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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.676 4点 オペラの怪人- 高木彬光 2010/03/21 01:40
偕成社・ジュニア探偵小説・全26巻の一冊(作者の顔ぶれは豪華の一言)
表題作+3短編な構成で、各話でシリーズキャラの少年の名前が違うなど整合性を欠くのは少年向けには適さない(減点材料)
表題作は、超絶設定が登場しない真っ当な少年向け探偵冒険活劇に仕上がり犯人がミエミエなのもご愛嬌(対象年齢を考えれば普通なのかも)で楽しさと懐かしさに溢れている。
短編は学年誌掲載レベルでオマケ(ページ数合わせ)な印象。
小学校の図書室には何故か明智とルパンシリーズしか無かった事が思い出される。
※余談
巻末の世界科学・探偵小説全集リストの記載作品と翻訳者の顔ぶれも豪華で、小学生時代に全作読みたかった(溜め息)

No.675 3点 人外境の殺人- 早見江堂 2010/03/20 22:33
クズミス、ダメミス三部作の第三弾。
三冊目まで読了すれば、伏線の回収と仕掛けに救いはあった。
しかし、評判を知り一作目から手を出しずらく、全三作の読了を読者に期待するのは‘酷’過ぎる。
基本的に面白くない本を三部作で出版するのは禁忌だろう。
篠田秀幸の某作、汀こるもの、水田美意子、作者と読み進め残されるは山田悠介「リアル鬼ごっこ」だけになった。
☆私的な用語定義
※「バカミス」→笑い・脱力・現実味の薄さ・仕掛けなどが突出した本格ミステリを総称している(ある意味褒め言葉)
※「クズミス・ダメミス」→作者の独りよがりが突出して全く面白くないミステリーの総称(表記の如くゴミ箱一直線)

No.674 2点 青薔薇荘殺人事件- 早見江堂 2010/03/20 22:14
クズミス、ダメミス三部作の第二弾。
毒喰らわば皿までな境地で読んでしまった。
前作より少し読みやすかっただけで何ら面白くなかった。
前作同様、よくぞ出版されたものだ!
※余談
何故、私の平均点が他の方々より1~2点低いのか分析してみた。
満点を8点に抑え、めったに献上しない。
それ以上に、私的にミステリー範疇外な作品と年間ランキングの類を結構書評しながらポリシーで各々2点・3点と決めている。
更に、好奇心に負け駄作と評判な作品を読んで採点している。
この採点方針だと平均点が5点辺りで安定しそうだ。

No.673 4点 深紅- 野沢尚 2010/03/20 21:54
深夜に放送された映画版を観て、図書館でおさらいしてきた。
重いテーマでボリュームある作品なのにスムーズに読了した。
映像を観てイメージ出来るからだけではなく作者の筆力を感じる。
被害者と加害者の背景に立場と正義が交錯してグイグイ引き込まれるが、後半の展開は尻すぼみ。
ジャンルもミステリーとしては境界線上だし、実際の未解決事件を想起させる点で読後感も微妙だった。

No.672 5点 白蝋の鬼- 高木彬光 2010/03/19 21:51
朝日ソノラマで出版された「神津恭介対死神博士」の第二弾。
今回は無理くりな超絶設定は‘特殊な皮膚’のみで、それもルールを明快に提示しながら運用し捻りも効いている。
少年向け探偵冒険活劇としても良いデキだと思う。
「土曜ワイド劇場」の明智シリーズが好きだったなら波長は合うはず。
逆に犯人(笑える位にミエミエ)や展開は上記同様にご愛嬌で活劇を楽しめば良いと割り切った。
諸々の少年向け作品と比較して水準レベルな5点とした。

No.671 4点 織姫パズルブレイク- 矢野龍王 2010/03/18 23:28
作者のもう一つの顔がパズル作家らしい。
パズル集に青春恋愛ストーリーを組み込み、パズルの正解で結末を示すパズル・ミステリー?な作品。
正直小説部分だけなら最低レベルの2点だったが思いの外色々なパズルが楽しめてしまった。
わざわざパズル本なんかは手にしないので新鮮だった。
逆に、とある知的パズル本の書評では、パズル雑誌に到底及ばないと酷評されていた。

No.670 2点 本格ミステリ館焼失- 早見江堂 2010/03/18 22:17
「歴代ワースト・ミステリ・ランキング」があればナンバーワンを争うと評判な作品で三部作の第一弾。
どうせ図書館で借りるからリスクは低いとの思いから、この手の評判な作品に滅法弱い(読まずにスルー出来ない)
「普通にミステリーも読む~本格ミステリは大好き」な一般の方々の殆どが「ダメミス」の烙印を押すだろう!
作品の方向性が「クズミス」に相応しくゴミ箱一直線!
唯一「虚無への供物」崇拝な作者の同士だけが神に許される・・・・・・かもしれない。
ある意味で「禁断の書」と云える。

No.669 5点 柚木野山荘の惨劇- 柴田よしき 2010/03/18 21:41
「我が輩は猫である」「三毛猫ホームズ」「迷犬ルパン」の流れついた先と言った趣。
閉ざされる山荘を舞台に肩の凝らない本格ミステリになっている。
表紙カバー(文庫)も猫好きにはたまらないだろうからソコソコ安定して売れるよな~と思い、ついで作者が‘女性’である事に気付き「乾くるみ」が‘男性’と気付いた時と同様な衝撃を受ける。
そんな一冊。
※私が手にしたのは「ゆきの山荘の惨劇」と改題された文庫版です。

No.668 6点 相棒シーズン5下- 碇卯人 2010/03/18 21:08
ドラマが傑作と評判な「バベルの塔」は年末に再放送される可能性が高いので、最初はドラマで楽しんでほしい。
「殺人シネマ」は、最後のクレジットが洒落ているのでドラマも観てほしい。
社会派の傑作「裏切者」での小野田の意味深な台詞は小説でも問題ない。
各話共通で、杉下右京の細かな気付きが随所に見られ小説も面白い。

No.667 6点 相棒シーズン5上- 碇卯人 2010/03/18 20:56
ミステリとしての基本構造がドラマ脚本に忠実にノベライズされている。
ドラマ自体が本格~社会派まで幅広く網羅した素晴らしいミステリーである。
以上の2点を鑑みてどのノベライズも6点に統一する。
一話一話にレベルのバラつきはあるがドラマを観てから読めばさほど気にならない。
ドラマも佳作だが「せんみつ」「名探偵登場」は何度観ても飽きないし、小説で読んでも面白い。
再び薫の‘特異な舌’が活躍する「殺人ワインセラー」や右京が武道でも凄みを覗かせる「剣聖」も楽しい。

No.666 3点 本格ミステリー・ワールド2010- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2010/03/18 20:28
とりあえず、年間ランキングの類なので一律の3点。
まず、巻頭企画が「アジア本格の黎明」な時点でゲンナリする(「島荘よ!アジアの藻屑と消えてくれ」とさえ思ってしまう)
目玉企画の「黄金の本格ミステリー」でも二階堂黎人が私物化しながら島荘に媚びる選出作品が見受けられ更にゲンナリする。
これだけだと流石に売れない(売り物として成立しないレベル)ので、お茶濁し的にその他諸々のコーナーがある。
其方は所々面白いが購入する程ではない。
巻末「本格ミステリー・リスト」で現在の本格ミステリの主流な作風の作品に境界線上の※印を付ける認識にも疑問が残る。
先々の参考資料として図書館に一冊あれば(この時期に予約無しで貸出可な事実からも)なんら問題ないだろう。
※ボヤキ
国内に腐るほどのミステリー作家が居るし、続々デビューもしているのに、わざわざアジア圏のミステリー作家掘り起こしなんか必要だろうか!!

No.665 6点 或る豪邸主の死- J・J・コニントン 2010/03/17 15:16
序文として付された「読者挑戦」
謎と伏線に満ちた前半。
捜査・審問・ダミー推理の後に次々と明かされる事実と新たな謎。
期待感もピークに達して迎える最終章(解決編)!!
ここまでは嗜好のど真ん中を体現し満点(8点)
※ここからネタバレします。
探偵役が論理的に犯人到達する作品ではなく、全く意外性の無い犯人達(共犯なのもパッとしない)の告白で解決編が終了する結末に愕然としてしまった。
序文の「読者挑戦」は看板に偽りあり!としか言いようがない(-3点)
せめてもの救いは現代表現に翻訳され非常に読みやすいこと(+1点)だけだろう。
典型的「竜頭蛇尾」作品の代表例たりうるだろう!

No.664 5点 死神博士- 高木彬光 2010/03/17 11:56
今では「朝日ソノラマ」で出版された版すら入手困難になり一部ファンの間では復刊が待たれる作品。
神津恭介対死神博士の少年向け探偵冒険活劇としては乱歩の怪人二十面相物を彷彿させ懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
フーダニットにあたる死神博士の正体や最初の手術のホワイダニットなんか実に作者らしい。
ここまでなら満点に近い評価なのだが、架空の薬品を用いた操りと、そこから紐解かれる密室ハウダニットは(冒険活劇主体な事を考慮しても)適用ルールの明示がなくフェアさを欠き、推理する楽しみを少年達に普及する意味では適していない。
彬光は少年向けになるとルールを明示しない架空設定を謎やトリックに運用している事が多々あり残念でならない。

No.663 4点 死を招く航海- パトリック・クェンティン 2010/03/17 01:30
エラリー・クイーンのライヴァルたちと銘打たれた翻訳シリーズの一作。
パトリック・クェンティンは、同一名義でも実作者の組合せが違う特殊な作者と言える(詳細は略)
船旅での恋人への手紙として綴った日誌を纏めた形式を取り、シリーズ・タイトルに相応しく「恋人(読者)への挑戦」が付された本格フーダニット作品。
しかも舞台が船上で必然的にC・C設定にもなっている。
ここまでは嗜好のど真ん中なのだが・・・・・。
日誌形式で読み辛い上に、解決編で「たった一言」から導く犯人指摘だが「その一言」が微妙なニュアンスな為に、「その一言」を些細な事と軽視すれば、もっと意外な犯人を設定出来てしまい充分な納得を齎さない(微妙なニュアンスは翻訳だからで原書を読まねば駄目なのか?と悩ましい)
手に取るまでの期待感程の作品ではなかった。

No.662 6点 時そば- 和田はつ子 2010/03/16 17:20
隠れた量産作家で現代物(読んだら悪寒がはしるサイコ・ホラーが中心)から時代小説に移行している。
その時代小説が人情味に溢れ好評らしい。
さて、このシリーズだが捕物控らしく一応ミステリー仕立てになっている(偶々「落語」が題材なこの作品を読んだだけなのでシリーズ詳細は不明)
しかも、美味しい料理に人情を絡め事件を紐解くシリーズの特色に、今作のテーマの落語まで絡ませ楽しく読める。
各話のタイトルが、お馴染みな噺「目黒のさんま」「まんじゅう怖い」「蛸芝居」「時そば」なのも嬉しい。
このテーマで書き続けられたら愛川晶の落語ミステリーの第一人者の座も危うかったかも。

No.661 2点 あるキング- 伊坂幸太郎 2010/03/16 16:32
全作読んだ訳ではないが、元来ミステリーとの境界線ギリギリな作品を書いている作者だが、これは全くミステリーではない(ポリシー通り2点)
しかも、今まで読んだ作品からエンタメ性を排除しながら才能について書いた作りな為に、作者の主張に同意するかどうかだけの読書になり、なんら楽しめなかった。
元々波長が合わない作者ではあるが、これは一般小説で採点しても評価は上がらない。
エンタメ性で注目される作者が、何を勘違いしたのか、その持ち味を排してしまっては身も蓋もない。

No.660 2点 鉄の骨- 池井戸潤 2010/03/16 16:12
現代社会をリアルに描いたエンターテインメント作品としては非常に面白い。
現代を舞台にエンタメ風味をまぶした山崎豊子作品と言った趣き。
最近の東野圭吾作品とは違う方向性でミステリーの境界線を考えさせられる。
私的なミステリーマップの範疇には含めたくない作品なのでポリシー通り2点。
もっとも、作者の近作は一般的ジャンル分けでも経済小説・サラリーマン小説に分類されている。
建設業界・談合・東京地検の捜査にサラリーマンの哀愁を絡め読ませるので一般小説で採点すれば7点は下回らない。
※但し書き
梶山季之や清水一行の経済絡みな小説をミステリーに含めている私の節操の無さはスルーして下さいm(_ _)m
※追記(6月2日)
NHKでドラマ化され近々放送される。
その広告で経済ミステリーと表記されていた。
ミステリーとして宣伝した方が一般には食い付きが良いのだろうか?

No.659 4点 目線- 天野節子 2010/03/15 22:47
ドラマで観たベストセラー「氷の華」は読む気にならなかったが、これは本格ミステリだと知り手にした。
タイトルも含めたフェアな伏線と回収や捜査過程での気付きは、まさしく本格ミステリだった。
※ここから作品の本質に触れるので、察する方にはネタバレになります。
それも犯人直結ですのでご注意下さい!
フーダニットからチープなアリバイトリックの運用まで全てが収束する‘ある事’の隠蔽(叙述トリック)が作品の肝だがアレンジしてはいても(結構読まれている)前例があり、また親切すぎるプロローグからも狙いが察せてしまった。
そうなると、無駄に長く感じ、更に読後感でも前例作品に及ばない事を強く意識してしまった。
※ボヤキ
読者視点では、この手の技法は一度体験すると格段に察し易く驚きも齎さない。
その事に作者視点では気付かないのだろうか?!

No.658 4点 猪苗代湖殺人事件 新幹線4時間58分の死角- 津村秀介 2010/03/14 17:29
偶々、テレ東でドラマ化作品の再放送を観て以前に原作を読んでいる事に思い至った。
作者は、デビュー当初から時刻表型アリバイ崩しに特化した作品を発表し続けた。
西村京太郎の旅情ミステリーと鮎川哲也の時刻表型アリバイ崩し作品群を足して2で割った感じ。
時刻表型アリバイ崩しは、当然のごとく好き嫌いが分かれるし、ネット検索時代に突入した‘今’書かれたら陳腐なトリックのオンパレードになってしまう(それでも鮎川の名作「黒いトランク」が時代に埋もれたなんて思わない!)
この作品はアリバイ崩し自体も淡白なので、かえって旅情ミステリーとしてドラマ向きだったのかも。
※余談
この作品は違うが、殆どの浦上伸介シリーズは‘火サス’で高林鮎子シリーズとしてドラマ化された。

No.657 5点 パチプロ・コード- 伽古屋圭市 2010/03/13 23:08
裏パチンコ業界と攻略法詐欺を題材にしたコンゲームをドタバタミステリーに仕立てた作品。
伏線を些細な気付きから推理して回収する過程は「このミス大賞」応募作らしからぬ丁寧さで本格ミステリに通じる。
更に、キャラ立ち、ストーリーの転がしにも見所がある。
この作品で最初にパチンコ関係ミステリーに出会ったなら高評価も頷けるが、タイトルにまで取り入れたパチンコ話がハセベバクシンオー「ビッグボーナス」の転用(実話なのでしょうがない面はある)なのは新鮮味に欠け残念だった。
※余談
作品の出来・不出来には関係ないが「このミス大賞」内での二番煎じ作品に、同じ優秀賞を受賞させた選考は如何なものか。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(52)
高木彬光(32)
梶山季之(30)
アガサ・クリスティー(30)
東野圭吾(28)
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