皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
simo10さん |
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平均点: 5.69点 | 書評数: 193件 |
No.11 | 4点 | 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 | 2012/11/10 10:54 |
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翼ある闇で登場した名探偵、木更津悠也が活躍する短編集です。以下の四話で構成されます。
①「白幽霊」:各人の証言をきっちり拾っていけば矛盾点が浮かび上がり、解決の糸口となるようです。カーテンの描写だが、コの字型に切っただけなのか、完全に切り取ったのかがよく解らん。 ②「禁区」:知耶子は何を見たのか?着眼点は面白いけど、知耶子の発想は飛躍し過ぎだし、周りがそれを理解するのも有り得ないと思う。 ③「交換殺人」:交換殺人のメリットは動機がバレバレでもアリバイを作れることにあるが、本作では交換殺人を露見させることで真の動機を隠すことにある、と解釈して良いのかな?それでも普通に警察にバレると思うんだが。 ④「時間外返却」:様々な伏線の意味は理解できたけど、それだけで犯人を割り出すのは本当に可能なのかな?まあ名探偵だから可能なんだろうな。意外過ぎる犯人が面白い。 木更津と香月の関係はホームズとワトスンのそれではなく、毛利小五郎とコナン君の関係に近い。必ず香月の方が先に真相に辿り着き、後は木更津の名探偵としての活躍を密かに楽しむという設定がちょっとSっぽいが面白い。 しかし最大の難点だが、初期の麻耶氏の作品は非常に読み辛いし解り辛い。忙しい時に途切れ途切れに読むと全然解らん。だからといって再読しようと思う程面白いとも思わなかった。 |
No.10 | 4点 | 痾- 麻耶雄嵩 | 2012/11/10 10:41 |
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麻耶氏の三作目。ブックオフにて絶版中の本書と「あいにくの雨で」、「木製の王子」、「名探偵木更津悠也」を見掛けたのですぐ購入しました。
内容は二作目「夏冬」の続編でした。烏有と桐璃のその後が描かれています。 一応ミステリ風の体裁ではあるのですが、真相は「夏冬」同様、ミステリではないです。雰囲気は嫌いでないが、はっきり言って意味不明の作品です(リテラアートとか、わぴ子とかって何やねん?)。 にもかかわらずあっさり読了できたのは、「夏冬」の真相にある程度触れられていたことと、メルカトルの他に木更津、香月といった「翼ある闇」の登場人物達が出演していたからに他なりません。そういった意味ではある程度は楽しめました。 そんなわけで当然前二作を未読の方にはオススメできません。 「夏冬」ネタばれサイトに書かれていた内容はただの仮定に基づいた推測だと思っていたのですが、この作品を基にしていたのだとようやく解りました。これを受けて、「夏冬」の評価も訂正しました。 |
No.9 | 8点 | 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 | 2012/08/31 23:27 |
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--ネタばれ含みます--
表紙帯に「驚天のラスト」と記載されていましたが、本当に驚天でした。ミステリランドと思ってなめていたのもありましたが、このレベルの衝撃は久々です。 ネタばれサイトを見てようやく理解したつもりですが、つまり神様を信じるならば箱説が真相だった、信じないのならば物置説が真相だった、ということなんですね。 そしてどちらを信じるかは読者次第という、作者から読者に向けてのゲーム(神様ゲーム)でもあったと解釈しています。 芳雄のラストの語りもあるので、きっと神様が正しいのでしょうが。 解が一つでないのはズルいとは思いますが、この作品ならありでしょう。 叙述以外でここまで驚かせてくれた作品というのも中々思い当たらないです。 |
No.8 | 8点 | メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 | 2012/02/21 21:50 |
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--ネタばれ含みます--
メルカトル&美袋コンビ短編集第二弾(たぶん)。以下の五話で構成されます。 ①「死者を起こす」:前半の事件は事故か殺人かという問題で、メルカトルが見事に解決。後半の事件に関しても見事な推理を披露するメルカトルだが…。しばらく何が起こったのか理解できませんでした。残りの作品を読んで、こんな不条理な結末もありなんだなと思いました。 ②「九州旅行」:不謹慎にも、新作の構想を練るために実際の殺人事件現場に足を踏み入れる美袋だが、ノリの良さがウケる。ダイイングメッセージの不完全さの理由を紐解くという形だから、結果的にはワイダニットものに含まれるのかな。 ③「収束」:聖域で殺人を行うのは、また殺されるのは誰か?というフーダニット。殺人事件が起きることを推理し、犯人と被害者を三通りに絞り込むメルカトルだが、どのパターンになるかは発生するまで分からないと言う。読者にのみ事件発生現場の様子が綴られるが…。これまた読者には意地悪な結末だけど、この作品に関してはこの方がハマっているかも。ただどうして3人ともカテジナ書を入手していたのかが分からない。 ④「答えのない絵本」:変則的クローズドサークルにより、オタク教師殺害犯は20人の生徒の中に絞られる、というフーダニットもの。ロジック全開で犯人候補がサクサクと絞り込まれていくが…。著者の陰謀により解決不可能空間に招かれたメルカトルだが、解決が不可能であることを看破したメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。 ⑤「密室荘」:完全な密室空間の内側に美袋とメルカトルと他殺体のみが…。著者の陰謀により殺人犯はどちらかしか有り得ない空間に追い込まれたメルカトルだが、強引に収束させたメルカトルの勝利!と勝手に解釈しました。 これほど不条理かつロジックの効いた短編集は初めてです。受け入れがたい人は多いと思いますが私はアリだと思います。 ちなみにこれまでの作品では記号同然だった事件関係者が、本作品では詳しく描かれているので非常に読み易いです。 |
No.7 | 5点 | メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 | 2012/02/13 23:59 |
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講談社にて絶版されていた麻耶氏の作品の一つが集英社で復刊となっているのを本屋で発見し、すぐ購入しました。隻眼の少女でダブル受賞したのが効いたかな。(集英社さんありがとう!他の作品も何卒よろしくお願いします!)
本書は探偵メルカトル鮎、ワトスン役の美袋(みなぎ)が活躍する7つの短編で構成されています。 ①「遠くで瑠璃鳥の鳴く声が聞こえる」:何故美袋が佑美子に突然惚れたのか?という一風変わったワイダニット形式が印象的。 ②「化粧した男の冒険」:ワイダニットもの。「木は森の中に隠せ」の典型です。ラストの美袋のセリフが真相かもしれないブラックなところが著者らしい。 ③「小人閑居為不善」:安楽椅子探偵もの。依頼人の武装がやや甘いのが気になったが展開は面白かった。ここでのメルカトルは初期の御手洗に凄く似ていると思いました。 ④「水難」:事件のインパクトは薄いわ、幽霊は出てくるわで、いまいち。 ⑤「ノスタルジア」:メルカトル著の何とも怪しげなフーダニット作品。ヒントは提示されてはいるものの、その隠し方は巧妙というより卑怯。見事に意地悪に仕上がっており、割り切って楽しめます。 ⑥「彷徨える美袋」:メルカトルの黒さ以外はインパクト薄し。 ⑦「シベリア急行西へ」:フーダニットもの。ロジックは見事で読者への挑戦状でも欲しかったところ。死兆星には笑った。 メルカトルの短編集とあって、さすがに風変わりな作品が多いものの、ミステリの体裁は整えられてはいます。この作風とメルカトルの悪業を受け入れられるかどうかの差は大きいと思います。個人的には③が好きで、①⑤⑦がまあまあ、②④⑥がいまいちでした。 |
No.6 | 8点 | 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 | 2012/01/27 22:32 |
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--ネタばれ含みます--
麻耶作品がついにメジャータイトルを受賞(しかも2冠)したということで、ためらいなくハードカバー版を購入しました。 舞台設定と登場人物の奇抜さは相変わらずです。 (こんな言い方したら失礼ですが)氏の作品にしては珍しく、登場人物(静馬)に感情移入することができました。探偵御陵みかげも、カバーの表紙も手伝って、見事な萌えキャラが出来上がっていると思いました。 ミステリとしては特に目新しいことはしていないと思うのですが、そこはさすが麻耶雄嵩、見事に世界をひっくり返してくれました。まあ腑に落ちない点は多々あるのですが、この作者にそこまでの完成度は求めていないので、特に問題にしません。 著者には珍しくラストが明るく、シリーズ化も期待できるような終わり方でした。(あの二時間があったから絶対ラストに谷底に落としてくると思ってました。) これまでの作品とは違い、読み易く、かつ麻耶作品らしさが出ていたと思います。 |
No.5 | 5点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2012/01/23 23:44 |
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--ネタばれ含みます--
舞台設定は縛りがあるようですが、登場人物の名前は相変わらずで麻耶作品らしい世界観は存分に楽しめます。 事件の真相を突き止めるための材料は一応示されているので頑張れば解ける人もいるかもしれません。 ただ、真の真幌キラーの正体に関してはミステリというよりはクイズに近いかな。(普通、あからさまに犯人を暗示する手掛かりが故意に残されていたら、その人物を疑わせるための工作という可能性も考えるでしょう。そんな裏もないためただのクイズと言えます) ニセ真幌キラーの正体解明も一応筋は通っていますが、ニセ真幌キラーが取った策は、A子と助手があれを覚えていたら一発で疑われるはずなので、もう少しフォローが欲しいところでした。 動機に関しては無茶苦茶ですが、らしいといえばらしいですし、ブラックな落ちも個人的には好きです。 |
No.4 | 6点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2012/01/17 22:28 |
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--ネタばれ含みます--
ミステリ要素のみを挙げれば綾辻氏の館シリーズに似た印象を受けました。あのトリックに関しては勘の良い読者ならわかるレベルでフェアと言えると思います。別のあのトリックに関してはは巧いし斬新だと思うけど、別にそれが明かされたからと言って読者が構築してきた世界観を破壊する訳でもなく「ふ~ん」と思う程度でした。ラストは相変わらずの「何じゃそりゃ」。 麻耶作品にしてはオーソドックスな作風(登場人物の名前まで普通!)なため、その分他の作家に比べての文章力の足りなさが目立ってしまうかな。やはりこの作家には破天荒な世界とアンフェアであろうが破天荒なトリックがマッチしていると思います。 厳しめの書評でしたが、それでも面白いし、「早く次の作品を読ませてくれ!」と言わせてくれる作家ですね。 |
No.3 | 4点 | 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 | 2011/05/28 20:34 |
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こんなに意味が分からなかったミステリは初です。読み終わっても何も手応えが得られませんでした。
ネタばれサイトを数件巡ってやっとなんとか一部理解できたのみです。 しかしネタばれサイトの理論であっても、物語の伏線のみで構築した訳ではなく多くの仮定に基づいているし、その仮定を受け入れても納得できない部分が多すぎます。 展開とかパピエコレとか何か意味あったんでしょうか? 解決を読者に丸投げするのは嫌いではありませんが、自分の読解力ではハイレベル過ぎました。 決してつまらなかった訳ではないのですが、あまりにも納得のいかない点が多すぎるため、特別に(?)1点の評価にさせていただきました。 全てが理解できた時には10点か9点挙げてもいいかも。 --採点の訂正(2012/11/10)-- 続編にあたる「痾」を読んで、ネタばれサイトの推論がこの続編に基づいていることを理解しました。 全てが解ったとは言わないがある程度は解ったので採点訂正します。 一つの作品の中だけに情報が詰まっているのかと思いきや、続編に委ねてるとはなあ‥。拍子抜けです。 |
No.2 | 8点 | 鴉- 麻耶雄嵩 | 2011/05/21 00:19 |
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麻耶氏の初期の作品はほとんど絶版なので、発行順を無視して、とりあえず書店に売っていた本を先に購入しましたが、全然前の作品の内容に触れることもなく安心して読めました。
またしても大胆過ぎるトリック炸裂でした。 第一作(翼ある闇)を読んだだけでも、現実に沿わない独特の世界を構築する作家だと分かっていたので、鬼子トリックに関してはそのこともうまく暗幕が張られていたと思います。(普通の作家がいきなりこんな世界観の作品を書いたら、こりゃ何かあるなと疑うと思います) 兄弟トリック自体はすぐに分かってしまったのでカタルシスは得られなかったけれども、真相までは分かっていなかったので最後の数ページでのカタストロフィ→閉幕の流れは痺れました。 不満があるとすれば、説明がやや足りないため、読解力の乏しい自分ではネタばれサイトの力を借りずに全容を知ることができなかったことです。 |
No.1 | 7点 | 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 | 2011/03/10 23:25 |
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島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎らそうそうたる作家達の推す麻耶作品を初めて読んでみました。
はっきり言って、「何だこりゃ」と思いました。すごい作品だと思う気持ちと、よくこんな作品が文庫化されたものだと思う気持ちが3:7くらいの比率でした。登場人物の奇怪な名前も含めて、非常に独特な世界観。いつの時代の作品なのかと思ってしまう。 すごいと思ったのがやり過ぎなくらいミステリの要素を詰まっているところ(こういうのをバカミスと呼ぶのかな)。どんでんあり、密室あり、探偵あり、首切りあり、連続殺人ありと何でもありです。特に秀逸だったのが密室に関するあの推理。あまりにもブっ飛んでいて鳥肌が立ちました。 難点はこのような内容だと登場人物を描き切れない点かな。ほとんど感情移入できず、名前が記号化された状態でした。特に副題に関するあの出来事は正に「何だこりゃ」状態でした。 とはいえトータルで見ればわくわくしながら読めて、非常に楽しめました(批判的な人はすごい多そうですが)。他の作品も読もうかなと思ったら講談社系はほとんど絶版と知ってがっかり。復刊ドットコムにでも書き込もうかな。 |