからの挑戦状!Season2- アンソロジー(出版社編) | 2011/02/27 23:44 |
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4人によるアンソロジーだが、それぞれ一長一短あってどの作品が秀でている訳でもなく、押しなべて平均点をクリアしている感じである。
自分の好みから言うと、近藤史恵女史の『メゾン・カサブランカ』がややお気に入りかな。 問題編と解決編が完全に分離されているわけだが、面倒なので全く推理しないで解決編を読んでしまった。 これはある意味正解かもしれない。 というのは、真相を看破するのには多分に想像力を要する作品が多かったため。 そんな中井上夢人氏の『殺人トーナメント』だけは、純粋なパズル問題であり、理系が得意な人には意外に簡単に解けるかもしれない。 あなたも挑戦してみては? |