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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.616 7点 ロード&ゴー- 日明恩 2010/02/13 07:41
まず最初に作者は「たちもり・めぐみ」と読み女性で、メフィスト賞受賞でデビューした。
警察や消防を扱った薄味なミステリーを書き続け、登場人物達のキャラ立ちに一部で定評がある(未読なので詳細不明)
本作は同じ消防庁でも救急車ジャックを描いたノンストップ・ドタバタミステリー。
ドタバタ系なB級映画の如き作品で、動機と啓蒙からストーリー展開までベタベタで新鮮味が無い反面、安心感がある。
そして、主要登場人物全員が主役と言える個性とキャラ立ち、更にハッピーエンドでベタな展開をも長所にし、ほのぼのとした読後感が得られる。
映像化も期待できるのでキャストを色々想像するのも読後の楽しみ。
仲間内の読書会で読後に好きなキャラ投票なんかしたらもっと楽しいだろう。

No.615 3点 インディゴの夜- 加藤実秋 2010/02/12 09:45
現在放送中の昼ドラを何となくビデオ録画して観ている。
原作とは別物だが、どちらもミステリーとしては褒めようがない。
一風変わったホストのドタバタにしても、もう一つ楽しめない。
図書館で小一時間な内容の文庫なので時間の無駄とまでは感じないが・・・・。

No.614 4点 Fake- 五十嵐貴久 2010/02/12 09:35
賭博にはイカサマがつきもので、その点を抽出するとコン・ゲームになる。
本来なら最も好きな分野の一つなのだが・・・・。
この手の作品の映像化された物を寄せ集めただけで、新鮮味が全くない。
賭博系の作品で大切なヒリヒリする臨場感に乏しい。
どうにも褒めようがない。

No.613 3点 二枚舌は極楽へ行く- 蒼井上鷹 2010/02/12 09:20
図書館の棚で何となく目にとまり近くの椅子で小一時間。
暇つぶしにどうぞ。
ミステリー的味付けのショートショートが好きかどうかで、もっと高評価できるかもしれない。

No.612 4点 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 2010/02/12 08:57
当時の金田一ブームに大横溝をして踊らされ、晩年を自らの手で汚した感がある。
それでも、踊らせた張本人・角川春樹の再発掘とメディアミックスの功績は絶大。
作品レベルは、傑作は何度となく映像化されるが、この作品は埋もれている事にハッキリ表れている。
求められるレベルが並の作家と大横溝では違うのをつくづく感じる。

No.611 4点 六麓荘の殺人- 吉村達也 2010/02/12 08:37
発表当時、赤川次郎と同様なペースで作品が発売され、一年後には古本屋の特売コーナー(選り取り3冊で百円とか)をも分け合っていた。
本格ミステリの枠内での量産にしては駄作にならないレベルを維持し、名探偵のキャラで一定数を売上たが、これぞ代表作と云える作品が無く時代に使い捨てにされた。
このシリーズも最初の五冊は読んだが、掴みの謎が派手な印象以外の細かな内容が残っていない。
当時、パチンコ屋の新装開店(平均、二時間並びで一万勝)の時間潰しに最適な作家の一人だった。
喫煙しないので台確保にノベルス本を使っていたのも懐かしい(家のリホームで約十年前に全部古本屋に売り払った)

No.610 6点 喜の行列悲の行列- 藤田宜永 2010/02/11 13:31
正月の福袋を買う為に大晦日から正月2日までデパートに並ぶ人々とその関係者に誘拐事件を絡めたドタバタミステリー。
詰め込み過ぎな感がありボリュームもあるがリーダビリティは高い。
昨年NHKで「行列48時間」のタイトルでドラマ化された。
ドラマの方は満点のデキで素晴らしく、原作を読みたくなった。
ドラマとはかなり別物な感じで重いので評価は下げた。

No.609 6点 デパートへ行こう!- 真保裕一 2010/02/11 13:09
「三越」を想起させる老舗デパートの閉店時間後の店内で巻き起こるドタバタコメディミステリー。
主要登場人物全員が主人公的な多視点の描写が先々の映像化を意識している感がある。
デパート本社内の陰謀や恋愛関係に親子関係まで絡めて場面が交差する辺りはドタバタコメディの王道で、御都合主義と予定調和もお約束。
読者に先が読める展開は安心感を出す為だし、リアリティに欠ける警備体制の緩さも主役級警備員のキャラ立ちの為で、確信犯だろう。
ハッピーエンドで読後感も良く、肩の凝らない読書に持って来い。
ネタ的に映画にするにはチープな感じなのでスペシャルドラマ向けだろう。

No.608 7点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2010/02/09 15:45
このサイトで高木彬光「呪縛の家」との酷似が指摘され非常に興味深く、読み比べてみた(呪縛は再読)
予言による遠隔殺人の不可能性と作者のハッタリのかまし具合は酷似している。
その遠隔殺人の構図はミステリを読み慣れた現代の読者なら(ドラマ等での転用過多で)読み始めで察するレベルに成り下がり残念。
しかも此方は上記の謎が作品のメインにあるので評価が下がる。
それでも、不可能性を際立たせる為の細かなトリック運用は素晴らしいので一読の価値はある。
ハッタリのきいたこの邦題に意訳した翻訳家を賞賛して+1点。
※採点は多分にH・M卿より神津恭介を好きな主観に影響されている。
※高木のパクリ疑惑だが、当時の日本探偵小説界のモラルを考えれば多分にあり得るが、本作の初翻訳時期と呪縛の連載時期がアリバイになっていて判断がつかない(私見ではパクリと言う程の酷似ではない気がする)

No.607 6点 新参者- 東野圭吾 2010/02/09 04:59
加賀刑事の移動に伴い舞台が練馬から自分にとって馴染みのある人形町界隈になり嬉しい。
シリーズ前作で更なる成長を見せた加賀刑事に、今も人情が通う町を絡めオムニバス形式で上手く纏めている。
人情小説として改めて作者の技量に舌を巻く。
その反面、各話の些細な日常の謎や作品の本筋である殺人事件がミステリとして弱い。
加賀刑事の細かな気付きは相変わらずだが、もう一つの持ち味であるしつこい捜査がオムニバス形式と人情を絡める事で坦々としてしまったのは残念。
テーマが重くならずサラッと楽しく読めるのは良い。
加賀恭一郎は刑事としての名探偵の理想型に近づいた。
久々に人形町に出向き親子丼を喰って、粕漬けと人形焼きを買いたくなった。

No.606 7点 赤い指- 東野圭吾 2010/02/09 04:06
変則的な倒叙形式で事件を描くのに平行して加賀刑事の親子関係を描き、現代社会の抱える家族関係の重いテーマを炙り出している。
相変わらずの細かな気付き、しつこい捜査、落としの技は加賀刑事らしさに溢れる。
重いテーマすら捨て駒にする「赤い指」のロジックと最後の捻りは秀逸。
この作品で加賀恭一郎は更に器がデカくなったと思える。

No.605 5点 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 2010/02/08 22:40
「新参者」を読む前に、この作品と「赤い指」を読んで加賀刑事の変遷を知っておくべきと、どこかの書評で読んだので実践する事にした。
全編に渡り犯行描写をカットした倒叙物な趣で、細かな気付きから真相を手繰り寄せ、しつこく付きまとい犯人を落とす加賀刑事はコロンボや古畑を想わせる。
加賀刑事シリーズとしては実にオーソドックスで淡白な事に戸惑うが、各話安定して楽しめた。
※余談
「冷たい灼熱」でパチンコ屋の駐車場と明記しないのは業界団体からの抗議を気にしたからなのだろうか?

No.604 2点 罪と罰- フョードル・ドストエフスキー 2010/02/08 21:13
北方領土返還を願う日本人としてロシア人を知る上の原点である(元対ロシア外交官・佐藤優氏がコラムで述べていた)この作品を未読なまま放置出来なかった(建て前)
倒叙ミステリの原型かも知れないがミステリーの範疇に含める事は作品に対して失礼になるのではないだろうか!
よってポリシーに従い、このサイトでは2点。
但し、文学世界では最高峰に位置する作品である。
それでも「読書は趣味で娯楽」を標榜する私には、テーマを熟慮しながらの読書は、学生時代の哲学書の勉強を思い出し苦行であった。
人生について考える事を読書に求めない私と同類な方は読まずにスルーが無難かもしれない。
※余談
子供に自分の読まない本を読みなさいとは言えない親の切実な事情で読んだだけでスルーしたかった(本音)
息子の教育を私に押し付け逃げた嫁が恨めしい。

No.603 7点 武家屋敷の殺人- 小島正樹 2010/02/08 13:20
最初に提示される日記から場所を特定するプロファイリング的推理だけで一編書ける。
しかも、屋敷と地域の設定が先々の伏線として絶妙。
そして、その先に更なる「謎また謎」の連打をかましてくる。
アッサリと明かされる(部分的な)解決をダミー推理に絡めて提示しながら何回も捻る推理過程は三津田信三の刀城言耶シリーズに通じるものがあり圧巻!
※要注意
以下察する方にはネタバレする危険があります!
特に、最初の謎を解決する名探偵役を一旦退場させながらダミー探偵役に推理させる‘操り’と「主要登場人物紹介」から仕込まれたドンデン返しの二点は素晴らしい。
惜しむらくは、大量に詰め込み過ぎた反動で、実行不能そうなトリックやご都合主義が散見され充分な納得が得られない事だろう(それでも、ここまでバカミスとして8点)
しかし、最後まで作品の本質に関係しない、途中に挿入された「断片」でのミスリードは不要で作品の特色である新感覚を減じたと思う(1点減点)
また、最初に日記が掲載された時点で思い描いた通りの帰結と処理で、東野「悪意」や歌野「絶望ノート」と同系統だったのは残念で(バリエーションに限りがあり)どこまで二番煎じと感じさせないかがミステリ界全体の課題だろう。

No.602 6点 十三回忌- 小島正樹 2010/02/05 15:05
作者単身でのデビュー作。
師匠・島荘との共著「天に還る舟」では師匠の持ちキャラ中村刑事の助手役だった海老原を今作では名探偵役にした。
これでもか!と言うくらいに不可能な謎が提示され、一部は中盤であっさり解決する。
「串刺し」「首切り」2つの謎での師匠譲りなバカミス的大技物理トリックに、密室に見せた物理トリックの先に心理的時系列トリックを絡める等々、盛り沢山なハウダニットが楽しめ強調される(ここまで高評価)
※要注意!!
ここからネタバレします。
しかし、この作品の狙いは前記を捨て駒に、プロローグと幕間から仕込み、倒叙物的犯人にダミー犯人までも用意した‘最後の一撃’的フーダニットにある。
しかし、プロローグからの仕込みは新本格以降ありふれていて小賢しく、世評ほど評価出来ない(私は、これで狙いを察してしまった)
又、犯人の人物設定とトリックの現実味が乖離し過ぎで、水準レベルなバカミスの域を越えられず惜しい。

No.601 4点 天に還る舟 - 小島正樹 2010/02/04 07:27
共著作品だが、弟子に師匠が手本を示す様に島荘色が強く、探偵役も島荘の持ちキャラの中村刑事で吉敷刑事もゲストで登場する。
見立て殺人擬き・三つの物理的大技トリック・密室トリック・偽装トリックと盛り沢山に詰め込んでいるが犯人指摘の論理が多分にご都合主義に感じる。
私的に、島荘らしい強引な物理的ハウダニットは好みからズレている。
戦争の問題・冤罪の問題と本格ミステリに社会派要素が盛り込まれ、ミステリーにかこつけた島荘の主張を読まされる感じでゲンナリしてしまい、さほど楽しめなかった。

No.600 2点 ほかならぬ人へ- 白石一文 2010/02/03 21:18
※最初に
直木賞作品だが全くミステリーではない。
更に言えば、この作家はミステリー作家ですらない。
私的ミステリーマップの範疇外作品の採点はポリシー通り2点。
ここの書評で知り、気になって図書館予約したら直木賞を受賞していた。
素晴らしい恋愛小説で直木賞受賞も納得な作品(受賞で人気が出る前に、このサイトで知り得たのはラッキーで紹介者に感謝)
恋愛観は人それぞれの実生活に根差したもので、夫婦円満な生活をしていると深く考えないまま一日一日が過ぎる。
私は恋愛成功者だ!と勝手に思い込んでいるが、嫁はどうだろうか?←少し不安。
※一般小説としての採点なら7点(楽しさに欠け1点減点)で、是非とも手にしてほしい作品ではある。
それでも、文学志向が強い直木賞作品は私的なミステリー嗜好とは相容れない。

No.599 2点 カッコウの卵は誰のもの- 東野圭吾 2010/02/03 18:27
※最初に!!
私的なミステリーマップの範疇に含めたくない作品なのでポリシー通り2点とした。
家族関係の秘密・権謀術数・事件が描かれればミステリーに含むのなら、どう考えてもミステリーの範疇にない山崎豊子作品(一般小説として最高レベルな作品多数)もミステリーに含めなければならず、それは断じて嫌だ!
最近の作者の作品の半分はミステリーの範疇にない一般小説で、東野圭吾作品だからと無条件でミステリー扱いせずに線引きが必要だろう(作者の考えは逆で全てをミステリーとして扱う事でミステリー世界を拡大したいらしい:読売新聞掲載のインタビュー)
才能の遺伝、望まない形での才能の発揮と進路、さらには特殊な家族関係へとテーマが変遷する作品。
スラスラ読めるので一般小説として採点すれば6点程度で、作者の水準レベルな作品と言える。
以前のトリノオリンピック取材の残骸からストーリーを紡いだ‘やっつけ仕事感’が漂い、ネームバリューで作品が売れ評価される現状が垣間見える。
タイトルの「カッコウの卵」がスキーの滑降とカッコウの託卵に掛かった親父ギャグになっている。
※ボヤキ
発売日に図書館に出向き予約して(小説宝石の作品特集も含め)読んでしまう流行物好きな自分に呆れてもいる。
※余談
図書館入荷日のネット予約が300件オーバーは衝撃的だった。

No.598 6点 ジョーカー・ゲーム- 柳広司 2010/02/02 09:36
国際的軍事スパイを描いた連作短編集。
スパイ物エンターテインメントのイメージから思い描く007やMIのようなアクションに偏った作品ではなく、知的な騙しや操りに力点が置かれ、その辺りがミステリーとしても評価できる。
各話展開が練られ、余計な事を考えず没頭しながら読めば非常に楽しい(ここまで7点)
結城中佐のスパイ能力が神の如く描かれるが、任務失敗で引退しD機関を立ち上げた事を考えると(作中で具体的には描かれないが)結城中佐を一度捕らえた国のスパイ機関は更に上手なハズだし、他国にも同レベルな人物は居るハズ。
又、結城中佐の存在は帰国後も当然マークされるし、D機関についての各種の情報は筒抜けだろう。
一定水準のリアリティが求められるスパイ物で、この状況設定には無理があるとの疑念がよぎる。
この作品中では疑念が払拭されずモヤモヤが残り1点減点した。

No.597 6点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!- 深水黎一郎 2010/01/31 15:17
「読者が犯人」設定を成立させた作品は数作存在するが、それを納得させ得た作品は初めてだった。
但し、「一般読者が犯人」な設定で成立した作品だと納得しただけで、「読者が犯人」設定の肝である「読者=自分」の部分では全く納得できていない。
それでも、タイトルにある‘あなた’が、自分にではなく新聞の一読者への訴えである叙述は賞賛する。
物理的因果関係が立証されないある種の超能力を前提条件にした以上、適用ルールの開示が博士の記述という伏線から悟らせる形式なのはアンフェアの謗りは免れない。
一方で、適用ルールを明記すれば全く驚けない作品に成り下がるジレンマがあり、どう転んでも傑作にはなり得ない。
虚仮威し的設定でのデビューに残念な思いを感じる反面、文体の書き分けや叙述を仕込む技巧に見所があり、読者として次作以降への期待は高い。
※ボヤキ
「読者=自分=犯人」が成立かつ納得できる作品を将来読む事が出来るだろうか!!

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(52)
高木彬光(32)
アガサ・クリスティー(30)
梶山季之(30)
東野圭吾(28)
事典・ガイド(26)
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク(23)
芦辺拓(21)
アンソロジー(出版社編)(21)
評論・エッセイ(18)