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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2755件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.38 7点 転がるダイス- E・S・ガードナー 2016/07/18 00:30
(ネタバレなしです) 一族のもてあまし者扱いされていたオルデン・リーズは今や大金持ち。その彼が謎の人物宛てに2万ドルの小切手を振り出した。もしもこれが詐欺や脅迫絡みなら、意地悪な親戚がオルデンを禁治産者に仕立てて財産を処理できないようにしかねないという相談をペリイ・メイスンが受けるプロットの1939年発表のペリイ・メイスンシリーズ第19作です。敵対する側は無論ですがオルデン側にも一筋縄ではいかない人物を配するなど複雑な人物模様にメイスンもなかなか大変ですが、しかしそこを見事に切り開くのがやはりメイスンならでは。本格派推理小説としての謎解きも充実しており、なかなか印象的なトリックが使われています。

No.37 6点 臆病な共犯者- E・S・ガードナー 2016/07/15 12:26
(ネタバレなしです) ミスディレクションが鮮やかな「日光浴者の日記」(1955)ととんでもない展開に驚かされる「怯えるタイピスト」(1956年)の間にはさまれて1955年に発表されたペリイ・メイスンシリーズ第48作の本書はやや地味な印象を受けますがそれでもそれなりの特色を持っています。アメリカの法廷では夫婦は互いの不利になる証言をしないですむようになっているようで、メイスンシリーズでも「カレンダー・ガール」(1958年)などでそれを巡っての法廷駆け引きが見られますが本書ではあのメイスンがその禁じ手を使おうとしているのが大変珍しいです。その顛末(てんまつ)がどうなるかは読んでのお楽しみです。

No.36 5点 検事方向転換す- E・S・ガードナー 2016/07/03 06:53
(ネタバレなしです) 1943年発表のダグラス・セルビイシリーズ第6作です。被害者が2つの素性を持っていたらしいことが判り、どちらの人物として殺されたのかというややこしい謎が読者を悩ませます。身を隠す容疑者たちをいかにして見つけて事情聴取するか、宿敵弁護士のカーとの駆け引きも読ませどころです。本格派推理小説としては犯人の方がぺらぺら説明していてセルビイの推理がほとんど楽しめないのが物足りませんでした。

No.35 5点 検事封を切る- E・S・ガードナー 2016/07/02 09:39
(ネタバレなしです) 1946年発表のダグラス・セルビイシリーズ第7作ですが本書のセルビイは軍務に就いているため地方検事ではないところが珍しいです。もっとも保安官ブランドンのセルビイへの忠誠心は全く変わらず、殺人現場でもどこでもセルビイを案内しています。問題ないのか、それで(笑)?今回セルビイは検事ではなく弁護人として宿敵カーと対決です(随分簡単に弁護人になっていますが多分資格があるのでしょうね)。ちゃんと法廷場面も用意されており互いに持ち味を発揮してなかなかの見ものです。謎解きはものすごい駆け足気味な上にセルビイはあっという間に汽車に乗って行ってしまいましたね(笑)。

No.34 5点 牝牛は鈴を鳴らす- E・S・ガードナー 2016/07/01 16:39
(ネタバレなしです) 1950年発表の本書はシリーズ探偵の登場しない冒険スリラーですが後半には法廷場面が用意されているのがガードナーらしいです。明確な探偵役を置かず、それなりに意外性のある結末ながらも謎解き伏線は十分とはいえないように感じられます。(古い翻訳のハヤカワポケットブック版ながら)テンポのいいストーリーテリングでぐいぐいと読ませます。

No.33 6点 待ち伏せていた狼- E・S・ガードナー 2016/06/21 08:57
(ネタバレなしです) 1960年発表のペリー・メイスンシリーズ第61作です。メイスンのやっていることは証言の曖昧さを追求するばかりで証拠不十分での釈放はできても真犯人探しとしては全く進展してないのではと心配させたまま法廷シーンに突入しますが、多少偶然に頼ったところはあるもののちゃんと逆転するための伏線が用意されていました。非常にシンプルなプロットで全作品中でも屈指の読みやすさです。

No.32 6点 つかみそこねた幸運- E・S・ガードナー 2016/06/13 01:37
(ネタバレなしです) 1964年発表のペリイ・メイスンシリーズ第73作です。これまでにも手強い敵対者が登場する作品はいくつかありましたが、本書に登場する相手はしたたかさも行動力も持ち合わせており、どうやってメイスンがやっつけるのか興味深く読めました。その決着がちょっと宙に浮いてしまったようなところがあるのが心残りではありますけどメイスンが勝勢であることは確かだと思います(何かミステリーの感想らしくないですね)。

No.31 4点 使いこまれた財産- E・S・ガードナー 2016/06/11 07:33
(ネタバレなしです) 82冊もの長編が書かれたペリー・メイスンシリーズですが被告に法廷で証言させているのは非常に珍しいそうです。1965年発表のシリーズ第75作の本書はその珍しいシーンが読める作品です。メイスンのライヴァル的存在のはずなのに結構お間抜けぶりの方が目立ってしまうハミルトン・バーガー検事が本書ではなかなか健闘しており、法廷での対決ではメイスンよりポイントを稼いでいるのではという印象を受けました。謎解きは極めて粗く、最終章でメイスンがこの人は犯人でないと説明していますが理由が皆無に近く、私はこの人が犯人だっていいのではと思ってしまいました。

No.30 5点 光る指先- E・S・ガードナー 2016/06/01 11:12
(ネタバレなしです) 1951年発表のペリイ・メイスンシリーズ第37作です。今回のメイスンはかなり慎重な態度で対応しているのですがそれにも関わらずどんどん不利になっていく展開がサスペンス豊かで、宿敵ハミルトン・バーガーもこれまでにないほど自信満々です。そこまではいいのですがここでいつものように法廷で見事な逆転劇が見られるかと思いきや、意外にも決着は法廷外へとなだれ込みます。推理も若干はしていますがかなり強引な手法で解決へと導いており、しかも後味の悪い結果が気になります。デラの、「結局この方がよかったかもしれない」発言には個人的には賛同できません。

No.29 5点 弱った蚊- E・S・ガードナー 2016/05/29 16:02
(ネタバレなしです) 1943年発表のペリイ・メイスンシリーズ第23作はそこそこ意外な真相ですが謎解きは強引な感があります。しかしメイスンとデラが思わぬ事件に巻き込まれるし、いつもこき使われているポール・ドレイクが珍しくおいしい仕事をしているしとプロットは抜群に面白いです。また謎解きに直接関係はありませんが、ガードナー自身の野外生活好きを反映しての第17章の砂漠の描写が実にロマンチックで素晴らしいです。ガードナーの文体はハードボイルド風の簡潔でドライなタッチが特徴ですがその気になれば詩的で叙情的な表現もできることをよく示しており、この多面性が高い人気の秘訣なのでしょう。

No.28 8点 幸運の脚- E・S・ガードナー 2016/05/21 23:42
(ネタバレなしです) 1934年発表のペリイ・メイスンシリーズ第3作です。法廷シーンがないのはちょっと残念ですが、絶頂期の作品だけあってスピーディーでスリリングな展開と緻密な謎解きが高度なレベルで両立しています。今回は脇役の使い方が実に絶妙です。でもあそこまで謎解き上重要な役割を与えるなら登場人物リストに載せてもいいのでは(創元推理文庫版のリストには載っていませんでした)。あと犯人が意外とつまらない失策をしていたのも(まあ逮捕の決め手はほしかったんでしょうけど)ちょっと安易な気がしました。

No.27 6点 検事出廷す- E・S・ガードナー 2016/05/13 17:23
(ネタバレなしです) 1940年発表のダグラス・セルビイシリーズ第4作です。事故死した(殺されたかもしれない)浮浪者の正体がなかなかわからないため、利害関係のもつれなのか愛憎関係のもつれなのかさえもとらえどころのない事件にセルビイ、大苦戦です。弁護士となったアイネズ・ステープルトンにも苦しめられます。セルビイの失脚を狙う連中に解決に手こずっているところを見せるわけにはいかず、同時に間違って逮捕もいけないと行動的ながら慎重なセルビイにシルビアならずともはらはらします。地味な捜査で少しずつ事件の全貌を明らかになる一方、どんでん返しも狙うという難易度の高い謎解きに挑んでいます。なお法廷場面は意外と短く終わってますし、そこで事件は解決しません。英語原題は「The D.A. Goes to Trial」ですが、ハヤカワポケットブック版の巻末解説で説明されているように「Go to Trial」という言い回しは出廷以外の意味でも使われるようですね。

No.26 6点 向うみずな離婚者- E・S・ガードナー 2016/04/25 02:39
(ネタバレなしです) 1964年発表のペリー・メイスンシリーズ第72作で、メイスンの事務所で(さすがに殺人ではないけど)事件が起きたり、弁護士同士の対決があったりとプロットの工夫が光ります。ただ推理はやや中途半端で、メイスンは被告の無罪を証明はしますが犯人の正体については指摘するまでには至りません。弁護士としての役割はこれで十分果たしたとは言えるでしょうけど、ミステリーの探偵役としては物足りなかったです(ちゃんと最後には事件が解決されていますが)。

No.25 5点 悩むウェイトレス- E・S・ガードナー 2016/04/02 22:47
(ネタバレなしです) 1966年発表のペリー・メイスンシリーズ第77作ですが、ミステリージャンル分類は悩みそうです。法廷場面はありますが短めなので法廷スリラーとしては物足りないし、メイスンの説明にはどうやって犯人を特定したかの推理がなく、はったりで犯人に罠を仕掛けて解決しているので本格派推理小説としては合格点をあげられません。(消去法ですが)個人的にはサスペンス小説と評価しました。メイスンが「底深い、おそらくは危険な謀略」に巻き込まれつつありそうな不幸な依頼人を助けようとあの手この手を打つのですが、今回は抜け目のない登場人物が多くて(名前のない脇役ながらタクシー運転手さえもそうでした)、最後まで予断を許さない展開が続きます。メイスンをやっつけることにご執心のハミルトン・バーガー地方検事が今回は(協力的とは言わないまでも)意外と潔い態度だったのには驚きました。

No.24 5点 美人コンテストの女王- E・S・ガードナー 2016/03/29 19:43
(ネタバレなしです) 1967年発表のペリー・メイスンシリーズ第78作です。殺人事件はすぐには発生しませんが、まったく退屈させない展開はさすがにガードナーです。解決が警察初動捜査の手落ちに頼っているのと推理が相当強引なのが少々気にはなりますが。ちなみに美人コンテストの優勝者が確かに登場するのですが、それは20年前に終わっていた話でした。コンテストの結果がどうなるかをはらはらしながら読む物語かと勝手に私は期待していました。

No.23 5点 溺れるアヒル- E・S・ガードナー 2016/03/21 06:46
(ネタバレなしです) 1942年発表のペリイ・メイスンシリーズ第20作です。タイトル通り「溺れるアヒル」が大事な手掛かりではありますが、それよりも複雑な人間関係が生み出す複雑な犯罪をどうメイスンが解きほぐすかで読ませている作品です。真相は丁寧に説明されていますが、第二の事件の方は心理描写の少ないこのプロットでは説得力が十分とは言えないような気もします。

No.22 6点 掏替えられた顔- E・S・ガードナー 2016/03/05 23:04
(ネタバレなしです) ペリー・メイスンシリーズ前作の「カナリヤの爪」(1937年)はメイスンとデラが休暇旅行に出発するところで終わっていますが、1938年発表のシリーズ第12作の本書はその休暇を終えてハワイから戻る帰途で始まります(前作を読んでなくても本書の鑑賞には差し支えありません)。死体なき殺人の上に被害者(と思われる男)も何かの秘密を抱えているらしいという複雑なプロットです。法廷場面の駆け引きも十分にサスペンス豊かですが、それ以上に印象的だったのがメイスン、デラ、ポール・ドレイクのチームワークに思わぬ乱れが生じていることで、これがサスペンスを更に高めています。シリーズ作品としてはイレギュラーな出来事なのでできれば他のシリーズ作品を数冊は読んでから本書を読むことを勧めます。

No.21 6点 あつかいにくいモデル- E・S・ガードナー 2016/02/19 11:07
(ネタバレなしです) カーター・ディクスンの名作「ユダの窓」(1938年)(ハヤカワ文庫版)の巻末解説で、被告を証人として立たせることは非常に危険で、あのペリー・メイスンさえ生涯三度しかやっていないと紹介していますが1961年発表のペリー・メイスンシリーズ第66作の本書はそれが見れる一冊です。名誉毀損という、メイスン好みと思えない事件ながら結構細かくフォローしているメイスンがなかなか好印象です(笑)(後で殺人事件もちゃんと発生します)。最終章の謎解きもやや駆け足気味ながらどんでん返しがきまっています。

No.20 5点 検事鵞鳥を料理する- E・S・ガードナー 2016/02/15 01:59
(ネタバレなしです) 1942年発表のダグラス・セルビイシリーズ第5作です。助けを求める女性からの電話を受けたセルビイがバス停留所へ駆けつけると赤ん坊の入ったゆり籠が残されていて電話をかけたと思われる母親は行方不明、しかも赤ん坊の父親は死んだばかりの財産家らしいという事件が起きます。果たして赤ん坊の将来はどうなるのかというメロドラマ風な展開を見せます(一時的に赤ん坊を預かるブランドン保安官の夫人が実にいい味を出してます)。謎解きプロットも強敵弁護士のA・B・カーはもちろん、女性弁護士のアイネズ・ステーブルトンやラーキン警察署長までもがセルビイの捜査に干渉して二転三転する複雑なもので、セルビイがいかにして事件解決するかの興味をうまくつなげて終盤へなだれ込みます。

No.19 6点 憑かれた夫- E・S・ガードナー 2016/02/07 03:14
(ネタバレなしです) 1941年発表のペリイ・メイスンシリーズ第18作です。ヒッチハイクでロス・アンジェルスへ向かう女性が大型車に乗せてくれた運転手に車中で襲われ、抵抗する内に車が横滑りして数台に衝突し、女性が気づいた時にはなぜか運転席でハンドルを握っていて運転手が消えていたという事件で幕開けしますが、プロットは地味で法廷場面も盛り上がりを欠き、真相は結構入り組んでいますのでじっくりと読むことを勧めます。第19章でメイスンが「生物でない手掛かりは余り重視しない方がいい。それよりも動機だとか機会だとかいうものを分析してみて、どういうことが起こったかを推理する方がずっと効果が大きい」と語っているのが興味深いですね。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2755件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(78)
アガサ・クリスティー(55)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(41)
F・W・クロフツ(30)
A・A・フェア(27)
レックス・スタウト(26)
カーター・ディクスン(24)
ローラ・チャイルズ(24)
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